こんな方にオススメの内容!
- なぜ「日光の社寺」が世界遺産に登録されたのか理由が気になる!
- 日光を訪れようと考えている!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 次の旅行先の候補地を探している!
遺産ポイント
- 日光の社寺建造は勝道上人による日光山の開山が始まり!
- 「寛永の大造替」によって現在見られる社寺の姿が確立された!
- 日光の人気観光地である東照宮は徳川家康をまつる霊廟であり様々な装飾が施された傑作!
「日光の社寺」のプロフィール
登録名称 | 日光の社寺 |
---|---|
登録年 | 1999年 |
所在国 | 日本(栃木県) |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (I)(iv)(vi) |
日光に数多くの社寺が建てられた歴史的背景
日光の社寺建造の始まりは、8世紀に「勝道上人(しょうどうしょうにん)」が日光山に寺院を建てて開山したことから始まります!
勝道の開山によって、日光周辺は「山岳信仰の聖地」としてどんどん発展していきました。
そして世界遺産に登録されている主要な建造物である「二荒山神社(ふたらさんじんじゃ)」「輪王寺(りんのうじ)」へ継承されていきました。
12世紀に入ると、山岳信仰の場としてだけでなく「霊山」としての整備も進んでいきます。
室町時代になると、日光山で行われる修験道である「日光修験」が最盛期を迎えます!
なお修験道に関しては、別の日本の世界遺産である「富士山 – 信仰の対象と芸術の源泉」とも大きく関わってます。
気になる方は、ぜひ下記の記事も読んでみてください!
合わせて読みたい!【富士山 | なぜ自然遺産ではなく文化遺産?】世界遺産の評価ポイントを小学生でもわかるように解説!ここまでの日光は順風満帆な歩みを続けていました。
しかし戦国時代に入ると状況が一変します!
各地の大きな権力を持つ武士が日光に押し寄せてきたのです!
この影響でまたたくまに日光の信仰は衰退し、挙げ句の果てに16世紀には豊臣秀吉によって大部分の領土を没収されてしまいました。
しかし江戸時代に入ると状況は落ち着き、徳川家康に付き添う「天海(てんかい)」によって建造物の修理が進められました。
こうして再び日光は輝きを取り戻したのです!
徳川家康が病死すると、家康の遺体を納めるためのお墓が建造されました。
そう、このお墓こそが日光で最も人気のある観光地「東照宮」です!
(東照宮の詳細に関しては後述の各遺産の詳細で解説します)
その後、徳川家光によって大きな変化がもたらされる出来事が起きます!
その出来事とは、「寛永の大造替(かんえいのだいぞうたい)」です!
この出来事は現在の東照宮などで見られる「権現造(ごんげんづくり)」に改修する大きな工事のことを指します!
ちなみに権現造の特徴は下記になります。
- 本殿と拝殿を「相の間」と呼ばれる細長い部屋で繋いでいる
- 現代の神社建築に多く採用されている
- 東照宮の相の間には石が敷かれているため「石の間」とも呼ばれる
- 屋根は「入母屋(いりもや)造」が取り入れられている
東照宮だけでなく二荒山神社や輪王寺も再建が行われ、かつての日光の社寺の景観を取り戻すことができました!
その後、3つの主要社寺は明治政府が出した「神仏分離令(しんぶつぶんりれい)」により「二社一寺」に分離されました。
日光の社寺が世界遺産に登録された3つのポイント
世界に誇る美しい建築物群
誰もが「さすがは世界遺産」と理解できる要素である”見た目”の美しさという点で、日光の社寺は大きく評価を受けました!
特に東照宮にある陽明門の彫刻や装飾は、まさに芸術的センスを感じられる建造物です。
なんとこの陽明門だけでも500以上の彫刻が施されているのです!
これだけの素晴らしい傑作であることから、”いつまで見ていても飽きない”という意味の「日暮の門」とも呼ばれています。
その他にも、五重塔や本殿をはじめとした建築美を感じられる建造物は高い評価を受けています!
日本の代表的な神社・寺院建築が見られる
前述の「世界に誇る美しい建築物群」とも関わってきますが、日光の社寺が美しく素晴らしい建造物として今もなお君臨する大きな要因は、日本ならではの建築技術にあります。
日光で用いられている建築様式のポイントは、「権現造(ごんげんづくり)」です!
(権現造の特徴等に関しては前述の「日光に数多くの社寺が建てられた歴史的背景」を確認してみてください)
権現造は現代で見られる「神社建築」「霊廟建築」の規範になるほど非常に大きな影響を与えました。
特に日本の神社景観の構成を示すという点で言うと
- 建物に統一感を持たせるために配置や彩色効果をうまく取り入れている
- 神格化された自然環境の背景の前の傾斜面に社殿を配置させる
この2点が大きな特徴です。
こういった現代の日本で多く見られる神社の建築様式を確立させた影響力に、世界遺産としての価値があると認められたのです!
日本独特の宗教空間が残る
参照:「peace」さんのInstagramより
「神道や仏教の特質」×「周囲の自然環境」
上記2つが一体となった景観に対して大きな評価を受けました!
この景観は、日本の宗教空間を受け継ぐ独自の神道思想に関連してきます。
ここ日光で表現されている思想等は以下の通りです。
- 神道×仏教の「神仏習合思想」
- 山岳信仰×仏教の「修験道」
- 亡くなった偉人を神としてまつる「人物神」
このように日光の神社や寺院は、日本独特の様々な信仰形態が生まれたことを物語っています!
一番有名な宗教空間としては、徳川家康の霊廟である「東照宮」が挙げられますね!
世界遺産に登録されている各遺産の詳細
日光東照宮の神厩舎に掘られている「見ざる聞かざる言わざる」の三猿
輪王寺(りんのうじ)
参照:「peace」さんのInstagramより
- 「勝道上人」が創建した「四本龍寺(しほんりゅうじ)」を起源とする寺院
- 三仏堂には「千手観音(せんじゅかんのん)」「阿弥陀如来(あみだにょらい)」「馬頭観音(ばとうかんのん)」がまつられている
- 構成資産の一つである「慈眼堂(じげんどう)」は亡くなった「天海」をまつる霊所
ちなみに三仏堂にまつられている三神は、二荒山神社にまつられている三神と同一の存在と考えられています。
このように考えられる要因は、「本地垂迹説(ほんじすいじゃくせつ)」が大きく関わってきます。
二荒山神社(ふたらさんじんじゃ)
参照:「peace」さんのInstagramより
- 「大己貴命(おおあなむちのみこと)」「田心姫命(たごりひめのみこと)」「味耜高彦根神(あじすきたかひこねのかみ)」の3神をまつる
- 「山岳信仰」が最盛期を迎えた時に造営された
- 23の建造物が重要文化財
- 本社本殿には「八棟造(やつむねづくり)」と呼ばれる様式が見られる
ちなみに「八棟造」は、寛永の大造替によって「権現造」が主流になる前によく採用されていた様式です。
大造替前:八棟造 大造替後:権現造
東照宮(とうしょうぐう)
- 徳川家康の遺体を納めた建物
- 「寛永の大造替」によって現在見られる「権現造」様式になった
- 「国宝8+重要文化財34」が含まれる
陽明門(ようめいもん)
引用:「peace」さんのInstagramより
- 装飾彫刻や文様で埋め尽くされている
- 創建当時の「檜皮葺(ひわだぶき)」から「銅瓦葦(どうかわらぶき)」の屋根にして防火対策をしている
- 1本だけ彫刻の模様が逆さまになった「逆柱」がある
本日の確認ミニテスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3, 4級レベル
日光東照宮にまつられている人物として正しいものを選びなさい。
- 武田信玄
- 徳川家康
- 徳川家光
- 豊臣秀吉
②
答え(タップ)>>2級レベル
「寛永の大造替」によって採用された建築様式の名称として正しいものを選びなさい。
- 権現造
- 大社造
- 神明造
- 八棟造
①
答え(タップ)>>1級レベル
「二荒山神社」の説明として誤っているものを選びなさい。
- 23の建造物が重要文化財に指定されている。
- 「勝道上人」が創建した「四本龍寺(しほんりゅうじ)」を起源とする。
- 本社本殿には「八棟造」が見られる。
- 「山岳信仰」が最盛期を迎えた時に造営された。
②
答え(タップ)>>「日光の社寺」のまとめ
- 日光の社寺建造の始まりは勝道上人が日光山に寺院を建てて開山したことから始まる!
- 従来は「八棟造」が主流だったが「寛永の大造替」によって現在の東照宮などに見られる「権現造」の姿が築かれた!
- 日本の神社景観は神格化された自然環境の背景の前の傾斜面に社殿を配置させるという特徴がある!
- 日光の社寺には亡くなった偉人を「人物神」という神に表現する伝統がある!
おまけ:東照宮のサルは3匹だけではない!?
日光東照宮の神厩舎(しんきゅうしゃ)に彫られている、「見ざる、言わざる、聞かざる」の三猿はガイドブックやテレビでよく取り上げられるためとても有名ですよね。
しかし、実際に彫られているサルの種類は3匹だけではないのです!
有名な三猿の動作は、誰が見てもわかりやすく人目に入りやすいところに描かれているため一番注目を浴びているだけであって、実際には合計16匹の猿が彫られています。
そして全ての猿を見ると、”人間の一生”を描いていることがわかるのです!
例えば一番最初の猿では、「赤ん坊時代」を表現しており、母親猿が子供を引き寄せて子供の未来を想像しているかのように遠くを覗いている姿があります。
もし東照宮を訪れた際は、ぜひ三猿以外の猿にも目を通して人間の一生をたどってみてください!