こんな方にオススメの内容!
- なぜ富士山が世界遺産になったのか理由を知りたい!
- それぞれの構成資産の情報がほしい!
- 富士山への旅行を計画している!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
遺産ポイント
- 世界遺産登録範囲は富士山だけではなく周辺の神社や自然景観の計25点が含まれている!
- 構成資産の多くに長谷川角行が創建した「富士講」が大きく関わっている!
- 富士山の世界遺産登録には「信仰の歴史」と「文化・芸術への影響」の2つが大きく関わっている!
「富士山」のプロフィール
登録名称 | 富士山 – 信仰の対象と芸術の源泉 |
---|---|
登録年 | 2013年 |
所在国 | 日本(山梨県 / 静岡県) |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (iii)(vi) |
備考 | シリアル・ノミネーション・サイト(25の構成資産) |
富士山が自然遺産ではなく文化遺産で登録された理由
富士山が自然遺産ではなく文化遺産に登録された理由は、富士山によって多くの文化が育まれた歴史に価値があると評価されたからです!
具体的な価値については、富士山の世界遺産登録名称を詳細に見てみるとわかってきます。
富士山 – 信仰の対象と芸術の源泉
- 富士山
- 信仰の対象
- 芸術の源泉
上記からわかることは、下記の2点です。
- 信仰の対象:古くから富士山は人々から神の山として拝められてきた。
- 芸術の源泉:古くから富士山がよく芸術作品に登場していた。
なお、
「どのような信仰が行われていたか」
「どんな芸術が誕生したか」
については、後述の「世界遺産に登録された理由」で詳しく解説します。
反対に、富士山が自然遺産としての評価を得られなかった理由に関しては、後述の「富士山が自然遺産として認められなかった理由」で詳しく解説します。
世界遺産に登録された理由
富士山と五重塔を一度に見れる人気展望台がある「新倉山浅間公園」
前述の「富士山が自然遺産ではなく文化遺産で登録された理由」で触れたことを踏まえて、富士山が世界遺産に登録された理由は大きく下記の2点に分けることができます。
- 日本の伝統文化の誕生へ大きく貢献
- 芸術への影響力
富士山は人間ではなく”地球が作り上げた文化財”です!
富士山があったからこそ誕生した文化・社寺・芸術が数多く残っています。
このことからも、富士山がいかに人間の文化活動に多大な影響を与えたかがわかると思います。
理由①:富士山と共生してきた歴史
21世紀現在でこそ火山活動が停止している”休火山”状態の富士山ですが、8世紀辺りを中心に火山活動が活発だった時代がありました。
そしてこの火山活動こそ富士山の文化遺産としての価値を大きくしたポイントになってくるのです!
もちろん火山活動による周辺への被害はあったものの、”文化遺産としての価値”という視点では決してマイナスなことばかりではありませんでした。
- 古来から富士山頂や周辺で「擬死再生(ぎしさいせい)」などの伝統的文化が育まれていた。
- 富士山の山麓から得られる湧水によって人々の生活が支えられていた。
上記のような恩恵を得ていたため、昔の人々は「恐ろしい山」としてただ避けるのではなく、「共生していく」考えにどんどん移行していったのです。
もちろん物理的には一度死んで生き返ることは不可能です。
ただこの考えはあくまでも思想であり、今の自分の肉体と魂を一新することを目的としていました。
こうした思想が富士山周辺でいくつも誕生し、その思想によって数多くの修行や歴史的建造物が誕生していったのです!
富士山周辺で誕生する社寺や伝統
富士山と共生していくことで、次々と伝統やその伝統に基づく社寺などが誕生していきました。
まず、富士山を「神」と見立ててお祈りするといった文化が生まれました。
具体的には下記のような行いになります。
- 富士山のある方角に向かって参拝をする「遥拝(ようはい)」
- 富士山に登りながらお祈りをする「登拝(とはい)」
富士山周辺には、遥拝を行うための「浅間(あさま)神社」という社寺が次々と建てられていきました。
(具体的な社寺名や特徴については、後述の「富士山の構成資産」で解説します)
また、富士山の火山活動が休止期間に入った11世紀後半に富士山周辺で新たなお祈り文化が誕生しました。
その名も「修験道(しゅげんどう)」です!
修験道のイメージとしては下記になります!
日本の山岳信仰 × 中国から伝来した密教や道教 = 修験道(しゅげんどう)
長谷川角行の「富士講」創設による登山者・修行者の増加
修験道の誕生による修行者の増加や登山者の増加によって、富士山周辺には多くの神社や宿泊施設が次々と誕生してきました。
さらに、長谷川角行(かくぎょう)という修験道を行う人物が「富士講(ふじこう)」という富士山岳信仰の基盤となる組織を創ったことにより、登山者がさらに増えることとなりました。
すると登山口周辺には次々と宿泊施設が建てられ、それに比例して宿泊施設で働く人々の住宅も次々と建てられていったのです。
こうして富士山周辺には集落が形成され、急激に人々の往来が増えていきました。
ちなみに、宿泊施設や巡礼路案内などで働く人々のことを「御師(おし)」と呼び、その住宅も世界遺産に登録されています。
- 旧外川家(きゅうとがわけ)住宅
- 小佐野家(おさのけ)住宅
さらに、富士溝が修行や苦行(くぎょう)を行っていた場所は「人穴(ひとあな)富士講遺跡」としてこちらも世界遺産に登録されています。
理由②:国内外の芸術家・文化人へ大きな影響を与えた歴史
浮世絵にも描かれている富士山
富士山の美しさは、数多くの芸術家や文化人に大きな影響を与えてきました。
- 葛飾北斎(かつしかほくさい)
- 歌川広重(うたがわひろしげ)
さらに国内のみならず、世界中の芸術家などの作品にも富士山は度々登場しています。
例えば近現代の西洋美術には、富士山をモチーフにした作品が数多く誕生しているのです。
このように、富士山は日本及び日本の文化を象徴する存在として世界で広く認知されるようになったのです!
日本 = 富士山
このようなイメージをさせることに繋がった歴史に価値があると評価されています。
- 山としての美しいフォルム
- 四季によって違う姿を見せる
やはり上記2点が非常に大きな要因です。
富士山の構成資産一覧
静岡県富士宮市にある「富士山世界遺産センター」
富士山そのものも世界遺産に登録されていますが、富士山のみならず、周辺の社寺や遺跡、自然景観なども世界遺産に含まれています。
富士山を含め世界遺産に登録された文化財や自然は、なんと合計で25件にも及ぶのです!
特に世界遺産の対象とされた文化財や自然には、下記のような特徴があります。
- 富士山への信仰に関わった社寺
- 富士登山に関連する施設
- 富士山への登山道
- 富士山の自然現象によって誕生した自然景観
前述の「富士山と共生してきた歴史」に度々出てきた、修験道や富士登山に関わってくる建造物の多くが世界遺産に登録されていることがわかりますね。
富士山域(山そのもの+富士山周辺の文化財や登山道)
「北口本宮冨士浅間神社」の杉並木
- 大宮・村山口登山道
- 須走口登山道
- 須山口登山道
- 吉田口登山道
- 北口本宮冨士浅間神社
- 本栖湖
- 本栖湖
- 西湖
「北口本宮冨士浅間神社」のような富士登山道沿いにある社寺なども、富士山域の範囲内として含められています。
(北口本宮冨士浅間神社を起点に、富士山の山頂まで吉田口登山道が続いている)
一方で、後述でも紹介する「富士山本宮浅間大社」などの他の社寺は、登山道とはあまり深い関係はないものの、富士山を信仰する重要拠点としての役割があるため、別途構成資産に含まれています。
富士山本宮浅間大社
- 全国の浅間神社の総本宮
- 坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)が創建
- 富士山の大噴火の鎮静化を願って建てられたことが起源
- 数ある富士周辺の浅間神社の中でも特にアクセスが良い神社
富士山周辺のみならず、浅間神社は全国に1300ほどあります。
その中のおおもとの神社が富士山本宮浅間大社なのです。
そもそも「浅間神社」とは、主に富士山を信仰するために建てられた神社です。
富士山の火山活動が活発だった時代に、富士山の鎮静化を願って多くの神社が建てられました。
天然記念物「湧玉池」にかかる橋
さらに富士山本宮浅間大社には、”火難の神”と言われる「木花之佐久夜毘売命(このはなのさくやひめのみこと)」が祀られています。
そのことからも、富士山本宮浅間大社がいかに重要な大社であることがわかります。
また富士山本宮浅間大社は、他の浅間神社と比べてアクセスしやすいのがポイントです。
そのため週末を中心に、多くの参拝者で賑わいを見せています!
時期によっては多くの出店が軒を連ねているので、ぜひ一度訪れてみてください!
村山浅間神社
- 「興法寺」という寺院が建てられていた跡地に建造された
- 富士登山の前に多くの登山客が立ち寄った由緒正しき神社
村山浅間神社は富士山の斜面に沿って建造されているため、山沿いに文化財が点在しているところが特徴です。
ちなみに現在の社殿は、老朽化を考慮して「鉄筋コンクリート×木造」に改築されて建っています。
山宮浅間神社
- 「富士山本宮浅間大社」の前身とされる神社
- 富士山を遥拝するための遥拝所がある
- 遥拝所からは富士山の雄大な景色を眺めることができる
遠くからでも富士山を拝むことができるように、山中に建造されている点がポイントです。
その建造背景がわかるように、「遥拝所(ようはいじょ)」の木々の間からは富士山を臨むことができます。
また、古くから富士の神様をまつるお祭りが行われていたため、その際に使われていた石が至るところで見られる点も山宮浅間神社の特徴の一つです。
須山浅間神社
- 「須山口登山道」の起点となる神社
- 今から約500年前から存在していたとされている
同じく世界遺産富士山の構成資産に指定されている「須山口登山道」の入り口部分にあたる神社です。
富士山の南側から登山する際の重要な拠点として、大きく栄えました。
富士浅間神社(須走浅間神社)
- 「須走口登山道」の起点となる神社
- 富士山の噴火の鎮静化を願って建造された。
同じく世界遺産富士山の構成資産に指定されている「須走口登山道」の入り口部分にあたる神社です。
河口浅間神社
河口浅間神社は”天空の鳥居”と呼ばれる遥拝所があることで知られている
- 河口湖を臨む富士の自然に囲まれた神聖な神社
- 「母の白滝」「七本の巨木杉」「天空の鳥居」など見どころが豊富
富士山周辺の数ある浅間神社の中でも、広範囲に及んで文化財が点在しているのが河口浅間神社の特徴です。
本殿や拝殿を中心とした境内(けいだい)以外にも、車で数分(徒歩で20〜30分)ほど移動したところには下記のような見どころが点在しています。
- 母の白滝
- 七本の巨木杉
- 天空の鳥居
また、神社の名前に入っている通り、同じく構成資産である「河口湖」を臨むロケーションにあるため、富士山周辺の大パノラマを臨むこともできるのです!
富士御室浅間神社
- 河口湖に面する富士周辺最古の神社
- 武田信玄(たけだしんげん)との関わりを持つ
河口湖に面する富士御室浅間神社は、なんと約1300年の歴史を持つ、富士周辺で最も古い神社です!
さらに、戦国時代の武将の中で特に有名な武田信玄が、富士山を拝める際に利用していた神社でもあります。
忍野八海(合計8つの池)
名前にも入っているように、忍野八海は8つの海(池)で形成されています。
- 出口池(でぐちいけ)
- お釜池(おかまいけ)
- 底抜池(そこなしいけ)
- 銚子池(ちょうしいけ)
- 湧池(わくいけ)
- 濁池(にごりいけ)
- 鏡池(かがみいけ)
- 菖蒲池(しょうぶいけ)
これらの池の水は、主に富士山の雪解け水が源です。
さらに地下にある富士山の溶岩によって綺麗にろ過されて地上に出てきているため、非常に透き通った池を見ることができます。
また池の周辺には、茅葺き屋根の家屋や水車などが点在し、飲食店やお土産店なども軒を連ねるため、富士周辺でも特に人気の高い観光スポットとなっています。
なお、忍野八海に関しては下記の記事で詳細に解説しているので、富士山の魅力をより深く知りたい方はぜひ併せて読んでみてください。
合わせて読みたい!【忍野八海ってなに?富士山との関係性は?】世界遺産に登録された理由&魅力をわかりやすく解説!富士五湖(山中湖、河口湖、西湖、精進湖、本栖湖)
精進湖越しに眺める富士山
富士五湖とは、富士山の火山活動や地殻変動によって誕生した大小様々な形をした5つの湖の総称です。
- 山中湖(やまなかこ)
- 河口湖(かわぐちこ)
- 西湖(さいこ)
- 精進湖(しょうじんこ)
- 本栖湖(もとすこ)
実は富士山の噴火の影響を受ける前は、5つの湖ではなく1つの大きな湖しかありませんでした。
しかしその後の噴火活動や地形の変化によって、大きな湖はだんだん分裂していきました。
そして結果的に、現在見られる5つの湖に分裂して残っているのです。
富士五湖最西端に位置する「本栖湖」の初夏の様子
ちなみに同じく世界遺産に登録されている、河口湖と山中湖の間にある「忍野八海(おしのはっかい)」も、実は1つの大きな湖から分裂して誕生した池なのです。
(忍野八海に関しては、こちらの記事で詳しく解説してます)
白糸ノ滝
- 幅約150mに渡って大小様々な滝が一気に流れ落ちている
- 長谷川角行が滝修行を行った場所
- 世界遺産&天然記念物に指定されている
白糸ノ滝は、富士山の湧水によって誕生した、横幅が非常に広い点が特徴の神秘的な滝です。
富士講を創設した長谷川角行をはじめ、富士講のメンバーの多くがこの滝で修行を行った場所とされています。
(「富士講」に関しては、前述で解説しています)
ちなみに白糸の滝の近くには「音止めの滝」という別の滝も存在します。
残念ながらこちらは世界遺産に登録されていませんが、白糸ノ滝とは違い、落差が少し高く、一箇所から流れ落ちる水量が豊富なため、大迫力な滝の風景を臨むことができます!
人穴富士講遺跡
境内には無数の記念碑が建てられている
- 「人穴浅間神社」の境内に洞窟や数多くの記念碑がある
- 洞窟は富士講を創設した長谷川角行が修行をした場所
人穴富士講遺跡には、溶岩の力によって誕生した洞窟を中心に、富士講を信じる人々が建てた記念碑などが点在します。
(「富士講」に関しては、前述で解説しています)
特にポイントなのが、富士講を創設した長谷川角行が溶岩洞窟の中で修行を続けていたことです!
そんな富士講信者にとって重要な拠点である人穴富士講遺跡には、富士登山(登拝)の安全祈願など様々な目的で石の記念碑が約230本も建てられていきました。
なお、一般の方は洞窟に入ることはできません。
ちなみに、鎌倉時代の歴史書「吾妻鏡(あずまかがみ)」には、この人穴を探検した武士が霊的体験をした、という記録が残されています。
そのため現在ではちょっとした心霊スポットとしても有名です。
船津胎内樹型&吉田胎内樹型
- 富士山の溶岩によってつくられた洞窟
- 世界でも富士山とハワイ島でしか見られない貴重な現象
- 船津、吉田:町の名前
- 胎内:母の子宮(のようなもの)
- 樹型:木が燃え尽きて出来上がった空洞
要するに
富士山の溶岩によってなぎ倒された樹木が燃え尽きることによって母親の子宮のような形をした空洞が誕生した
このような表現になりますね。
世界では富士山とハワイ島でしか見ることができず、そんな貴重な溶岩樹型が富士山周辺に約100も存在しています!
御師住宅(旧外川家&小佐野家)
「御師(おし)」とは、主に富士登山をする人々に宿泊施設として提供している家屋です。
宿泊以外にも下記のようなサービスを提供していました。
- 宿泊客への食事の手配
- 富士山の巡礼路のガイド
- 代理で富士山へのお祈りをする
江戸〜明治時代にかけてたくさんの御師が存在していましたが、その中でも現在も残っている「旧外川家」と「小佐野家」が世界遺産に登録されています。
なお御師内部には、当時の記録が残された古文書などが展示されており、富士山を信仰する文化や御師との関わりなどを学ぶこともできます。
三保の松原
海岸の沿って約3万本もの松の木が生い茂っている
- 全長約7kmの海岸に沿って松の木が生い茂る
- 富士山と打ち寄せる白波の風景が名物
- 数多くの芸術家・文化人に大きな影響をもたらした
「三保の松原」は、富士山の構成資産の中で、唯一富士山周辺から離れた海岸沿いに位置しています。
前述の「国内外の芸術家・文化人へ大きな影響を与えた歴史」でも解説したように、富士山は芸術の面で大きな影響を与えたことにも価値があるとして世界遺産に登録されています。
そして三保の松原の海岸から富士山を臨む風景は、富士山の浮世絵を書いた人物として有名な「歌川広重(うたがわひろしげ)」など、多くの芸術家・文化人の作品制作に大きな影響を与えた歴史があるのです!
富士山が自然遺産として認められなかった理由
秋の紅葉シーズンの美しい富士山の姿
もし富士山が文化遺産だけでなく自然遺産としての評価も受けていた場合は、「文化遺産 ⇨ 複合遺産」として登録されていたはずです。
しかし富士山は主に下記が原因で、自然遺産としての評価を得られなかったのです。
- 火山としての富士山や周辺の自然環境は世界的に見て特に珍しいものではなかった。
- 観光地化が進みゴミなどの周辺環境の問題が上がっていた。
- 人の手が入りすぎて自然本来の価値が失われていると判断された。
当然のことながら、世界遺産登録範囲内にゴミなどの汚染物が散乱していては、世界遺産としての価値を下げてしまうことに繋がります。
さらに、本来の自然の姿を人間が意図的に変えてしまっては、自然の美しさがそのまま残っているとは言えません。
また、そもそも世界の他の自然と見比べても、富士山は決して珍しい自然現象が発生する場所でもなく、他に類を見ないほど美しい自然が残っているわけでもありませんでした。
富士山周辺のゴミ問題を訴えかけている看板
ちなみに2013年に富士山が世界遺産に登録される以前にも、”富士山を自然遺産として登録”する動きがありました。
しかし残念ながら環境問題などが原因で、自然遺産登録どころか、世界遺産登録にも至らなかったのです。
このような過去の経験を踏まえて
自然視点 ⇨ 文化視点
このように切り替えて再度世界遺産登録の推薦を行なったのです。
こうして富士山そのものだけではなく、富士山周辺で誕生した文化や文化財が世界遺産対象になり、評価の仕方に変化が生まれました。
この評価の変化によって、富士山は無事文化遺産として認められることになったのです。
周辺環境の改善 + 新たな自然としての価値の発見
上記の2点が揃えば、富士山が自然遺産として登録される可能性も十分にあります。
例えば
富士山の噴火によって誕生した洞窟内から、世界的にも珍しい鉱物資源が多く見つかった。
富士山周辺の湖から、地球の歴史を知る上で貴重な生物が発見された。
このように新たな発見があると、再度自然遺産として登録の推薦をすることが可能です!
(世界遺産への登録推薦の条件や登録までの流れに関しては、こちらの記事で詳しく解説してます)
例えばニュージーランドの世界遺産「トンガリロ国立公園」は、1990年当初は自然遺産としての登録でした。
しかしその後文化遺産としての価値も認められて、1993年に文化遺産としての評価も受け複合遺産になりました。
このように途中で遺産の評価が変更されることがあるため、富士山が自然遺産の価値も満たして複合遺産になる可能性もありますね。
富士山の入山料徴収問題
富士山が世界遺産に登録された翌年2014年の夏に、富士登山をする場合、任意で入山料「1,000円」を支払う制度が導入されました。
この制度は、富士山が所在する山梨・静岡両県で話し合いが行われて決定されたものです。
正式名称にも入っている通り、入山料は主に「富士山、及び富士山周辺の自然環境を保護する&登山客の安全を確保する目的」に活用されます。
しかし実はこの入山料は問題視されているのです!
まず富士山の保全において、登山客の増加が問題として挙げられていました。
- 登山客が増えれば自然環境に悪影響が及ぶ可能性が上がる。
- 登山客が増えれば登山中の事故が発生する可能性が高まる。
要するに、富士山の入山料導入は、”登山客数のコントロール”を目的としていたのです。
なお、入山料導入の流れが下記の通りです。
もともと世界遺産登録される2008年に富士登山客がピークを迎えた(この時に入山料の検討がされ始めた)。
↓
入山料を支払うことで登山客が減少し、結果的に自然環境の保護につながると考えられていた。
↓
しかし1,000円の入山料では登山客の減少がほとんど見られなかった。
↓
だからといってさらに入山料を上げると登山客の反感を買うことになりかねない。
↓
一方で、マイカー規制による効果は入山料の導入以上に登山客抑制の効果が見られた。
↓
料金設定をするだけでなく、具体的な利用規制を設ける方が効果を見ることができた。
つまり、単純に登山客の急増を抑えたいのであれば、金銭面ではなく具体的な入山制限を設ける方が効果的だったという結論です。
このことからもわかるように、仮に入山料を徴収したとしても登山客数の減少にあまり繋がらず、むしろ反感を買うことになりかねないという問題があるのです。
とはいえ、下記のような富士山の保全のためにはお金が必要になってくるのも事実です。
- 登山道や山頂にトイレを設置(トイレの許容量オーバー対策、放尿対策)
- 登山道の整備
- 安全看板の設置
- インフォメーションセンターの設置・運営費
- 富士山レンジャーの増員(監視員)
まとめると、富士山が抱えている問題を解決するには、下記の2つがポイントになってきます。
- 富士登山の整備や環境保全のための設備・人的投資のためにはお金が必要。
- 具体的に登山客を抑えるには具体的な登山制限を設ける必要がある。
上記2つのポイントを踏まえた上での解決案としては、下記が考えられます。
登山客の反感を買わないためにも、入山料を徴収したことで、具体的にどんなことに使われてどんな改善に至ったのかを詳細に報告する必要がある。
加えて、登山者数の制限ではなく、マイカーの規制など実際に過去に効果のあった比較的緩い制限を設けて、登山者数自体の数字を減らして環境改善にも努める。
1日の登山客数の上限設定など、あまりにも制限が強すぎると登山客の反感の発生、及び登山客が激減して入山料の徴収すらできない自体に陥りかねません。
そのため、制限は比較的ゆるく設定し、入山料の使い道を明示した上で入山料の徴収を実施することが効果的と考えることができます。
ちなみに、富士山以前に自然環境の保全のために、入場規制などの取り組みが行われている世界遺産は世界にいくつかあります。
【白神山地(日本)】
一般の観光客が入山できるエリアと入山届を出さないと立ち入れないエリアに分けられている。
【マヌー国立公園(ペルー)】
原則として、一般の観光客の立ち入りが一切禁止されている。
【ヨセミテ国立公園(アメリカ)】
園内の約9割が立ち入り禁止区域に指定されているため、世界遺産に登録されてから2022年時点で40年ほど経つが、大きな自然環境の悪影響は見られていない。
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3,4級レベル
富士山岳信仰の基盤となる組織「富士講」を創設した人物として正しいものはどれか。
- 長谷川角行
- 武田信玄
- 坂上田村麻呂
- 杉田玄白
①
答え(タップ)>>2級レベル
「御師(おし)」の説明として正しいものはどれか。
- 富士山周辺で信仰されている伝統的文化を守る人々。
- 富士山の噴火をしずめるために富士山本宮浅間神社でお祈りを捧げている人々。
- 古来から富士山周辺で誕生した伝統を継承させる活動をしている人々。
- 富士登山客を受け入れる宿泊施設や巡礼路案内などで働く人々。
④
答え(タップ)>>1級レベル
坂上田村麻呂が創建した神社の名称として正しいものはどれか。
- 河口浅間神社
- 村山浅間神社
- 山宮浅間神社
- 富士山本宮宣言大社
④
答え(タップ)>>まとめ
- /
- 世界遺産登録理由①:富士山周辺で信仰文化が根付いた歴史に価値があるため!
- 世界遺産登録理由②:富士山に影響を受けた文化人や芸術家多く誕生したという歴史的背景!
- 富士山周辺で誕生した代表的な思想が「擬死再生」
- 富士山へのお祈りの代表的な形態としては「遥拝」や「登拝」が挙げられる!
- 富士山を対象とする山岳信仰と中国から伝わった宗教が融合して「修験道」が誕生した!
- 長谷川角行の「富士講」創建によって富士登山客が増えた!
- 珍しい自然的価値がなかった点と周辺の環境問題が原因で自然遺産に登録されなかった!
- 入山料の導入や環境汚染など様々な問題を抱えている!
プチ観光情報①:富士山絶景スポット「紅葉台」
「紅葉台」から臨む富士山の雄大な景色
その名の通り、富士の紅葉の絶景を堪能できる展望台です!
目の前に遮るものが一切無いため、絶好のロケーションで富士山の雄大な姿を見ることができます。
さらに、富士山周辺に広がる「青木ヶ原樹海」の大自然も一望することができるのです。
もちろん秋以外でも、新緑のシーズンや、富士山が雪を被った冬に訪れても、感動的な絶景を満喫することができます。
なお、紅葉台へのアクセスは車と徒歩で可能です。
ただし車の場合は、あまり舗装されていない山道を登ることになるため、ある程度車の運転に慣れていることが大前提になりますね。
プチ観光情報②:おすすめホテル「ラビスタ富士河口湖」
ホテルロビーから臨む富士山の絶景
○宿泊ポイント
- ほぼ全ての客室が富士山ビュー
- 南フランスの高級リゾートにいるかのような雰囲気
- 露天風呂&貸切風呂を完備
「ラビスタ富士河口湖」の最大の魅力は、なんといってもほぼ全ての客室から富士山を眺めることができる点です!
さらに、徒歩圏内に世界遺産の河口湖、車で10〜20分圏内にも世界遺産に登録された神社や湖が点在しており、世界遺産巡りの拠点としても申し分なしですね。
また、高速道路を降りてから20分ほどでアクセスが可能!
最寄の河口湖駅からはホテルまでの送迎サービスもあり、ホテルへのアクセスも抜群に良いです。
おまけ:世界中に富士山がある!?
まるで駿河湾から見た富士山のような南米チリの「オソルノ山」
実は世界中には
「え、これどう見ても富士山だよね!?」
と言いたくなる富士山そっくりな山がいくつかあります。
例えば、下記の山などが富士山そっくりな山として挙げられます。
- オソルノ山(チリ)
- タラナキ山(ニュージーランド)
- マヨン山(フィリピン)
- クリュチェフスカヤ山(ロシア)※世界遺産に登録
2つ目の「タラキナ山」はあまりにも富士山そっくりだったため、映画「ラストサムライ」のロケ地として使われるほどでした(笑)
こんな感じで、「○○にそっくり!」を探す旅なんかも面白そうですよね!
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。