こんな方にオススメの内容!
- 富士山が自然遺産ではなく文化遺産として世界遺産に登録された理由が気になる!
- 富士山への観光を計画しているため情報収集をしたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- 次の旅行先の候補地を探している!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!


遺産ポイント
- 富士山周辺では「擬死再生」や「登拝」など独自の伝統的文化が育まれていく!
- 長谷川角行が「富士講」を創ったことにより登山者が巡礼者が増加!
- 葛飾北斎などが富士山を描いたことで西洋芸術にも大きな影響を与えた!
「富士山」のプロフィール
登録名称 | 富士山 ー 信仰の対象と芸術の源泉 |
---|---|
登録年 | 2013年 |
所在国 | 日本(山梨県・静岡県) |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (iii)(vi) |
備考 | 登録範囲は「富士山域+25の構成資産(冨士浅間神社、忍野八海、富士五湖、他)」 シリアル・ノミネーション・サイト |
富士山が文化遺産としての価値がある背景





富士山の世界遺産登録名称に含まれている「信仰の対象と芸術の源泉」という部分が、富士山が文化遺産に登録された理由に大きく関わってきます。
簡潔に説明すると
- 信仰の対象:富士山と共に生活し文化を育んだ歴史がある
- 芸術の源泉:富士山の美しさが数多くの芸術家などに影響を与えた
以上の点が文化遺産としての価値を持つ理由です!
そのため富士山は自然遺産ではなく文化遺産として登録されたのです。


富士山と共生した日本古来の伝統文化としての価値



富士山の自然と共生し感謝する文化の誕生



21世紀現在でこそ火山活動が停止している”休火山”である富士山ですが、8世紀辺りを中心に火山活動が活発だった時代がありました。
富士山が文化遺産としての価値を持つようになった背景には火山活動が大きく影響しているのです!
もちろん火山活動による周辺への被害はあったものの、”文化遺産としての価値”という視点では決してマイナスなことばかりではなかったのです。

- 古来から富士山頂や周辺で「擬死再生(ぎしさいせい)」などの伝統的文化が育まれていた
- 富士山の山麓から得られる湧水によって人々の生活が支えられていた
上記のような恩恵を得ていたため、昔の人々は「恐ろしい山」としてただ避けるのではなく、「共生していく」考えにどんどん移行していったのです。





その後も富士山は、「登山」や「巡礼の形式」などに受け継がれていくこととなっていきました。


富士山周辺で誕生する社寺や伝統

富士山と寺院のコラボレーションを眺めることができる「新倉山浅間公園(あらくらやませんげんこうえん)」
富士山と共生していくことで、次々と伝統やその伝統に基づく社寺などが誕生していきました。

まず富士山を「神」と見立てて信仰するといった文化が生まれました。
具体的には下記のような行いになります。
- 富士山のある方角に向かって参拝をする「遥拝(ようはい)」
- 富士山に登りながらお祈りをする「登拝(とはい)」

遥拝(ようはい)



代表的な浅間神社は下記になります。
【富士山本宮浅間神社(ふじさんほんぐうせんげんじんじゃ)】
- 国内各地に存在する浅間神社の総本宮
- 富士山の噴火を鎮めるために「坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)」が創建を命令
- 「木花之佐久夜毘売命(このはなのさくやひめのみこと)」を祀る
【山宮浅間神社(やまみやせんげんじんじゃ)】
- 富士山本宮浅間神社の前身
- 境内に本殿がなく遥拝所がある

登拝(とはい)
富士山の火山活動が休止期に入った11世紀後半に富士山周辺で新たな信仰が誕生しました。
その名も「修験道(しゅげんどう)」です。
日本の山岳信仰 × 中国から伝来した密教や道教 = 修験道(しゅげんどう)
修験道はこのようにして誕生しました。



富士登山者が増えたことにより、次は登山口に「須山浅間神社」や「冨士浅間神社」などの神社が建てられるようになりました。
長谷川角行の「富士講」創設による登山者・修行者の増加

修験道の誕生による修行者の増加や登山者の増加によって、富士山周辺には多くの神社や宿泊施設が次々と誕生してきました。

さらに長谷川角行(かくぎょう)という修験道の行者が「富士講(ふじこう)」という富士山岳信仰の基盤となる組織を創ったことにより、登山者がさらに増えることとなりました。
すると登山口周辺には次々と宿泊施設が建てられ、それに比例して宿泊施設で働く人々の住宅も次々と建てられました。
このようにして富士山周辺には集落が形成されていったのです!
ちなみに宿泊施設や巡礼路案内などで働く人々のことを「御師(おし)」と呼び、その住宅も世界遺産に登録されています!
- 旧外川家(きゅうとがわけ)住宅
- 小佐野家(おさのけ)住宅
また、角行が修行や苦行を行っていた場所は「人穴(ひとあな)富士講遺跡」としてこちらも世界遺産に登録されています!


国内外の芸術家・文学者へ大きな影響を与えた歴史




四季折々に見せる姿や美しいフォルムで人々を魅了




富士山を題材にした作品で特に有名なのが、「葛飾北斎(かつしかほくさい)」や「歌川広重(うたがわひろしげ)」が描いた浮世絵です。
もちろん絵画以外にも多くの分野に影響を与えました。
小学生の時に「富士山」という歌を音楽の授業で歌った方も多いのではないでしょうか?
このように富士山は芸術活動などにも大きな影響を与えて、日本独自の作品が多く誕生するきっかけにもなりました。
富士山の魅力は世界共通の認識

また日本国内のみならず富士山を描いた作品は世界中で評判となり、近現代の西洋美術のモチーフになるなど多大な影響を与えることになりました!


そして富士山は日本や日本文化を象徴する記号として世界に広く認識されるようになりました。
つまり富士山の魅力が世界共通の認識になったということになります!


なぜ富士山は自然遺産ではない?







2013年に富士山が文化遺産として登録される以前は、実は富士山を「自然遺産」として登録しようと申請をしていました!
しかし主に下記の問題があったため、自然遺産としての世界遺産登録は非常に難航をしていたのです。
- 世界中の山を見ると富士山の形状や火山活動はそれほど珍しいものではない。
- 観光地化が進みゴミなどの周辺環境の問題が顕著だった。
- 人の手が入りすぎて自然本来の価値が失われていると判断された。
1つ目の理由に関しては、地球の歴史や地形に関わる問題なのでどうしようもないですよね。
2つ目と3つ目の理由に関しては国や自治体が動けば解決できる問題ではあったものの、その後も自然環境維持より利便性や観光地化を優先させてしまったため自然遺産としての登録はあえなく断念しました。
それでもどうにかして日本の象徴である富士山を世界遺産登録させるために
「自然遺産登録 ⇨ 文化遺産登録」へとシフトすることを決断したのです。
文化遺産登録への条件は揃っていて自然遺産ほど登録に苦戦することなく、ついに2013年に長年の夢であった富士山の世界遺産登録が実現しました!


ちなみに自然遺産としての登録を諦めているわけではなく、環境問題などを改善して自然遺産としての価値も認められれば、既存の文化遺産登録と合わせて
複合遺産 (文化遺産 + 自然遺産)
として富士山が登録される日も遠くはありません!
本日の確認テスト


(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3, 4級レベル
「富士講(ふじこう)」という富士山岳信仰の基盤となる組織を創った人物として正しいものを選びなさい。
- 長谷川角行
- 葛飾北斎
- 坂上田村麻呂
- 歌川広重
①
答え(タップ)>>2級レベル
「御師(おし)」の説明として正しいものを選びなさい。
- 富士山周辺で信仰されている伝統的文化を守る人々。
- 富士山の噴火をしずめるために富士山本宮浅間神社でお祈りを捧げている人々。
- 古来から富士山周辺で誕生した伝統を継承させる活動をしている人々。
- 富士登山客を受け入れる宿泊施設や巡礼路案内などで働く人々。
④
答え(タップ)>>1級レベル
坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)が創建した浅間神社を選びなさい。
- 山宮浅間神社
- 河口浅間神社
- 須山浅間神社
- 富士山本宮浅間神社
④
答え(タップ)>>まとめ

- 富士山との共生の中で「擬死再生」「遥拝」「登拝」などの伝統・文化が誕生していった!
- 長谷川角行が「富士講」という組織を創ったことで富士登山客が加速するように増えた!
- 葛飾北斎や歌川広重が描いた富士の絵が西洋芸術などに大きな影響を与え富士山が日本文化を象徴する記号として広まった!
- 決して珍しいとは言えない火山活動や周辺の環境問題によって富士山は自然遺産登録が見送られていた!
おまけ:世界には富士山にそっくりな山がある!?

富士山の構成資産として世界遺産に登録されている「北口本宮冨士浅間神社(きたぐちほんぐうふじせんげんじんじゃ)」
実は世界中には
「え、これどう見ても富士山だよね!?」
と言いたくなる富士山そっくりな山がいくつかあります。
例えば下記の山などが富士山そっくりな山として挙げられます。
- オソルノ山(チリ)
- タラナキ山(ニュージーランド)
- マヨン山(フィリピン)
- クリュチェフスカヤ山(ロシア)※世界遺産に登録

まるで駿河湾から見た富士山のような南米チリの「オソルノ山」
2つ目の「タラキナ山」はあまりにも富士山そっくりだったため、映画「ラストサムライ」のロケ地として使われるほどでした(笑)
こんな感じで、「○○にそっくり!」を探す旅なんかも面白そうですよね!
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。