こんな方にオススメの内容!
- 世界遺産の具体的な役割や登録後の活動が知りたい!
- 世界遺産に関わる”5つのC”や”ブダペスト宣言”が何なのか気になる!
- 教養として世界遺産に関する知識を習得したい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
ポイント
- ”5つのC”に基づいて毎年開かれる世界遺産委員会で遺産の現状報告をする!
- 世界遺産は登録されて終わりではなく登録されてからが重要な役割を持つ!
世界遺産に関する「5つのC」とは?
都市開発などによる景観問題が上がっている「ケルン大聖堂」
まず結論から言ってしまうと、5つのCとは世界遺産が持続可能な社会の発展に貢献しているかどうかを示す指標のことです!
もっと簡単に言うと、世界遺産に登録された文化財・自然の現状報告をする際に使われる5つの項目といった感じですね。
この5つのCの正式名称は「世界遺産条約履行のための戦略的目標 5つのC」と言います。
5つのCが戦略目標として設定されたのは、世界遺産条約採択の30周年に当たる2002年にハンガリーのブタペストで開かれた会議で採択された「世界遺産に関するブダペスト宣言」がきっかけです。
ブダペスト宣言は、世界遺産が持つ顕著な普遍的価値(全人類にとって重要な文化財・自然)を守り、持続可能な社会の発展に貢献するために採択されました。
それをさらに詳細に項目として分けたのがこの5つのCに該当します。
つまり、世界遺産を守るために採択されたブダペスト宣言を5つの項目に分けて定期的に状況報告をするといった活動がされているわけです!
ちなみにブダペスト宣言が採択された当初は4つのCから始まりました。
その5年後にニュージーランドで開かれた世界遺産委員会(第31回)で5つ目のCが追加された形になります。
なお、報告を担当する機関と報告タイミングは以下の通りです。
報告する機関 | 世界遺産センター(5つのCに当てはめて報告) |
---|---|
報告する時期 | 毎年行われる世界遺産委員会 |
(世界遺産センターを含む各機関の役割に関しては「【世界遺産登録の手順】世界遺産リストへ記載されるまでの流れを小学生でもわかるように解説!」という記事に、世界遺産委員会の役割に関しては「【世界遺産委員会とは?】具体的な役割や概要をどこよりもわかりやすく解説!」という記事で詳しく解説しています)
1つ目のC:Credibility(信頼性)
1978年に登録された世界遺産第一号の「クラクフ歴史地区」
Credibilityの概要を簡単に言うと「世界遺産リストの信頼性を高める」になります!
文化財や自然を世界遺産に登録する際には10の登録基準のいずれかを満たす必要があります。
(登録基準に関しては別記事の「【世界遺産の登録基準】合計10の登録条件全てを小学生でもわかるように解説!」で解説してます)
しかし満たしているからといって必ず登録されるとは限りません。
それは、既に世界遺産リストに掲載されている文化財や自然とは違った価値を見出さなければならないからです!
要するに何でもかんでも世界遺産に登録されていては世界遺産に登録された文化財・自然の価値に疑問が持たれてしまうということです。
実際に現在世界遺産が抱える問題として下記が挙げられています。
- そもそも世界遺産が増え過ぎている。
- 登録されている世界遺産のジャンルや登録地域・国に偏りがある。
こういった背景から世界遺産登録条件の見直しなども図られているほどです。
ちなみに世界遺産の偏った登録を解決するために「グローバルストラテジー」という考えがあります。
詳しくは別記事の「【グローバル・ストラテジーとは?】世界遺産登録に関する新たな試みを小学生にもわかるように解説!」をご覧ください!
2つ目のC:Conservation(保存)
一部分を現代の技術を使って修復された「姫路城」
Conservationの概要を簡単に言うと「遺産を適切に保護・保全する」になります!
言うまでもありませんが、世界遺産に登録されたからといって人の手を加えなくても遺産が常に良い状態で保たれるわけではありません。
必ず人の手を加えて継続的に遺産を保護する必要があります。
さらに一言に保護・保全をすると言っても、やり方に間違いがあるといけません。
そのため”適切に”保護・保全することが求められます!
ここで文化遺産と自然遺産に分けてそれぞれの適切な保護・保全の具体例を見てみましょう。
文化遺産 | ・なるべく当時の素材・技術を利用して修復する。 |
---|---|
・過度な修復をして反対に文化財の価値を下げないようにする。 | |
・文化財のある地域に暮らす住民に対して遺産の保護・修復に関する理解を得る。 | |
自然遺産 | ・あくまでも自然が主体の保護・保全を優先する(過度に人の手を加えない)。 |
・地球環境への配慮を忘れない。 | |
・世界遺産登録地域に暮らす住民の理解を得た保護・保全活動を行う。 |
文化遺産と自然遺産の両方に共通する点は、「過度な保護・保全によってむしろ遺産の価値を下げるような行為はNG」という点ですね。
一方で、上記で挙げた保護・保全の具体例には該当しない”例外の保護・保全”方法があります。
その例外とは下記になります。
- 文化遺産:文化財の状態によっては現代技術を使った保護に切り替える必要がある!
- 自然遺産:自然に発生した環境の変化に関しては人の手は一切入れずにありのままの自然に任せる!
文化遺産の例外に関してはアテネ憲章・ヴェネツィア憲章が大きく関わってきますね。
自然遺産に関しては「ウィルダネス」という考えが大きく関わってきます!
具体的な世界遺産で挙げるとアメリカのイエローストーン国立公園がこのウィルダネスを採用した自然の保護・保全を行っていますね。
(イエローストーン国立公園に関しては別記事の「【イエローストーン国立公園 | 世界遺産登録第一号!】世界初の国立公園の誕生秘話と大自然の魅力を解説!」で詳しく解説してます)
ちなみに世界遺産を訪れた際に支払う入館料や入園料は、基本的には文化財や自然を保護・保全する際の経費として活かされることが多いです。
3つ目のC:Capacity-building(能力開発)
森林伐採が問題に上がっている世界最古の湖「バイカル湖」
Capacity-buildingの概要を簡単に言うと「世界遺産に関わる人材の育成」になります!
ここで言う”人材”とは下記のような人を指します。
- 世界遺産を広く伝える人
- 世界遺産に関わる専門機関を引き継ぐ人
- 世界遺産への興味・関心を持つ人
この人材育成の最大の目的は”次世代への継承”です!
そもそも世界遺産に登録される文化財・自然は「顕著な普遍的価値」を持つことが大前提です。
つまり、次世代へと継承する価値を持つ遺産が世界遺産へと登録されるのです!
言い換えると、継承すべき次世代が存在しないと世界遺産が存在する意義が薄れてしまいます。
どんなに絶品の料理を提供するレストランがあったとしても、その絶品の料理を作るシェフがいなければ料理の価値は下がってしまいます。
そして間違いなく歳を重ねれば絶品の料理を作るシェフは現場から引退します。
つまり絶品の料理を作るシェフを引き継ぐ次世代のシェフが誕生しなければなりません。
このように次世代へと引き継ぐ際にはその分野の知識・経験を持った人材が必ず現れる必要があります。
そうでなければ人材が不足した瞬間にその分野の価値は下がっていってしまいますからね。
4つ目のC:Communication(情報伝達)
過去の悲惨な出来事を今に伝える負の遺産「アウシュビッツ強制収容所」
Communicationの概要を簡単に言うと「世界遺産の価値や理念を広める」になります!
こちらのCは3つ目のCである「世界遺産に関わる人材の育成(Capacity-building)」とも大きく関わってきますね。
世界遺産の価値や理念を広める目的は主に下記などが挙げられます。
- 世界遺産の保護・保全に対する意識を高めてもらうきっかけを作る!
- 世界遺産を通じた世界平和の実現を目指す!
- 世界遺産を軸とした経済活動・文化交流をうながす!
世界遺産への価値を理解する人が増えれば必然的に世界遺産を守ろうと考える人も増えます。
さらに世界遺産を理解することはその世界遺産を持つ国の文化・歴史を理解することにもつながります!
例えばとある国を訪れて交通機関の発着時間が不正確だと感じたとします。
すると
「この国は時間を守る真面目な性格の人が多いのかな」
と考えるようになると思います。
これを世界遺産に当てはめてみると
「この文化財はキリスト教とイスラム教の文化が入り混じった造りになっているから、異文化も受け入れる寛容的な文化が根付いているのかな」
などと考えることができます。
このように他国への理解を深める素材として世界遺産も十分含めることが可能です。
そしてなにより異文化への理解が深まることで宗教を発端とした紛争を防ぐことにもつながります!
また、純粋に世界遺産が誕生することでその世界遺産がある地域を訪れる人が増える傾向があります。
つまり世界遺産登録によって新たにビジネスが誕生し雇用が生まれて経済活動が促されたり、人々が集まることにより文化交流が必然的に発生したりします。
しかし当然上記で挙げた世界遺産登録によるメリットは、世界遺産の情報を発信しないと何も始まりません。
だからこそ情報伝達は重要な役割を持っているのです!
5つ目のC:Community(共同体)
政府と先住民族と共同で管理されている「ウルル、カタジュタ国立公園」
Communityの概要を簡単に言うと「世界遺産の保護には地域社会や先住民などの協力が必要」になります!
CommunityのCは世界遺産の保護に欠かせないです。
なぜなら世界遺産の保護・保全はその世界遺産のある地域社会や先住民の理解を得られないと活動できないからです!
例えば、とある自然遺産を保護しようと国際機関のお偉いさん達が考えたとします。
しかしその地域に古くから生活している先住民にとったら、その保護活動が自分たちの生活を脅威にさらす可能性だってあります。
また世界遺産の近くに暮らす住民に負担をかけてしまうことも考えられます。
このようなリスクも少なからず考えられることから、世界遺産に関わる人々への理解を得る必要があるわけです!
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
2級レベル
『5つのC』になる前の”4つのC”として定められていたものとして誤っているものはどれか。
- Community(共同体)
- Capacity-building(能力開発)
- Credibility(信頼性)
- Conservation(保存)
①
答え(タップ)>>1級レベル
『世界遺産条約履行のための戦略的目標 5つのC』に関する説明として正しいものはどれか。
- 世界遺産条約採択の30周年に当たる2002年に「世界遺産に関するパリ宣言」が採択された。
- 記念物や建造物、遺跡などの保存・修復の基本的な考えを明確にした。
- 国際紛争や内戦などから文化財を守るための基本方針を定めている。
- 世界遺産センターは毎年開かれる世界遺産委員会にて現状報告をする。
④
答え(タップ)>>※「3,4級」レベルのトレーニングテストは対象外になります。
まとめ
- ”5つのC”とは世界遺産の現状報告をする際に用いられる5つの項目であり、毎年開かれる世界遺産委員会で報告が行われる!
- 「Credibility(信頼性)」とは、世界遺産リストの信頼性を高めるために用いられる指標!
- 「Conservation(保存)」とは、遺産を適切に保護・保全するために用いられる指標!
- 「Capacity-building(能力開発)」とは、世界遺産に関わる人材の育成をするために用いられる指標!
- 「Communication(情報伝達)」とは、世界遺産の価値や理念を広めるために用いられる指標!
- 「Community(共同体)」とは、世界遺産の保護をするために地域社会や先住民などの協力が必要であるとするために用いられる指標!
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。