こんな方にオススメの内容!
- 世界遺産検定の対策として「アテネ憲章」と「ヴェネツィア憲章」の違いを理解したい!
- 教養として世界遺産の「保護・修復」に関する知見を得たい!
- 自分の武器となる知識の候補として押さえておきたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
当記事のポイント!
- 「アテネ憲章・ヴェネツィア憲章」ともに制定された背景は「建造物などの保存・修復に関する憲章」という点ではほぼ同じ!
- ヴェネツィア憲章により修復の際に使用される技術や材料に関する定めがより厳密になった!
- 「真正性」「ICOMOS」「姫路城」が関連キーワードとなる!
「アテネ憲章 / ヴェネツィア憲章」のプロフィール
項目 | アテネ憲章 | ヴェネツィア憲章 |
---|---|---|
正式名称 | 歴史的記念建造物の修復のためのアテネ憲章 | 記念建造物及び遺跡の保全と修復のための国際憲章 |
制定年 | 1931年 | 1964年 |
制定会議 | 第1回「歴史的記念建造物に関する建築家・技術者国際会議」(ギリシャ・アテネ開催) | 第2回「歴史的記念建造物に関する建築家・技術者国際会議」(イタリア・ヴェネツィア開催) |
アテネ憲章とは?
制定に至った背景
まず最初に制定背景をざっくり言いますと
「世界遺産を修復して保護しよう!」
という目的のために制定されました。
ここで言う世界遺産とは主に建造物や遺跡などの「文化遺産」を指します。
まず世界遺産の理念の一つに
遺産を保護して未来の世代へと受け継いでいく
という考えがあります。
つまりこの理念を実現させるためにも、老朽化による倒壊の恐れがある建造物や崩壊危機のある遺跡を守る必要がありますよね。
そして保護するためには具体的に「どのように修復をしていくか」という点がポイントになってきます!
以上を踏まえてこのアテネ憲章の制定によって
「記念物や建造物、遺跡などの保護・修復に関する基本的な考え」
が初めて明確になりました!
アテネ憲章の具体的な内容
アテネ憲章では主に下記の点が具体的に明示されました。
- 修復の際は時代の様式を無視せずに過去の歴史的・芸術的作品を尊重する!
- 歴史的なものの存在意義の継続を維持する!
- その遺産の保有国でしっかりと保護する!
- 保護のアドバイスする機関を設置する!
- 歴史的なものを尊重する教育は重要!
このような感じでいろいろとありますが、簡単にまとめると
「遺産を尊重しつつ徹底した保護体制を整えよう!」
というものですね。
そしてここがアテネ憲章で最も重要なポイントになるのですが、アテネ憲章では修復の際には近代的な技術と材料の使用が認められていました!
修復対象になりうる遺産
ではここで修復対象になりうる遺産を挙げます。
- 長い年月が経ち老朽化し始めた遺産
- 当時の美しさや威厳を取り戻す必要がある遺産
- 戦争や紛争に巻き込まれて破損・崩壊した遺産
- 経済的・宗教的な事情で取り壊される懸念のある遺産
さらに細かく分ければもっとありますが
主な修復対象になりやすい遺産はこんな感じですね。
ヴェネツィア憲章とは?
制定に至った背景
前身の「アテネ憲章」で論点となった「修復ができれば近代的な技術・材料を用いてもOK」といった点をより明確にするために制定されました!
制定に至ったお偉いさん達の議論のイメージはこんな感じです。
ヴェネツィア憲章の具体的な内容
まずヴェネツィア憲章で決まった最も重要な内容をお伝えします。
修復の際は建設当時の工法、素材を尊重すること!
ただし、当時の方法だと明らかに不適切である場合は近代的な技術・素材を用いてもOK!
上記のような結論に至りました!
前身のアテネ憲章では
「修復ができるならば現代の技術・材料を用いてもOK!」
だったのに対し
その後定められたヴェネツィア憲章では
「基本的には当時の技術・材料を用いて修復してください。ただし修復が困難な場合は現代技術を使っていいですよ!」
このような大きな違いがあります。
アテネ憲章とヴェネツィア憲章で同じ考えである点は、「文化遺産を尊重して保護・修復する」です。
つまり、ヴェネツィア憲章ではアテネ憲章の考えを引き継ぎつつ、現状の問題点をより明確にして対策を施した形になりますね。
この他にヴェネツィア憲章で新たに取り入れられた考えには下記があります。
- 歴史的な誤解を与えないために修復する箇所を明示する!
- 推測で修復するのではなく根拠を持った修復をする!
- 遺産が保有するオリジナルの素材や環境は可能な限り保存する!
特に最後の保存に関する項目は世界遺産を学ぶ上で欠かせない「真正性」に非常に大きく関わる大切なポイントです!
(真正性の詳細に関してはこちらの記事で解説してます)
また、このヴェネツィア憲章が採択された翌年(1965年)には文化遺産登録の審議に大きく関わってくる機関である「ICOMOS(国際記念物遺跡会議)」が設立されました!
日本の遺産「姫路城」にも大きな影響!?
日本の姫路城は今からおよそ400年前に建てられたため、必然的に”老朽化”が懸念されていました。
そのため昭和に行われた大規模な修復ではこのヴェネツィア憲章に基づいた修復が行われました。
具体的には
天守の重量を支えるために、鉄筋コンクリート製の基礎構造物を用いる
というものです。
このような決断に至った背景は下記の記事で詳しく解説していますのでぜひ併せてご覧ください!
合わせて読みたい!【姫路城 | 修理を繰り返す名城】建築秘話&世界遺産登録理由をわかりやすく解説!本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
2級レベル
「ヴェネツィア憲章」の影響を大きく受けた日本の世界遺産を選びなさい。
- 法隆寺(奈良県)
- 大浦天守堂(長崎県)
- 厳島神社(広島県)
- 姫路城(兵庫県)
④
答え(タップ)>>1級レベル
「ヴェネツィア憲章」で謳われている内容として誤っているものを選びなさい。
- 保護・修復のアドバイスをする機関を設置すること。
- 修復の際は建設当時の工法・素材を用いること。
- 歴史的な誤解を与えないように、修復箇所を明示すること。。
- 当時の建設方法だと不適切と判断された場合に限り近代的な技術・材料を用いて修復して良い。
①
答え(タップ)>>※「3,4級」レベルのトレーニングテストの対象外になります。
「アテネ憲章&ヴェネツィア憲章」のまとめ
- アテネ憲章ではいかなる場合においても近代的な技術・材料を用いた保護・修復が認められていた!
- ヴェネツィア憲章ではやむを得ない場合を除いては当時の技術・材料を採用して修復することが明示されている!
- ヴェネツィア憲章では遺産を尊重しつつ徹底した保護体制を整えることが強く謳われている!
- 日本の姫路城はヴェネツィア憲章の影響を大きく受けて補修工事がされた過去がある!
おまけ:憲章や会議の名前の由来は土地に関係する!?
今回解説した「アテネ憲章」と「ヴェネツィア憲章」は、ともに採択されるきっかけとなった会議が開かれた都市の名前がそのまま名称になってます。
実はこの方程式は、その他の世界遺産に関わる会議や条例の名称でもよくあるパターンなんです!
例えば下記なんかも都市の名前が由来ですね。
- 京都議定書(日本):地球温暖化防止に関する内容
- ハーグ条約(オランダ):紛争などから遺産を守る指針を示した内容
- ストックホルム宣言(スウェーデン):開発問題と環境保全に関する内容
ですので、世界遺産関連の用語を覚える際は、都市名とセットで覚える感覚の方が頭に残りやすいかもしれませんね!
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。