こんな方にオススメの内容!
- そもそもどのようにして世界遺産登録がされるのか流れを把握したい!
- 世界遺産登録に関わる専門用語や機関の役割を理解したい!
- 世界遺産検定対策として世界遺産登録までの流れを押さえておきたい!
当記事のポイント
- 専門用語や難しい単語には補足を加えて誰でも理解できるように解説!
- 世界遺産が誕生するまでの流れを把握することで各国・各機関が取り組んでる具体的な内容がわかる!
- 世界遺産検定の受験を考えている方のために出題率の高い部分は太字や色を変えて強調している!
世界遺産登録までの流れ
世界遺産条約の締約&暫定リストの作成
まず大前提として、下記の2点をクリアしていないと世界遺産登録への申請すらすることができません!
- 世界遺産条約を締約している
- 暫定リストを作成済み
世界遺産条約とは簡単に言うと、地球上に存在する自然や文化財を世界で協力して保護していく方針を固めたものです。
つまりこの条約を締約している国は、地球上のあらゆる自然と文化財を保護することに賛同しているということです!
世界遺産条約の詳細に関してはこちらの記事で解説しているのでよければ併せてご覧ください。
また暫定リストとは、世界遺産の候補となるその国の自然・文化財のリストです。
世界遺産への登録を目指すには、まずこの暫定リストに掲載されていることが絶対条件になります。
暫定リストには、主に下記が記載されている必要があります。
- 候補となる遺産の名称・位置
- 候補遺産の簡単な説明
- 候補遺産が顕著な普遍的価値を有している理由
そして暫定リストへの記載内容は、ユネスコの公用語である「英語」または「フランス語」で書かれている必要があります。
締約国が作成した暫定リストは世界遺産センターが受け取り、その後世界遺産センターの公式ホームページに掲載されるのです。
世界遺産へ推薦する遺産の選定&推薦書の作成
前述で触れた暫定リストの中から、世界遺産への登録を推薦したい遺産の推薦書を作成します。
なおこの推薦書は、「2月1日」までに世界遺産センターという機関へ提出しなければなりません。
また、推薦書の下書きを一度世界遺産センターへ提出して、その下書きに対するアドバイスを受けることもできます!
なおこの下書きの提出期限は、世界遺産登録の審議が行われる前年の「9月30日」までとなっています。
推薦書には必ず記載されてなければならない項目がいくつかあります。
- 資産の範囲:推薦する遺産の範囲(境界線)を具体的に示したもの
- 資産の内容:推薦する遺産の特徴や歴史的な背景の説明
- 登録の価値証明:推薦する遺産が「顕著な普遍的価値」を有している理由&当てはまる登録基準
- 保全状況及び資産へ影響を与える諸条件:推薦する遺産の現在の保存状態や懸念される状況の説明
- 保全管理:推薦する遺産に保全するための法的措置・規制措置などの計画の説明
- モニタリング:推薦する遺産の保存状態を表す指標
専門機関による調査の実施
ここからは推薦国ではなく専門機関によって調査が行われます。
- 文化遺産の調査:ICOMOS(国際記念物遺跡会議)
- 自然遺産の調査:IUCN(国際自然保護連合)
- 複合遺産の調査:ICOMOS×IUCN(共同調査)
<またspan class="bold">「文化的景観」が関わってくる遺産登録の場合は、ICOMOS(文化遺産の機関)がIUCN(自然遺産の機関)のアドバイスを受けながら調査を行います!
(”文化的景観”についてはこちらの記事で解説しています)
ちなみに現地調査は夏頃に行われ、もし気になる点などがあったら「翌年の1月31日」までに遺産を持つ国に尋ねることができます。
その後、登録の審議がされる世界遺産委員会の6週間前までに調査の報告書を世界遺産センターへ提出します。
(”世界遺産委員会”の概要についてはこちらの記事をご覧ください)
世界遺産委員会での登録審議
ICOMOSやIUCNの調査報告書を受け取った世界遺産センターは、その後「世界遺産委員会」にその調査報告書を提出しここから世界遺産への登録の審議に入っていきます。
(「世界遺産委員会」の詳細に関してはこちらの記事で解説しています!)
世界遺産への登録の仕方は大きく分けて2パターンです。
- 基本的には「合意形成」という形で世界遺産登録の承認をする委員国全ての意見の一致で決まる。
- 意見の一致が難しい場合のみ投票形式が採用され2/3以上の賛成投票で世界遺産への登録が決まる。
この世界遺産委員会での審議の結果「登録」と判定されれば、晴れて世界遺産リストへ掲載されるのです!
当然のことながら、審議された世界遺産候補が全て登録されるわけではありません!
世界遺産委員会では下記のような結論に分けられます。
- 登録:世界遺産リストへの記載が決定!
- 情報照会:情報不足による推薦書の再提出!
- 登録延期:推薦書の見直し&1年半後に再度審議!
- 不登録:世界遺産リストへの掲載却下!(基本的に再推薦も不可)
世界遺産登録に関する新しい取り組み
アップストリーム・プロセス
内容を簡潔に言うと、世界遺産登録の審議がされる世界遺産委員会の前に推薦国と世界遺産の専門機関の間である程度事前に意見の一致を固める政策です。
従来のやり方だと世界遺産登録の審議をめぐって国によって意見が対立し、なかなか審議が進まない状態になることがありました。
こういったトラブルを事前に防ぐために、あらかじめ意見を出し合っておこうというものです。
具体的な流れとしては下記のようになります。
- 遺産推薦国が推薦書を提出する。
- 遺産推薦国の希望があれば機関が助言や相談、分析などを行う。
- 十分なサポートを受けた上で世界遺産委員会での審議に向かう。
また最近では推薦書を提出する前に、機関が書面で遺産の事前調査と審査を行う「プレリミナリー・アセスメント(事前評価)」という取り組みも検討され始めています!
自発的な財政貢献
簡潔に言うと、推薦書を提出する国が調査費用などを負担する仕組みです。
この仕組みは、2022年以降の世界遺産登録に関わる遺産に対して適用されます。
この仕組みができるキッカケとなったのが
アメリカのユネスコ脱退です。
これまではアメリカの潤沢なお金のおかげもあって
世界遺産調査費用などをまかなうことができてました。
しかしアメリカのユネスコ脱退によってお金に余裕が持てなくなったのです。
他にも原因はありますが
このような状況にいたったためこれからはなるべく推薦する国が調査等に関わるお金を負担していくことになったのです。
図表による世界遺産登録までの流れの確認
今回の内容を元に、世界遺産へ登録されるまでの流れを図表にまとめてみました!
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3, 4級レベル
自然遺産の候補地を調査する機関として正しいものを選びなさい。
- IUCN
- UNESCO
- ICCROM
- ICOMOS
①
答え(タップ)>>2級レベル
推薦国の推薦書提出期限として正しい日にちを選びなさい。
- (審議が行われる年の)2月1日
- (審議が行われる前年の)9月30日
- (審議が行われる前年の)12月31日
- (審議が行われる年の)4月1日
①
答え(タップ)>>1級レベル
世界遺産委員会の説明として正しいものを選びなさい。
- 各国の政府機関から受け取った調査報告書をもとに遺産登録の審議をする。
- 世界遺産委員会で出る結論は「登録」「情報照会」「登録延期」「不登録」の4つに分けられる。
- 世界遺産委員会は審議後に登録可否問わず推薦国へ推薦書を返却する必要がある。
- 基本的には投票形式が採用され2/3以上の賛成投票で世界遺産への登録が決まる。
②
答え(タップ)>>まとめ
- 世界遺産登録を目指す上で「世界遺産条約の締結」「暫定リストの作成」は絶対条件!
- 推薦書は「資産の範囲」「登録の価値証明」等を記載して2月1日までに世界遺産センターへ提出する!
- 遺産の調査は「文化遺産:ICOMOS」「自然遺産:IUCN」「複合遺産:ICOMOS×IUCN」で行われる!
- 世界遺産委員会では「登録」「情報照会」「登録延期」「不登録」の4段階で審議される!
- 新たな取り組みとして「アップストリーム・プロセス」「自発的な財政貢献」などが挙げられる!
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。