こんな方にオススメの内容!
- そもそも「文化的景観」の意味を知りたい!
- 文化的景観が誕生した背景を知りたい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
文化的景観を理解するメリット
- 文化的景観を理解することでこれまで以上に世界遺産の魅力を感じることができる!
- 文化面だけでなく自然面の理解を深めることができ教養の幅が広がる!
【結論】文化的景観とは?
文化的景観の評価を受けたアイスランドの「シンクヴェトリル国立公園」
一言で表現すると下記になります。
「自然環境の影響を受けながら人類が築いた遺産に認められる価値」
なお、正式には下記のように書かれています。
人間社会が自然環境による制約の中で、社会的、経済的、文化的に影響を受けながら進化してきたこと
要するに、自然環境の影響を受けたがゆえに誕生した、または価値があると認識された遺産には「文化的景観」が認められているのです!
例えば、下記のような遺産には文化的景観が認められやすいです。
- ある土地に山の斜面があったからこそ棚田が築かれた!
- 金鉱山が見つかり鉱山開発によって大きな富を手に入れたため街が大きく繁栄した!
- 美しい自然があったからこそその自然を信仰する宗教や伝統が誕生した!
こんな感じですね!
ただし、必ずしももともと存在する自然に関わる遺産だけが認められるわけではありません。
人間が人工的に自然環境を再現して築かれた文化や伝統にも、文化的景観は該当するのです!
詳しくは後述の「文化的景観の詳細(3つのカテゴリー)」で解説します!
文化的景観という概念が誕生した背景
「文化的景観」という考えが誕生した背景を一言で表現すると、世界中の文化財に文化遺産としての価値を広く認めるためです!
ここの「広く認める」が重要なポイントになります!
世界遺産第一号が誕生した1978年以降は、しばらくの間ヨーロッパの文化財を中心に文化遺産としての価値が定義されていきました。
そのため文化的景観という概念が誕生するまでは、世界の文化遺産の大半がヨーロッパに集中していたのです。
ヨーロッパの文化財を中心に文化遺産としての価値が定義されていた過去があることから、現在でも文化遺産の多くがヨーロッパに存在します。
このような偏った考えを打破するために動き始めたのが、「文化的景観」という概念の取り入れなのです!
当然のことながら、ヨーロッパ以外にも文化遺産に登録されるにふさわしい遺産は世界中にたくさんあります。
世界中の文化財が文化遺産として認められやすくするには、下記のような考えに改める必要があります。
ヨーロッパの文化遺産の考え ⇨ 世界基準の文化遺産の考え
文化的景観は1992年の「第16回世界遺産委員会」で採択された概念です。
(「世界遺産委員会」についてはこちらの記事で解説しています)
世界遺産条約では、1章第1条の「遺跡」の定義の中の「自然と人間の共同作品」に相当します。
(「世界遺産条約」についてはこちらの記事で解説しています)
そして文化的景観が採択された翌年の1993年に、ニュージーランドの世界遺産「トンガリロ国立公園」で初めて文化的景観の価値が認められました!
こうして文化遺産の定義が広くなったことで、世界中にある文化財が文化遺産の基準を満たしやすくなり、ヨーロッパに偏っていた文化遺産が徐々に世界に広がっていったのです!
なお、2022年時点で文化的景観が認められている世界遺産の数は下記になります。
世界中 | 114件 |
---|---|
日本 | 2件(紀伊山地の霊場と参詣道、石見銀山遺跡とその文化的景観) |
世界遺産に登録されれば、世界が認める全人類の財産になったのも同然です。
するとこれまで以上に保護体制が整ったり、遺産の存続が危ぶまれた時は世界中から支援をしてもらえるようになります。
つまり、各国各地域で誕生した文化財が未来に残され、受け継がれて守られていくことに繋がるわけです!
文化的景観の詳細(3つのカテゴリー)
文化的景観を満たす条件は、大きく分けて2つあります。
- もともとある自然環境に適応して文化や伝統が育まれた
- 人間の手によって自然が再現された
このように、あくまでも人の手が加わった自然に文化的景観は認められます。
反対に言うと、人の手が入っていない自然のみの評価を受けている遺産には文化的景観は認められません!
(認められるとしたら自然遺産のみ)
つまり、文化的景観は「文化遺産」または「複合遺産」が該当するのです。
さらに文化的景観を細かく分けると、正式には3つのカテゴリーに分けられます。
①意匠された景観
庭園や公園、宗教的空間など、人間によって意図的に設計された創造された景観
要するに、人の手によって造られた人工的な自然になります。
該当する具体的な世界遺産 | |
---|---|
シントラの文化的景観 | ポルトガル |
アランフエスの文化的景観 | スペイン |
シンガポール植物園 | シンガポール |
ペルシア庭園 | イラン |
②有機的に進化する景観
社会や経済、政治、宗教などの要求によって生まれ、自然環境に対応して形成された景観(農林水産業などの産業とも関連する)。すでに発展過程が終了している「残存する景観」と、現在も伝統的な社会の中で進化する「継続する景観」に分けられる。
要するに、ある目的達成のために既に存在する自然を意図的に開拓した景観になります。
該当する具体的な世界遺産 | |
---|---|
石見銀山遺跡とその文化的景観 | 日本 |
フィリピン・コルディリェーラの棚田群 | フィリピン |
アマルフィ海岸 | イタリア |
ザルツカンマーグート地方のハルシュタットとダッハシュタインの文化的景観 | オーストリア |
ラヴォー地区のブドウ畑 | スイス |
「銀を採掘するために近くの山を切り開いて誕生した景観」
「稲作をするために山の斜面を開拓してできあがった独特な景観」
「ブドウ畑をつくるために土地を開拓し、周囲に必要な施設を建造してできた景観」
例えばこのようなイメージですね!
③関連する景観
自然の要素がその他の民族に大きな影響を与え、宗教的、芸術的、文学的な要素と強く関連する景観。
要するに、既に存在する自然環境を取り入れて誕生した伝統や文化になります。
該当する具体的な世界遺産 | |
---|---|
紀伊山地の霊場と参詣道 | 日本 |
トンガリロ国立公園 | ニュージーランド |
ウルル=カタ・ジュタ国立公園 | オーストラリア |
ピマチオウィン・アキ | カナダ |
なお、文化的景観が認められた各遺産の詳細はこちらで解説してるので、よければ併せて一度ご覧になってみてくださいね!
世界遺産:トレーニングテスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
2級レベル
世界で初めて文化的景観が認められた世界遺産して正しいものを選びなさい。
- ウルル・カタ・ジュタ国立公園(オーストラリア)
- アランフェスの文化的景観(スペイン)
- シンクヴェトリル国立公園(アイスランド)
- トンガリロ国立公園(ニュージーランド)
④
答え(タップ)>>1級レベル
文化的景観をカテゴリー分けした際に誤っているものを選びなさい。
- 意匠された景観
- 有機的に進化する景観
- 断続的に変化する景観
- 関連する景観
③
答え(タップ)>>※「3,4級」レベルのトレーニングテストは対象外になります。
「文化的景観」のまとめ
- 文化的景観とは「人間社会が自然環境による制約の中で、社会的、経済的、文化的に影響を受けながら進化してきたこと」に求められる概念!
- 世界さ初めて文化的景観が認められたのがニュージーランドの「トンガリロ国立公園」!
- 日本の世界遺産では「紀伊山地の霊場と参詣道」「石見銀山遺跡とその文化的景観」が該当する(2020年時点)!
- 文化的景観をカテゴリー分けすると「意匠された景観」「有機的に進化する景観」「関連する景観」になる!
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。