こんな方にオススメの内容!
- そもそもハルシュタットやダッハシュタインが何かを知りたい!
- ハルシュタットが世界遺産登録された理由が気になる!
- オーストリアの歴史について理解したい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- オーストリアへの旅行を考えている!
遺産ポイント
- 街は岩塩採掘で繁栄
- 「ハルシュタット文化」という独自の文化が発展
- 巨大な氷穴や洞窟が見られるダッハシュタイン山も登録範囲
「ハルシュタット」のプロフィール
登録名称 | ハルシュタット=ダッハシュタイン/ザルツカンマーグートの文化的景観 |
---|---|
登録年 | 1997年 |
所在国 | オーストリア |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (iii)(iv) |
備考 | 文化的景観が認められている(詳細は後述で) |
そもそも「ハルシュタット」とは?
雪化粧をしたハルシュタットの街並みとその周辺の自然
まずは、とても長い世界遺産登録名称『ハルシュタット=ダッハシュタイン/ザルツカンマーグートの文化的景観』を詳しく見てみましょう。
- ハルシュタット:木造家屋が立ち並ぶ岩塩採掘で栄えた美しい街
- ダッハシュタイン:巨大な氷穴や洞窟を有するダッハシュタイン山を中心とした自然景観
- ザルツカンマーグートの文化的景観:ハルシュタットやダッハシュタインを含む、建築物と自然が融合した地方の名前
つまり、ザルツカンマーグート地方の木造家屋の街並みと周辺の自然景観が世界遺産登録されているのです。
ザルツカンマーグートは、アルプスの山々と湖に囲まれた避暑地として人気の観光地です。
ザルツカンマーグート = 良い塩の産地
上記のような名前の由来があります(”良い塩”と言われる理由に関しては後述で解説)。
ちなみにザルツカンマーグートは、アメリカ制作のミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」の舞台になったことで有名です。
世界遺産登録理由
”世界で最も美しい街”によく挙げられるハルシュタットの景観
『ハルシュタット』が世界遺産登録された理由は、下記の2つに大きく分けられます。
- ”ハルシュタット文化”の誕生の形跡が見られる
- 自然に溶け込んだ美しい街並み
文化遺産として登録されているものの、世界遺産登録対象は街並みや遺物だけでなく、周辺の自然景観も含まれています。
つまり、文化的景観が認められているのです(文化的景観が認められている理由は後述で解説)。
合わせて読みたい!【文化的景観とは | 3つのカテゴリー】具体的な世界遺産を挙げてわかりやすく解説!理由1:”ハルシュタット文化”の誕生の形跡が見られる
ハルシュタットの中心にある木造家屋に囲まれた広場
ハルシュタットが世界遺産登録された大きな理由の一つが、ハルシュタットで誕生した、”ハルシュタット文化”の発展の形跡が見られる点です。
そしてこのハルシュタット文化の正体とは、岩塩採掘による繁栄です!
用語メモ
岩塩とは、かつて海底だった場所が地殻変動などにより陸上に海が閉ざされ残った塩。海から取れる塩(海塩)とは対比して用いられることが多い。かつてハルシュタットは海底に位置していたため、豊富な岩塩が眠っている岩塩採掘の一大拠点でした。
ハルシュタットの街周辺では数千年にわたって岩塩採掘が行われ、前10〜5世紀にかけて採掘の際に使用するための青銅器や鉄器などが次々と誕生しました。
このような高度な文化の繁栄が”ハルシュタット文化”と呼ばれています。
時代で言うと先史時代(青銅器時代〜初期鉄器時代)にあたり、この時代の青銅器や鉄器の遺物が多く見つかっています。
当時の鉄器は非常に貴重なもので、基本的には国・地域の支配者だけが持つことを許されていました。
しかし、ハルシュタットは岩塩採掘による莫大な富を得ており非常に潤っていたため、一般住民も装飾された鉄器を持つことが許されていたのです。
ちなみにハルシュタットの塩坑(岩塩採掘のための掘られた穴)は現在でも操業しており、一般公開されている塩坑は見学が可能です。
理由2:自然に溶け込んだ美しい街並み
数あるオーストリアの湖の中でも特に美しいと称される「ハルシュタット湖」
周辺の自然に溶け混むようにつくられた美しいハルシュタットの街並みもまた、世界遺産登録に大きく影響しています。
ハルシュタットは、標高3,000m級の山々や大小様々な湖など大自然に囲まれています。
昔の人々は、この自然の地形と立地をうまく活用して、ハルシュタットの街並みを整備してきたのです。
一方で、街が整備されたての頃のハルシュタットは、船で湖を渡る以外に街にアクセスする手段が無い”陸の孤島”状態でした。
その後、道路や鉄道が整備されたことで、ハルシュタットの美しい景観が広く知れ渡ることになったのです。
こうした美しい街並みが見られることから、ハルシュタットは”ザルツカンマーグートの真珠”と讃えられるようになったのです。
なお、巨大な氷穴や洞窟が見られることで知られるダッハシュタイン山(2,995m)も、現在見られる自然景観誕生における地質学的な重要さから世界遺産登録範囲に含まれています。
文化的景観が認められた理由
湖畔には山の斜面に沿って伝統的な木造家屋が立ち並んでいる
ハルシュタットに文化的景観が認められた理由は、岩塩採掘によって繁栄した街が周辺の自然に溶け込むようにつくられている景観に高い評価が与えられたためです。
ハルシュタットで盛んに岩塩採掘が行われていた中世の時代において、岩塩は”白い黄金”と言われるほど価値のあるものでした。
そのため、岩塩売買によって大きな富を得たハルシュタットには、次々と立派な木造家屋などが建てられ、現在のような街並みが誕生したのです。
また当時のハルシュタットは、神聖ローマ帝国(9〜19世紀に存在したヨーロッパの国)のハプスブルク家によって支配されていました。
そのため、ハルシュタットの岩塩はハプスブルク家にとっては非常に重要な財源ともなっていたのです。
現在見られるハルシュタットの美しい街並み、以下のような住民ルールによって保たれているのです。
- 派手な装飾禁止
- いびつな形の建物の建築禁止
- ネオンサインや派手な看板禁止
- 個々の家の形が決まっている(周辺の景観にあった形で建てること)
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
2級レベル
ハルシュタットの繁栄に大きく貢献した資源名として正しいものはどれか。
- コバルト
- 天然ガス
- 岩塩
- ダイヤモンド
③
答え(タップ)>>1級レベル
「ハルシュタット=ダッハシュタイン/ザルツカンマーグートの文化的景観」に関する説明として正しいものはどれか。
- オーストリアの国家プロジェクトによってハルシュタットの景観が保たれている。
- 現在も約300もの石窟の教会が残されている。
- かつてはハルシュタットにオーストリア王室の別荘が建てられていた。
- 巨大な氷穴や洞窟が見られることで知られるダッハシュタイン山も世界遺産登録範囲。
④
答え(タップ)>>※「3,4級」レベルのトレーニングテストは対象外になります。
まとめ
- ハルシュタットは岩塩採掘によって大きく栄えた。
- ザルツカンマーグートは映画「サウンド・オブ・ミュージック」の舞台。
- 文化的景観が認められている。
- ”ハルシュタット文化”という独自の高度な文化が栄えた。
- ダッハシュタイン山も世界遺産登録範囲に含まれている。
- 岩塩採掘によって得た富はハプスブルク家の貴重な財源だった。
おまけ:「ハルシュタット」のプチ観光情報
ライトアップされたハルシュタットの幻想的な街並み
最寄り空港 | ザルツブルク空港(直行便はウィーン国際空港に着く) |
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公用語 | ドイツ語 |
通貨 | ユーロ |
観光のベストシーズン | 4〜11月 |
時差 | 7時間(サマータイム時は8時間) ※日本の方が7時間進んでます。 |
治安 | 非常に良い |
物価 | 普通(日本とほぼ同じ) |
ハルシュタットのあるオーストリアは、世界屈指の治安の良い国として知られています。
また、物価はイギリスやフランスなどの西欧諸国と比べると高くはないため、海外旅行初心者にオススメできる国の一つです。
美しい中世の街並みや豪華絢爛な宮殿、ハルシュタットなどに代表される美しい自然など、見どころが多い点も魅力的です。
アクセス
日本からの直行便が就航しているオーストリアの首都ウィーンからでもハルシュタットへのアクセスが可能
残念ながら、日本からハルシュタット最寄り空港であるザルツブルクへの直行便は就航していません。
一方で、オーストリアの首都ウィーンへの直行便は就航しているため、ウィーンから鉄道利用でハルシュタットを訪れるルートも非常におすすめです。
【ウィーン発着の場合】
- 羽田・成田 [フライト時間:約12時間]⇨ ウィーン国際空港 ⇨ ウィーン中央駅 [鉄道乗車時間:約2時間]⇨ Attnang-Puchheim駅 [鉄道乗車時間:約1時間30分]⇨ ハルシュタット
- 週末のみ「ウィーン – ハルシュタット」直行の鉄道が運行。
【ザルツブルク発着の場合】
- 日本各空港 [フライト時間:11〜12時間]⇨ 中東各都市(ドバイ、イスタンブール、他)or ヨーロッパ各都市(フランクフルト、他) [フライト時間:約1時間]⇨ ザルツブルク空港 ⇨ ザルツブルク中央駅 [鉄道乗車時間:約1時間]⇨ Attnang-Puchheim駅 [鉄道乗車時間:約1時間30分]⇨ ハルシュタット
一方で、ザルツカン・マーグートの主要スポットを巡る場合は、頻繁に催行されているバスツアーに参加するのもオススメです。
個人で訪れることも可能ではありますが、滞在時間に限りがある方は、ぜひ効率よく周れるバスツアーの検討もしてみましょう。
ハルシュタットのホテル情報
一度は泊まってみたい湖畔のコテージ風ホテル
- ホテル集中エリアは「ハルシュタット」「オーバートラウン」の2つに分かれる
- 木造のミニホテルが中心
- 相場は2万円/泊から
ハルシュタット周辺のホテルは、メイン観光スポットの「ハルシュタット」と、湖の対岸の「オーバートラウン」の2つに分けられます。
どちらのエリアも木造のミニホテルが中心で、外資系の大型ホテルなどはありません。
基本的には、4つ星ホテルがメインになります。
一方で、3つ星ホテルの多くがハルシュタット郊外になってしまうため、あらかじめ4つ星ホテルに宿泊できる最低限の予算(約2万円)は見積もっておきましょう。
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。