こんな方にオススメの内容!
- 世界遺産として奈良の文化財にはどんな価値があるのかを知りたい!
- 奈良への旅行を計画しているため事前情報を得たい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!


遺産ポイント
- 奈良(平城京)の街は唐(現在の中国)の長安をモデルに建設された!
- 奈良時代の「仏教興隆政策」という政策が奈良に多くの寺院が建てられた大きな要因!
- 「律令制」「白鳳文化」などの歴史的背景を伝える文化財が多数存在する!
「古都奈良の文化財」のプロフィール
登録名称 | 古都奈良の文化財 |
---|---|
登録年 | 1998年 |
所在国 | 日本(奈良県) |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (ii)(iii)(iv)(vi) |
備考 | 構成資産:平城宮跡、東大寺、興福寺、元興寺、唐招提寺、薬師寺、春日大社、春日山原始林(計8つ) |
平城京(現在の奈良)の誕生や寺院建築の歴史的流れ



中国の都市をモデルに平城京を建設

まず初めに基本的な部分を解説します。
世界遺産の登録名称に「古都奈良」と入っていますが、こちらは現在の奈良県にある文化財が世界遺産に登録されているためこのような記載になってます。
さらに深掘りすると、奈良時代(8世紀頃)と言われる時代に建造された寺院などのことを指します。
そして建造された当時は「奈良」ではなく、「平城京」という名前の街でした。
さらに当時の平城京は現在で言うところの「日本の首都」であり、政治・文化・経済の中心的存在だったのです。



平城京を築くにあたって、当時の唐(現在の中国)で大きな繁栄をしていた都市の一つであった「長安」をモデルに街や寺院を建設していきました。
さらに当時の唐や朝鮮で用いられていた建築技術を採用していたりと、この時の平城京では積極的に国外との文化交流があったのです。
なお現在の中国や韓国には、この奈良時代と同時期に建てられた木造建築物はほとんど存在しません。
一方で現在の奈良には奈良時代に建てられた木造建築物が多数残っているため、こういった貴重な文化財が今もなお残っている点が世界遺産登録へとつながったのです!
「仏教興隆政策」によって奈良に寺院が集結

東大寺の金堂に置かれている「奈良の大仏」


奈良時代に行われた「仏教興隆政策」によって、平城京には8世紀以降に数多くの寺院が建築・移築されることになりました。

具体的には下記のような年順に仏教建築物が建築・移築されてます。
708年 | 「平城宮」の造営(現在は「平城宮跡」として世界遺産に登録されている) |
---|---|
718年 | 「元興寺(がんこうじ)」&「薬師寺」を飛鳥藤原地方から移築 |
720年 | 「興福寺」の建設開始 |
745年 | 「東大寺」の建設開始 |
759年 | 「唐招提寺(とうしょうだいじ)」の建設開始 |
768年 | 「春日大社」の建設開始 |
各建築物の詳細については、後述の「各文化財の歴史&世界遺産としての価値」で解説します!
このように奈良には数多くの寺院や神社が建てられましたが、この建築ラッシュからは「律令制(りつりょうせい)」が日本全国に広がっていった様子を見て伺えることができるのです。


この制度による範囲で寺院や神社が建築されていきました。
そして人々の生活にも深く律令制が根付いていき、この時代のルールが次第に確立されていったのです。
奈良時代を終えてからの平城京の様子

奈良公園に多数生息する奈良のアイドルの「奈良鹿」
言うまでもなく、平城京の繁栄は奈良時代であった8世紀が絶頂期でした。
それから約1300年が経ち現在に至りますが、それでも当時の文化財が色あせずに魅力的な姿をとどめいている要因は、奈良時代以降の歴史を知ることで理解できるのです。

9世紀からは日本の首都が平城京(現在の奈良)から平安京(現在の京都)に移りましたが、それでもしばらくは奈良で寺院の建設は行われていました。
しかし時代が経つにつれて奈良にある寺院等はどんどんと廃れていき、室町時代には大きく衰退しました。
さらに明治時代には近代化政策により、国内の文化財が軽視されるようになっていきます。


ところがその後、次第に奈良時代に建てられた貴重な仏教建築物の価値の理解が高まり、奈良にある文化財は残しておこうという動きが見られ始めたのです!
具体的には下記の法律によって奈良の文化財の保護体制が整っていきました。
- 古社寺保存法
- 国宝保存法
- 史跡名勝天然記念物保存法


各文化財の歴史&世界遺産としての価値




平城宮跡(へいじょうきゅうせき)
- 708年に造営されたが建物は消失
- 現在は平城宮跡となっており朱雀門(すざくもん)の復元版や観光案内施設が建てられている
- 1955年から発掘調査が始まり建物の配置や当時の生活の実態などが明らかになっている
元興寺(がんこうじ)

- 6世紀に蘇我馬子(そがのうまこ)が建設した「飛鳥寺」が起源の寺院
- 飛鳥京にあったものを平城京が首都になるとともに移築された
薬師寺(やくしじ)

- 天武天皇(てんむてんのう)の依頼によるもの
- 藤原京にあったものを平城京が首都になるとともに移築された
- 「白鳳文化(はくほうぶんか)」の代表例である三重塔が立つ
- 度々火災や台風の被害を受けた影響で当時の建物は東塔のみ




また薬師寺では、「薬師寺伽藍配置(やくしじがらんはいち)」という金堂を中心に置いた仏教建造物の配置方式が誕生しました。
この配置方式のイメージは下記になります。

このように寺院によって主要な建造物の配置が決まっているのです。
興福寺(こうふくじ)
- 669年の創建の寺院を起源とする
- 藤原不比等(ふじわらのふひと)によって山階にあったものを平城京が首都になるとともに移築された
東大寺(とうだいじ)

- 「南大門」「正倉院正倉」など敷地内にある多くの建造物が国宝に指定されている
- 「奈良の大仏」として有名な金堂(大仏殿)がある

唐招提寺(とうしょうだいじ)
- 鑑真(がんじん)が創建
- 奈良時代に建造された金堂が唯一今も残っている
春日大社(かすがたいしゃ)
- 全国に約1,000社ある春日神社の総本社で奈良公園内にある
- 「春日神」と称される四柱が4本に分かれてまつられている
- 平安時代後期に同じ奈良にある「興福寺」と一体化された
また春日大社の背後には「春日山原始林」があり、神聖な場所としてこちらも世界遺産に登録されています。
この原始林は、山の中の水が枯れないように「水神」「雷神」がまつられている点が特徴です!

問題点:若草山モノレールの建設

「古都奈良の文化財」は世界遺産に登録されたがゆえに、その後とある問題に直面しています。
その問題とは、若草山モノレールの建設です!


奈良は国内外から非常に多くの観光客が訪れます。
その観光の新たな目玉としてモノレールの建設が提案されているのです。



このモノレールの建設地は、世界遺産に登録されている「春日山原始林」の近くにある若草山の予定です。
つまり、世界遺産の近くに現代的な建物が建造されるということです。
もしモノレールの建設が実現すると世界遺産の景観が損ねる懸念があるため、文化遺産を調査するICOMOS(イコモス)は景観保護の観点からこの建設を非難しています!

さらに詳しく保護について説明すると、世界遺産の登録地域の周辺には”バッファー・ゾーン”と言われる、開発を制限する区域が必ず設けられています。
そしてこのバッファー・ゾーンに問題が生じると、世界遺産が”危機遺産登録”に変更される可能性があります。
(”危機遺産”の詳細に関してはこちらの記事で詳しく解説してます)
さらに最悪の場合、世界遺産の登録が取り消される可能性もあります。

なお、バッファー・ゾーンや世界遺産保護に関する詳細は下記の記事で解説しています!

本日の確認テスト



(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3, 4級レベル
「奈良の大仏」が納められている寺院として正しいものを選びなさい。
- 東大寺
- 法隆寺
- 春日大社
- 元興寺
①
答え(タップ)>>2級レベル
金堂を中心に置いた仏教建造物の配置方式の名称として正しいものを選びなさい。
- 東大寺伽藍配置
- 四天王寺伽藍配置
- 飛鳥寺伽藍配置
- 薬師寺伽藍配置
④
答え(タップ)>>1級レベル
興福寺を平城京へ移築させた人物として正しいものを選びなさい。
- 天武天皇
- 鑑真
- 蘇我馬子
- 藤原不比等
④
答え(タップ)>>まとめ

- 唐(現在の中国)の長安をモデルに平城京の街や寺院などが造られた!
- 「仏教興隆政策」によって平城京には8世紀以降に数多くの寺院が建築・移築されることになった!
- 現在は「古社寺保存法」などによって奈良の文化財は保護されている!
- 薬師寺には「白鳳文化」の代表例である三重塔が立つ!
- 若草山モノレールの建設が問題視されている!
おまけ:奈良公園のシカは時期によって気性が変わる!?

実は奈良公園にいるシカは野生のシカです。
奈良県などの自治体が繁殖させて管理しているわけではないのです。
つまり、野生動物である以上どんな行動を起こすかはわかりませんので、シカと触れ合う際には注意が必要なのです!
主な注意事項は下記になります。
- 自ら不用意に近づかない!
- 自然に生えているものを除き鹿が病気にかかる恐れがあるため「鹿せんべい」以外は与えない!
- シカが食べてしまう恐れがあるためビニール袋等のゴミは外に出さない!
- 奈良のシカは国の天然記念物なので危害を加えない!
また春になると、出産後のメスジカが子供を守るために気性が荒くなることがあります。
秋はオスジカが発情期に入るため、気性が荒くなることがあります。
春や秋に訪れようと考えている方は要注意ですね!

参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。