こんな方にオススメの内容!
- なぜ「トンガリロ国立公園」が世界遺産に登録されたのか理由が気になる!
- 文化的景観の魅力を理解したい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- ニュージーランドへの旅行を考えている!
遺産ポイント
- ニュージーランド初の国立公園&世界で初めて文化的景観が認められた世界遺産!
- 先住民マオリの重要な聖地!
- ニュージーランドの国鳥「キウイ」などの鳥類の楽園!
「トンガリロ国立公園」のプロフィール
登録名称 | トンガリロ国立公園 |
---|---|
登録年 | 1990年(1993年:範囲拡大) |
所在国 | ニュージーランド |
登録ジャンル | 複合遺産 |
登録基準 | (vi)(vii)(viii) |
備考 | 世界で初めて文化的景観が認められた遺産 |
トンガリロ国立公園とは
トンガリロ国立公園とは、ニュージーランドの北島にあるニュージーランド初の国立公園です。
最大の特徴は、火山活動によってつくりあげられた美しい自然景観です!
現在のトンガリロ国立公園がある場所は、2つのプレートが重なり合っている地球の活動が非常に活発な位置でした。
具体的な活動としては、「インド・オーストラリアプレート」の下に「太平洋プレート」が潜り込む活動です。
この活動によって「タウポ火山帯」という、火山活動が非常に活発なエリアが形成されたのです!
そしてこのプレートの活動によって誕生した主な火山が下記の3つになります。
- トンガリロ山
- ナウルホエ山
- ルアペフ山
上記3つの火山を含んだ地域が「トンガリロ国立公園」です!
現在も活発な火山活動を続けており、2000年代に入ってからも噴火をしている火山があるほどです。
一方で、火山活動が活発であるがゆえに、美しい自然景観や貴重な自然現象などを見ることができます。
またトンガリロ国立公園の一部地域が、あの有名な映画「ロード・オブ・ザ・リング」のロケ地にもなったことで知名度が一気に上がりました!
さらに火山地帯とはいえ、夏はトレッキング・ハイキング、冬はスキーなどのウィンタースポーツなどアクティビティが充実しているため、ニュージーランド屈指の観光地としても大人気なのです。
世界遺産に登録された理由
トンガリロ国立公園が世界遺産に登録された理由をまとめると、下記のような表現になります。
ダイナミックな自然(自然遺産要素) × 先住民マオリの重要な聖地(文化遺産要素)
複合遺産として登録されていることからもわかるように、トンガリロ国立公園の魅力を語る上では美しい自然だけでなく、先住民マオリの文化を外すことはできません!
そのマオリの文化の具体的な価値や生活スタイルに関しては、後述の「世界で初めて「文化的景観」が認められた(文化遺産としての価値)」で詳しく解説します!
そもそも世界遺産に登録される前に、トンガリロ国立公園は“ニュージーランド初の国立公園“に指定された歴史があります。
国立公園に指定された最大の理由は、マオリの文化を保護するためです!
トンガリロが国立公園に指定されるまでの経緯は以下の通りです。
18世紀 | イギリス人探検家「ジェームズ・クック」がニュージーランドに上陸して調査を行う。 |
---|---|
1840年 | イギリスからの入植者が増え始め、トンガリロでの開拓が始まる(イギリスの植民地となる) |
1887年 | マオリの神聖な土地を守るために、マオリの首長「テ・ヘウヘウ・ツキノ4世」が保護体制を固めるための行動に出る。 |
1894年 | 保護活動が功をそうし、ニュージーランド初の国立公園に指定される。 |
1990年 | 国立公園登録から約100年後に世界遺産登録される。 |
もちろん、国立公園に指定して保護することに対して、イギリスからの承諾を得ることは容易ではありませんでした。
そこでマオリ側はイギリスの女王に金銭や財物を送り、交渉を始めました。
すると、女王は開拓を止めて国立公園にすることに同意してくれたのです!
自然遺産としての価値
トンガリロ国立公園の自然遺産としての価値をまとめると、下記の3つになります。
- 火山活動によってつくりあげられた美しい自然景観
- 火山活動などの地球の息吹を感じられる貴重な自然現象
- 地域によって異なる多彩な動植物の生息
まず、トンガリロ国立公園の自然遺産としての価値を高めているのは、紛れもなく火山活動です!
特に前述の「トンガリロ国立公園とは」でも出てきた3つの火山(トンガリロ山、ナウルホエ山、ルアペフ山)を中心に形成された環境や地形は、世界でもほとんど類を見ないものとなっています。
そして、3つの火山周辺を含めたエリアが1990年に世界自然遺産に登録されました。
さらにトンガリロ国立公園の魅力は火山だけではありません。
火山地帯といった特徴的な自然環境に加えて、標高差や気候変動があるといった特徴も加わり、地域によって様々な動植物を見ることができるのもポイントです!
とりわけ面白いのが、トンガリロ国立公園の東西で生育する植物が異なる点です!
- 西側は降雨量が多い
→ 古代のマキ科、イチイの一種であるリムノキ、他 - 東側は降雨量が少ない
→ キンポウゲなどの高山植物
このように気象状況や標高によって生育する植物が大きく異なってきます。
日本の自然遺産である「知床」も、南北によって気象状況が異なるため、生息する動植物が異なったり、人々の生活スタイルにも変化がありとても興味深いです!
(知床に関しては下記の記事で詳しく解説しています)
動物で言うと、特に鳥類が豊富です。
例えば、ニュージーランドの国鳥として有名な「キウイ」や、オウムの一種「カカ」など、珍しい固有種が生息しています。
さらに天敵が少ない地域であるため、トンガリロ国立公園は鳥の楽園となっているのです!
一方で哺乳動物としては、「ショート・テールド・バッド(短尾コウモリ)」「ロング・テールド・バッド(長尾コウモリ)」などが挙げられます。
トンガリロ山(1,967m)
- トレッキング、ウィンタースポーツ、温泉を満喫できるため観光客が多い。
- 直近では2012年に噴火している。
- エメラルドグリーンのカルデラ湖が有名。
- 溶岩が流れた形跡を間近で見ることができる。
- 巨大なカルデラ湖である「タウポ湖(約20km)」に比較的近い。
ナウルホエ山(2,291m)
- 綺麗な円錐型をしている成層火山。
- 日本の世界遺産「富士山」にそっくりな山として有名。
- 登山客が非常に多い。
- 3つの火山の中では最も最近(約2500年前)形成された。
- 1977年を最後に噴火をしていない(3つの火山の中では最も活動がおとなしい)。
- 周辺には「ランギポ砂漠」がある。
ルアペフ山(2,797m)
ルアペフ山はスキーリゾートとしても人気
- 頻繁に噴火をしており、直近でも多くの被害者を出すほどの暴れ山。
- 3つの火山の中で最も標高が高い。
- 映画「ロード・オブ・ザ・リング」の3部作目の「滅びの山」として撮影に使われた。
- 中腹までは車で登れるため噴火をしていなければ比較的気軽に訪れられる。
- スキー場がある。
世界で初めて「文化的景観」が認められた(文化遺産としての価値)
先住民マオリの人々
前述の「自然遺産としての価値」でも触れたように、トンガリロ国立公園が世界遺産に登録された1990年は3つの火山を中心とした自然遺産としての登録でした(最初から複合遺産だったわけではない)。
しかし、1993年に文化遺産としての価値が認められて複合遺産として拡大登録されたのです!
文化的景観をトンガリロ国立公園に当てはめて簡単に説明すると、「自然環境の影響を受けながら人が築き上げた文化的な価値」になります。
例えば下記のようなイメージです。
- ・自然の地形に合わせて誕生した独特な集落
- ・自然の恵みである鉱山を採掘することによって誕生し発展した町
- ・自然を神様のように拝んで誕生した文化
(なお、文化的景観に関してはこちらの記事で詳しく解説しています)
この文化的景観が認められた最大の要因は、先住民マオリの人々の生活です!
マオリの生活は、トンガリロ国立公園の自然環境を大いに利用したものでした。
つまり、マオリの生活とトンガリロ国立公園の自然は切っても切り離せない関係なのです!
切り離せない関係であるポイントは主に以下の2点です。
- マオリの人々は3つの火山を神様が宿る神聖な山として見ていた!
- 自然現象をうまく利用した生活を送っていた!
頻繁に噴火などの自然現象を引き起こす火山群は、マオリの人々には“神様が宿る山“として認識されていました。
そのため火山群を信仰する文化が育まれていったのです。
(日本でも富士山を崇める文化が根付いていた点が評価されて、富士山は「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」という登録名称で文化遺産に登録されています)
また、マオリの人々は地熱をうまく利用して料理をしたり、食材などの保存に使ったりしていました。
要するに、火山活動を“自然の恵み(神様からの贈り物)“と捉えて、自分たちの生活に有効活用していたのです!
先住民マオリはトンガリロ国立公園の自然とともに生きてきたのです。
こうして、世界で初めて文化的景観の価値が認められた国立公園が誕生しました!
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3・4級レベル
『トンガリロ国立公園』内に古くから暮らすニュージーランドの先住民の名称として正しいものはどれか。
- マオリ
- バジャラ
- アナング
- モリオリ
①
答え(タップ)>>2級レベル
『トンガリロ国立公園』内にある山の名称として誤っているものはどれか。
- アオラキ山
- ルアペフ山
- ナウルホエ山
- トンガリロ山
①
答え(タップ)>>1級レベル
『トンガリロ国立公園』の説明として正しいものはどれか。
- サザン・アルプスから流れ出た氷河が谷を削ったことで、海が流れ込み入江が誕生した。
- 国鳥のキウイなど固有種が多く生息するなど、国立公園内は鳥類の天敵が少ない。
- 1894年に世界で初めての国立公園に指定された。
- 火山地帯特有の地形や自然と先住民の文化との繋がりが評価されて1990年に複合遺産に登録された。
②
答え(タップ)>>まとめ
- タウポ火山帯の活動によって誕生したニュージーランド初の国立公園!
- 国立公園内にある主な火山は「トンガリロ山」「ナウルホエ山」「ルアペフ山」!
- 国鳥「キウイ」など鳥類が非常に豊富!
- 先住民マオリが自然環境を活かした生活をする地域!
- マオリの首長「テ・へウヘウ・ツキノ4世」によって保護政策が進められた!
- 世界で初めて文化的景観が認められた世界遺産!
おまけ:「トンガリロ国立公園」のプチ観光情報
巨大な火山噴火によって誕生したニュージーランド最大の湖「タウポ湖」
トンガリロ国立公園は火山や氷河など、生きている地球の姿を感じることのできる大自然スポットです。
そんな大自然スポットではあるものの、ニュージーランドで最も有名な国立公園ということもあり、アクセスするまでのインフラは比較的整っており、意外と個人でも訪れやすいのが特徴です!
国立公園周辺には宿泊施設や飲食店も揃っているので、ニュージーランドを訪れた際にはぜひトンガリロ国立公園も訪れておきたいですね!
「トンガリロ国立公園」までのアクセス
トンガリロ国立公園のあるニュージーランドまでは、まずニュージーランド最大の都市である「オークランド」までフライトする必要があります。
- 羽田・成田 ⇨ オークランド(フライト時間:約11時間)
- 関空 ⇨ オークランド(フライト時間:約10時間半)
- その他の空港 ⇨ 東南アジア各都市 ⇨ オークランド(フライト時間:約15〜17時間)
オークランドからトンガリロ国立公園までは、首都のウェリントンまで続く「Northern Explorer(ノーザン・エクスプローラー)」という長距離列車に乗車して向かうことになります。
- オークランド ⇨ 「ナショナル・パーク駅」で途中下車(約5時間半)
- ナショナル・パーク駅から国立公園の観光拠点である「ファカパパ・ビレッジ」まではバスで20分
上記が鉄板の観光アクセスになります。
ただし、長距離列車の本数は決して多くはないため、ニュージーランド着の当日はオークランドで1泊し、次の日以降からトンガリロ国立公園に向かうのが無難ですね!
おすすめホテル:シャトー・トンガリロ・ホテル(Chateau Tongariro Hotel)
「トンガリロ国立公園のホテルと言えばここ!」
その名も、「シャトー・トンガリロ・ホテル」 です!
こちらのホテルのポイントは下記になります。
- 世界遺産「トンガリロ国立公園」内に位置し観光拠点として抜群の立地!
- 国立公園内のホテルとして長い歴史を持つホテル!
- プールやサウナなどホテル内設備が充実!
- すぐ近くには人気のハイキングコースやスキー場がありアクティビティも楽しめる!
トンガリロ国立公園内の3大火山である「ナウルホエ山」と「ルアペフ山」のちょうど中間に位置しているため、3つ全ての山への観光に便利です!
さらに、ホテルの名前にもある通り「シャトー(城)」を彷彿とさせる歴史的なホテルであるため、国立公園観光だけでなく、ホテル滞在面での良い思い出づくりにもなります。
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。