こんな方にオススメの内容!
- なぜ知床が世界遺産に登録されたのか理由が気になる!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 次の旅行先の候補地として知床を考えている!
遺産ポイント
- 「自然公園法」などによって保護されているため美しい自然が保たれている!
- 知床の食物連鎖は「海」「川」「山」の相互作用によって生まれている!
- 「植物の垂直分布」や天然記念物に指定されている動物など貴重な動植物相が見られる!
「知床」のプロフィール
登録名称 | 知床 |
---|---|
登録年 | 2005年 |
所在国 | 日本(北海道) |
登録ジャンル | 自然遺産 |
登録基準 | (ix)(x) |
知床に手付かずの自然が残る理由を歴史的背景から考察
知床連山 / 参照:「ひろせ まさと」さんのInstagramより
今もなお知床に手付かずの自然が残されている要因は、大きく分けて2つあります。
- 先住民や知床に居住していた人々が自然と共生していたため
- 国や自治体によって厳格に保護していたため
知床にはアイヌという先住民族が暮らしています。
アイヌ民族は、古くから知床に生息する「シマフクロウ」「シャチ」「ヒグマ」などを”神”のような偉大な動物であると信じていました。
もうお気づきかと思いますが、人間の手によって神が生息しづらい環境にしてしまうことは許されませんよね。
そのため自分たちの生活よりも、知床に生息する動物がありのまま生きられる環境を保持することを優先させたのです!
その後も「自然との共生」を掲げて森林開拓などはせず、あくまでも知床の自然を主体とした生活を育んでいきました。
一方で明治以降には、知床がある北海道で森林の開拓が本格化し始めました!
しかしそれでも知床が開拓のターゲットになることはほとんどありませんでした。
その理由は大きく分けて2つあります。
- 知床半島の自然環境は非常に厳しく人の出入りが困難だった!
- 国立公園に指定されるなど保護活動が進められていた!
知床は日本屈指の過酷な自然環境にあります。
そのため他の地域と比べて人が出入りする余地が少なかったのです!
また知床を保護するための動きとして、下記のような具体的な保護政策が進みました。
1964年 | 「自然公園法」に基づいて国立公園に指定される |
---|---|
1977年 | 「しれとこ100平方メートル運動」が始まる |
「しれとこ100平方メートル運動」とは簡単に言うと、開拓の跡地を森林として復元させる運動のことです!
(運動の詳細はこちらの資料をご覧ください)
この運動は、日本における最初の”ナショナルトラスト運動”として大きく発展していきました!
昭和には知床も少なからず開拓の影響を受けましたが、こういった運動が功をそうし知床からは開拓者が完全にいなくなったのです!
知床が世界遺産に登録された理由
知床から臨む夕日 / 参照:「ひろせ まさと」さんのInstagramより
生物多様性を生み出す地形や気候
知床で見られる流氷 / 参照:「ひろせ まさと」さんのInstagramより
冒頭の「知床のプロフィール」から地図を見てもらうとわかりますが、知床は環境の変化が著しい日本の北端に位置します。
知床半島は四方をほぼ海に囲まれた細長い半島です。
さらに半島には標高1,500m級の山脈が連なっていて、非常に山の密度の濃い半島なのです。
要するに、細長い半島の中に1,500m級の山々が連なる特徴的な自然環境が知床にはあるのです。
この知床の特徴的な環境は、気候や海流などに著しい変化をもたらすため、日本でも有数の気候変動が激しいエリアになっています。
そして、気候変動が激しいことにより半島の東側と西側では全く異なる気候や地形を生み出しているのです!
半島の東側と西側の具体的な違いは以下の通りです。
東側(オホーツク海側) | 西側(太平洋側) | |
---|---|---|
中心の町 | ウトロ | 羅臼(らうす) |
海岸線 | 「海食崖」と呼ばれる火山噴出物が海水によって侵食された断崖が続く | 比較的なだらか |
降雨量 | フェーン現象と暖流の宗谷海流によって気温が高く降雨量が少ない | 太平洋から吹き込む湿った風が知床連山にぶつかることによって雨が多い |
主要産業 | 観光業 | 漁業 |
東側は火山噴出物が蓄積していて荒波や海水によって簡単に浸食されるため、海岸沿いが削られることによって険しい崖が続く地形ができました。
またオホーツク海の暖流や知床連山からの温かい風(フェーン現象)の影響を受けて、降雨量が少ない点も特徴です!
一方で西側は、太平洋から吹き込む湿った風が知床連山にぶつかることにより多くの雨をもたらします。
そのため、西側は東側と比べて雨が降る日が非常に多い点が特徴です!
このように雨が降る日の少ない東側では、観光に適した晴天日が多いことから観光業に力を注いでいます!
このように同じ半島であるにも関わらず、エリアによって異なる気候や地形が存在することで様々な動植物が生息し
世界でも類を見ない独特な地形・気候・生物の多様さを生み出しているのです!
知床の動物相
知床のアイドル「キタキツネ」 / 参照:「ひろせ まさと」さんのInstagramより
知床で見られる主な動物は下記になります。
魚類 | オヒョウ、オオカミウオ、マンボウ、ハリセンボン |
---|---|
海洋哺乳類 | ミンククジラ、シャチ、トド |
陸上哺乳類 | ヒグマ、キタキツネ、エゾリス |
鳥類 | シマフクロウ(天然記念物)、オオワシ(天然記念物) |
知床の植物相
知床で見られる植物は「植物の垂直分布」という特徴があります。
これは標高に応じて植生する植物が異なることを指します。
亜高山帯 | ダケカンバ |
---|---|
亜寒帯性 | トドマツ |
冷温帯性 | ミズナラ |
温帯性 | ハマナス、イワベンケイ |
また標高が低いエリアでは下記の植物が見られます。
冷温帯性落葉広葉樹 | ミズナラ、シナノキ |
---|---|
亜寒帯性常緑針葉樹林 | トドマツ、エゾマツ |
このように海岸から陸地までの標高差が激しく変化する地域では、地理的にはほぼ同じ位置でも標高によって気候が変わります
そして標高によって気候が変動する影響で、同じ地域であっても様々な植物を見ることができるのです!
ちなみにこの「植物の垂直分布」は、他の日本の自然遺産だと「屋久島」でも見ることができます!
気になる方は下記の記事をご覧ください。
合わせて読みたい!【屋久島 | 植物の垂直分布】世界遺産登録理由や縄文杉の特徴をわかりやすく解説!独特な生態系と独特な食物連鎖
知床の食物連鎖の頂点に立つシャチ / 参照:「ひろせ まさと」さんのInstagramより
前述の「生物多様性を生み出す地形や気候」とも関わってきますが、知床半島が位置する場所だからこそ他の環境ではなかなか見られない独特の食物連鎖が起きます。
その独特な食物連鎖とは、海・川・山が相互作用して生まれる食物連鎖です。
このような食物連鎖が起きる大きな要因が、知床半島周辺の「海流」や「流氷」です。
知床半島周辺には下記の2つの海流が存在します。
- 暖流:宗谷(そうや)海流
- 寒流:東樺太(ひがしからふと)海流
この2つの海流がちょうどぶつかる位置に知床半島があります。
海流がぶつかる海域では、魚類や海藻類にとって必要不可欠な栄養素がたくさん生み出されるのです!
さらにこの海流を活発化させる要因になっているのが「流氷」です。
知床半島は、地球上で最も低い緯度で海水が結氷する「季節海氷(流氷)域」に位置しています。
主に秋にユーラシア大陸から流れ込む淡水により、塩分濃度の低い海水が作られます。
塩分濃度が低いことにより、海水が冷え固まりやすくなり流氷が出現するといった感じですね。
最も寒さの厳しい冬になると、知床半島のオホーツク海側の海の大半が凍ります。
すると流氷の下では、「ブライトン」と呼ばれる低温で塩分の濃い部分の塩水だけが降下し始めます。
この濃い部分の塩水が降下することでさらに海流の勢いが増すという現象が起きるのです。
海流が激しいと栄養となる塩が次第に海面まで押し上げられます。
そして春になると流氷が溶け始めて、「アイス・アルジー」などの植物プランクトンが増殖するのです!
知床の食物連鎖の具体例
冬の知床 / 参照:「ひろせ まさと」さんのInstagramより
ではここで、知床でどのような食物連鎖が起こっているのかを具体例を挙げて簡単に解説します!
【パターン1】
- 海で大量のプランクトンが繁殖→小魚や海藻類の栄養となる→小魚を主食としている海洋哺乳類(クジラ、シャチなど)大型魚類や鳥が現れる
【パターン2】
- 豊富なプランクトンによってもたらされた海にある栄養分が川にももたらされる→川魚(サケ、マスなど)の餌となる→川魚を主食とする哺乳類が現れる
上記は、主に海から始まる食物連鎖になります。
反対に山からの食物連鎖も存在します。
前述の「知床の植物相」でも触れたように、知床は標高に応じて生育する植物が異なります。
昆虫や草食動物は、自分好みの植物を求めて生息地を変えます。
さらに、昆虫や小動物を主食とする肉食動物や大型の鳥(ワシなど)などが姿を現します。
そして、陸上の動物たちの排泄物などが山の栄養となり、川から海に流れて海に栄養を与えるという循環も生まれるのです。
つまり知床の食物連鎖の始まりは、「山」と「海」の2パターンあるのです!
- 「海→川→山」
- 「山→川→海」
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3, 4級レベル
知床半島に定住する民族の名称として正しいものを選びなさい。
- ウィルタ
- ニヴフ
- アイヌ
- バスク
③
答え(タップ)>>2級レベル
知床と同様に「植物の垂直分布」を見ることができる世界自然遺産として正しいものを選びなさい。
- マヌー国立公園(ペルー)
- ヨセミテ国立公園(アメリカ)
- 屋久島(日本)
- ドナウ・デルタ(ルーマニア)
③
答え(タップ)>>1級レベル
知床に関する説明として誤っているものを選びなさい。
- 1977年に開拓の跡地を森林として復元させる「しれとこ100平方メートル運動」が始まった。
- 知床半島は東側に比べて西側の方が降雨量が多い。
- 知床半島は暖流の「宗谷海流」と寒流の「東樺太海流」のぶつかる位置にある。
- 「アイス・アルジー」とは低温で塩分の濃い部分の塩水のことを指す。
④
答え(タップ)>>まとめ
- 今なお美しい自然が見られるのは「自然公園法」や「しれとこ100平方メートル運動」などによって保全活動が進められているため!
- 知床半島は地球上で最も低い緯度で海水が結氷する「季節海氷(流氷)域」に位置している!
- 「アイス・アルジー」などの植物プランクトンから食物連鎖が始まっている!
- 「植物の垂直分布」やシマフクロウ(天然記念物)などの貴重な動植物相を見ることがきる!