こんな方にオススメの内容!
- なぜ「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が世界遺産に登録されたのか理由が気になる!
- 固有種や絶滅危惧種が多く生息する要因を知りたい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- 沖縄・鹿児島への旅行を考えている!
遺産ポイント
- 絶滅危惧種の生息の貴重さと固有種の豊富さが世界遺産登録の大きな要因!
- かつて陸続きだった大陸から離れたことが現在の4島の生態系をつくっている!
「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」のプロフィール
登録名称 | 奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島 |
---|---|
登録年 | 2021年 |
所在国 | 日本(鹿児島県 / 沖縄県) |
登録ジャンル | 自然遺産 |
登録基準 | (x) |
備考 | 2020年に世界遺産に推薦される予定だったが新型コロナウイルスの影響で1年延期されて登録された(「北海道・北東北の縄文遺跡群」と同時登録) |
登録名称の「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」を深掘り
上空から見た奄美大島
世界遺産登録名称は実にシンプルで、世界遺産に登録されている全ての島を並べただけになります。
つまり今回の世界遺産登録範囲は
- 奄美大島(鹿児島県)
- 徳之島(鹿児島県)
- 沖縄島(沖縄県)
- 西表島(沖縄県)
上記の4つの島になります!
ただし徳之島に関しては、登録箇所が2つに別れているため、世界遺産登録されている地域の数で言うと5箇所になります。
4つの島は琉球列島に位置し、世界遺産登録範囲の総面積は約43,000ヘクタールに及びます。
もともとは2020年に世界遺産に推薦される予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で世界遺産委員会の開催が1年延期されてしまったため、2021年に審議され、登録されることとなりました。
(世界遺産委員会の詳細に関してはこちらの記事で解説しています)
世界遺産に登録された理由
世界遺産に登録された要因は下記の2つに大きく分けられます。
- 絶滅危惧種に指定されている動物が生息している貴重さ
- 固有種を含む様々な動物が生息している生物の多様さ
つまり
「絶滅危惧種」と「生物多様性」
この2つが重要キーワードとなります!
(登録基準の詳細に関してはこちらの記事で解説してます)
世界遺産に登録された4つの島を含む琉球列島は、黒潮と亜熱帯性高気圧の影響で常緑広葉樹多雨林に覆われた自然豊かなエリアです。
生息する動物の特徴を説明すると下記のようになります。
- 日本の陸上に生息する脊椎(せきつい)動物の半数以上が生息している!
- 生息する脊椎動物の内、4割以上が日本の固有種!
つまり、日本にしか生息しない動物が数多く生息している貴重な地域ということになります!
数多くの固有種が生息している大きな要因としては「遺存固有(いぞんこゆう)」がポイントになります!
簡単に説明すると、日本本土を含む他の地域から離れている期間が非常に長かったため、ほぼその土地の固有の生物しか生息することがない状況を指します。
また後述の「世界遺産に登録された4つの島の特徴」でも詳しく触れますが、固有種であり且つ絶滅危惧種(レッドリスト)にも指定されている動物も数多く生息しています。
世界遺産の登録範囲には、実に95種の絶滅危惧種が生息しその内75種が固有種と、数字を見ただけでも非常に貴重なエリアであることがわかりますね。
このように固有種から絶滅危惧種まで、幅広い動物が生息している”生物多様性”に対して大きな評価を受けて世界遺産登録にいたってます!
独特の生態系が誕生した理由
奄美大島に生息する固有種の「ルリカケス」
世界遺産に登録された4島を含む琉球列島に独特な生態系が誕生した最大の要因は、かつて大陸に生息していた動物が琉球列島だけに取り残されたからです!
琉球列島に独特な生態系が誕生した理由を知るために、まずは琉球列島が誕生した歴史を確認してみましょう。
- 中国などがあるユーラシア大陸はもともと今よりも大きな陸地だった。
- 長年の間に「地殻変動」や「海面上昇」などが発生し、大陸が分裂したりくっついたりを繰り返してきた。
- ユーラシア大陸から分裂した地域の一部が、現在の琉球列島として形成された。
- 大陸から離れてからその後非常に長い期間、島として在り続けた。
このように、かつて琉球列島は中国などの大陸と陸続きで繋がっていたのです!
大陸には琉球列島に生息する動物の数とは比べ物にならないぐらい、多種多様な動物が生息していました。
ただ多くの動物が生息しているがゆえに、各動物の天敵となる生物が数多く生息していたのも事実です。
一方で、琉球列島には大陸と比べて天敵となる動物が非常に少なかったのです。
つまり、かつて大陸に生息していた動物が当時の姿のまま琉球列島で生き残り、成長を続けていったのです!
このように、かつて陸続きだった地域が島になったことで、当時の動物が生息し続けて独特な生態系が誕生するケースはよくあります!
世界遺産範囲は海洋を含まない陸上の生態系のみ
「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の世界遺産登録範囲は陸地のみで海は登録範囲外になっています!
2021年の世界遺産登録で海が登録範囲外になった理由は下記が挙げられます。
- そもそも海の美しさや海洋生態系に希少性があまりない。
- ゴミ問題や生態系保護に関する対策を立てるほどの余裕がなかった。
- 海洋地域が世界遺産登録に相応しい研究データの準備や調査までの時間が足りなかった。
世界遺産委員会や調査機関から
「海洋地域は世界遺産に相応しくない!」
このように直接言われたわけではありません。
しかし価値を証明するまでにもう少し時間を有することが考えられたわけです。
世界遺産に登録された4つの島の特徴
徳之島にかかる美しい虹 ※写真:日高かほりさんのインスタグラムより
同じ世界遺産に登録されている4つの島ですが、生息する動物や環境には違いがあります!
その島にしか生息しない動物や、独特な自然環境の違いを見比べてみると、より各島の魅力に気づくことができます。
ちなみに世界遺産登録エリアは、「国立公園」または「生態系保護地域」として保護管理されています。
奄美(あまみ)大島
奄美大島の美しい海岸線
- 世界遺産に登録された4つの島の中で最も北に位置する!
- 絶滅危惧種(レッドリスト)に指定されている「アマミノクロウサギ」が生息している!
- 国内全体の生物種の約13%が確認されている(固有種が非常に豊富)!
絶滅危惧種が生息している地域で満たされやすい登録基準(x)が認められた要因は、なんといっても「アマミノクロウサギ」の生息が大きいでしょう!
アマミノクロウサギは、同じく世界遺産に登録された徳之島とこの奄美大島にしか生息しない固有種です。
他にも、「ルリカケス」という青とオレンジ色の美しい鳥が生息するなど、固有種が非常に豊富です!
徳之(とくの)島
奄美大島と徳之島に生息する絶滅危惧種の「アマミノクロウサギ」 ※写真:nakatripsさんのインスタグラムより
- 世界遺産に登録された4つの島の中で唯一登録範囲が2つに分かれている!
- 絶滅危惧種(レッドリスト)に指定されている「アマミノクロウサギ」が生息している。
- 国指定天然記念物の「明眼(みょうがん)の森」は世界遺産登録対象外!
奄美大島同様に、絶滅危惧種である「アマミノクロウサギ」などの絶滅危惧種の生息が確認されている点が世界遺産登録の大きな要因です!
しかし、国指定天然記念物になっている「明眼(みょうがん)の森」が世界遺産範囲外になってる点は残念ですね。
沖縄島(北部)
沖縄島の大自然
- 絶滅の危機に陥る可能性が高いと言われる「ヤンバルクイナ」が生息している!
- 固有種が非常に豊富!
- 世界遺産登録範囲内に県道が横断している点が問題視されている!
沖縄県の県庁所在地である那覇市がある沖縄島の一部も世界遺産の登録範囲内になってます。
”飛べない鳥”として有名な「ヤンバルクイナ」は、沖縄島北部のやんばる(山原)地域だけにしか生息しない大変貴重な天然記念物です!
他にも、スダジイという天然林に生息する「オキナワトゲネズミ」なども生息し、固有種の数が豊富です。
ただし、沖縄県内で最も発展している沖縄島ということもあり道路などの整備が行き届いているため、動物と車がぶつかるなどの交通事故が発生することが懸念されています。
このような動物との接触を防ぐ対策として、カナダの世界遺産である「カナディアンロッキー山脈自然公園群」では、動物たちが道路を通らずに横断できるように”動物専用の橋や地下道”がつくられたりしています。
詳しくは下記の記事をご覧ください!
合わせて読みたい!【カナディアンロッキー山脈自然公園群】氷河がつくった絶景と世界遺産への登録理由をわかりやすく解説!西表(いりおもて)島
西表島のマングローブ林
- 世界遺産に登録された4つの島の中で最も世界遺産登録範囲が広い!
- 特別天然記念物の「イリオモテヤマネコ」が生息する!
- マングローブが生い茂る海岸も登録範囲になっている!
島の総面積のおよそ7割が世界遺産登録範囲になっており、同じく世界遺産に登録されている他の島よりも広範囲に及んでいるのが西表島です!
特に「イリオモテヤマネコ」は、名前の通り西表島にしか生息しない特別天然記念物で、この動物を見るためだけに島を訪れる人がいるほどです。
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3・4級レベル
世界遺産に登録された島の名称として誤っているものはどれか。
- 徳之島
- 宮古島
- 西表島
- 奄美大島
②
答え(タップ)>>2級レベル
『奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島』の説明として正しいものはどれか。
- 琉球列島は地球誕生時から一度も大陸と陸続きになったことが無い海洋島である。
- 世界遺産に登録された4つの島には95種の絶滅危惧種が生息しその内75種が固有種である。
- 生物多様性や動植物の進化の過程を見ることができるため、登録基準に(ix)と(x)が認められている。
- 海洋地域ではクジラ類23種の生息が確認されており、多くの繁殖報告がされている。
②
答え(タップ)>>1級レベル
『奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島』に生息する固有種、及び絶滅危惧種として正しいものはどれか。
- クマゲラ
- シマフクロウ
- タカヘ
- ルリカケス
④
答え(タップ)>>まとめ
- 世界遺産登録範囲は「奄美大島」「徳之島」「沖縄島(北部)」「西表島」の4島!
- 現在の生態系がつくられた大きな要因は、かつて陸続きだった大陸から地殻変動などによって離れて島になったこと!
- 2021年での登録では海洋地域は範囲外となり陸地の生態系だけが世界遺産対象となっている!
- 「アマミノクロウサギ」や「ヤンバルクイナ」などの絶滅危惧種や天然記念物が生息している!
- 「イリオモテヤマネコ」や「ルリカケス」などの固有種も豊富!
- 交通事故などの動物と人間との接触を防ぐための対策が必要とされる!
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。