こんな方にオススメの内容!
- なぜカナディアンロッキーが世界遺産に登録されたのか理由が気になる!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- カナダへの旅行を考えている!
遺産ポイント
- カナディアンロッキーの自然景観を生み出した大きな要因は氷河活動!
- 世界遺産登録範囲は「4つの国立公園+3つの州立公園」!
- 世界遺産登録のきっかけとなったのはカンブリア紀の化石の発見!
「カナディアンロッキー山脈自然公園群」のプロフィール
登録名称 | カナディアンロッキー山脈自然公園群 |
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登録年 | 1984年(1990年:範囲拡大) |
所在国 | カナダ |
登録ジャンル | 自然遺産 |
登録基準 | (vii)(viii) |
カナディアンロッキーの登録範囲と自然美誕生の歴史
カナディアンロッキーのガイドブックなどでよく表紙として使われる「モレーン湖」
カナディアンロッキーはその名の通り「カナダ側にあるロッキー山脈」のことを指します。
つまり世界遺産に登録されているエリアはカナダの国土にあるロッキー山脈のみになります。
このうちカナダ側の2,200km、面積で言うと23,000㎢が世界遺産に登録されている範囲です。
また登録名称に「山脈自然公園群」と書かれているように、カナディアンロッキーの世界遺産登録範囲は複数の自然公園にまたがっています!
具体的な公園名は後述の「カナダ初の国立公園「バンフ国立公園」の誕生と世界遺産に登録されている公園群」で詳しく紹介しますね。
カナディアンロッキーの誕生は約6,000万年前に起きた造山活動によるものとされていますが、現在のような自然景観がつくられたのは「氷河」がポイントになります。
今回はこの氷河を中心にカナディアンロッキーの自然美や自然景観誕生の歴史を解説していきます!
氷河がつくり上げた数多くの自然景観
ヨーホー国立公園内にある落差約400mの「タカカウ滝」
カナダのガイドブックなどでよく見るような美しい山々の自然景観の多くが「氷河」によってつくられたものです。
そして「カナディアン・ロッキー山脈自然公園群」として世界遺産に登録されている自然景観の多くも氷河の影響を強く受けています!
具体的には下記などが氷河によって形成された自然景観です。
コロンビア大氷原 | 面積約325㎢、厚さ約350mの巨大な氷のかたまり。この氷はさらに「アサバスカ氷河」などの細長い氷河に分かれている。 |
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ルイーズ湖 | 世界遺産に登録された国立公園の一つ「バンフ国立公園」内にある氷河が溶けてできた湖。湖の近くには「シャトー・レイク・ルイーズ」という高級ホテルが建つ。 |
ペイトー湖 | 世界遺産に登録された国立公園の一つ「バンフ国立公園」内にある氷河が溶けてできた湖。近くの高台にある展望台からは湖の全景を見ることができる。 |
モレーン湖 | カナダドル紙幣にも描かれているカナディアンロッキーを代表する氷河湖。 |
ヨーホー渓谷 | 世界遺産に登録された国立公園の一つ「ヨーホー国立公園」内にある大渓谷。 |
タカカウ滝 | 落差約400mを誇るカナディアンロッキーを代表する大滝。水源が山の上の氷河の水であるため、氷河が溶ける夏の時期に水量が多くなり大迫力の姿を見せる。 |
「コロンビア大氷原」の上を走る大人気のツアーの様子
また公園群にそびえる山々は氷河によって削られているため山頂部分がノコギリのように鋭くなっているのが特徴です。
このように氷河によって独特の自然景観が誕生したことに価値があると評価され登録基準(vii)が認められ世界遺産登録されました!
カナダ初の国立公園「バンフ国立公園」の誕生と世界遺産に登録されている公園群
美しいターコイズブルーの色を見せる「ペイトー湖」
前述の「氷河がつくり上げた数多くの自然景観」でも少し話に出てきましたが、カナディアンロッキー山脈公園群はその名の通り複数の国立公園で構成された世界遺産です。
具体的には下記の国立・州立公園が世界遺産に登録されています。
- バンフ国立公園
- ジャスパー国立公園
- ヨーホー国立公園
- クートネー国立公園
- ハンバー州立公園
- マウント・アシニボイン州立公園
- マウント・ロブソン州立公園
この中で一番最初に国立公園に指定されたのが「バンフ国立公園」です!
1887年にカナダ初の国立公園として誕生しました。
カナディアンロッキー周辺には約1万年前から先住民が定住していたとされていますが、先住民以外の人間がカナディアンロッキーにたどり着いたのは19世紀に入ってからになります。
そしてヨーロッパ人によって山脈の西側に大陸横断鉄道が建設されたことにより人の出入りが流動的になり、公園内の整備が次々とされていくようになりました。
カナディアンロッキー観光ではカヤックを使った湖遊泳が人気
他にも温泉の発見など、人々がカナディアンロッキーの自然に目を付ける機会が多くなったことから、カナディアンロッキーの自然が一気に注目を浴びるようになったのです!
カナディアンロッキーの生態系と化石群
標高3000m級の山々が連なるロッキー山脈
カナディアンロッキーは標高差が大きい山脈地帯として知られています。
一番低いところで1,000m級、高いところで3,000m級の山々が連なっています。
このように標高差が激しい環境が誕生した理由としては地殻変動による造山活動の影響があるとされています。
標高差が激しい点や地殻変動によって古来の動植物の化石が発見されたり、気候に応じた多様な生物が生息する環境へと繋がったのです!
多種多様な動植物相
カナディアンロッキーの比較的標高の高いところに生息する「シロイワヤギ」
比較的標高の低い1,000mエリアには数多くの針葉樹林が生い茂っています。
この針葉樹林には主に下記のような動物が生息しています。
- グリズリー
- アメリカライオン
- アメリカグマ
一方で比較的標高の高いエリアには下記のような動物が生息しています。
- シロイワヤギ
- ハイイロオオカミ
ハイイロオオカミに関しては、レッドリスト(絶滅の恐れのある生物のリスト)の「軽度懸念」に分類されています。
チャールズ・ウォルコットによるカンブリア紀の化石の発見
国立公園内の道路からも絶景が見られる
自然景観の美しさ以外で、もう一つカナディアンロッキーが世界遺産登録された大きな要因があります。
それがカンブリア紀の化石の発見です!
一番最初にカンブリア紀の化石を発見したのが、古生物学者のチャールズ・ウォルコットでした。
彼がカンブリア紀中期の化石をカナディアンロッキーで発見してから、それ以降本格的に化石の発掘調査が進められていったのです。
そして調査の結果次々と貴重な化石が発見されていきました。
ちなみにこのカンブリア紀に多種多様な動植物が誕生したことから、この時代での出来事は「カンブリア大爆発」と呼ばれています。
これまでに発見された化石は主に下記などが挙げられます。
アノマロカリス | 海に生息する海洋捕食動物 |
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ハルキゲニア | 小型の海洋生物 |
オパビニア | 5つの目と頭部分にハサミを持つ海洋生物 |
なおアノマロカリスやオパビニアは現在の生物のどの分類に当てはまらない奇妙な生物化石であることから「プレブレマティカ(未詳化石)」とも言われています。
こういった現在の動植物の祖先が多く誕生したカンブリア紀の化石が多く見つかったことは、このカンブリア紀の生態系を知る上で重要な資料ともなっています。
こういった化石などの天然の重要な資料が数多く見つかった点が評価されて登録基準(viii)が認められ世界遺産登録される要因となりました!
バージェス頁岩(けつがん)単体での世界遺産登録
前述の「チャールズ・ウォルコットによるカンブリア紀の化石の発見」で紹介した数々の化石が発見された地層は「バージェス頁岩」と名付けられました。
この地層の特徴は以下の通りです。
- 泥が堆積(たいせき)して固まった岩の層。
- 層自体が薄いためはがれやすい。
- 細かい物質でできているため酸素を通しにくく取り込まれた遺体が腐りにくい。
要するに、当時の姿に近い状態で化石化させやすい地層という特徴があります!
このような独特な地層を持っていることによって多くの学者が興味を持ち、化石調査が頻繁に行われるようになりました。
そして次々と新しい発見がなされていき貴重な地層であることが認められて、1980年にバージェス頁岩単体で世界遺産登録されたのです!
そして4年後にバージェス頁岩周辺の自然景観も高く評価されたことにより「カナディアンロッキー山脈自然公園群」が世界遺産登録されました。
その前に登録されていたバージェス頁岩は「カナディアンロッキー山脈自然公園群」の構成資産として吸収される形で世界遺産登録されることになったのです!
動物保護の取り組み:”動物専用の橋”をつくる!?
カナディアンロッキー山脈自然公園群の一つである「バンフ国立公園」では、なんと”動物専用の橋”がつくられました!
この橋は文字通り、人間が渡ることはできず、動物たちが道路を挟んで反対側の森に移動するための橋です。
世界遺産に登録されると、必ず避けて通れない問題が発生します。
それは「観光客の増加」です。
そして観光客が増加することによって下記のような動きが出始めます。
- 高速道路や幹線道路の整備
- 鉄道や空港などの公共交通機関の整備
- 観光バスやレンタカーの増加
上記のように世界遺産周辺では大規模な交通網の整備が行われることがよくあります。
そして交通網の整備が行われることで、必然的に人間と動物との距離が近くなります。
なぜなら、世界遺産登録前に比べて動物たちが生息する自然の中へのアクセスが良好になるからです!
するととある問題が発生します。
交通網が整備されたことで野生動物たちが交通事故に遭いやすくなってしまうのです!
実際に、バンフ国立公園内では「トランス・カナダ・ハイウェイ」という道路が建設されたことで、毎年約100頭近くの動物が交通事故により命を落としています。
さらに、大型哺乳類を中心に自由に移動ができなくなるため、エサを探すことが難しくなり、生態系にも悪影響を及ぼしてしまう懸念もありました。
そこでカナダの政府機関は動きます。
動物たちが道路を安全に横断できるような橋の建設を決めたのです!
ちなみに橋以前には「アニマル・アンダー・パス」という地下道をつくってましたが、警戒心の強い野生動物はあまり地下道を利用せず、ほとんど効果を得られなかったのです。
一方で橋(アニマル・オーバー・パス)に変更したところ、地下道に比べて野生動物たちの利用が増えていきました。
流れをまとめると下記のようになります。
- 道路沿いにフェンスをつくる。
- 野生動物の横断ができなくなるため地下道に変更。
- 警戒心の強い野生動物はほとんど地下道を使わなかったため、橋の建設が提案される。
- 地下道に比べると橋を利用する野生動物は多かった。
しかしその後、橋の前に建設した地下道を利用する動物が徐々に増えていったため、現在は「橋+地下道」の2つが野生動物たちの道路横断を助けています。
そしてこの橋と地下道の建設によって、結果的に野生動物絡みの交通事故は対策前と比べて80%も減少しました!
世界遺産登録がされることは「観光」という面で大きな恩恵を受けることができます。
しかし一方で過度な観光地化は、自然や文化財に悪影響を与える恐れもあります。
「持続可能な観光」と言われるように、自然や文化財に悪影響を及ぼさない程度で、観光を楽しめる環境を整備することが求められているのです!
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3,4級レベル
『カナディアンロッキー山脈自然公園群』の構成資産として世界遺産に登録されている国立公園として正しいものはどれか。
- オリンピック国立公園
- マヌー国立公園
- セレンゲティ国立公園
- バンフ国立公園
④
答え(タップ)>>2級レベル
カナディアンロッキーで最初にカンブリア紀の化石を発見した人物の名前として正しいものはどれか。
- チャールズ・ダーウィン
- チャールズ・ウォルコット
- ハイラム・ビンガム
- トーマス・ラッフルズ
②
答え(タップ)>>1級レベル
『カナディアンロッキー山脈自然公園群』に生息する動物として誤っているものはどれか。
- シロイワヤギ
- ハリモグラ
- アメリカライオン
- ハイイロオオカミ
②
答え(タップ)>>「カナディアンロッキー山脈自然公園群」のまとめ
- カナディアンロッキーの自然景観を生み出した最大の要因は氷河活動!
- 「4つの国立公園+3つの州立公園」の構成資産の中で最も早く誕生した公園がバンフ国立公園!
- チャールズ・ウォルコットによるカンブリア紀の化石発見が世界遺産登録に大きく影響している!
- 「カナディアンロッキー山脈自然公園群」として世界遺産登録される前は「バージェス頁岩」という名称だった!
- 発掘された主な化石は「アノマロカリス」「オパビニア」など!
おまけ:カナディアンロッキーのプチ観光情報
カナディアンロッキー周辺で最も大きな都市「カルガリー」の街並み
空港のある最寄の街 | カルガリー ※バンクーバーから出ている長距離列車からのアクセスも可能だがアクセスに時間がかかる。 |
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最寄の空港 | カルガリー国際空港 ※「ジャスパー国立公園」を目指す場合は「エドモントン国際空港」の利用も可能。 |
時差 | 15時間(東京 – カルガリー間) ※日本の方が15時間進んでます。 |
観光のベストシーズン | 6〜9月の夏の時期 (冬季は国立公園周辺でウィンタースポーツを楽しむことができる) |
治安 | 非常に良好(カナダは海外初心者にオススメの国!) |
物価 | やや高い(特に宿泊代が少し高め) |
2022年時点で、日本からカナディアンロッキーの玄関口となる「カルガリー」への直行便は就航しています!
ただし決して就航本数が多いわけではないため、カナダ内の別の都市(バンクーバー、トロントなど)で経由してアクセスする方法が一般的ですね。
主なフライトは下記の通りです。
【直行便の場合】
- 成田 ⇨ カルガリー国際空港(フライト時間:約9時間40分)
- 直行便の本数は決して多くはなく、直行便の就航自体が無くなることもあるため経由便利用になることが多い。
【経由便の場合】
- 羽田・成田・関空 ⇨ バンクーバー ⇨ カルガリー(フライト時間:約10時間半〜11時間)
カルガリーの空港まで着いたら空港から出ているシャトルバスを利用して「バンフ」や「レイクルイーズ」といったカナディアンロッキー観光の拠点となる町まで向かうことになります!
(カルガリー市内から向かう場合はツアーに申し込んで専用のバスを使う方法が一般的です)
カナディアンロッキー最大のバス会社「ブリュースター」の公式ホームページはこちらになりますので、カナディアンロッキー観光をする際はぜひ参考にしてみてください!
現地のツアー情報
鉄道観光もカナディアンロッキーの人気の観光スタイル
カナディアンロッキーのツアーを利用する場合は、大きく分けて3つの方法があります。
- 日本で旅行会社経由でツアーに申し込む
- カルガリー市内にあるツアーデスクで申し込む
- バンフやレイクルイーズにあるツアーデスクやホテルからツアーを申し込む
最も一般的なのがあらかじめ日本でツアーを申し込む方法ですね。
英語が苦手な方や海外渡航にあまり慣れていない方、お子様がいらっしゃる方などは事前に日本でツアーに申し込んでおくことをオススメします!
たとえ日本でツアーに申し込んでなくても、カルガリー市内やカナディアンロッキーの拠点となる「バンフ」や「レイクルイーズ」といった町にはツアーデスクがたくさんあるので
「カナディアンロッキーに行けなかった。。。」
なんてことになることはならないでしょう。
ただ現地のツアーだと主催会社によってツアー料金や行程が大きく異なるので事前に調べて料金や内容を比較しておく方がいいですね。
カナディアンロッキーの入園料
バンフの町には木造の宿泊施設やお土産店が軒を連ねる
基本的にカナディアンロッキーの入園チケットは世界遺産に登録されている4つの国立公園への出入りが自由になる共通パスを購入することになります。
チケットは専用のホームページから事前に購入するか、カナディアンロッキーの観光の拠点の町となるバンフ市内などで購入ができます。
1日チケットの料金 ※2020年時点 | |
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大人 | $10.00(約900円) |
シニア | $8.40(約700円) ※65歳以上 |
子供 | 無料 ※17歳以下 |
ファミリー | $19.60(約1,700円) ※最大7名まで利用可能 |
またツアーに参加する場合はだいたいツアー料金に入園料が含まれているので自分で購入する必要はほとんどありません!
おすすめホテル:ザ・フェアモント・シャトー・レイク・ルイーズ
カナディアンロッキー最大規模の高級ホテル「ザ・フェアモント・シャトー・レイク・ルイーズ」
記事本文の「氷河がつくり上げた数多くの自然景観」でも少し名前が出てきた「ザ・フェアモント・シャトー・レイク・ルイーズ」というホテルはカナディアンロッキー内にある数あるホテルの中でも特に人気が高いホテルです!
施設やサービスが充実した高級ホテルなため、日本の旅行会社が提供するツアーなんかでもよく利用されます。
こちらのホテルのポイントをざっくりまとめると下記になります。
- ホテルの目の前にルイーズ湖の絶景が広がっている!
- カナディアンロッキー内のホテルの中でも1位2位を争うぐらい大規模な高級ホテル!
- 「フェアモント・ホテルズ・アンド・リゾーツ」という高級ホテルチェーンが運営!
- 「レイクルイーズ」というカナディアンロッキー観光の拠点となる町からほど近い!
- カルガリー国際空港までのシャトルバスが運行している!
ホテルの目の前には「ルイーズ湖」の絶景が広がる
また同じフェアモント系列の高級ホテルとしては、「ザ・フェアモント・バンフ・スプリングス」もあります。
こちらのホテルは外観が中世ヨーロッパのお城のような雰囲気を出している非常に人気の高いホテルです!
また創業から120年以上経つ、カナディアンロッキー内で最も歴史のあるホテルでもあります。
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。