こんな方にオススメの内容!
- そもそもアクロポリスが何か正体を知りたい!
- パルテノン神殿が世界遺産登録された理由が気になる!
- 古代ギリシャ文明やギリシャ神話について理解したい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- ギリシャへの旅行を考えている!
遺産ポイント
- 古代ギリシャの世界ではアクロポリスが中心
- 紀元前に「パルテノン神殿」「オデオン」「アゴラ」など巨大な施設が建築された
- ドーリア式やイオニア式など独自の建築様式が誕生
「アテネのアクロポリス」のプロフィール
登録名称 | アテネのアクロポリス |
---|---|
登録年 | 1987年 |
所在国 | ギリシャ |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (i)(ii)(iii)(iv)(vi) |
そもそも「アテネのアクロポリス」とは?
小高い丘の上に築かれた紀元前の神殿群
アテネのアクロポリスとは、ギリシャの首都アテネにある丘(アクロポリス)の上に築かれた神殿などの総称です。
「アクロポリス = 丘の上の都市」
上記のような意味で使われることが多いです。
つまり、世界遺産対象エリアはアテネにある丘の上に残されている建築物になります。
補足メモ
アテネという都市名は、紀元前の都市名「アテナイ」が変化したもの。アテナイの守護神とされる「アテナ」が名前の由来で、古代ギリシャ文明の重要な神様として挙げられる。古代ギリシャの時代では、地中海各地で度々争いが繰り広げられていました。
そんな中、アテネは街の防御壁の代わりになりうる小高い丘に目をつけて、”天然の要塞”として活用しようと考えたのです。
そして、アテネの重要な機関が入る建物を防御壁の上(アクロポリスの上)に築いた結果、現在のように丘の上に多くの神殿が見られる景観が誕生しました。
世界遺産登録理由
アクロポリスは夜に美しくライトアップされる
『アテネのアクロポリス』が世界遺産登録された理由は、下記の4点に大きく分けられます。
- 世界を代表する建築物
- 世界に影響を与えたギリシャの歴史が刻まれている
- 古代建築の魅力が集まっている
- 古代ギリシャ文明&ギリシャ神話を今に伝える建築物が残されている
特に、歴史面でも建築面でも世界に大きな影響を与えたという事実は、アテネのアクロポリスの世界遺産登録に大きく貢献しています。
理由1:世界を代表する建築物
世界を代表する建物である「パルテノン神殿」は常に多くの観光客で賑わっている
「古代遺跡 = パルテノン神殿」
「ギリシャの建築物 = パルテノン神殿」
自然と上記のような連想をさせるほど、世界中に名が知られる世界を代表する建築物という点が大きく評価されています。
アテネのアクロポリスにある建築物は、下記のような特徴を持っています。
- 数千年前の建築物の遺構が良好な状態で残されている
- 自然環境の中に建築物が溶け込んでいる
- 建築物の全体バランスが見事に取れている
ちなみにアクロポリスが白く見える理由は、白を基調とする石灰の岩山の大地に建築物が築かれているためです。
なお、建築技術やパルテノン神殿をはじめとする各建築物の詳細は、後述の「理由3:古代建築の魅力が集まっている」で解説します。
理由2:世界に影響を与えた古代ギリシャの歴史が刻まれている
アクロポリスを中心にアテネの街が広がっている
アテネのアクロポリスに築かれた建築物は、数千年前に存在した古代ギリシャ文明の繁栄の象徴です。
このように、古代ギリシャの歴史が刻まれた建築物が数多く残されている点が高く評価されました。
紀元前20世紀 | アクロポリスに王宮が築かれる。 |
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紀元前15世紀 | ギリシャにいた先住民によって丘を利用した防御壁が造られる。 |
紀元前8世紀 | アクロポリスの麓(ふもと)に街が造られる。 ⇨現在のアテネ市街地の原型。 |
紀元前6世紀 | アケメネス朝ペルシアとの戦い(ペルシア戦争)によってアテネが荒廃する。 |
紀元前5世紀 | 街の復興と強化を兼ねてパルテノン神殿などが建築される。 |
紀元前2世紀 | ローマ人がオデオン(イロド・アティコス音楽堂)を築く。 ⇨ローマ人が本格的にギリシャを支配し始めた時代。 |
用語メモ
アケメネス朝ペルシアとは、現在のトルコからイランにかけて大きく繁栄した国。インドとヨーロッパから集まった人々で構成されていた。特に、紀元前5世紀頃のアテネは、”アテネの黄金時代”と呼ばれるほど大きく繁栄しました。
アテネをはじめとする古代ギリシャの街の繁栄は、後に大きく繁栄する古代ローマや地中海世界、及び現代の世界に大きな影響を及ぼしました。
実際に現在のイタリアや地中海沿いのアフリカ地域には、パルテノン神殿を連想させる神殿などが数多く残されています。
理由3:古代建築の魅力が集まっている
現在でもコンサート会場として使われている「アッティコス音楽堂」
前述の「理由2:世界に影響を与えた古代ギリシャの歴史が刻まれている」で少し触れたように、アテネのアクロポリスの建築は、紀元前20世紀頃に築かれた王宮から始まっています。
王宮建築後にも数多くの建築が行われた結果、アクロポリスは現在のような古代建築が密集するエリアになりました。
アクロポリスで見られる建築物は、主にギリシャ建築と呼ばれる建築様式で建てられたものです。
【ギリシャ建築の特徴】
- ヨーロッパ建築の起源とされる世界最古級の建築様式
- 紀元前8世紀までは石造ではなく木造だったとされている
- 建物の柱周りに装飾を施すことが多い
- 黄金比を考えて設計する緻密さ
過度な装飾はせずに、建物全体のバランス(黄金比)を最も考慮して建築している点が特徴です。
パルテノン神殿
アテネのシンボル「パルテノン神殿」
- ペルシア戦争の勝利を祝ってアテナに捧げられた神殿
- 「エンタシス」と呼ばれる特徴をもった柱が46本並べられた姿が特徴
- 他国に支配される度に用途が変わっていった
アクロポリスに建てられている建築物の中で、最も壮大で有名なものが「パルテノン神殿」です。
当時のアテネのリーダーだったペリクレスによって建築され、彫刻家フェイディアスによって10年もの歳月をかけて完成した、古代ギリシャの象徴とも言える建築物です。
「ドーリア式」と「イオニア式」と呼ばれる2つの古代ギリシャ様式が採用されており、計46本並べられた柱がポイントです。
ドーリア式 | 「エンタシス」と呼ばれる、軽い膨らみを持たせた柱が特徴。 |
---|---|
イオニア式 | ギリシャ建築では珍しく、渦巻き状の装飾などが見られる。 |
ちなみに、ギリシャ建築の特徴の一つである「エンタシス」は、日本の法隆寺にも採用されている技術です。
詳細は下記の記事で解説しているので、パルテノン神殿と比較しながら読んでみてください。
合わせて読みたい!【法隆寺地域の仏教建造物 | 世界最古の木造建築】世界遺産登録理由をわかりやすく解説!15世紀に入ると、ギリシャはイスラム教の国オスマン帝国に支配されたため、パルテノン神殿はモスクに改築されました。
さらにその後はローマ帝国の支配下に入ったことで、次はキリスト教聖堂へと改築されました。
このように、ギリシャは歴史上数々の国に支配されたため、パルテノン神殿の用途も次々と変わっていったのです。
なお、パルテノン神殿の詳細な造りに関しては、下記の書籍でイラスト付きでわかりやすく解説されています。
今回の記事内容の参考にもしているので、ぜひ一度手にとって読んでみてください。
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エレクティオン神殿
エレクティオン神殿最大の特徴は女性の形に彫られた柱
- 「アテナ」「ポセイドン」「ゼウス」「エレクテウス」などギリシャ神話の神々がまつられている
- 「アテナ VS ポセイドン」の争いの場
- 「カリアティード」と呼ばれる乙女の姿をした柱が特徴
エレクティオン神殿は、アクロポリスに築かれた神殿の中では比較的新しい、イオニア式の神殿です。
パルテノン神殿との大きな違いは、「カリアティード」と呼ばれる、柱が乙女の形に彫刻・装飾された芸術性に優れた姿をしている点です。
また、神殿の屋根にはアテナとポセイドンが激しく競い合う姿が描かれており、古代ギリシャの歴史やギリシャ神話を理解する上で非常に重要な神殿とされています。
用語メモ
ポセイドンとは、”海神”とも称される海や泉をあやつる神様。ギリシャ神話の中では最も権力を持つゼウスに次ぐ強さを誇っていたとされている。アテナ・ニケ神殿
比較的小規模な「アテナ・ニケ神殿」
- イオニア式の小さな神殿
- 勝利の女神ニケの像がまつられていることで有名
アテナ・ニケ神殿は、”勝利の女神”と称されるニケの像がまつられていることが神殿名の由来となっている、比較的小規模の神殿です。
本来、ニケには翼が生えてますが、神殿にまつられているニケ像には翼がありません。
理由は、勝利が飛び立って永遠に逃げてしまわないように、あえてニケの翼を切り落としたとされています。
アゴラ
「アゴラ」は各都市の主要な集会場として建てられた広場
- プラトンやソクラテスなどが哲学や政治を論じた集会場
- アゴラ周辺には様々な公共施設も整備された
アゴラは、プラトンやソクラテスといった、現在の世界の成り立ちの起源とされる仕組みをつくった哲学者の集会場です。
お偉いさんや一般の人々がそれぞれ権力を持つ「民主制」が行われるなど、その後の世界に大きな影響を与えるきっかけとなった建築物です。
また、アゴラ周辺には様々な公共施設も整備されたため、アテネ市民の交流の場としても活用されていました。
理由4:古代ギリシャ文明&ギリシャ神話を今に伝える建築物が残されている
海の神「ポセイドン」はギリシャ神話の主要な登場人物
古代ギリシャ文明やギリシャ神話といった、世界に大きな影響を与えてきた歴史を刻む建築物が数多く残されている点が高く評価されました。
具体的な高評価ポイントは以下の通りです。
- 古代ギリシャ人の建築技術の高さと多様性
- 宗教の成立から変化の歴史が見られる
- ギリシャ神話をもとに作られたアテネの都市計画
前述の「理由3:古代建築の魅力が集まっている」で解説したように、ギリシャ建築は黄金比を用いた建築を行うなど、当時としては非常に高い技術力を誇ってました。
加えて、複数の建築様式を用いるといった多様性も見ることができます。
ペリクレスは、パルテノン神殿などの建築に関わったアテネの政治家です。
政治家にも関わらず、古代ギリシャにおいて多くの巨大建築物を手掛けました。
その目的は、巨大建築物をつくり民衆の注目を集めて、指導者としての位置を確立させるためです!
選挙対策のためにパルテノン神殿を建築して注目を集めようとした、とも言われているほどです。
また、都市の名前にもなったアテナは、ポセイドンに対抗して槍で大地を叩き、オリーブの木を生み出したと言う伝説が残されています。
実際にアクロポリス周辺では、現在もオリーブの木を見ることができます。
なお、アクロポリスやパルテノン神殿の伝説・謎については、下記の書籍でより詳しく解説されてます。
今回の記事内容の参考にもしているので、ぜひ一度手にとって読んでみてください。
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現在見られる姿は復元されたもの!?
現在も修復工事が進められている「パルテノン神殿」
パルテノン神殿をはじめ現在アクロポリスで見られる神殿群は、紀元前5世紀頃の姿に復元したものです。
17世紀頃、ギリシャはイスラム教の国オスマン帝国に支配されていました。
その時のパルテノン神殿は火薬庫として使われていたため、敵国からの標的の的になっていたのです。
火薬庫として使われていたパルテノン神殿をヴェネツィア共和国の軍が攻撃したことで、パルテノン神殿は大きな被害を受けました。
現在も修復作業が進められています。
また、パルテノン神殿の大理石の彫刻や、エラクティオン神殿の柱の彫刻であるカリアティードは、イギリスの大英博物館など各地で展示されています。
パルテノン神殿のような数千年前の遺跡は、多くの場合復元されたものが多いです。
ただし、神殿が建っていた跡(遺構)などが残されていれば、建物自体を復元しても世界遺産登録されることはよくあります。
なお、日本の世界遺産の縄文遺跡群も多くが復元されたのです。
復元秘話や各遺跡の魅力に関しては下記の記事で詳しく解説してます。
合わせて読みたい!【北海道・北東北の縄文遺跡群】世界遺産登録理由&構成資産をわかりやすく解説!本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3,4級レベル
アテネにある今なお神殿群が残されている丘の名称として正しいものはどれか。
- アクロポリス
- オデオン
- パンテオン
- アゴラ
①
答え(タップ)>>2級レベル
アテネにある乙女の彫刻が施された柱を持つ神殿の名称として正しいものはどれか。
- カルナック神殿
- パルテノン神殿
- エル・ハズネ神殿
- エレクティオン神殿
④
答え(タップ)>>1級レベル
「アテネのアクロポリス」に関する説明として誤っているものはどれか。
- 神殿群にはドーリア式とイオニア式が採用されている
- 古代ギリシャ建築の特徴は過度な装飾はせず建物全体の黄金比を重視する点
- パルテノン神殿はペルシア戦争の勝利を祝ってアテナに捧げられた神殿
- 神殿付近の崖からは古代人の化石や青銅器などの備品が見つかっている
④
答え(タップ)>>まとめ
- アクロポリスとはアテネにある小高い丘を指す。
- パルテノン神殿など世界を代表する古代遺跡が今なお残されている。
- 古代ギリシャの建築は過度な装飾はせず建物全体の黄金比を考慮した造りになっている。
- 神殿には「エンタシス」と呼ばれるふくらみを持たせた柱が採用されている。
- 古代ギリシャ建築の代表的なものが「ドーリア式」と「イオニア式」の2つ。
- エレクティオン神殿の特徴は「カリアティード」と呼ばれる乙女の彫刻が施された柱。
- アゴラは古代ギリシャにおける集会場。
- 現在見られる神殿群は紀元前5世紀頃の姿に復元させたもの。
おまけ:「アテネのアクロポリス」のプチ観光情報
最寄り都市 | アテネ |
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最寄り空港 | アテネ国際空港(エレフテリオス・ヴェニゼロス国際空港) |
公用語 | ギリシャ語 |
通貨 | ユーロ |
観光のベストシーズン | 5〜9月 |
時差 | 8時間(サマータイム時は7時間) ※日本の方が8時間進んでます。 |
治安 | 比較的良い |
物価 | 普通(日本とほぼ同じ) |
入場料 | アクロポリス遺跡 大人:20ユーロ 18歳未満:無料 アゴラ 大人:10ユーロ 18歳未満:無料 |
アクロポリスのあるアテネは、観光スポットが数多くあるギリシャの首都です。
一時期は治安面に不安がありましたが、現在は比較的落ち着いており、街中は観光客が非常に多いため安心して観光することができます。
また、アテネは直射日光が強いため、夏は帽子やサングラスが必須アイテムになります。
アクセス
残念ながら、日本からアテネへの直行便は就航していません。
一般的には、ヨーロッパ各都市や中東各都市を経由してアクセスすることになります。
- 日本各空港 [フライト時間:10〜13時間] ⇨ ヨーロッパ各都市(パリ、フランクフルト、他) or 中東各都市(ドバイ、イスタンブール、他)[フライト時間:2〜5時間] ⇨ アテネ国際空港
- アテネ国際空港 [地下鉄乗車時間:約40分] ⇨ アクロポリス駅 [徒歩:約10分] ⇨ アクロポリス
「空港 – 市内」へのアクセス方法は、地下鉄以外にもバスを利用することもできます。
なお、アテネの地下鉄ではスリがよく発生するため、手荷物管理には十分に気をつけましょう。
アクロポリス周辺のホテル情報
- アクロポリス周辺は非常にホテルが充実
- ホテルグレードは3〜5つ星まで幅広い
- アクロポリスを眺められるホテルも多数あり
アクロポリスはアテネ市内の中心部に位置するため、ホテルが非常に充実しているエリアです。
3〜5つ星ホテル、高級ホテル〜ゲストハウスなど、自分好みのホテルを探すことが可能です。
また、ホテルや客室によっては、世界遺産のアクロポリスを眺められるホテルもあります。
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。