こんな方にオススメの内容!
- なぜ屋久島が世界遺産に登録されたのか理由が気になる!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 次の旅行先の候補地を探している!
遺産ポイント
- 「山岳島」である屋久島の気候によって植物の垂直分布が見られる!
- スギにとって適した屋久島の自然環境により「縄文杉」などに代表される寿命の長いスギが生育している!
- 「屋久島憲法」など具体的な保護下に置かれているため原始的な姿を今もなおとどめられている!
「屋久島」のプロフィール
登録名称 | 屋久島 |
---|---|
登録年 | 1993年 |
所在国 | 日本(鹿児島県) |
登録ジャンル | 自然遺産 |
登録基準 | (vii)(ix) |
備考 | 日本で最初に登録された4つの世界遺産の内の1つ |
屋久島という特殊な環境から誕生した動植物
原始的な世界が今もなお残る屋久島の自然
「山岳島」という特殊な自然環境
屋久島はよくある一般的な島とは大きく異なる形状をしています。
それはズバリ
「山岳島」という点です!
島の面積にもよりますが、屋久島の面積「541km²」ほどの島である場合は山があったとしてもそこまで標高は高くなく、どちらかというと平地が占める面積が多い島が大半です。
しかし、屋久島は島全体の面積の多くが山岳地帯になります。
例えば、屋久島で最も標高の高い山である「宮之浦岳(1,936m)」はなんと九州で最も高い山なのです!
他にも標高が1,000〜2,000m級の山々が連なるため、屋久島は日本で最も有名な山岳島ともいえます。
「植物の垂直分布」という屋久島独特の植生
主に山頂に生育する「ヤクシマシャクナゲ」
前述でも触れたように、屋久島は平地よりも標高の高い山が連なる山岳地帯が面積の大半を占めています。
このような島の環境の影響で海岸からすぐに標高が上がり、標高が上がるにつれて気候にも大きな変化が出てきます。
そして気候が変動することで「植物の垂直分布」という特殊な自然環境を作っているのです!
屋久島は海岸から最も標高が高い山頂までの標高差が「約2,000m」もあります。
このような激しい標高差により、一つの島であるにもかかわらず様々な地域に生育する植物を見ることができるのです!
具体的な気候としては、屋久島には「亜熱帯〜亜高山帯」までが存在します。
加えて森林の発達や多雨によって平均気温が10℃を下回ることが少ない環境であるため、植物の種類が島に幅広く分布しています。
このような標高や場所によって植生している植物が変化する点が世界的に見ても貴重と評価されて、世界遺産に登録されるきっかけとなりました!
植物の垂直分布のイメージ
ちなみにこの「植物の垂直分布」は、他の日本の自然遺産だと「知床」でも見ることができます!
気になる方は下記の記事をご覧ください。
合わせて読みたい!【知床 | 独特な食物連鎖】多様な生態系が見られる要因と世界遺産登録理由をわかりやすく解説!屋久島に植生する木といえば「スギ」
推定の樹齢が約7000年とされる屋久島の代名詞「縄文杉」
屋久島には多くのスギが自生してます。
しかし一方で、本土でよくみられる「ブナ」や「ミズナラ」といった樹木は全く見られません。
これは屋久島の特殊な気候が大きく関わってきます。
一方で、スギは屋久島に限らず日本のほとんどの地域で見ることができますよね。
しかし、屋久島に自生しているスギは他の地域のスギとは大きく異なる点があります!
具体的な異なる点は下記の2点です。
- 樹齢が長い
- 幹が太いものが多い
このような特徴的なスギへと進化した理由に関しては、後述の「自然環境による独自の進化」で詳しく解説します。
屋久島のスギは、樹齢によってスギの呼び名が変わります。
樹齢1,000年以上 | 屋久杉(2,000本以上が植生) |
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樹齢1,000年未満 | 小杉 |
また特に樹齢の長い屋久杉の幹は非常に太いのが特徴です。
中でも「縄文杉(じょうもんすぎ)」と呼ばれる屋久杉は屋久島最大の観光スポットにもなっているほどです!
なお屋久島のスギは主に「標高600〜1800m」に最も多く生育しているのでちょっとした登山が必要になります。
また屋久杉は、「遺存固有」という点も大きな特徴です!
簡単にいうと、他の地域(主に本土)から離れている歴史が長い影響で、スギ以外の樹木の生育があまりなく必然的に島に生育しているスギが固有のものとして進化を遂げていくといったニュアンスです。
在来種から固有亜種へと変化した動物
屋久島に生息する固有亜種の「ヤクザル」
屋久島には主に、下記の固有亜種が生息しています。
- ヤクザル
- ヤクシカ
- ヤクシマジネズミ
しかし実は、「ヤクザル」と「ヤクシカ」のもともとの名前は「ニホンザル」「ニホンシカ」でした。
屋久島の起源は地殻変動によって海底から誕生した島です。
その後の氷期で海面が下がったことによって、一度九州と陸続ききなりました。
そう、この陸続きとなった時期に九州に生息していたニホンザルやニホンシカが屋久島に渡ってきたのです!
その後氷期が終わり再び九州から離れて島となった屋久島ですが、島に渡ったままの動物はそのまま取り残されました。
そして屋久島の環境に適応すべく、少しづつ動物たちは進化を遂げていきました。
このように、屋久島の環境下で生きていくために独自の進化を遂げたからこそ、「ヤクザル」「ヤクシカ」のような固有亜種が誕生したのです!
「屋久杉」が数多く植生する理由
自然環境による独自の進化
屋久島の人気フォトスポットになっているハート型に見える「ウィルソン株」
屋久島には、屋久杉が植生するのに適した地盤が揃っています。
それは、「花こう岩」で地盤ができている点です!
地盤が花こう岩でできていることによって下記のような好循環が生まれます。
- 花こう岩の地盤は土に養分が少ないためスギの成長が遅い
- 成長が遅いため年輪の幅が狭くなり幹が硬くなる
- 硬くなった幹には他の地域のスギの約6倍以上の樹脂がある
- 樹脂が多いことにより「木の腐敗を遅らせる」「防虫対策になる」といったメリットを持つ
- 腐りにくいため「倒木更新」や「切り株更新」が起こりやすい
- 生命力が強いため寿命が長くなる&生育範囲を広げる
ちなみに「倒木更新」と「切り株更新」とは、下記のようなイメージです。
倒木更新 | 寿命や自然の脅威によって倒れた木から新しい木が育つこと |
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切り株更新 | 自然の脅威などで断面が切られた木から新たな木が育つこと |
保全活動が行われた歴史的背景
屋久島に数ある滝のうちの一つ「千尋滝」
屋久杉が今もなお多く植生している理由は、何も自然環境の影響だけではありません。
人類による「保全活動」のたまものでもあるのです!
もともと屋久杉は、古くから島人達の間では「神の木」として信仰されていました。
そのため土木用に伐採するなどは考えられなかったのです(諸説あり)
ところが江戸時代になると、貴重な資源と考えられて伐採され始めました。
しかし、改めて屋久杉は日本が誇る貴重な樹木であることを認識し始め、1923年に「屋久島憲法」が制定されて天然記念物に指定されました!
さらに1964年には、屋久島の隣の島の霧島とともに国立公園に指定されてさらに保護意識が高められました。
そして1980年には、完全に屋久杉の伐採が禁じられました。
その後も「生物圏保存地域」や「ラムサール条約」にも指定され厳重に保護されています。
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3, 4級レベル
屋久島の植生するスギで樹齢1,000年以上のスギを通称何と言うか選びなさい。
- 大杉
- 屋久杉
- 小杉
- 古代杉
②
答え(タップ)>>2級レベル
屋久杉が天然記念物に指定されるきっかけとなった1923年に制定され制度として正しいものを選びなさい。
- ラムサール条約
- 屋久島憲法
- 自然環境保全法
- 生物多様性基本法
②
答え(タップ)>>1級レベル
屋久島の「植物の垂直分布」に関する説明として誤っているものを選びなさい。
- 屋久島は海岸から最も標高が高い山頂までの標高差が「約2,500m」もある。
- 森林の発達や多雨によって平均気温が10℃を下回ることが少ない環境である。
- 屋久杉は主に標高600〜1800m付近で生育している。
- 標高100m未満には主に「メヒルギ」「ガジュマル」などが生育している。
①
答え(タップ)>>「屋久島」のまとめ
- 「山岳島」という形状なため一つの島に様々な気候が存在し「植物の垂直分布」を見ることができる!
- 樹齢1,000年を超える「屋久杉」は主に標高600〜1,800mに植生している!
- 本土に生息していた動物が屋久島に移動して独自の進化を遂げた例として有名なのが「ヤクザル」と「ヤクシカ」!
- 屋久島のスギは腐りにくい特性を持つため「倒木更新」や「切り株更新」が起こりやすい!
- 「屋久島憲法」「生物圏保存地域」「ラムサール条約」などによって島は守られ続けている!
おまけ:屋久島はあの名作ジブリの舞台になった!?
屋久島の中でも、特に”原始的な森の世界を見ることができる”として有名なの場所があります。
「白谷雲水峡(しらたにうんすいきょう)」です。
この渓谷はコケを専門とする日本の学会が
日本の貴重なコケの森
に制定したほど多くのコケが繁っている日本有数のコケスポットです。
実はこのコケスポットは、ジブリの名作「もののけ姫」に出てくる森のモデルとされているのです!
このような話が広まってから、多くのジブリファンが屋久島を訪れているとかいないとか。
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。