こんな方にオススメの内容!
- なぜ「ウィーン」が世界遺産に登録されたのか理由が気になる!
- ウィーン歴史地区が危機遺産に登録されてしまった理由を知りたい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- オーストリアへの旅行を考えている!
遺産ポイント
- 「ベルヴェデーレ宮殿」「聖シュテファン大聖堂」など歴史的建造物が数多く残る!
- 19世紀に「リンクシュトラーセ」という環状道路が都市改造計画によって誕生!
- モーツァルトやベートーヴェンなどの有名音楽家・芸術家が数多く活躍!
「ウィーン歴史地区」のプロフィール
登録名称 | ウィーン歴史地区 |
---|---|
登録年 | 2001年 |
所在国 | オーストリア |
登録ジャンル | 文化遺産(2017年:危機遺産登録) |
登録基準 | (ii)(iv)(vi) |
ウィーン歴史地区とは(世界遺産登録範囲)
ウィーンの街並み
ウィーンとは現在のオーストリアの首都で、現代のみならず中世ヨーロッパでも非常に大きな影響力を持っていた、ヨーロッパを代表する都市です。
そのウィーンの歴史的な街並み自体が世界遺産に登録されています。
ウィーンのようにヨーロッパの多くの都市は、近代的な都市開発を厳格に制限しています。
そのため、中世当時の街並みがほぼ完全な状態で現在も残っているため、建物だけでなく街自体が世界遺産に登録されるケースが多いのです。
さらに、世界遺産に登録されている歴史地区の中に、歴史的に価値の高い建造物が多く建っています。
ただし、近年は市内に近代的な建造物が建てられるようになってきました。
つまり、歴史的な街並みが失われはじめているのです!
現在のウィーンの街並み問題に関しては、後述の「ウィーン歴史地区が危機遺産に登録された原因」で詳しく解説します。
ウィーン歴史地区が世界遺産に登録された理由
ウィーンの世界遺産登録に大きく影響しているのが下記の2点です。
- 独特な街の発展
- 音楽・芸術の都
「ウィーン = 美しい街並み」
「ウィーン = 音楽の街」
ウィーンについてほとんど知らない人でも、このような連想は容易にできるのではないでしょうか。
つまり、建築や芸術の分野で世界的な影響力を持っている街がウィーンなのです。
さらにウィーンの街づくりの歴史は、同じく世界遺産に登録されている他のヨーロッパの都市とは大きく異なる点があります。
その異なる点とは、建造物によって建築様式が異なることです!
建築様式の変化の詳細に関しては、後述の「2,000年にわたる街づくりの過程が見られる」で解説します。
2,000年にわたる街づくりの過程が見られる
他の主要なヨーロッパの都市と違い、ウィーンには様々な建築様式の建物が点在しているのが特徴です。
様々な様式の建造物がある要因は、ウィーンの街の歴史が約2,000年と非常に長いことが挙げられます。
まずは、建造物別の様式を建造年代と見比べてみましょう。
12世紀 | 聖シュテファン大聖堂 | ロマネスク様式 ⇨ 13世紀にゴシック様式へ変更 |
---|---|---|
13世紀 | ホーフブルク宮殿 | バロック様式、ルネサンス様式などが混ざる |
18世紀前半 | ベルヴェデーレ宮殿 | バロック様式 |
19世紀 | ウィーン国立歌劇場 | ネオ・ルネサンス様式 |
19世紀 | ウィーン市庁舎 | ネオ・ゴシック様式 |
ウィーンに様々な様式の建物が数多く存在する要因は、大きく下記の2つに分けられます。
- 街の拡大(〜18世紀)
- 都市改造計画(19世紀〜)
街の拡大は、ウィーンを統治していた国や戦いの影響が非常に大きいです。
13世紀のルドルフ1世統治時代は、ハプスブルク家の影響でロマネスク様式、ルネサンス様式を中心とした建物が建てられていきました。
この時代では、まだウィーンを囲んでいた城壁内で街が発展していきました。
その後オスマン帝国に勝利したことで、城壁を飛び越して街がさらに拡大しました。
すると、豪華絢爛な建物が多いことで知られるバロック様式の建物が次々と建てられていったのです!
また、19世紀には都市改造計画が持ち上がりました。
その結果城壁は取り壊され、城壁の跡地に「リンクシュトラーセ」と呼ばれる環状の道路(東京の山手線のような形)が造られたのです!
そして環状道路沿いには、ゴシック・リバイバル様式、ネオ・ルネサンス様式などの建物が増えていきました。
さらに、従来の伝統的な様式だけでなく、機能性を求めた現代的な建築様式へと移行していったのです。
ウィーンの街づくりを見るだけで、歴代のヨーロッパの文化的&政治的な発展段階をうかがうことができます。
このような文化交流の変化を見ることができる点が、世界遺産登録に影響した要因の一つなのです!
ヨーロッパの音楽・芸術の中心として発展した歴史
ウィーンは街づくりとともに、著名な音楽家や芸術家の活動の場となった歴史もあります。
ウィーンで活躍した代表的な音楽家や芸術家としては、下記などが挙げられます。
- ハイドン(音楽家)
- モーツァルト(音楽家)
- ベートーヴェン(音楽家)
- グスタフ・クリムト(芸術家)
ウィーンはヨーロッパの音楽・芸術の中心都市として大きく繁栄したのです!
このように文化的な影響力を持った街や文化財に対しては、世界遺産登録基準の(vi)が認められやすいです。
(登録基準に関しては、こちらの記事で詳しく解説してます)
例えば、ウィーンのシンボルの一つである「ベルヴェデーレ宮殿」内には、グスタフ・クリムトなど19〜20世紀に活躍した芸術家の作品が飾られています。
ウィーン国立歌劇場内には、ウィーンを代表する芸術家たちによって作られた彫刻やフレスコ画が飾られています。
建物の建築様式や街並みの美しさだけでなく、建物内部の装飾や音楽文化の発信基地としても、ウィーンは世界に大きな影響を与えていたのです。
世界遺産に登録されている建造物
18世紀にペスト(感染症)撲滅を祈願して建てられた「カールス教会」
ウィーンには建物単体で世界遺産に登録されてもおかしくないほど、歴史的に価値のある巨大な建造物が多く点在しています。
世界遺産に登録されている主な建物は以下の通りです。
- ベルヴェデーレ宮殿
- 聖シュテファン大聖堂
- ウィーン国立歌劇場
- ザンクト・ミヒャエル聖堂
- ショッテン修道院
- ホーフブルク宮殿
- 美術史美術館
- マリア・アム・ゲシュターデ聖堂
- ウィーン市庁舎
- ウィーン大学
- カールス教会
今回は特にウィーンを象徴する建造物をいくつか詳しく解説します。
ベルヴェデーレ宮殿
現在は美術館になっている「ベルヴェデーレ宮殿」
- サヴォイア公オイゲンによって18世紀前半に建造。
- ウィーンを代表するバロック様式の宮殿。
- ベルヴェデーレとはラテン語の「美しい眺め」を意味する語源。
- 宮殿は「下宮:居住用」「上宮:迎賓館」に分かれる。
宮殿は丘の上に建造されているため、名前の通り宮殿から美しいウィーンの街並みを一望することができます。
現在は美術館として使われており、19〜20世紀に活躍した数多くの芸術家の作品を見ることができます。
聖シュテファン大聖堂
ゴシック様式でウィーンのシンボル的存在の「聖シュテファン大聖堂」
- 12世紀に建造。
- 工事によってロマネスク様式からゴシック様式に変更。
- 南北に塔が建てられているが南塔の方が圧倒的な高さを持つ。
完成当時はロマネスク様式で建造されました。
しかし13世紀の工事によって、ゴシック様式へと変更されました。
また南側に建つ巨大な塔がシンボルとなっていますが、当時は北側にも同等の大きさの塔を建造する予定でした。
しかし、財政難の影響で北側に巨大な塔を建造することが困難になってしまったのです。
最終的には、南側に丸い屋根が取り付けられて落ち着くことになりました。
ウィーン国立歌劇場
世界中の音楽家がステージに立つことを憧れる「ウィーン国立歌劇場」
- 音楽の都ウィーンの象徴的建造物。
- 19世紀に行われた都市改造によって建造されたネオ・ルネサンス様式の劇場。
- 完成後の一番最初の公演では、モーツァルトの作品「ドン・ジョヴァンニ」が上映された。
「歌劇場 = ウィーン国立歌劇場」
このように言っても過言ではないほど、世界的に有名な劇場です!
日本を代表する指揮者「小沢征爾(おざわせいじ)」氏が、2002〜2010年の間、音楽監督を務めたことでも有名です。
しかし過去には、第二次世界大戦によって大きな被害を受けました。
それでも大規模な修復工事が行われ、当時とほぼ変わらない姿を取り戻すことに成功したのです。
ウィーン市庁舎
ライトアップされた美しい「ウィーン市庁舎」
- ウィーン1区という中心部に建つ市役所庁舎。
- 「フリードリヒ・シュミット広場」というウィーンのシンボル的存在の広場に位置。
- 100mを超える高さを持つ尖塔がシンボル。
ウィーン市内のほぼ中央に位置するため、観光客の多くが一度は目にする、ウィーンを代表する歴史的建造物です。
市庁舎の前の広場では、毎年冬に開催されるクリスマスマーケットをはじめ、様々なイベントが年中行われています。
ウィーン歴史地区が危機遺産に登録された原因
旧市街の奥には近代的な高層ビルがそびえる
驚くべきことに、ウィーン歴史地区は2017年に危機遺産に登録されてしまいました。
(危機遺産の詳細に関しては、こちらの記事をご覧ください)
危機遺産に登録された最大の原因は下記になります。
世界遺産登録範囲内で再開発計画が挙がった
つまり、歴史地区に近代的な建物が建造されようとしているのです!
もし世界遺産登録範囲内に近代的な建物が建てられたら、ほぼ間違いなく世界遺産リストから抹消されます。
一方で、建設”計画”の段階だと、「危機的状況に迫っている」という捉え方になるため、危機遺産リストに加えられるのです。
具体的な再開発内容は下記になります。
- 大型高層ビルの建設
- ホテルの建設
- スケートリンクの整備
近代的な建物が建造されると、ウィーン歴史地区の景観が損ねる恐れがあります。
そのため、歴史地区として世界遺産に登録されている街では開発事業に大きな制限が設けられているのです。
また、歴史的建造物周辺に近代的な建造物を建設することも制限されています。
ウィーンの経済政策の一つとして、企業や富裕層の誘致が挙げられました。
誘致のためには、オフィスや高級ホテル、インフラの整備などが必要となります。
このように経済政策を優先するか、それとも景観の維持を優先するかで揉めているのです。
景観問題の実例を挙げると、かつて世界遺産だったドイツの「ドレスデン・エルベ渓谷」は、近代的な橋の建設が開始されたことで、世界遺産リストから抹消されてしまいました。
このドイツの例は、街に近代的な橋を建設することで利便性が増すことを優先した結果です。
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3・4級レベル
『ウィーン歴史地区』に含まれる歴史的建造物として誤っているものはどれか。
- 聖シュテファン大聖堂
- ベルヴェデーレ宮殿
- シェーンブルン宮殿
- ザンクト・ミヒャエル聖堂
③
答え(タップ)>>2級レベル
『ウィーン歴史地区』が危機遺産に登録された理由として正しいものはどれか。
- 世界遺産登録範囲内で再開発計画が挙がった。
- 観光客の増加によりゴミの不法投棄が増え街が汚れてきている。
- 歴史的建造物の劣化が進み倒壊の危険が恐れられている。
- 世界遺産登録範囲内に流れる川の水質汚染が問題視されている。
①
答え(タップ)>>1級レベル
『ウィーン歴史地区』に関する説明として誤っているものはどれか。
- ウィーン国立歌劇場の一番最初の公演では、モーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』が上演された。
- 聖シュテファン大聖堂は建築当初はロマネスク様式だったが13世紀からの工事によってゴシック様式に変更された。
- 19世紀に都市改造によって城壁が取り壊され、跡地にリンクシュトラーセと呼ばれる環状道路が造られた。
- ウィーンの街の歴史は約1,000年を数え、ヨーロッパの文化的・政治的な発展段階を示している。
④
答え(タップ)>>まとめ
- ウィーンの街の歴史は約2,000年を数える!
- 「ベルヴェデーレ宮殿」や「聖シュテファン大聖堂」などの歴史的建造物が数多く残る!
- 度重なる工事や街の造りの変化に合わせて様々な建築様式が採用されていった!
- 19世紀に行われた都市改造によってリンクシュトラーセという環状道路が完成した!
- 環状道路完成以降は伝統様式から機能性を持った建築様式へと移行していった!
- モーツェルトやベートーヴェンといった著名な音楽家・芸術家が多く活躍した!
- 再開発計画案が挙がったことによって危機遺産に登録された!
おまけ:「ウィーン歴史地区」のプチ観光情報
人口 | 約190万人 |
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最寄の空港 | ウィーン国際空港 |
通貨 | ユーロ |
観光のベストシーズン | 通年(6〜9月は過ごしやすく、冬はクリスマスマーケットなどで賑わう) |
時差 | 7時間(東京 – ウィーン間) ※日本の方が7時間進んでます。 |
治安 | 良好(軽犯罪には要注意) |
物価 | 日本とほぼ同じ |
ウィーンには、世界中から年間約2,000万人もの観光客が訪れています。
この人数は、オーストリア全土の人口「約900万人」の2倍以上に相当するのです。
観光客が多い影響もあり、有名な観光スポットは年中大混雑します。
入場の予約ができる施設に関しては、事前にスケジュールを立てて観光を楽しむことをお勧めします!
ウィーンまでのアクセス
ウィーンへは、成田・羽田の2空港から直行便が就航しています。
それ以外の空港からは、最低1回の乗り継ぎが必要です。
- 成田・羽田 ⇨ ウィーン国際空港(フライト時間:約12時間)
- 成田・羽田以外の空港 ⇨ 中東各都市(ドバイ、ドーハ、イスタンブールなど) ⇨ ウィーン国際空港(フライト時間:約15〜18時間)
また空港からウィーンの中心部へは、主に下記のような移動手段があります。
シティエアポートトレイン | 「空港-市内」を結ぶ専用鉄道。荷物スペースが広くゆったりと座れる。 |
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電車 | 移動手段の中で最もリーズナブル。 |
シャトルバス | 電車よりも少し値段が高く、移動時間も電車よりかかるため、あまり利用メリットはない。 |
タクシー | 電車やバスに比べると高い。宿泊ホテルまで直接迎えるため、旅行慣れしていない方にお勧め。 |
オーストリアは非常に治安が良い国であるため、鉄道やバスの利用であっても安心して乗車することができます!
ただし、観光地と言うこともありスリなどの軽犯罪は少なからず存在するので、手荷物管理には十分に気をつけましょう。
ウィーンのおすすめホテル:ホテル・ザッハー・ウィーン(Hotel Sacher Wien)
- ウィーンを代表する歴史と格式のある高級ホテル!
- 「ウィーン国立歌劇場」に隣接!
- ホテル内のカフェで食べられるザッハトルテが人気!
「ウィーン ホテル おすすめ」
このように検索すると、ほぼ間違いなくヒットするホテルが「ホテル・ザッハー・ウィーン」です。
つまり、ウィーンを象徴する世界的にも有名なホテルの一つなのです!
歴史を感じる外観はもちろん、クラシックなインテリアやアンティークの調度品など、ホテル内の装飾にも非常にこだわっています。
その美しく長い歴史を誇るホテルということもあり、様々な映画のロケ地としても使われているほどです!
またホテルの隣には、ウィーンを代表する観光スポット「ウィーン国立歌劇場」が建っており、ウィーンの中心部に位置するためウィーン観光の拠点としても最適です。
とりわけホテル内のカフェで食べれる「ザッハトルテ(オーストリアのチョコレートケーキ)」は非常に人気で、ここのカフェでザッハトルテを食べることを目的に訪問してくる観光客も数多くいるほどです。
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。