こんな方にオススメの内容!
- なぜヴェネツィアが世界遺産に登録されたのか理由が気になる!
- ヴェネツィアの街が海の上につくられた理由を知りたい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- イタリアへの旅行を考えている!
遺産ポイント
- ヴェネツィアは潟(ラグーナ)に築かれた海上都市
- 長らく地中海を支配し海上交易の拠点として大きく繁栄
- 「サン・マルコ大聖堂」「ドゥカーレ宮殿」「カ・ドーロ」など歴史的建造物も多く残る
「ヴェネツィア」のプロフィール
登録名称 | ヴェネツィアとその潟 |
---|---|
登録年 | 1987年 |
所在国 | イタリア |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (i)(ii)(iii)(iv)(v)(vi) |
備考 | 文化遺産の登録条件全てを満たしている |
世界遺産登録名称から見るヴェネツィアの特徴
カラフルな家々が立ち並ぶ「ブラーノ島」
- ヴェネツィア:海の上につくられた都市
- その潟(かた):潮の満ち引きによって水深が変わる浅い海
要するに、浅い海の上につくられた「ヴェネツィア」という海上都市全体が世界遺産に登録されているのです。
ただし、一言にヴェネツィアと言っても、街の全てが海の上につくられているわけではありません。
【ヴェネツィアの街の構成】
- 海の上
- 潟(ラグーナ)に点在する島々
- 大陸(イタリア本土)
例えば、ヴェネツィアの空の玄関口「ヴェネツィア・テッセラ空港(マルコポーロ空港)」は、大陸側の海沿いに位置しています。
また、観光のメインとなる旧市街の周辺の海には、数多くの島が点在しています。
このように、ヴェネツィアの姿は様々あり、世界遺産に登録されたエリアは主に人工的に海の上につくられた海上都市とその周辺になります。
世界遺産登録理由
「サン・マルコ広場」の美しい夜景
ヴェネツィアが世界遺産に登録された理由は、大きく分けて下記の3つになります。
- 美しい海上都市
- 海の交易で発展した歴史
- 「ヴェネツィア共和国」として地中海を支配した歴史
ちなみにヴェネツィアは、文化遺産に登録されるための6つの条件全てを満たしている、非常に貴重な世界遺産なのです!
他に類を見ない唯一無二の美しい海上都市
船の交通量が非常に多い運河「カナル・グランデ」
ヴェネツィアが世界遺産登録された最大の理由と言っても過言ではないのが、”美しい海上都市の街並み”でしょう。
他の国・都市ではなかなか見られない海の上に広がる姿は、世界を代表する美しい都市の一つであり、全人類で守っていかなければならない街並みです。
【ヴェネツィアの街のつくり】
- 周辺の島の数:118島
- 運河の数:176本
- 橋の数:400本以上
ヴェネツィアの街がつくられる以前、ヴェネツィアの人々は現在のイタリアとスイスの国境にそびえるアルプス山脈付近で生活してました。
しかし陸続きであった影響もあり、度々他の民族からの攻撃を受けていたのです。
そこでなるべく攻撃を受けないよう、逃げるようにして海の方まで移動してきました。
この海の方に移動してきた人々のことを「ヴェネト(ウェネティ)人」と呼びます。
そんなヴェネト人が後に海の上に街をつくったため、その海上都市を「ヴェネツィア」と呼ぶようになったのです!
現在のアドリア海(地中海の一部エリア)にたどり着いたヴェネトの人々は、敵からの攻撃を受けにくくするため、海の上に街を築くことを決めます。
さらにヴェネツィア周辺の海は、街づくりをする上で下記のような好条件が揃っていました。
- 海の波の影響を受けづらい内海(ないかい)に位置する。
- 水深の浅い海が長く続く。
- 杭(くい)を打ち込むことが容易な土壌をしている。
またヴェネト人は知恵を絞り、耐水性に優れた「イストリア」という石を積むことで、海の上に街を作ることを実現させたのです。
ただし、海の上につくられた街の面積はあまり広くありません。
限られた敷地で建物を建てなければならないため、隣り合うように家屋が密集して建てられている姿も、ヴェネツィアの街並みの特徴の一つと言えます。
交易による発展
ヴェネツィアの街が海の上に作られた大きなメリットの一つとして、海を行き来する国・民族との交流を容易に行える点が挙げられます。
ヴェネツィアの街がつくられてから現代に至るまで、海は物や人々を運ぶ”海上道路”としての役割があります。
つまり、海に街をつくることができれば、海を行き来する人々から金銭や情報を得たりすることが可能になるのです!
様々な国や民族から得た金銭やものを使って、ヴェネツィアの街をどんどん大きく発展していくことになります。
6世紀ごろ (約1500年前) | ヴェネツィアに人々が定住するようになる。 ⇨日本が多くの古墳を築いていた時代にあたる |
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7世紀 | 漁や交易により大きく繁栄し、本格的に海上に建物が建てられていく。 |
8世紀 | ビザンツ帝国に従属しつつ、ヴェネツィア共和国として独立をはたす。 |
9世紀 | 「サン・マルコ大聖堂」などの巨大な建造物が建てらていく。 ⇨聖マルコのシンボル「有翼の獅子」がヴェネツィア共和国の紋章になる。 |
10〜14世紀 | ヨーロッパやアジアを結ぶ貿易の一大拠点として大きく発展 |
15世紀 | オスマン帝国が地中海地域で力を強めたため、ヴェネツィアの海上貿易が弱まっていく。 |
18世紀末 | ナポレオン1世の侵攻を受けたことで独立国家ではなくなる。 ⇨約1,100年続いたヴェネツィア共和国の歴史に幕が降ろされた。 |
地中海地域の派遣を握った影響力と歴史
ヴェネツィア共和国の影響を受けて作られた街「ドゥブロブニク(クロアチア)」
ヴェネツィアの街が地中海に作られた理由は、”地中海を支配する”という目的もありました。
前述の「交易による発展」と大きく関わってきますが、海上道路を自分たちが管理することができれば、他国他民族の動きを完全に監視することができます。
つまり、地中海全域を支配することに繋がるのです!
地中海を支配した最強ヴェネツィアは、「アドリア海の女王」と称されていたほどです。
まだヴェネツィアの勢いは止まりません。
ヴェネツィアだけではなく、ヴェネツィアを守る&権力を示す目的でアドリア海沿岸に数多くの要塞を次々と建造し始めたのです。
ヴェネツィア共和国の支配領域
一時代の栄光を築いたヴェネツィアの痕跡は、今なお地中海沿いの街で見ることができます。
こうした世界への影響力を持った歴史の1ページは、世界遺産登録への大きな評価対象となりました。
世界遺産に登録されている主な建造物
決して安定した土地とは言えないヴェネツィアの街ですが、そんな環境であるにも関わらず、壮大で美しい建物がいくつも点在します。
厳しい建築環境にも負けず、歴史的に価値のある建物が現在も残っている点も、世界遺産登録をする上で大きな評価を受けました。
サン・マルコ大聖堂(寺院)
満潮時にはサン・マルコ大聖堂前の広場は完全に浸水する
- 「聖マルコ」にささげるために建てられた大規模な建物。
- 一度消失するもモザイク画などが特徴のビザンツ様式で再建される。
- 内部に描かれている「マルコの福音書」とヴェネツィアの歴史が有名。
サン・マルコ大聖堂は、ヴェネツィアのシンボルと言っても過言ではありません。
建物の大きさはもちろん、新約聖書の一部「マルコの福音書」の著者であるマルコにささげるために建てられた大聖堂として世界的にも有名です。
内部には、マルコの福音書の巨大なモザイク画が描かれており、訪れる人々を魅了し続けています。
ドゥカーレ宮殿
- もともとはヴェネツィアの街を守るための要塞。
- 14世紀にヴェネツィア共和国のリーダーの家に改築された。
- 画家ティントレットの作品「天国」が見られることで有名。
ヴェネツィアで最も豪華で有名な宮殿が「ドゥカーレ宮殿」です。
内部は黄金やモザイク画の装飾が施されており、大きな力を持っていた当時のヴェネツィアの偉大さを象徴している建物です。
リアルト橋
- 約1000年の歴史を持つ石造の橋。
- もともとは木造だった。
- ヴェネツィアで最も大きな運河「カナル・グランデ」にかかる。
- 橋の周辺はヴェネツィアで最も古いエリア。
ヴェネツィアを訪れたら、ほぼ間違いなく目にするシンボル的な橋です。
もともとは木で建てられていましたが、耐久性に問題があったため、16世紀に石造の橋へと改築されました。
カ・ドーロ
- ヴェネツィアで最も有名な家(邸宅)
- かつては壁一面に金箔が貼られていた。
「カ・ドーロ」は、「黄金の館」と呼ばれるほど金色に輝いていた時代もある、ヴェネツィアを代表する美しい建物の一つです。
ヴェネツィア・ゴシック様式と呼ばれる、ヴェネツィア独自の様式で建てられており、他の地域では見ることができない非常に珍しい建造物です。
危機遺産リスト入り!?ヴェネツィアの問題点
美しい街並みが保たれ、何も問題ないように見えるヴェネツィア。
しかし、実は多くの問題を抱えているのです!
- 地盤沈下
- オーバーツーリズム
一時は危機遺産リストへの掲載も検討されたほど、ヴェネツィアの保護・保全に注目が集まっています。
(危機遺産リストに関しては、こちらの記事で詳しく解説してます)
地盤沈下の恐れ!?
ヴェネツィア旧市街を横切る大型客船
ヴェネツィアの地盤は泥で、その泥の上に数多くの建物が建てられています。
泥であることからわかるように、決して地盤が安定しているわけではありません。
そんな環境のヴェネツィアですが、近年はヴェネツィアの潟近くで地下水や天然ガスの採取が積極的に行われています。
その結果、土壌が不安定になり、一部地域で地盤沈下が観測されてしまったのです。
ヴェネツィアの地盤沈下問題は早急に対応しなければなりません。
そのため1986年からユネスコが救済団体をつくり、世界各国から支援を受けられるような体制を取っています。
(ユネスコに関しては、こちらの記事で詳しく解説してます)
観光客が多すぎ!オーバーツーリズム
多くの観光客で賑わう「サン・マルコ広場」
ヴェネツィアの年間観光客数は、なんと約2500万人!
もちろん観光客数が多ければ観光収入も増えるため、金銭面では街が豊かになれます。
その一方で、下記のような問題が起こっているのも事実です。
- 住民の生活環境にまで観光が押し寄せている
⇨街中の移動が困難。プライバシーが無くなる。 - 大型客船の走行・寄港によって発生する大きな波で基盤が痛む
⇨ヴェネツィアの街の破壊に繋がる恐れ。 - ヴェネツィア周辺水域の生態系が悪化する恐れがある
⇨観光客のゴミ捨て。大量の汚水の流入。
このような数多くの問題を解決すべく、取り組みの一つとして下記が行われています。
ヴェネツィア近郊の大型客船の走行を禁止にする。
- 観光客の減少(コントロール)に繋がる。
- 波の影響を最小限にする。
旧市街から離れたところに巨大なドック(船の停泊施設)を建設し、そこに大型客船は停泊するような方針が出ています。
ただし客船に規制を強化しても、観光客の増加を食い止める効力としてはまだ弱いのが事実です。
ヴェネツィアの今後の環境保全対策に世界中が注目しています。
『Enjoy Respect Venezia』とは?
約500年の歴史を持つ「ため息の橋」
『Enjoy Respect Venezia』とは、持続可能で責任のある観光を促進する取り組みのことです!
【主な内容】
- 歩行者の邪魔にならない場所で飲食をする。
- 伝統工芸品や伝統料理の購入・尊重。
- 旧市街だけでなく周辺の島々への旅行を検討する。
- ごみのポイ捨て禁止。
- ハトへの餌付け禁止。
- 混雑回避のためハイシーズンを除いた時期に訪れることを検討する。
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3・4級レベル
ヴェネツィアのシンボルで、モザイク画などが特徴のビザンツ様式で建てられた建物の名称として正しいものはどれか。
- ウェストミンスター寺院
- ヒラルダの塔
- ベルヴェデーレ宮殿
- サン・マルコ大聖堂
④
答え(タップ)>>2級レベル
ヴェネツィアが面している海の名称として正しいものはどれか。
- 黒海
- ティレニア海
- エーゲ海
- アドリア海
④
答え(タップ)>>1級レベル
『ヴェネツィア』に関する説明として誤っているものはどれか。
- 地中海沿岸を支配し海上交易の拠点として発展した。
- 地盤沈下やオーバーツーリズムなど多くの問題を抱えている。
- ルネサンス文化の繁栄によって大きな富を得た。
- ドゥカーレ宮殿はかつて要塞として使用されていた。
③
答え(タップ)>>まとめ
- ヴェネツィアは潟(ラグーナ)に築かれた海上都市。
- 文化遺産に登録されるための6つの条件全てを満たしている。
- 他民族から逃れるためにアルプスからやってきたヴェネト人によって築かれた。
- 一時期は地中海沿岸を支配し海上交易の拠点として大きく繁栄した。
- 「サン・マルコ大聖堂」「ドゥカーレ宮殿」「カ・ドーロ」など歴史的建造物が数多く残る。
- 「地盤沈下」「オーバーツーリズム」などによる住民生活への支障の問題を抱えている。
おまけ:「ヴェネツィア」のプチ観光情報
人口 | 約25万人 |
---|---|
最寄の空港 | ヴェネツィア・テッセラ空港(マルコポーロ空港) |
通貨 | ユーロ |
観光のベストシーズン | 通年(特に4〜6月、9〜10月は晴天率が高い) |
時差 | 7時間(東京 – ヴェネツィア間) ※日本の方が7時間進んでます。 |
治安 | 比較的良い (スリなどの軽犯罪には要注意) |
物価 | 普通(日本とほぼ同じ) |
観光客が多いこともあり、日中であれば一人で出歩いていても問題ない治安です。
ただし、夜になると暗い道が多いため要注意です(特にスリなどの軽犯罪)。
宿泊費を含め物価はそれほど高くはありませんが、世界的な人気観光地ということもあり、ホテルやレストランの事前予約は必須です!
ヴェネツィアへのアクセス
イタリアの新幹線「ユーロスター」
残念ながら、「日本 – ヴェネツィア」間の直行便は就航していません。
そのため基本的には、下記の2つの方法でのアクセスになります。
【国内鉄道利用の場合】
- 日本の各空港 ⇨ ローマ or ミラノ空港(フライト時間:12〜13時間)
- ローマ・テルミニ駅 or ミラノ中央駅 ⇨ ヴェネツィア・サンタルチア駅(乗車時間:4〜5時間)
【他ヨーロッパ各都市経由の場合】
- 日本の各空港 ⇨ ヨーロッパ各空港(パリ、フランクフルト、ウィーン) ⇨ ヴェネツィア・テッセラ空港(マルコポーロ空港)
おすすめは直行便でイタリアに入って、鉄道でヴェネツィアへアクセスする方法です。
ヴェネツィアの到着駅である「サンタルチア駅」から、有名な海上都市(旧市街)へすぐアクセスできるためです!
ヴェネツィア観光に必要な最低日数は「2日」
ヴェネツィア観光に必要な最低日数は2日です!
【おすすめスケジュール例】
- 1日目:旧市街(ヴェネツィア観光のメイン)散策+ゴンドラでの運河巡り
- 2日目:サン・マルコ大聖堂を含む歴史的建造物巡り+ブラーノ島などの周辺の島巡り
ヴェネツィアは常に世界中の観光客で賑わっている観光都市であるため、1日で見どころを全て押さえることは非常に困難です。
観光のメインである旧市街以外にも、ヴェネツィアの湾には魅力的な島がたくさんあります。
欲を言えば3日は欲しいところですが、主要スポットを押さえるのであれば、最低でも2日は日数を確保しましょう!
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。