こんな方にオススメの内容!
- なぜタージマハルが世界遺産に登録されたのか理由が気になる!
- タージマハルが造られた目的や歴史を知りたい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- インドへの旅行を考えている!
遺産ポイント
- 登録基準(i)のみで世界遺産登録されている。
- タージマハルはムガル帝国の王シャー・ジャハーンと王妃ムムターズ・マハルの恋物語の影響で建てられた墓。
- 黒大理石の墓の建造計画も上がっていた。
「タージ・マハル」のプロフィール
登録名称 | タージ・マハル |
---|---|
登録年 | 1983年 |
所在国 | インド |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (i) |
備考 | 登録基準(i)のみで世界遺産登録されている非常に珍しい遺産 |
そもそも「タージマハル」とは?
お墓(霊廟)の東側に建つ赤い建物は「迎賓館」として使われていた
タージマハルの正体を理解するために、まずは”タージマハル”という単語の意味を理解してみましょう。
- タージ:王冠(ペルシア語)
- マハル:宮殿(ペルシア語)
つまり直訳すると、「王冠宮殿」となります。
ただし、実際にはタージマハルはお墓として使われています。
要するに
タージマハル = 王冠ぐらい豪華なお墓
このようなニュアンスになります。
タージマハルは”世界一美しいお墓”と称されるほどの姿をし、インドのシンボル的存在の建造物です。
南門 | メインのお墓に入る際に通る赤い砂(砂岩)づくりの門。 |
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霊廟(メインのお墓) | 白い大理石をふんだんに用いて造られたタージマハルのメイン部分。中央には巨大なドームを持ち、地上からドーム先端までの高さは約65mもある(東京ドームより約10mも高い)。 |
ミナレット | イスラム建築を代表する細い柱でお墓の4つの角に建てられている。 |
チャトリ | ミナレットの最上部に造られた小さな屋根(小塔)。インド・イスラム建築の装飾が特徴的。 |
迎賓館(げいひんかん) | 当初は”お祈りの場”として造られたが、イスラムの聖地メッカとは真逆の方向を向いてお祈りするような設計となってしまったため、迎賓館として使われるようになった。 |
- 建設指示者:シャー・ジャハーン(当時の国”ムガル帝国”の王様)
- 設計者:ウスタド・アフマド・ラホーリー ※諸説あり
タージマハルはなぜ造られた?
霧に包まれた早朝のタージマハル
タージマハルの建造目的は、ムガル帝国の王の妻(王妃)「ムムターズ・マハル」のためのお墓を建てたかったためです!
用語メモ
ムガル帝国とは、16〜19世紀にかけてインドで繁栄した国。「タージマハル」や「アーグラ城」などインドを代表する建造物はこの時代に建てられたものが多い。ムムターズ・マハルは、当時のムガル帝国の王「シャー・ジャハーン」の妻です。
そんな最愛の妻が亡くなったため、シャー・ジャハーンは妻を埋葬するために、豪華なお墓を建造することを決めました。
タージマハルの建造は、当時の国家プロジェクトとも言えるほどの計画でした。
一方で、あまりにも多額な建設費用だったため、”お金かけすぎ問題”が浮上する騒ぎにもなった歴史も持ちます。
シャー・ジャハーンとムムターズ・マハルの物語・歴史
周辺に高い建物が無いため遠く離れた場所からでも雄大な姿を見ることができる
- バザール(市場)で装飾品を販売していたムムターズ・マハルにシャー・ジャハーンが一目惚れ。
- 出会って5年後に結婚。
- 国の最盛期にムムターズ・マハルを連れて、デカン高原(インド中部)へ遠征。
- ムムターズ・マハルが遠征先で赤ちゃんを出産。
- 出産後、産褥熱(さんじょくねつ)という病にかかり、ムムターズ・マハルは36歳の若さで亡くなる。
- 妻のために豪華なお墓の建造計画が立ち上がる。
- 妻の死後、シャー・ジャハーンは国民に2年間は妻の死を惜しむ(過度な行動は禁止)を命じる。
- 2年後、タージマハルの建造が始まる。
ムガル帝国の最盛期にさしかかった時、王様のシャー・ジャハーンはムムターズ・マハルを連れて、南インドを自分たちの領土にするためにデカン高原へ遠征しはじめました。
しかし、ムムターズ・マハルに悲劇が訪れます。
なんと、遠征先での出産により細菌に感染し亡くなってしまったのです!
あまりに突然の妻の死に、シャー・ジャハーンは悲しみに暮れました。
その後、妻の死を惜しんで国を上げて豪華なお墓を建造する決心をしたのです。
そして、1632年から約20年もかけてタージマハルの建造が行われることになりました。
なお、このお墓建造にあたっては、世界各地から約2万人もの職人が集められました。
実は黒いお墓も造られる計画だった!?
南門から見た美しいタージマハル
タージマハルは、アーグラに流れるヤムナー川(ジャムナ川)沿いに建てられました。
そして実は川の対岸には、白いタージマハルと相反する”黒いタージマハル”の建造も計画されていたのです!
そう、この黒いタージマハルこそ、ムムターズ・マハルの夫(王様)であるシャー・ジャハーンのお墓の予定だったのです。
当初の計画ではお墓だけでなく、互いのお墓をつなぐ橋の建設も計画されていました。
しかし、前述の「タージマハルはなぜ造られた?」の文末でも触れたように、ムムターズ・マハルのお墓建造にあまりにも多くのお金を費やしてしまっていたため、黒いお墓&橋建造プロジェクトは強制的に終了させられてしまったのです。
なお、このプロジェクトの中止を決めたのは、シャージャハーンの息子である「アウラングゼーブ」です。
父の無駄遣いの様子に怒りを覚えた息子は、父から皇帝の座を奪いました。
さらに父をタージマハル近くの「アーグラ城」に閉じ込め、簡単に身動きが取れないような状態にさせました。
シャー・ジャハーンが閉じ込められていた「アーグラ城」
ただし、アーグラ城からはタージマハルを眺めることができたため、シャー・ジャハーンは自身が亡くなる直前まで、妻が眠るタージマハルを見続けていたと考えられています。
なお、シャー・ジャハーンの死後、シャー・ジャハーンの棺(ひつぎ)は、ムムターズ・マハルが眠るタージマハルの地下に並べられるようにして置かれました。
世界遺産登録理由
全ての建物や庭園の配置・構造が”左右対称”になっている点がタージマハル建築の特徴
タージマハルが世界遺産登録された理由は、世界を代表する美しい墓だからです!
文化遺産の登録基準の華型とも言われている、登録基準(i)が認められています。
(登録基準に関しては、こちらの記事で詳しく解説してます)
一方で、(i)以外の登録基準は認められていません。
理由は、後述の「なぜ登録基準が一つしか認められなかったのか」で詳しく解説します。
他に類を見ない美しい大理石の墓
外壁にはアラベスク模様など細かい装飾や彫刻が施されている
タージマハルは白く美しい姿の墓という、世界中どこを探してもなかなか見られない点が世界遺産登録の大きなポイントです。
美しいと言われる具体的なポイントは、主に下記などが挙げられます。
- 全ての建物・構造が”左右対称”
- イラン・イスラム建築×インド伝統建築×ヨーロッパ建築の融合
- 世界各国から集められた装飾
タージマハルの敷地は東京ドームの3倍以上。
高さは約65mで、墓としての規模は世界最大級です。
そんな巨大なタージマハルの建設には、ヨーロッパを含め世界中の職人が集められました。
集められた職人の中には、フランスの金細工師やイタリアの宝石工もいました。
その結果、ヨーロッパなど各国の建築様式も取り入れられることになったのです!
他にもタージマハル建築の特徴としては、下記なども見られます。
- タージマハル入り口の南門を潜るとペルシア式庭園「チャハル・バーグ」が広がる。
- 建物の前後左右に「イーワーン」と言われる開放式のホール(ペルシア建築の影響)が建つ。
- 外壁にはコーランの文章を表すアラビア文字やアラベスク模様などの装飾がある。
用語メモ
コーランとは、イスラム教のルールが記された書物(聖典)。イスラム教の人々の多くは現代でもコーランに書かれたルールを厳守しつつ生活を送っている。特にタージマハルの象徴的な特徴とも言えるのが、敷地内が”完全な左右対称”で設計されている点です!
- 庭園デザインが左右対称
- お墓の四方に立つ塔(ミナレット)の配置が左右対称
- ホールや迎賓館の配置・デザインが左右対称
なお、タージマハルの建築構造やデザインなどの詳細については、下記の書籍内でイラスト付きでわかりやすく解説されてます。
気になる方は、ぜひ一度手に取って読んでみてください。
- 商品名:歴史がわかる世界遺産イラスト大図鑑
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なぜ登録基準(i)しか認められなかったのか(考察)
タージマハルと同じく登録基準(i)のみで世界遺産登録されている「シドニー・オペラハウス」
タージマハルで世界遺産登録基準が一つしか認められなかった理由は、主に下記などが考えられます
(※あくまでも筆者の考察)
- 世界への影響度合いが低い。
- 周辺の街並みとの関連性が低い。
- 同じ街にあるアーグラ城に比べると歴史的価値に劣る。
タージマハルがあるアーグラという街には、「アーグラ城」という城も存在します(世界遺産登録済み)。
こちらの城は、ムガル帝国が大きく繁栄した過程や、イスラム教徒とヒンドゥー教の関わりの歴史を見ることができる点で、大きく評価を受けています。
一方でタージマハルは、アーグラ城よりも後に建てられた建物です。
そのため、歴史という観点ではアーグラ城に劣ります。
また建築という観点でも、世界に大きな影響を与えたという証拠が見られないため、(i)以外の登録基準が認められなかったと考えられます。
さらに、近年のインドの大気汚染により酸性雨が発生し、その酸性雨を浴びたタージマハルの大理石が徐々に劣化していくという心配もされています。
このように歴史や建築の観点でも、環境問題の観点でも、複数の登録基準が認められることが難しいのです。
なお、タージマハルと同じく、登録基準(i)しか認められなかった世界遺産として、オーストラリアの「シドニー・オペラハウス」が挙げられます。
オペラハウスに関しては下記の記事で詳しく解説してますので、ぜひタージマハルと比較しながら読んでみてください。
合わせて読みたい!【シドニー・オペラハウスはなぜ世界遺産?】登録理由&建築目的をわかりやすく解説!タージマハルがお手本にした墓「フマユーン廟」とは?
タージマハル建造でお手本にされたニューデリーにある「フマユーン廟」
実は、タージマハルはオリジナルのデザイン・建築方法で建てられたのではなく、お手本にした墓があります。
タージマハルがお手本にした墓とは、同じくインドにある「フマユーン廟」です。
前述の「他に類を見ない美しい大理石の墓」で解説した、”左右対称の設計”や”チャハルバーグ”というペルシア式庭園が採用されている点は、このフマユーン廟からアイディアをもらっています。
つまり、もしフマユーン廟が存在しなければ、今とは異なる見た目のタージマハルが建造されていた可能性があるのです。
このように、フマユーン廟は他のインド建築に大きな影響を与えた点が評価されたことが世界遺産登録の理由の一つです。
なお、フマユーン廟の詳細は下記の記事で解説しているので、ぜひタージマハルと比較しながら読んでみてください。
合わせて読みたい!【タージマハルとは?なぜつくられた?】世界遺産登録理由&歴史をわかりやすく解説!本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3・4級レベル
タージマハルの用途として正しいものどれか。
- 墓
- 天文台
- 王宮
- 記念碑
①
答え(タップ)>>2級レベル
タージマハルの建造を指示した人物として正しいものはどれか。
- アウラングゼーブ
- バージー・ラーオ
- アクバル
- シャー・ジャハーン
④
答え(タップ)>>1級レベル
『タージマハル』に関する説明として正しいものはどれか。
- 墓(霊廟)の4つの角にはカテドラルが建つ。
- 南門から墓にかけてイギリス式庭園が見られる。
- 敷地内は完全な左右対称で設計されている。
- 登録基準(iv)が認められている。
③
答え(タップ)>>まとめ
- タージマハルはムガル帝国の王シャー・ジャハーンが王妃ムムターズ・マハルの死を惜しんで建てられた墓。
- 建造にあたり世界中から約2万人もの職人が集められた。
- 黒大理石のシャー・ジャハーンの墓を建造する計画も上がっていたが中止された。
- タージマハル建設には莫大なお金がかかり国の財政を圧迫していた。
- 登録基準(i)のみで世界遺産登録されている。
- 世界遺産登録理由は他に類を見ない完全な左右対称の美しい姿の墓である点。
- チャハル・バーグと呼ばれるペルシア式庭園も見られる。
- インドの大気汚染により大理石が劣化する恐れがある。
おまけ:「タージマハル」のプチ観光情報
タージマハルは常に多くの観光客で賑わっている
最寄り都市 | アーグラ |
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最寄り空港 | アーグラ空港 ※インディラ・ガンディー国際空港 |
公用語 | ヒンディー語 |
通貨 | インド・ルピー |
観光のベストシーズン | 10〜3月 |
時差 | 3時間30分 ※日本の方が3時間30分進んでます。 |
治安 | 普通(スリや詐欺商売には要注意) |
物価 | 比較的安い(日本の1/2〜1/3ほど) |
タージマハル観光の拠点となる街は「アーグラ」です。
アーグラは人口100万人を超えるインド有数の大都市です。
そのため、宿泊施設や商業施設などは充実してます。
治安は良いとは言えませんが、世界的な人気観光地ということもあり、タージマハルを含む観光施設や4つ星以上のホテルのセキュリティはしっかりしています。
アクセス
日本からインドへの空の玄関口となる首都「デリー」の街並み
日本からタージマハルの最寄り空港「アーグラ空港」への直行便は就航していません。
しかし、タージマハル観光をする場合、大半の日本人観光客は一度首都の「デリー」空港を利用する傾向があります。
デリーの「インディラ・ガンディー国際空港」への直行便は就航しているため、インド旅行は比較的しやすいです。
- 羽田or成田or関西 [フライト時間:約10時間]⇨ インディラ・ガンディー国際空港(デリー)
- ニューデリー駅 [乗車時間:約3時間]⇨ アーグラ・カント駅 [タクシーで約15分]⇨ タージマハル
- 「外国人専用窓口」にてチケットを購入する。
- チケット購入時にはパスポートの提示が必要になる。
- バスでのアクセスも可能だが、鉄道よりも時間がかかる上に安全とは言えないためオススメしない。
鉄道やバスを駆使すれば自力でアクセスすることは可能です。
しかし、発着時間が正確ではなかったり、詐欺まがいの商売に引っかかる恐れなどもあるため、初めてインドを訪れる場合は事前にツアーに申し込んで訪れることをオススメします。
タージマハル観光の注意点
タージマハルは世界的に有名な観光地ということもあり、訪れるにあたって様々な注意事項があります。
- 手荷物の持ち込みが厳しく制限されている(カメラなど最低限の荷物で訪れること)
- パスポートなどの身分を証明できるものを常に持っておく。
- 宗教上の問題で肌の露出が多い服装は避ける。
- 人混みに入る際はスリなどの軽犯罪には要注意。
特に手荷物に関しては厳しくチェックされるため、ホテルなどに荷物を預けて、最低限の持ち物で入場することを心がけましょう。
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。