こんな方にオススメの内容!
- 「ストーンヘンジ」「エイヴベリー」の世界遺産登録理由が気になる!
- ストーンサークルがつくられた理由を知りたい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- イギリスへの旅行を考えている!
遺産ポイント
- 主に「ストーンヘンジ」「エイヴベリー」にある巨石を中心とした遺跡群
- 「ブルー・ストーン」と呼ばれる青みがかった石が使われている
- 「トリリトン」と呼ばれる3つの石を門のように組んだ形状が特徴
- ヨーロッパ最大級のストーンサークル(環状列石)を見ることができる
- ”トンネル建設問題”と”復元問題”を抱えている
「ストーンヘンジ、エイヴベリー」のプロフィール
登録名称 | ストーンヘンジ、エイヴベリーと関連する遺跡群 |
---|---|
登録年 | 1986年(範囲変更:2008年) |
所在国 | イギリス |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (i)(ii)(iii) |
備考 | シリアル・ノミネーション・サイトを満たした世界遺産 |
世界遺産登録名称を解説
- ストーンヘンジ:巨石を積み上げた遺跡群の一つ
- エイヴベリー:巨石を積み上げた遺跡群の一つ(ストーンヘンジから北に約30km離れている)
- 関連する遺跡群:巨石以外にも埋葬の痕跡や土器などが見つかっている
つまり、「ストーンヘンジ」と「エイヴベリー」という2つのエリアを中心に点在する遺跡の数々が世界遺産登録されています。
そしてキーワードとなるのが、ストーン・サークル(環状列石)です!
大きな石を円形に並べた姿が、ストーンヘンジとエイヴベリーの最大の特徴と言っても過言ではありません。
ストーンヘンジとは
巨石の上に石が乗せられた「ヘンジ」が特徴の「ストーンヘンジ」
- 最も古いもので紀元前3100年前(約5100年前)の遺跡
- 「石を積み上げた構造物」という意味
- 主にソールズベリー平原に点在する巨石群を指す
- 周辺の「カーサス」「ダーリントン・ウォールズ」「ウッドヘンジ」の3つのエリアの遺跡群も含まれる
円形に並べられた巨石群として、世界で最も有名と言っても過言ではないのがストーンヘンジにある遺跡群です。
- ストーン:石
- ヘンジ:直立した石の上に水平に石を載せて連結させた構造物
ちなみにヨーロッパにある遺跡ではよく、”直立した石”のことを「メンヒル」と呼びます。
ストーンヘンジはその名の通り、直立した大きな石が立ち並ぶ姿が見られることが名前の由来なのです。
さらに、巨石群は円を描くように並べられていることから、「ストーン・サークル(環状列石)」とも言われています。
また、「カーサス」「ダーリントン・ウォールズ」「ウッドヘンジ」の3つのエリアでは、埋葬する際に作られたとされる建物の遺跡が数多く残っています。
この埋葬の遺跡群こそ、世界遺産登録名称の中に含まれている”関連する遺跡群”にあたる部分です。
エイヴベリーとは
広範囲に点在する「エイヴベリー」の巨石
- 紀元前2600年前(約4600年前)の遺跡
- ストーンヘンジの北30kmに位置するヨーロッパ最大級の環状列石が残るエリア
- 周辺の「ウィンドミル・ヒル」「シルバリー・ヒル」の2つのエリアの遺跡群も含まれる
エイヴベリーにはストーンヘンジを上回るとも言われている、ヨーロッパ最大級の環状列石(ストーンサークル)が残されています。
ストーンサークルの周囲の長さをなんと1.3kmもあり、東京スカイツリーを2本横に並べた距離に相当するのです!
さらに、ストーンサークルに使われている直立の石(メンヒル)は約100個もあります。
ヨーロッパにある巨石遺跡の中でも特に多い数です。
ちなみに、実は日本にもストーンサークルは存在します。
代表的なストーンサークルとしては、秋田県にある「大湯環状列石(おおゆかんじょうれっせき)」が挙げられます。
大湯環状列石を含む、日本の古代遺跡の詳細に関しては下記の記事で解説しているので、ぜひ併せて読んでみてください!
合わせて読みたい!【北海道・北東北の縄文遺跡群】世界遺産登録の理由と構成資産をわかりやすく解説!また、周辺の「シルバリー・ヒル」には、高さ約40mにもなるヨーロッパ最大級の土塁(どるい)が存在します。
大規模な土塁があることからもわかるように、かつてエイヴベリー周辺には数多くの人が洗練された生活を送っていたことが予測されます。
世界遺産登録理由
雪化粧をしたエイヴベリーの巨石遺跡
ストーンヘンジやエイヴベリーなどが世界遺産登録された理由は、大きく下記の2つに分けられます。
- 保存状態の良い巨石が残っている
- 人々が生活していた痕跡が残っている
ちなみにストーンヘンジやエイヴベリーは、それぞれ別の組織によって厳重に管理・保護が行われています。
遺跡名 | 組織名 | 概要 |
---|---|---|
ストーンヘンジ | イングリッシュ・ヘリテイジ | イングランドの歴史的建造物を保護するためにイギリス政府が設立した組織 |
エイヴベリー | ナショナル・トラスト | 民間の団体 |
また、ストーンヘンジのような大昔の遺跡(考古遺跡)が世界遺産に登録される際、登録基準(iii)を満たしやすいのがポイントです!
現在でも見られる立派な巨石の遺跡群
ストーンヘンジが建設された時期は、今から約5000年以上も前と考えられています。
そんな大昔の建物が現在も遺跡として残っている点は、世界遺産登録において大きな評価を受けています。
ちなみにヨーロッパを含む世界では、約5000年前の時代を「新石器時代」や「青銅器時代」と呼びます。
この2つの時代を含む大昔の時代の総称は「先史時代」と呼ばれます。
それではストーンヘンジが建設された歴史の流れを確認してみましょう。
【第1期(紀元前3100〜前2200年)】
- 直径100mの外周部が完成
- エイヴベリーの環状列石ができたのもちょうどこの時期
- 巨石のある中心にはかつて木造の柱が立っていた(今はない)
【第2期(紀元前2100〜前2000年)】
- “ブルー・ストーン”と呼ばれる青みがかった石で30個ほどのメンヒル群(直立した石)を形成
【第3期(紀元前2000〜前1100年)】
- 円の直径30mの環状列石の誕生
- ストーンヘンジの象徴”トリリトン”(3つの石を門の形に組んだもの)が5組完成
ストーンヘンジやエイヴベリーほど、当時の姿に近い状態で残されている先史時代の遺跡は非常に珍しいです。
大昔の人々の生活や技術が見られる
ストーンヘンジやエイヴベリーに巨石を用いて建物がつくられた目的は、いまだにわかっていません。
しかし石を使った建造によって、かつてこの地に人々の生活が送られていたことはわかっています。
さらに、ただ集団生活を送っていただけではなく、巨石を用いて様々な技術・文化を育んできたされているのです!
(具体的な技術・文化に関しては、後述の「ストーンヘンジ、エイヴベリーはなぜつくられた?」で解説します)
現在見られる巨石は、主に下記の2つの石の種類に分けられます。
- ブルー・ストーン:遺跡から200kmも離れた遠方で採石
- サルセン石:ソールズベリー平原周辺(ストーンヘンジ近く)で採石
驚くべきことに、必ずしも現在遺跡が見られる地域周辺で石が採られたわけではないのです!
そのため、巨大な石のかたまりを遠方から運んできた技術にも注目が集まっています。
ちなみに、現在でも発掘調査は進められており、次々と新たな遺跡が見つかっています。
そして新しい遺跡の発見の影響もあり、2008年には世界遺産登録範囲の変更が行われているのもポイントです。
ストーンヘンジ、エイヴベリーはなぜつくられた?
ストーンヘンジは太陽との深い関係があると考えられている
前述の「大昔の人々の生活や技術が見られる」の冒頭でも少し触れたように、ストーンヘンジやエイヴベリーに巨石を用いた建物がつくられた目的は明確にわかっていません。
現在のところ、巨石遺跡は下記のような目的でつくられたと考えられています。
- 日の出日の入りを計算した天文学の役割
- 原住民の埋葬や儀式のため
- 原住民が利用する礼拝堂
中でも最有力なのが、”天文学の役割”を持っていた説です!
その証拠に下記がわかっています。
夏至の朝にストーンサークルの外にある”ヒールストーン”と呼ばれる巨石群付近の方角から太陽が昇り、ストーンヘンジの中心部分を照らす。
そして冬至の日没には、夏至の日の出とは反対方向に日の入りをする。
つまり、数千年も前から太陽の動きを観測する仕組みができていたのです!
天文学としての役割が最有力ではあるものの、さらに明確な答えを出すべく、現在も引き続き調査が行われています。
問題点①:トンネル建設による遺跡保全の危機!?
森の中にひっそりと立つ巨石
現在、ストーンヘンジ近辺でトンネル建設が行われようとしています。
トンネル建設が提案された主な理由は下記です。
- 景観の改善
- 渋滞の緩和
- 大気汚染の軽減
特に”景観の改善”が最大の理由です。
現在ストーンヘンジ近くを通っている道路での渋滞が激しいため、ストーンヘンジからでも渋滞の様子が見えてしまいます。
そのため、ストーンヘンジ近くの道路に約2300億円をかけてトンネルを建設し、渋滞の様子が見えないようにすることが狙いです。
一方で考古学者や環境保護活動家からは、下記のような反発が出ています。
”解明途中の古代遺跡にダメージを与えてしまう懸念がある”
上記のように言っている理由としては、現在でもストーンヘンジ周辺で新たな遺跡や遺構が見つかっているためです。
つまり、もしかしたらトンネルを建設しようと計画しているエリアで、新しい遺跡が眠っているかもしれないのです!
実際に近年の調査でも、ストーンヘンジを取り囲むように残る17の構造物が発見されています。
もちろん景観を重視して手を加えること自体は大切な取り組みです。
しかし、肝心の遺跡調査への支障や遺跡自体にダメージを与えてしまっては本末転倒ですね。
問題点②:復元しすぎ!?
ストーンヘンジを中心に、当時の姿に近づけようと”復元しすぎている”という声が上がっています。
「ただの近代モニュメント」と言われる始末です。
当時の姿に近い状態に復元することで、訪れる観光客へより遺跡に興味を持ってもらえる機会を増やすことができます。
しかし悪い言い方をすると、”観光目的の作り物”という表現にされてしまうのも事実です。
ただし、世界遺産登録される上で最も大切な点は”遺構が存在するかどうか”です。
つまりいくら復元されていても、当時の古い建築物の一部が残ってさえいれば、世界遺産登録に必要な情報源としては十分なのです。
(厳密には、遺構の状態も重要になります)
○復元事例
- 三内丸山遺跡(北海道・北東北の縄文遺跡群):かつて柱が建っていた部分に木造建築や家屋を復元
- 首里城(琉球王国のグスク及び関連遺産群):復元され正殿の地下にある遺構が貴重
- ワルシャワ歴史地区:戦争によって荒廃した街全体を復元させた。「不屈の熱意」が評価されて世界遺産登録された唯一の世界遺産
※リンクをクリックすると各遺産の詳細記事へ飛ぶことができます。
たとえ復元されても、遺構が残っていたり、当時の記憶が記された痕跡が残されていれば世界遺産に登録されることがあるのです。
とはいえ、できる限り復元せずに、見つかった状態で保護・保全することが推奨されています
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3・4級レベル
「エイヴベリー」に関わる説明として正しいものはどれか。
- ヨーロッパ最古の巨石住居
- ユーラシア大陸最大の土塁
- 北半球最多の土器
- ヨーロッパ最大級の環状列石
④
答え(タップ)>>2級レベル
「ストーンヘンジ」で使われている石の名称として正しいものはどれか。
- レッド・ストーン
- グリーン・ストーン
- ブルー・ストーン
- ブラウン・ストーン
③
答え(タップ)>>1級レベル
埋葬に関する遺跡が見つかったストーンヘンジ周辺の地域の名称として該当しないものはどれか。
- テイクりー
- カーサス
- ウッドヘンジ
- ダーリントン・ウォールズ
①
答え(タップ)>>まとめ
- 主な世界遺産登録範囲は「ストーンヘンジ」と「エイヴベリー」。
- 「メンヒル」と呼ばれる直立した巨石が立ち並ぶ。
- エイヴベリーではヨーロッパ最大級の環状列石(ストーンサークル)が見られる。
- 「シルバリー・ヒル」にはヨーロッパ最大級の土塁が存在する。
- 3つの石を門の形に組んだ「トリリトン」はストーンヘンジ最大の特徴。
- 巨石建設には多くのブルー・ストーンが用いられている。
- 景観改善のために計画されている”トンネル建設”は遺跡へのダメージが危惧されている。
- 遺跡の過剰な復元に対する疑問の声が挙がっている。
おまけ:「ストーンヘンジ、エイヴベリー」のプチ観光情報
ストーンヘンジ | エイヴベリー | |
---|---|---|
最寄りの都市 | ソールズベリー | スウィンドン |
最寄りの空港(国際線) | ロンドン・ヒースロー空港 | |
通貨 | ポンド | |
観光のベストシーズン | 通年 | |
時差 | 8時間(東京 – ロンドン間) ※日本の方が8時間進んでます。 | |
治安 | 比較的良い (スリなどの軽犯罪には要注意) | |
物価 | 高い(日本の物価の約1.5倍) |
ストーンヘンジ、及びエイヴベリーへは、日本から直行便が就航しているロンドンからアクセスすることができます!
そのためロンドン発の遺跡を訪れるツアーが充実しており、日本の旅行会社を利用してストーンヘンジのオプショナルツアー等に申し込む方法が一般的です。
ストーンヘンジへのアクセス
ストーンヘンジ最寄りの街「ソールズベリー」の街並み
個人でストーンヘンジを訪れる場合は、下記のようなアクセスが一般的です。
- ウォータールー駅 → ソールズベリー駅(所要時間:約1時間半)
- ソールズベリー駅 → 駅から出ているバスで「ストーンヘンジ・ビジターセンター」へ(所要時間:約30分)
- 「ストーンヘンジ・ビジターセンター」 → シャトルバスでストーンヘンジへ
ストーンヘンジを訪れる観光客は非常に多いため、アクセスに関する案内板も充実しています。
エイヴベリーへのアクセス
エイヴベリーはロンドンから日帰りでアクセスできる距離
個人でエイヴベリーを訪れる場合は、下記のようなアクセスが一般的です。
- パディントン駅 → スウィンドン駅(所要時間:約1時間)
- スウィンドン駅 → 駅から出ているバスで「エイヴベリー」へ(所要時間:約30分)
有名なストーンヘンジよりも乗り換え回数が少なくアクセスできるのが、エイヴベリーを訪れるメリットの一つです。
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。