こんな方にオススメの内容!
- なぜワルシャワの歴史地区が世界遺産に登録されたのか理由が気になる!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- ポーランドに興味関心がある!
- 次の旅行先の候補地を探している!
遺産ポイント
- ワルシャワの世界遺産登録は”街全体の復元”という点で史上初!
- 戦争による”荒廃”とその後の国民の努力による”復興”を象徴する遺産!
- ワルシャワの世界遺産登録は「真正性」の概念を覆すことになった!?
「ワルシャワの歴史地区」のプロフィール
登録名称 | ワルシャワの歴史地区 |
---|---|
登録年 | 1980年(2014年:登録範囲変更) |
所在国 | ポーランド |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (ii)(vi) |
荒廃と復興の歴史をたどったワルシャワ
ポーランドの首都であるワルシャワは激動の歴史を経験した都市です。
本来であればワルシャワ歴史地区は世界遺産登録には望ましくないのですが、訳あって世界遺産登録となりました。
訳あり登録となった理由に関しては後述の「ワルシャワの世界遺産としての評価ポイント」で詳しく解説します。
今回は訳あり登録となった世界遺産であるワルシャワ歴史地区を他の世界遺産とは違った視点で歴史を見て解説をしていきます。
ワルシャワの”荒廃”の歴史
ヴィスワ川に面した現在のポーランドの首都のワルシャワは第一次&第二次世界大戦で膨大な被害を受けた都市の一つです。
「北のパリ」と言われるほど美しい街並みを形成していたワルシャワがポーランドの首都となったのは1611年のこと。
ヨーロッパの中央に位置し周辺に大きな山脈などが無かったことから広大な平地を有してました。
しかしこの平地という国土がワルシャワが他国の占領を受ける要因となってしまったのです!
18世紀にロシア、プロイセン、オーストリアの3カ国によって「ポーランド分割」が行われ、ポーランド王国は消滅しました。
その後、第一次世界大戦後に再びポーランドの独立が認められたものの、続く第二次世界大戦には隣国のナチス・ドイツによって併合されてしまいました。
もちろんこの併合に対してワルシャワの市民は対抗しましたが、ナチス・ドイツの反撃に遭い敗北してしまったのです。
この第二次世界大戦によってワルシャワの街の約85%が破壊され、人口の66%に及ぶ市民約85万人が犠牲となってしまいました。
ワルシャワの”復興”の歴史
美しい街並みを取り戻したワルシャワ歴史地区の中心部
第二次世界大戦によって壊滅的な被害を受けたワルシャワですが、大戦後にポーランド国民はワルシャワの復興と戦前の街並みの完全な復元を希望しました。
そしてこの希望通りに街の復興が開始されたのです!
この時に国民が合言葉にしていたのが下記です。
すべては未来のために
ワルシャワの街を復元させるために活用していた資料は以下の通りです。
- ワルシャワの古い図面や写真
- 18世紀にポーランド国王につかえていた「ベルナルド・ベロット」が描いた風景画
これらの資料を元に壁のひび一本までを忠実に復元させることを目指しました。
すると復元された建物は戦争前の状態よりもより中世時代の面影を映す建物へとなったのです!
現在のワルシャワで見られる街並みは戦後復元されたものになります。
ちなみにこの復元の時に使われた様式は主に中世のゴシックと新古典主義です。
ワルシャワの歴史地区と「真正性」の関係
旧王宮前の広場に建ち並ぶ可愛らしい家屋
基本的には世界文化遺産の登録には、建造当時の姿が今に残っていることが大前提とされています。
これを専門用語で言うと「真正性」であるかどうかという判断基準になります。
(真正性に関してはこちらの記事で詳しく解説しています)
つまりワルシャワの場合は中世当時の建物はほぼ消滅してしまったため、いくら復元できたとしても当時の歴史的価値はなくなってしまっているのです。
詳しくはこの後解説する「ワルシャワの世界遺産としての評価ポイント」で触れますが、街全体の復元を成功させた都市は世界的に見てもワルシャワのみだったため、その点に価値を見出せることができたのです!
ワルシャワの世界遺産としての評価ポイント
夜のワルシャワの歴史地区
前述の「ワルシャワの歴史地区と真正性の関係」でも少し解説しましたが、ワルシャワの世界遺産としての価値は「歴史」ではなく「復元させたその人々の努力の結晶」にあるのです!
この歴史的観点ではない評価対象という点が他の世界遺産とは大きく異なります。
ただもちろんこういった歴史的価値があまり見られない世界遺産が増えてきてしまうことはあまりよくありません。
そのためワルシャワの歴史地区が世界遺産に登録されて以降、都市全体を復元したものの世界遺産登録は認められないことになりました。
今回紹介したワルシャワの歴史地区以外にも戦禍の影響を受けた文化遺産はあります。
ただし、それらの遺産は一部分の復元、または当時の状態を残した状態での世界遺産登録となっているためワルシャワとは登録基準が異なります。
ワルシャワの歴史地区の主な建造物
冬のワルシャワ(奥には近代的な建物がそびえる)
旧王宮とその広場
旧王宮はポーランドの歴代の王様が暮らした住居です。
こちらの王宮も、当然のことながら戦争で大きな被害を受けました。
しかし、王宮内にあった価値のある調度品などは国外に持ち出されていたため、大きな被害を受けることはありませんでした!
その後1988年に復元が完了し、現在は美しい姿を見せています。
そしてこの旧王宮の前に広がる広場は、ワルシャワの心の拠り所とも言える中心的な広場です。
こちらの広場も、旧王宮同様に戦争で大きな被害を受け瓦礫の山と化していました。
しかし、復元によりカラフルな街並みの姿が取り戻され、現在はワルシャワ観光の中心として賑わいを見せています!
また広場の中心には、盾と剣を持った勇ましい姿の「人魚像」が建っており、この広場のシンボルともなっています。
バルバカン砦
周辺に防壁となりそうな山が無かったワルシャワには、かつて城壁が築かれていました。
その城壁の一部として残っているのが、このバルバカン砦です!
建造当時は火薬庫や旧市街への入り口を守る要塞などの役割を担ってました。
こちらの、砦も旧王宮や広場と同様に戦争の被害を大きく受けて戦後に再建された建造物の一つです。
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
2級レベル
『ワルシャワの歴史地区』の世界遺産登録に関する説明として正しいものはどれか。
- 世界大戦の影響を受けて荒廃した街を復元させたポーランド国民の努力の結束が評価されて登録された。
- 中世ヨーロッパ当時の街並みが今もなお色濃く残っている点が評価されて登録された。
- ワルシャワの美しい街並みがヨーロッパの画家や詩人たちの作品制作に大きな影響を与えた点が評価されて登録された。
- ヨーロッパ中部に位置することから数多くの国の商人たちの交流を促し繁栄した歴史的背景に価値があるとして登録された。
①
答え(タップ)>>1級レベル
「ポーランド分割」に関わった国として誤っているものはどれか。
- ロシア
- ハンガリー
- プロイセン
- オーストリア
②
答え(タップ)>>「ワルシャワの歴史地区」のまとめ
- ワルシャワは第一次&第二次世界大戦の影響で街全体が荒廃したがその後完全な姿で復元された!
- 世界遺産登録の大きな要因は歴史的価値ではなく復元に想いをかけた国民の努力そのもの!
- 街の完全な復元は「真正性」の概念に反しているためワルシャワ以外で街の完全復元による登録は認められていない!
おまけ:ワルシャワのプチ観光情報
ワルシャワのビジネス街
人口 | 約180万人(札幌市よりちょっと少ないぐらい) |
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最寄の空港 | ワルシャワ・フレデリック・ショパン空港 |
時差 | 7時間(東京 – ワルシャワ間) ※日本の方が7時間進んでます。 |
通貨 | ズウォティ |
観光のベストシーズン | 6〜8月:過ごしやすい気候、9〜10月:紅葉シーズン、11〜12月:クリスマスシーズン |
治安 | 比較的良好(軽犯罪には常に注意が必要) |
物価 | 少し安い(日本の2/3ほど) |
ワルシャワへのアクセスは日本からだと成田空港から唯一の直行便が飛んでいます!
成田空港以外の利用だと、ヨーロッパまたは中東の各都市で乗り継ぎをする必要があります。
主なルートは下記になります(乗り継ぎ時間を除く)。
- 日本(成田の場合) → ワルシャワ(フライト時間:約11時間30分)
- 日本 → フランクフルト(ドイツ) → ワルシャワ(フライト時間:約14時間00分)
- 日本 → ドーハ(カタール) → ワルシャワ(フライト時間:約17時間00分)
なるべくフライト時間を短くしたい場合はやはり直行便がおすすめですが、その分航空券の料金は乗り継ぎ便に比べて高くなります。
一方でヨーロッパの各都市での乗り継ぎだと直行便に比べて少し安く航空券を購入できますが、その分フライト時間は伸びます。
最も安く行く方法はカタール航空などの中東の各都市を経由する行き方です。
(時期にもよりますが)直行便の価格の約70〜80%の価格で購入できます。
ただし中東経由だとヨーロッパ経由に比べてフライト時間が3時間ほど増えるので体への負担はかかってしまいますね。
今回のワルシャワ(ポーランド)を含め、ヨーロッパは基本的にどの国も治安は良好です。
しかしスリや置き引きといった軽犯罪はよく発生するので、最低限の注意は必要ですね。
ワルシャワ郊外に位置する人気の観光スポット「ヴィラヌフ宮殿」
ワルシャワに限らず比較的緯度の高い国が多いヨーロッパの観光のベストシーズンは、6〜9月の夏の時期になります!
この時期は日本ほど暑くはない上に、最も多くの商業施設が営業している時期になるのでオススメです。
ただ秋は紅葉、冬はクリスマスマーケットが開かれるなど、目的によって狙い目のシーズンが異なるので、事前にその国の情報をリサーチすることがポイントですね!
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。