こんな方にオススメの内容!
- オカバンゴデルタとはなにかを知りたい!
- オカバンゴデルタが世界遺産登録された理由が気になる!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- アフリカへの旅行を考えている!
遺産ポイント
- 記念すべき1,000件目の世界遺産登録
- 海に繋がっていない内陸の湿地帯(デルタ)としてアフリカ最大規模
- 近年は川や湿地帯周辺での開発が問題視されている
「オカバンゴ・デルタ」のプロフィール
登録名称 | オカバンゴ・デルタ |
---|---|
登録年 | 2014年 |
所在国 | ボツワナ |
登録ジャンル | 自然遺産 |
登録基準 | (vii)(ix)(x) |
その他 | ラムサール条約に登録(ラムサール条約についてはこちらの記事で解説) |
そもそも「オカバンゴデルタ」とは?
日本の四国に匹敵するほどの広さを持つ湿地帯
オカバンゴデルタとは、オカバンゴ川の水によって誕生した巨大な湿地帯(デルタ)です。
- オカバンゴ:川の名前
- デルタ:湿地帯(水深の浅い水で覆われている地域)
湿地帯の広さは最大で18,000km²におよび、この広さは日本の四国地方の面積に匹敵します。
オカバンゴデルタは、南部アフリカ地域において貴重な水資源になっており、この大量の水を求めて多くの野生動物がやってくるのです。
オカバンゴデルタはどのようにしてできた?
湿地帯には多くのカバが生息している
複数の川が流れ込むため水資源が多く、湿地帯が誕生しやすい海沿いではなく、ボツワナという内陸の国にオカバンゴデルタという巨大な湿地帯が誕生した経緯は、川と周辺の環境が大きく関係しています。
- オカバンゴ川の上流が雨季になる。
- 雨季によって大量の水が上流から下流に向けて一気に流れる。
- 大量の水が流れ込むことで氾濫を起こし低地で水が溢れ出す。
- 溢れ出た水が広がり、広大な湿地帯が誕生する。
- 水が砂漠地域まで広がる。
- 乾燥した砂漠地域で水が枯れる。
オカバンゴ川には、常に十分な水が流れているわけではありません。
川の上流が雨季になると、雨水によって水量が増え、最終的に湿地帯に流れ込むのです。
ただし、オカバンゴデルタ周辺にはアフリカ屈指の広さを持つカラハリ砂漠が広がっています。
そのため、川や湿地帯の水は海にたどり着くことなく、砂漠で枯れて無くなるのです。
主な生息動物
草食動物だけでなく大型の肉食動物も多く生息している
多くの野生動物は、内陸の貴重な水を求めてオカバンゴデルタにやってきます。
【オカバンゴデルタに生息する主な野生動物】
- アフリカゾウ
- レイヨウ(固有種)
- チーター
- シロサイ
- クロサイ
- リカオン
- ライオン
- カバ
- アフリカゾウ
- バッファロー
オカバンゴデルタは、大型哺乳類だけでなく、小型哺乳類、鳥類、水生生物など多種多様な生き物の楽園になっています。
世界遺産登録理由(記念すべき1,000件目の世界遺産)
「オカバンゴデルタ」が世界遺産登録された理由は、大きく下記の3つに分けられます。
- アフリカ最大規模の内陸デルタ地帯
- 他の地域では見られないオカバンゴデルタならではの自然環境
- 多種多様な動植物の生息
なおオカバンゴデルタは、2014年に世界遺産の登録件数が1,000件に達した際の記念すべき遺産です。
理由1:アフリカ最大規模の内陸デルタ地帯
雨季には一面水に浸る湿地帯
世界遺産登録理由の1つ目は、アフリカ最大規模の内陸デルタ地帯が存在することです。
前述の「オカバンゴデルタはどのようにしてできた?」で解説したように、オカバンゴデルタは川の水が途中で砂漠で消えてしまうため、海に繋がることはありません。
湿地帯自体は1年を通して存在しますが、雨季によって川の水量が増えると、浸水するエリアが拡大します。
このようにオカバンゴデルタは、季節によって湿地帯の姿が大きく変わる点が大きな特徴です。
ちなみに、雨季になって増えた川の上流の水がオカバンゴデルタにたどり着くには、なんと半年もかかります。
理由2:他の地域にはないオカバンゴデルタならではの自然環境
オカバンゴデルタの固有種「レイヨウ」
世界遺産登録理由の2つ目は、他の地域にはないオカバンゴデルタならではの自然環境が見られることです。
オカバンゴデルタの湿地帯は、雨季と乾季によって水環境が大きく異なります。
すると、生息する野生動物の種類や生態にも大きな変化があらわれます。
このように、オカバンゴデルタは野生動物、気候、地形などが大きく関わり合って存在するのです。
また、湿地帯の1/3は「モレミ野生動物保護区」という保護下に置かれており、ウシ科の動物であるレイヨウなど、多くの固有種を見ることができます。
哺乳類だけでなく、鳥類の貴重な生息地にもなっているため、世界遺産だけでなく、ラムサール条約にも登録されているのです。
用語メモ
ラムサール条約とは、湿地帯に生息する鳥類の保全を強化するために定められた国際的なルール。日本では、北海道の釧路湿原や群馬県の尾瀬などが指定されている。オカバンゴデルタの特殊な環境は、独自の生態系や多様な生き物の生息地を誕生させたのです。
理由3:多種多様な動植物の生息・生育
オカバンゴデルタには世界最多とも言われるほど多くのゾウが生息している
世界遺産登録理由の3つ目は、多種多様な動植物が生息・生育していることです。
オカバンゴデルタには豊富な水があります。
周辺には砂漠などの乾燥した大地が広がっているため、野生動物たちにとってオカバンゴデルタはオアシスそのものなのです。
なかでも、
また、オカバンゴデルタの環境は植物にとっても生育しやすい環境のため、水が豊富な地域で育つパピルスやアシなどが多く茂っています。
このように、今でも貴重な動植物が見られる最大の要因は、水環境が頻繁に変化することで人が定住しにくい環境が生まれているためです。
ただし、近年は定住ではなく別の問題によって、オカバンゴデルタの環境変化が懸念され始めてます。
(”別の問題”の詳細は後述)
抱える問題点・課題
ダム開発により環境変化が懸念されている
近年、オカバンゴデルタでは、下記が原因による環境変化への懸念がされています。
- オカバンゴ川上流での農地開拓
- 水力発電用ダムの建設
農地開拓やダム建設が行われることで川の水の流れが変わるため、川や湿地帯の水量や面積が変化します。
すると、オカバンゴデルタの水を必要としていた野生動物たちは、飲み場や生活する場所を失ってしまいます。
さらに、水量が変化することで植物の生育にも悪影響を及ぼすため、大地が干からびてしまう懸念もあるのです。
そもそも、オカバンゴデルタが世界遺産登録を目指すきっかけとなった理由は、以下の2点です。
- 水源であるオカバンゴ川が”ダムの無い川”として世界第2位の規模
- ”未開発の湿地帯”として世界最大規模を誇る
つまり、ダム建設などによって人の手が入ってしまうと、オカバンゴデルタは世界遺産としての価値が失われてしまうのです。
オカバンゴデルタと似たような事例としては、ケニアの世界遺産『トゥルカナ湖国立公園群』で隣国エチオピアでのダム開発により環境変化が懸念されています。
しかし、残念ながらトゥルカナ湖は2018年に危機遺産登録されてしまいました。
(危機遺産についてはこちらの記事で詳しく解説してます)
オカバンゴデルタに大きな環境変化が起きないためにも、早急な開発の中止と、ダム開発や農地開拓に変わる方法の提案が急がれます。
また、オカバンゴデルタのバッファーゾーン(緩衝地帯)を川の上流まで設定するなど、保護・保全範囲を見直す必要もあります。
(バッファーゾーンなどの保護・保全範囲の設定に関しては、こちらの記事で詳しく解説してます)
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3,4級レベル
『オカバンゴデルタ』最大の特徴として正しいものはどれか。
- 年間を通して一定の水量を保つ湿地帯
- 海に繋がらない内陸のデルタ地帯
- 世界で一番最初にラムサール条約に登録されt湿地帯
- 四方を砂漠に囲まれた世界最大の湿地帯
②
答え(タップ)>>2級レベル
『オカバンゴデルタ』に生息する野生動物の中で”世界最多”と言われている動物の名前として正しいものはどれか。
- アフリカゾウ
- カピバラ
- オリックス
- カバ
①
答え(タップ)>>1級レベル
『オカバンゴデルタ』が抱えている問題として正しいものはどれか。
- 農地開拓やダム建設などの開発
- 地球温暖化による水量の減少
- ゾウやバッファローなど野生動物の密猟
- 近隣諸国との紛争・情勢不安
①
答え(タップ)>>まとめ
- オカバンゴデルタとはオカバンゴ川の水によって誕生した巨大な湿地帯(デルタ)。
- 海に繋がらない内陸のデルタ地帯としてアフリカ最大規模。
- 2014年に世界遺産の登録件数が1,000件に達した際の記念すべき遺産。
- 季節によって湿地帯の姿が大きく変わる点が特徴の一つ。
- 湿地帯の1/3はモレミ野生動物保護区に指定されている。
- レイヨウなどの固有種が生息している。
- 鳥類の貴重な生息地になっているためラムサール条約に登録されている。
- アフリカゾウの生息数が世界一と言われている。
- 今でも貴重な環境が保たれている要因は、湿地帯の環境が頻繁に変化する影響で人が定住しにくいため。
- 農地開拓やダム建設による環境変化が懸念されている。
おまけ:「オカバンゴ・デルタ」のプチ観光情報
オカバンゴデルタはサファリの人気スポットでもある
拠点となる都市 | マウン |
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最寄り空港 | マウン国際空港 |
公用語 | 英語、ツワナ語 |
通貨 | プラ |
観光のベストシーズン | 7〜9月(湿地帯が最も水で潤う時期) |
時差 | 7時間 ※日本が7時間進んでます。 |
治安 | 良い(アフリカの中では治安が良好) |
物価 | 日本より少し安い |
ツアー相場 | 15,000〜50,000円(ツアー詳細はこちらから) |
ビザ | 不要 |
ボツワナの都市マウンは、オカバンゴデルタの観光拠点となる街として知られているため、ホテルや飲食店などが非常に充実しています。
また、街中やホテルには多くのツアー会社のオフィスがあるため、ツアーに空きがあれば当日予約で参加することも可能です。
アクセス
オカバンゴデルタはアフリカ屈指の多種多様な野生動物を見ることができる地域
残念ながら、日本からオカバンゴデルタ観光の拠点となる街マウンへの直行便は就航していません。
一般的には、「中東諸国orエチオピア」と「ボツワナ国内or隣国の都市」の最低2回の乗り継ぎが必要になります。
航空会社:エティハド航空 EY871
フライト時間:12時間40分
航空会社:エティハド航空 EY602
フライト時間:8時間10分
航空会社:エアリンク 4Z300
フライト時間:1時間40分
オカバンゴデルタや敷地内にあるモレミ野生動物保護区へは、マウン市内発のツアーを利用すれば気軽に訪れることができます。
マウン市内からであれば日帰り観光が可能なため、サファリツアーとしては比較的お手頃価格で参加することができる点が魅力です。
オカバンゴデルタのホテル情報
ボートに乗船してサファリを楽しむスタイルが人気
- マウン市内にはゲストハウスから高級ホテルまで幅広く揃う
- オカバンゴデルタ敷地内には高級ロッジが点在
- 宿泊費相場は3つ星で8,000〜15,000円/泊
マウンはオカバンゴデルタ観光の拠点となる街のため、宿泊施設は非常に充実しています。
日帰りでも訪れることができるため、マウン市内で1〜2泊して日帰りツアーに参加すれば旅費を節約することができます。
一方で、オカバンゴデルタの敷地内にはいくつかの高級ロッジもあります。
大自然を身近に感じたい方は、ロッジに宿泊するツアーの利用がおすすめです。
オカバンゴデルタのおすすめツアーについては、こちらを参考にしてみてください。
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。