こんな方にオススメの内容!
- なぜ「独立記念館」が世界遺産に登録されたのか理由が気になる!
- アメリカ独立の流れや歴史を簡潔に理解したい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- アメリカ(フィラデルフィア)への旅行を考えている!
遺産ポイント
- 独立記念館はアンドリュー・ハミルトンが設計したイギリス様式の建造物。
- アメリカの独立が決まる第2回大陸会議の会場であり、トーマス・ジェファソンが独立宣言を発案した場所でもある。
- 「アセンブリールーム」はアメリカ合衆国憲法が承認された場所として有名。
「独立記念館」のプロフィール
登録名称 | 独立記念館 |
---|---|
登録年 | 1979年 |
所在国 | アメリカ |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (vi) |
そもそも「独立記念館」とは
独立記念館と周辺の街並み
独立記念館とはその名の通り、アメリカ独立の歴史を刻む歴史的建造物です。
設計を担当したのは、依頼を受けた当時はまだアマチュア建築家だったアンドリュー・ハミルトンです。
場所はペンシルベニア州のフィラデルフィアに位置し、建設には「1730〜1750年」の約20年かかっています。
ただし、独立記念館が建設された当時は、独立記念館という名前はついていませんでした。
もともとは、現在の独立記念館のあるペンシルベニア州の政府が利用する建物だったのです。
その後も独立記念館は、歴史上様々な目的で使われてきました。
- 建設当初:ペンシルベニア州の政府機関(議事堂)
⇨独立に関する会議の会場としても使われる。 - 18世紀後半:イギリスが管理する監獄
⇨アメリカ独立を支持する人を監禁するため。 - 18世紀末:アメリカが管理する政府機関
- 現在:アメリカ独立時の資料などを展示する記念館(独立記念館)
「独立記念館」という名前は、あくまでも現在呼ばれている名前であって、歴史上では様々な目的で使われ、アメリカ独立に大きく関わる歴史を刻む大変重要な建物なのです。
ちなみに、独立宣言時に独立記念館に付けられている鐘が鳴らされたことから、この鐘は「自由の鐘」と呼ばれています。
世界遺産に登録された理由
独立記念館は赤レンガのイギリス様式のつくり
独立記念館が世界遺産に登録された理由を一言で表現すると、下記になります。
アメリカ独立の歴史を刻む象徴的な建物
つまり、”アメリカ独立の歴史”を刻むその”記憶”に価値があるのです!
建物名に「独立」と入っているように、現在の建物はアメリカがイギリスから独立する際に行われた出来事などが記された資料が展示されています。
さらに、資料館として使われている現在とは違い、18世紀(アメリカが独立を目指そうとしていた時代)にはイギリスから独立を目指すアメリカの各州の代表が集まり、会議の会場としても使われていました。
以上のように、独立に関する会議場として使われ、現在は独立に関する貴重な資料の展示がされている点が、世界遺産として大きく評価されたポイントになります。
独立記念館が刻むアメリカ独立の歴史を簡単に解説
独立記念館の歴史を追うことで、アメリカ独立の歴史を知ることもできます。
18世紀前半(今から約300年前) | 独立記念館があるアメリカのペンシルベニア州(当時はイギリス領ペンシルベニア)に「ペンシルベニア議事堂」として建造される。 |
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1774年 | 当時イギリス領だったアメリカ東海岸の12の州の代表が集まって、イギリスからのアメリカ独立に関する会議が開始される(第1回大陸会議) ※この時の会議は独立記念館ではなく「カーペンターズホール」 |
1776年7月4日 | アメリカ東海岸の13の州の代表が集まって再びアメリカ独立に関する会議を開催(第2回大陸会議) |
1776〜1783年 | アメリカ独立に抵抗するイギリスが戦争を起こす(この時、独立記念館はイギリスによって監獄施設となる) |
1783年 | 戦争が終結し、ついにアメリカの独立が認められる |
1787年 | 現在の独立記念館でアメリカ憲法の制定会議が開かれる(基本的なアメリカの運営ルールが決まる) |
〜1790年 | 独立記念館のあるフィラデルフィアがアメリカ最初の首都となる(後に首都はワシントンD.Cに移る) |
1776年7月4日の第2回大陸会議にて、アメリカ独立が決定的となる出来事が起こります。
ヴァージニア州の代表トーマス・ジェファソンが発案した「独立宣言」が採択されたのです!
この独立宣言が採択された日を記念して、現在では7月4日が「アメリカ独立記念日」として毎年祝われています。
ちなみに、ニューヨークにある自由の女神像が左手で抱えている本が独立宣言書です。
まさしく、アメリカが自由を獲得したその証となる書物を持っているのです!
なお、自由の女神像に関しては、下記の記事で詳しく解説しています。
合わせて読みたい!【自由の女神像 | 建造された目的は?】世界遺産に登録された理由や魅力をわかりやすく解説!独立記念館内にある「アセンブリールーム」は、アメリカ合衆国憲法が承認された場所として有名です。
ちなみに、1787年の会議で決まった「アメリカ合衆国憲法」は、世界最古の近代的憲法とされています。
また、独立記念館のあるフィラデルフィアには、他にも下記のようなアメリカ独立に関する歴史的建物が残っています。
- カーペンターズホール:第1回大陸会議の会場
- 旧市庁舎:かつて国会議事堂やアメリカ最初の最高裁判所として使われていた
現在、独立記念館を含む一帯は、「独立記念国立歴史公園」として管理されています。
世界遺産登録基準(vi)のみで登録された理由
独立記念館と同じく登録基準(vi)のみで世界遺産登録されている「原爆ドーム」
前述の「世界遺産に登録された理由」でも触れたように、独立記念館は建物の美しさや建物周辺の景観が評価されて世界遺産に登録されたわけではありません。
あくまでも、アメリカ独立の記憶を刻んでいる建物であることに価値があるとして世界遺産に登録されました。
今回の独立記念館のように、物理的なものではなく”記憶”に注目されて登録される場合は、世界遺産登録基準の(vi)を満たしやすいのが特徴です。
(世界遺産登録基準に関しては、こちらの記事で詳しく解説してます)
もちろん、独立記念館の建物自体に美しさや他の建物への影響力などがあれば、(vi)以外でも評価されて世界遺産に登録されることはあります。
アーヘンの大聖堂 | 神聖ローマ帝国の皇帝への戴冠式が行われた会場という歴史を持つ |
---|---|
リスボンのジェロニモス修道院とベレンの塔 | ポルトガル王国が世界の海を支配し新時代を切り開いた歴史を刻む |
トンガリロ国立公園 | 先住民マオリの信仰(神へのお祈り)文化が色濃く残る地域 |
ウルル、カタジュタ国立公園(エアーズロック) | 先住民アボリジニのアナング族の狩猟採集生活や絵や文字を使った文化が残っている地域 |
ちなみに、独立記念館以外にも登録基準(vi)だけで登録されている遺産があります。
それは日本の「原爆ドーム」です。
ただし、”記憶”という点で世界遺産登録を目指すと、比較的多くの遺産に該当してしまい、世界遺産がどんどん増え続けてしまう恐れが出てきます。
そのため、原爆ドームが世界遺産に登録されて以降は、登録基準(vi)だけでの世界遺産登録は望ましくないとされてきています。
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3・4級レベル
独立記念館があり、アメリカ最初の首都にもなった都市として正しいものはどれか。
- ボストン
- ニューヨーク
- ボルティモア
- フィラデルフィア
④
答え(タップ)>>2級レベル
『独立記念館』で独立宣言を発案した人物名として正しいものはどれか。
- セオドア・ルーズベルト
- エイブラハム・リンカーン
- トーマス・ジェファソン
- ジェームズ・モンロー
③
答え(タップ)>>1級レベル
『独立記念館』に関する説明として誤っているものはどれか。
- 1776年7月4日に開かれた第2回大陸会議の会場となった。
- 設計にはフランス人建築家ギュスターヴ・エッフェルも関わっている。
- もともとはペンシルベニア議事堂として建設された。
- 世界遺産登録基準(vi)のみを満たしている。
②
答え(タップ)>>まとめ
- 独立記念館はアンドリュー・ハミルトンが設計したイギリス様式で赤レンガつくりの建造物。
- もともとはペンシルベニア州の議事堂として建設された。
- アメリカのイギリスからの独立を話し合う第2回大陸会議の会場として使われた。
- 第2回大陸会議でトーマス・ジェファソンが発案した「独立宣言」が採択された。
- 「アセンブリールーム」は、アメリカ合衆国憲法が承認された場所として有名。
- 独立記念館のあるフィラデルフィアは18世紀末までアメリカの首都だった。
- 独立記念館は世界遺産登録基準(vi)のみが認められている珍しい世界遺産。
おまけ:「独立記念館(フィラデルフィア)」のプチ観光情報
独立記念館のあるフィラデルフィアの街並み
人口 | 約160万人(全米第6位) |
---|---|
最寄の空港 | フィラデルフィア国際空港 |
通貨 | USドル |
観光のベストシーズン | 通年 |
時差 | 13時間(東京 – フィラデルフィア間) ※日本の方が13時間進んでます。 |
治安 | 普通 |
物価 | 少し高い(日本の物価の1.3倍ほど) |
日本から独立記念館のあるフィラデルフィアへの直行便は就航していません。
最も一般的なフィラデルフィアへの行き方は、直行便でニューヨークまで行き、ニューヨークから高速鉄道でアクセスする方法です。
または、他のアメリカの都市を経由して国内線乗り継ぎでアクセスする方法もあります。
【全て空路アクセスの場合】
- 羽田・成田 ⇨ アメリカ各都市の空港(シカゴ、ダラス、アトランタ、他) ⇨ フィラデルフィア国際空港(フライト時間:約14〜16時間)
【飛行機+鉄道アクセスの場合】
- 飛行機:日本の各空港 ⇨ ニューヨーク(J・F・K国際空港 or ニューアーク・リバティー国際空港 フライト時間:約13時間)
- 鉄道:ニューヨーク(ペン駅) ⇨ フィラデルフィア(30丁目駅 乗車時間:約1時間半〜2時間)
陸路でのニューヨークからフィラデルフィアへの移動には、アメリカの高速鉄道「アムトラック」を利用することになります。
(アムトラック予約ページはこちらから)
日帰り観光ができるので、ニューヨークを訪れた際にフィラデルフィアに足を伸ばすのもいいですね。
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。