こんな方にオススメの内容!
- なぜケルン大聖堂が世界遺産に登録されたのか理由が気になる!
- ケルン大聖堂の建築構造やゴシック様式について知りたい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- ドイツへの旅行を考えている!
遺産ポイント
- ケルン大聖堂の建築工事期間は632年
- 設計は建築家ゲルハルトによるもの
- 純粋なゴシック様式としては世界最大級の建造物
「ケルン大聖堂」のプロフィール
登録名称 | ケルンの大聖堂 |
---|---|
登録年 | 1996年(2008年:範囲変更) |
所在国 | ドイツ |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (i)(ii)(iv) |
備考 | 2004〜2006年は危機遺産リストに記載(詳細はこちらから) |
そもそも「ケルン大聖堂」とは?
ケルン大聖堂はヨーロッパを代表する大河ライン川沿いに建つ
『ケルン大聖堂』とは、ドイツ西部のライン川沿いに位置する工業都市ケルンにある大聖堂です。
”ケルンにある大聖堂”であるためケルン大聖堂と呼ばれていますが、正式名称は『ザンクト・ペーター・ウント・マリア大聖堂』と言います。
正式名称の意味は”ペトロとマリアの大聖堂”で、キリスト教徒にとって非常に重要な大聖堂であることがわかります。
ちなみに、ケルン大聖堂はドイツで最も訪問者数が多い教会なのです!
世界遺産登録理由
夜には美しくライトアップされるケルン大聖堂
ケルン大聖堂が世界遺産登録された理由は、下記の3点に大きく分けられます。
- 世界最大級の美しい大聖堂
- 世界を代表するゴシック建築
- 様々な建築家・芸術家が関わった文化交流の場
特に、”世界最大級”と”ゴシック建築”は、最重要キーワードになってきます!
最重要である理由については、後述の建築の歴史にて理解することができます。
理由1:世界最大級の美しい大聖堂
高さは東京タワー第一展望台とほぼ同じ高さの157mもある
ケルン大聖堂が世界遺産登録された最もわかりやすい理由は、世界最大級の大聖堂である点です!
- 最高部(高さ):157m
- 奥行き:144m
- 最大幅:86m
- 天井の高さ:(最大で)43m
特に高さ157mという数字は、ヨーロッパで最も高い大聖堂となっています。
今でこそ巨大な大聖堂として有名なケルン大聖堂ですが、実はもともとはあまり名の知れない中規模の聖堂が起源なのです。
その後、聖堂への巡礼者が増えたことを受け、より大きな聖堂への建て替え工事が決定しました。
そして、現在のような巨大な大聖堂に生まれ変わったのです。
13世紀に、イタリアのミラノからケルンに「東方三博士の聖遺物」がもたらされました。
用語メモ
東方三博士の聖遺物とは、イエス・キリストの誕生をお祝いしに来た3名の人物の遺骨(聖遺物)。キリスト教の世界では最重要人物として数えられる。すると、従来よりもケルンへ巡礼する人々が増えたのです。
(なお、東方三博士の聖遺物は、現在もケルン大聖堂の最奥にある「黄金の聖棺」の中に納められています)
一方で、ケルン大聖堂の建て替え工事には632年もの歳月がかかりました。
もちろん大規模な建築工事だったことも影響してますが、ここまで工事に時間がかかった最大の理由は別にあるのです。
(理由については、後述の「なぜ完成までに600年以上もかかった!?建築の歴史」で詳しく解説)
なぜ完成までに600年以上もかかった!?建築の歴史
建築工事には途中約300年もの中断期間があった
まずは、ケルン大聖堂の建築の歴史について見てみましょう。
9世紀 | 後にケルン大聖堂となる中規模の聖堂が完成。 ⇨その後火災により大きな被害を受ける。 |
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1248年 | 聖堂への巡礼者が増加してきたため、大規模な大聖堂への建て替え工事が開始される。 |
1330年 | 西側ファサード、翼廊、身廊の工事開始。 |
14世紀 | 巨大なステンドグラスが制作される。 |
1560年 | 内部が完成しただけで工事が中断。 ⇨その後約300年も放置される(南側の塔にクレーンが付けられたままの状態) |
1842年 | 建て替え工事再開。 |
1880年 | ほぼ最初の図面通りの純粋なゴシック様式で完成。 |
上記の歴史を見てわかる通り、ケルン大聖堂の建て替え工事はなんと600年以上もかかっているのです!
世界最大級の宮殿として知られるフランスの「ヴェルサイユ宮殿」の建築期間が約50年であることを踏まえると、ケルン大聖堂の建築期間がいかに長いかがわかると思います。
ケルン大聖堂の建て替え工事がここまで長引いた理由は、主に下記の3点が挙げられます。
- あまりにも大規模な工事のため資金不足になったため
- 設計図が不足していたため
- 当時のドイツ国内の情勢が建築どころではなかったため
前述の「世界最大級の美しい大聖堂」でも触れたように、ケルン大聖堂は世界最大級の建造物です。
そのため、必然的に工事に多くの期間が必要になります。
加えて、工事が中断した16世紀頃のドイツは、国内に小さな国々が存在する連邦国家でした。
そして、小さな国同士が分裂状態にあり情勢が不安定だったため、建築に時間やお金をかける余裕が無かったのです。
また、そもそも大聖堂の建築に必要な設計図が行方不明だったという問題もありました。
建て替え工事が再開した理由
ケルン大聖堂は19世紀に建築工事が再開した
ケルン大聖堂の建て替え工事が再開した理由は、下記の2点が大きく影響しています。
- ドイツ国内の情勢が落ち着きを見せた
- 設計図が見つかった
ドイツ国内に存在した小さな国々は、19世紀になると全て統一されました。
これは、かつてヨーロッパに存在した神聖ローマ帝国という国が消滅したことで、自分たちの国を作り上げたいと願うドイツ国民が増えたことが影響しています。
用語メモ
神聖ローマ帝国とは、ドイツを中心にかつて西ヨーロッパに存在した連邦国家(大小様々な国家の集合体)。さらに追い風が吹くように、ケルン大聖堂建築に欠かせない、14世紀初期の西側正面のオリジナル図面が偶然発見されたのです。
また、当時の国王からの援助や芸術家たちの協力もあり、大幅な遅れを取り戻すかの勢いで建築が進みました。
一時は取り壊し案も出ていましたが、建築に関する好条件が全て揃ったため、工事再開後は約40年で完成したのです。
理由2:世界を代表するゴシック建築
内部は交差リブ・ヴォールトや飛梁によってアーチ状に造られている
ケルン大聖堂は、世界最大級のゴシック建築という点でも高い評価を受け世界遺産登録に至りました。
用語メモ
ゴシックとは、建築技術の発展によって”軽やかで明るい”建築が可能となり、パリを中心に発展した建築様式の一つ。”ゴシック”には、従来まで主流だったルネサンスから見て”野蛮な”というニュアンスが含まれている。ケルン大聖堂の建築ポイントには、主に下記が挙げられます。
- 交差リブ・ヴォールトや飛梁(とびばり)と呼ばれる技法を使いアーチを描くようにして天井を高く見せている
- 大きなステンドグラスやバラ窓が用いられている
- 「ラテン十字形」と呼ばれる建物を上から見たら十字に見えるような平面プランが採用されている
特に、複数枚使われている巨大なステンドグラスが圧巻です。
ケルン大聖堂にあるステンドグラスは、ヨーロッパに現存するものとしては最大のステンドグラスとされています。
このようにケルン大聖堂は、ゴシックというヨーロッパを代表する建築様式の代表格的存在なのです。
なお、ケルン大聖堂のゴシック建築構造や歴史に関しては、下記の書籍内でイラスト付きでわかりやすく解説されてます。
気になる方は、ぜひ一度手に取って読んでみてください。
- 商品名:歴史がわかる世界遺産イラスト大図鑑
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理由3:様々な建築家・芸術家が関わった文化交流の場
ケルン大聖堂の建築モデルとなったフランスの「アミアン大聖堂」
ケルン大聖堂の建築には、ドイツ国内のみならず、世界各国から建築家、芸術家が集められました。
- ゲルハルト(大聖堂の設計)
- リヒター(ステンドグラス制作)
- ゲーテ(装飾)
つまり、ケルン大聖堂は世界各国の専門職者の努力の傑作とも言えるのです!
このように、ケルン大聖堂の建築によって技術・文化交流が盛んに行われた歴史も高く評価されました。
ちなみにゲルハルトは、過去にフランスのアミアンの大聖堂を手がけた実績があったため、ケルン大聖堂もアミアンの大聖堂を手本にして建築されています。
そしてゲルハルトが亡くなってからも、設計担当者が何代にも引き継がれて完成に漕ぎつけました。
一時は危機遺産リストに記載されていた!?
ケルン大聖堂周辺には近代的な建物が建つため景観破壊の懸念が出ている
実はケルン大聖堂は、2004年に一度危機遺産リストに記載されていたのです!
(危機遺産に関しては、こちらの記事で詳しく解説してます)
危機遺産リストに記載された原因は、ケルン大聖堂から約1km離れたところで計画された5つの高層ビルの建設です。
高さのある近代的な高層ビルが建つことで、景観破壊に繋がる恐れがあるとユネスコから指摘されました。
(ユネスコに関しては、こちらの記事で詳しく解説してます)
確かに世界遺産に指定されている建物から1kmも離れていれば、通常であれば問題ありません。
しかしケルン大聖堂の場合は、大聖堂の高さにも並ぶような巨大な高層ビルの建設計画であったため、空の景観に影響を与えてしまうと指摘を受けたのです!
空の景観の指摘を受けて、ケルン市は下記のような対応をしました。
- 建設計画の縮小(高さ制限)
- バッファー・ゾーンの拡張(バッファー・ゾーンの詳細についてはこちらの記事で解説)
上記の対応を受け、ケルン大聖堂は2006年に危機遺産リストから脱することに成功しました。
なお、バッファー・ゾーンの拡張を受けて、2008年にケルン大聖堂の登録範囲が変更されています。
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3,4級レベル
『ケルン大聖堂』で採用されている建築様式の名称として正しいものはどれか。
- ルネサンス
- バロック
- ゴシック
- ロマネスク
③
答え(タップ)>>2級レベル
『ケルン大聖堂』の設計を担当した人物名として正しいものはどれか。
- モンタネール
- ピエール・ポール・リケ
- ゲルハルト
- ルシオ・コスタ
③
答え(タップ)>>1級レベル
『ケルン大聖堂』に関する説明として誤っているものはどれか。
- 内部には「最後の審判」のレリーフが飾られている。
- 16世紀から約300年間も建築工事が中断した。
- 現存するヨーロッパ最大のステンドグラスが用いられている。
- 景観破壊の懸念により一時は危機遺産リストに記載されていた。
①
答え(タップ)>>まとめ
- ケルン大聖堂の正式名称は『ザンクト・ペーター・ウント・マリア大聖堂』。
- 高さ157mはヨーロッパにある大聖堂の中で最も高い。
- ケルンに「東方三博士の聖遺物」が来たことで巡礼者の数が急激に増えた。
- 建て替え工事には632年もの歳月がかかった。
- 資金や設計図の不足や国内情勢の不安定により300年も工事が中断した。
- 情勢の落ち着きや設計図の発見により19世紀から工事が再スタートされた。
- 設計を担当したのは建築家ゲルハルト。
- 交差リブ・ヴォールトやステンドグラスが用いられた世界最大級のゴシック建築。
- フランスのアミアン大聖堂をモデルに建築された。
- 景観破壊の懸念から2004年に危機遺産リストに記載された。
おまけ:「ケルン大聖堂」のプチ観光情報
ドイツ屈指の観光スポットであるケルン大聖堂は常に多くの観光客で賑わっている
最寄り空港 | ケルン・ボン空港 |
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公用語 | ドイツ語 |
通貨 | ユーロ |
観光のベストシーズン | 通年 |
時差 | 7時間(サマータイム時は8時間) ※日本の方が7時間進んでます。 |
治安 | 非常に良い |
物価 | 少し高い(日本の1.3倍ほど) |
ケルン大聖堂は、ドイツを代表する大人気観光地です。
そのため日中は大変混雑するので、朝一に訪れることを強くオススメします。
また、ケルン周辺は日系企業が多いため日本人観光客が多いのが特徴です。
アクセス
大聖堂のすぐ横に「ケルン中央駅」があるため駅からのアクセスは抜群
残念ながら、日本からケルンへの直行便は就航していません。
一方で、ケルンから1時間圏内に位置する「フランクフルト」や「デュッセルドルフ」への直行便は就航しています。
- 日本各空港 [フライト時間:約12時間]⇨ フランクフルト or デュッセルドルフ
- フランクフルト or デュッセルドルフ [鉄道乗車時間:30分〜1時間]⇨ ケルン中央駅 [徒歩すぐ]⇨ ケルン大聖堂
フランクフルト、またはデュッセルドルフからケルンヘは、鉄道で1時間以内で到着できる抜群のアクセスです。
ですので、実質ケルンまで直行便でアクセスできると言っても過言ではないでしょう。
また、ドイツは日本同様に鉄道の運行時間が正確なため、旅程の計画が立てやすいのも魅力の一つです。
ケルン大聖堂のおすすめ眺望スポット
「ホーエンツォレルン橋」越しに見る夜景は人気スポット
ケルン大聖堂の美しい姿を眺められる、大人気眺望スポットが2つあります。
- ホーエンツォレルン橋
- トリアングルビルのパノラマ展望台
ホーエンツォレルン橋は、ライン川にかかるケルンで最も有名な橋です。
夜になるとケルン大聖堂と共に美しくライトアップされるため、ケルン大聖堂の対岸から眺めるのがオススメです!
一方で「トリアングルビルのパノラマ展望台」は、ケルンにそびえる近代的な高層ビルにある展望台です。
ケルン大聖堂だけでなく、ケルンの街並みを一望することができます。
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。