こんな方にオススメの内容!
- そもそも最後の晩餐とはなにかを知りたい!
- なぜ絵である最後の晩餐が世界遺産登録された理由が気になる!
- 最後の晩餐が描かれた背景や絵の内容について詳しく知りたい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- イタリアへの旅行を計画している!
遺産ポイント
- レオナルド・ダ・ヴィンチの名作「最後の晩餐」は教会の食堂に描かれた
- 「サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会」はドミニコ会修道院として建造
- テンペラ技法によって描かれたが後に損傷が発生
「最後の晩餐」のプロフィール
登録名称 | レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』があるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会とドメニコ会修道院 |
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登録年 | 1980年 |
所在国 | イタリア |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (i)(ii) |
そもそも「最後の晩餐」とは?
『最後の晩餐』とは、約500年前にイタリアの芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチによって描かれた巨大な壁画です。
【最後の晩餐の概要】
- 約2年かけて教会内にある食堂の壁に描かれた
- キリスト教の最重要人物であるイエスが死を迎える最後の食事を12人の弟子ととるシーンがモチーフ
- 「12人の弟子の中に裏切り者がいる」とイエスが発したことに衝撃が広がっていく様子が演出されている
『最後の晩餐』は、レオナルド・ダ・ヴィンチ不朽の名作として世界中で知られ、今なお食堂で鮮明な姿を見ることができます。
特徴
最後の晩餐の絵の特徴は、大きく下記の3点に分けられます。
- 「テンペラ×油彩」という新しい技法を採用
- 3つの窓を描くことでまるで本物の光が注がれている情景を表現
- 「明暗法(キアロスクーロ)」によって遠近法を演出
用語メモ
テンペラとは、卵などを材料にした着色の粉で描く技法。壁画などの板絵に適している。油彩とは、植物の種などから採れた油を用いて描く技法。一般的に見られる絵画でよく採用されている。最後の晩餐は、”あたかも本物の光を使っているような明暗の使い分け”をすることによって、壁画の中に臨場感を出しています。
実際に壁画の中に窓を描くことで、壁画内に擬似的な光が刺し込み、周辺の人物をより立体的に見せることが可能になるのです。
また、各所で明るさを調整して描くことで遠近法を演出することができ、まるで食堂の向こうでイエスたちが本当に食事をしているかのような世界観を表現しています。
最後の晩餐が描かれた「サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会(修道院)」とは?
最後の晩餐が描かれている「サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会」の外観
「サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会(修道院)」とは、約600年前に建てられたドミニコ会の建築物です。
用語メモ
ドミニコ会とは、約800年前にフランスで誕生した、キリスト教を東西に分けた際のカトリック側(西側)に属する組織の一つ。ドミニコ会を創り上げた人物の名前「ドミニコ」から名前が取られた。【教会完成までの流れ】 | |
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13世紀末 | 現在の教会が建つ場所に建てられていた大聖堂が取り壊される。 |
15世紀半ば | サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会の建造が開始される。 |
1469年 | ゴシック様式の教会が完成する(ゴシック様式の詳細はこちらの記事で解説)。 |
15世紀末 | ドナート・ブラマンテにより、ゴシック様式の建物にルネサンス様式の聖堂部分が増築される(ルネサンス様式の詳細はこちらの記事で解説)。 |
1497年 | 「最後の晩餐」が描かれている大食堂が完成する。 |
世界遺産登録理由
現存するダ・ヴィンチ唯一の壁画作品「最後の晩餐」
『最後の晩餐』が世界遺産登録された理由は、大きく下記の2点に分けられます。
- ダ・ヴィンチの名作が良質な状態で残されている
- 多くの芸術家に影響を与えた名作が見られる
(絵である「最後の晩餐」が世界遺産登録対象になった理由については後半で解説)
理由1:ダ・ヴィンチの名作が良質な状態で残されている
最後の晩餐が描かれている「サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会」は複数の建築様式が混在している
世界遺産登録理由の1つ目は、世界的に有名な芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた名作が良質な状態で残されている点です。
最後の晩餐が描かれたのは500年以上も前です。
通常であれば、年数が経てばたつほど劣化によって絵としての価値は次第に落ちていきます。
しかし、最後の晩餐は描いた当時と比較しても見劣りすることなく、今なお食堂の壁に鮮明な姿で残されているのです。
(最後の晩餐の保護活動については後半で解説)
そもそも最後の晩餐を描くことになる前のダ・ヴィンチは、決して世界中に名が知られている著名な芸術家というわけではありませんでした。
しかし、この最後の晩餐という名作を残して以降、ダ・ヴィンチは一躍芸術家として世界に名が知れ渡るようになったのです。
なお、最後の晩餐は現存するダヴィンチ作品の中で唯一の壁画作品であり、その希少性は図り知れません。
理由2:多くの芸術家に影響を与えた名作が見られる
世界遺産登録理由の2つ目は、ダヴィンチが描いた壁画が世界中の芸術家に大きな影響を与えた点です。
当時、ミラノという国を統治していたルドヴィーコ・スフォルツァから直々に声をかけられたダ・ヴィンチは、1495年から約2年の歳月をかけて最後の晩餐を完成させました。
この最後の晩餐を描いた際に、ダ・ヴィンチは今まで見せなかった才能を発揮させ、世界的な芸術家への階段を登ことになったのです。
ダ・ヴィンチが採用した具体的な技術としては、後述でも解説したように、複数の技術を組み合わせ明暗を生み出し立体感や遠近法を演出することです。
この斬新なアイディアは瞬く間に世界中に知れ渡り、世界の芸術家に大きな影響を与えることになりました。
このように、ダ・ヴィンチが描いた最後の晩餐によって、新しい技術の導入や芸術家同士の交流が盛んに行われることに繋がったのです。
なぜ絵が世界遺産になれる?
もう一つのダ・ヴィンチの名作「モナリザ」は”不動産ではない”ため世界遺産に登録されていない
絵であるにもかかわらず最後の晩餐が世界遺産登録の対象になる理由は、人に手によって動かすことのできない”壁画”という形で残されているためです。
世界遺産登録の対象となる文化財の絶対条件に、人の手で持ち運んだり移動させたりすることができない”不動産”であることが挙げられます。
つまり、人の手で運べる絵や骨董品や装飾などは世界遺産登録対象に含むことはできません。
一方で、最後の晩餐のようにとある建物の壁などに描かれた作品であれば、絵単体という認識ではなく、建物の一部という認識になるため世界遺産登録が可能になるのです。
さらに、最後の晩餐の場合は”食堂に描かれたレオナルド・ダ・ヴィンチの名作”という事実が世界遺産としての価値をより高めることに繋がっています。
ちなみに、フランスの世界遺産『パリのセーヌ河岸』の構成資産の一つである「ルーブル美術館」には、「モナリザ」をはじめとする世界的名画がいくつも残されています。
しかし、あくまでもルーブル美術館の建物自体に価値があると評価されているため、展示品は世界遺産の対象になっていません。
なお、『パリのセーヌ河岸』については下記の記事で詳しく解説しているため、この機会にぜひ併せて読んでみてください。
合わせて読みたい!【パリのセーヌ河岸】世界遺産登録理由&各名所の詳細をわかりやすく解説!『最後の晩餐』の修復作業
最後の晩餐は500年以上も前に描かれたにもかかわらず、現在でも良質な状態で見ることができます。
状態の良さが保たれている最大の要因は、数十年に一度の間隔で修復作業が行われているためです。
前述でも解説したように、最後の晩餐は新しい技法で描かれた作品です。
しかし、絵に使用している素材の問題や年数経過、環境変化の影響により、壁画全体がカビに覆われるなど損傷が進んでしまいました。
特に、ダ・ヴィンチが採用した技法(詳細は後述)で描くと、食堂の湿気等に弱いためすぐに損傷が進んでしまうのです。
そこで、絵の損傷を修復すべく1970年から約30年もの歳月をかけて、科学的な技術を用いて修復が行われました。
また、修復のみならず、最後の晩餐完成後に他の画家によって加えられた部分を剥がし、ダ・ヴィンチオリジナルの姿に戻すことにも成功したのです。
このように、完成当時の姿を保つために最新技術を導入することは、世界遺産保護・保全の観点で認められています。
ただし、最新技術による修復の際は「ヴェネツィア憲章」などのルールに従わなければなりません。
ヴェネツィア憲章など、世界遺産の修復については下記の記事で詳しく解説しているので、この機会にぜひ併せて読んでみてください。
合わせて読みたい!【アテネ憲章&ヴェネツィア憲章】世界遺産の修復に関する内容の違いを小学生でもわかるように解説!本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3,4級レベル
『最後の晩餐』を描いたイタリアの芸術家として正しいものはどれか。
- ミケランジェロ・ブオナローティ
- ラファエロ・サンティ
- サルバドール・ダリ
- レオナルド・ダ・ヴィンチ
④
答え(タップ)>>2級レベル
『最後の晩餐』が描かれた教会の名称として正しいものはどれか。
- トリニタ・デイ・モンティ教会
- サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会
- サンタ・クローチェ教会
- サンタ・マリア・イン・コスメディン教会
②
答え(タップ)>>1級レベル
『最後の晩餐』で採用されている技法の名称として正しいものはどれか。
- グアッシュ
- フレスコ
- テンペラ
- フランドル
③
答え(タップ)>>まとめ
- 「最後の晩餐」とはレオナルド・ダ・ヴィンチによって描かれた巨大な壁画。
- 「テンペラ×油彩」「明暗法(キアロスクーロ)」など特殊な技法を用いている。
- ドミニコ会の修道院として建造された「サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会」の大食堂の壁に描かれた。
- ダ・ヴィンチが描いた最後の晩餐によって、新しい技術の導入や芸術家同士の交流が盛んに行われることに繋がった
- 人の手によって動かすことのできない壁画は世界遺産登録対象になる。
- 数十年に一度の間隔で最新技術を用いた修復作業が行われている結果、良質な状態の壁画を今なお見ることができている。
おまけ:「最後の晩餐」のプチ観光情報
最後の晩餐があるミラノには「ドゥオーモ」などいくつもの観光名所が点在している
拠点となる都市 | ミラノ |
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最寄り空港 | ミラノ・マルペンサ国際空港 |
公用語 | イタリア語 |
通貨 | ユーロ |
観光のベストシーズン | 通年 |
時差 | 8時間進んでいる(サマータイムは7時間) ※日本が8時間進んでます。 |
治安 | 普通(スリなどの軽犯罪には要注意) |
物価 | 普通(日本と同じぐらい) |
ビザ | 不要 |
チケットの事前予約 | 必要(チケット予約方法の詳細はこちら) |
最後の晩餐のあるミラノはイタリア第二の都市で、イタリア経済とファッションの中心地です。
そのため、宿泊施設や飲食店、鉄道やバスなどの交通網が非常に充実しています。
一方で、観光客が多いため、観光客を狙ったスリなどの軽犯罪が多発する都市でもあります。
手荷物管理には十分に気をつけましょう。
なお、最後の晩餐のチケット購入方法の詳細は下記の記事で解説してます。
合わせて読みたい!【世界遺産”最後の晩餐”のチケット購入方法】おすすめポイント&注意点を交えて解説!アクセス
日本からミラノへの直行便は就航している時期もありますが、一般的には他のヨーロッパ各都市、または中東各都市を経由してアクセスすることになります。
または、同じくイタリアのローマへの直行便は就航しているため、一度ローマを経由して国内線でアクセスすることもできます。
【ローマ経由の場合】
- 日本の各空港 [フライト時間:約14時間] ⇨ ローマ・フィウミチーノ空港 [フライト時間:約1時間] ⇨ ミラノ・リナーテ国際空港 or ミラノ・オーリオ・アル・セーリオ空港
【ヨーロッパ or 中東各都市経由の場合】
- 日本の各空港 [フライト時間:11〜14時間] ⇨ ヨーロッパ各都市(ミュンヘン、チューリッヒ、他) or 中東各都市(イスタンブール、ドーハ、他) [フライト時間:約3〜7時間] ⇨ ミラノ・マルペンサ国際空港
ローマ経由のイタリア国内線フライトの場合、国際線が多く発着するミラノ・マルペンサ国際空港ではなく、ミラノ・リナーテ国際空港やミラノ・オーリオ・アル・セーリオ空港になるのでご注意ください。
また、最後の晩餐がある「サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会」は、多くの観光施設が点在するミラノ中心部に位置するため、比較的簡単にアクセスができます。
ミラノのホテル情報
- ホテルは市街地全体に広がているためホテル密集地というエリアは無い
- 3〜4つ星ホテルの相場は「15,000〜40,000円」
- 有名な大型外資系ホテルも多く点在
ミラノはイタリア第2の都市であり、観光施設が充実している世界的に人気な観光都市であるため、ホテルは市街地全体に広く点在しています。
1泊数千円から宿泊できる安宿から、5つ星の高級ホテルまでとラインナップが充実しています。
イギリスやフランスなど他のヨーロッパ主要国と比べると少し宿泊費が安いため、3つ星であれば1室「20,000円/泊」ぐらいを目安にしておきましょう。
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。