こんな方にオススメの内容!
- チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅とはなにかを知りたい!
- 現役の駅が世界遺産登録される理由が気になる!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- インドへの旅行を考えている!
遺産ポイント
- インドの伝統建築様式×イギリスのゴシック・リバイバル様式が融合した美しい駅舎
- 設計はイギリス人建築家フレデリック・ウィリアム・スティーヴンス
- 完成当時の駅舎の名前は「ヴィクトリア・ターミナス」
「チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅」のプロフィール
登録名称 | チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅(旧ヴィクトリア・ターミナス) |
---|---|
登録年 | 2004年 |
所在国 | インド |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (ii)(iv) |
そもそも「チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅」とは?
『チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅』とは、インド最大の人口を抱えるムンバイにある巨大なターミナル駅です。
非常に長い駅名ですが、この長さにはインドの歴史や想いが込められています。
- チャトラパティ:インドで高い地位を与えられている人に付けられる呼び名(称号)。
- シヴァージー:インドで大きく繁栄した「マラーター王国」を指揮していた人物の名前。
- ターミナス:ラテン語で「終着駅」という意味(英語のターミナルに相当)。”出発拠点となる駅”という意味も持っている。
つまり、駅名にはインドの偉大なる人物名と重要な駅という意味が込められているのです。
ちなみに、今の駅名になる以前の名前は『ヴィクトリア・ターミナス』でした。
この名前が採用された理由は、駅舎が完成した1887年がちょうどイギリスのヴィクトリア女王の即位50年にあたったためです。
なお、インドとイギリスの関係性については、後述の「理由1:建築界に大きな影響を与えた18〜19世紀のインドを象徴する建物」で詳しく解説します。
駅舎の歴史&建造された理由
駅舎が完成するまでには、約10年の歳月がかかっています。
また、インド初の鉄道駅「ボリバンダー駅」との関係もポイントになってきます。
1853年 | インド初の鉄道駅「ボリバンダー駅」が開業。 |
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1878年 | 「ヴィクトリア・ターミナス(旧名)」の着工。 |
1887年 | 「ヴィクトリア・ターミナス(旧名)」の完成。 |
1996年 | 駅名の変更要望が出る。 |
1998年 | 駅名が「チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅」に変更される。 |
2004年 | 現役の駅でありながら世界遺産に登録される。 |
チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅が完成する20年以上前には、すでにムンバイには「ボリバンダー駅」というインド初の鉄道駅がありました。
しかし、インドの急激な人口増加によって、ボリバンダー駅だけでは乗客を抱えきれない状態になってしまいます。
そこで、新駅として現在のチャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅の建造案が出されました。
前述の「そもそも「チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅」とは?」でも解説したように、駅舎が完成した当時の名前は「ヴィクトリア・ターミナス」でした。
しかし、完成から100年以上経った1998年に、政治界で大きな力を持つシヴ・セーナーの強い要望によって、「チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅」という駅名に変更されたのです。
ちなみに、現在の駅は1日の乗降客数が約200万人、1日の列車の乗り入れ本数が約1000本と、ムンバイ最大の駅にまで成長しており
「世界で最も美しくアジアで最も忙しい駅」
と言われています。
駅舎の特徴
駅舎を正面から見るとまるで宮殿のような造りに見える
- ドームや小塔などインドの伝統的な宮殿建築を採用
- 多くの装飾が施されている
- 随所にゴシック建築(ゴシック・リバイバル様式)が見られる
用語メモ
ゴシックとは、建築技術の発展によって”軽やかで明るい”建築が可能となり、パリを中心に発展した建築様式の一つ。”ゴシック”には、従来まで主流だったルネサンスから見て”野蛮な”というニュアンスが含まれている。屋根に注目してみると、駅舎の象徴とも言えるドームや小塔を見ることができます。
これは、インドの有名な世界遺産「タージマハル」など、インドのお墓や宮殿によく採用されている建築の特徴です。
(タージマハル建築の詳細についてはこちらの記事で詳しく解説してます)
さらに、ムンバイにはヨーロッパを代表する建築様式「ゴシック」が採用された建物が数多くあり、チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅にも採用されています。
外観には細かな石の彫刻や美しい曲線が見られ、内部にはステンドグラスやカラフルなタイル、イタリア産の大理石などが施されています。
世界遺産登録理由
『チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅』が世界遺産登録された理由は、大きく下記の2点に分けられます。
- 建築界に大きな影響を与えた18〜19世紀のインドを象徴する建物
- 複数の建築様式が採用された貴重な歴史的建造物
理由1:建築界に大きな影響を与えた18〜19世紀のインドを象徴する建物
ムンバイ大学の敷地内にある「ラジャパイ時計台」もイギリス統治時代の影響を受けた建築物
世界遺産登録理由の1つ目は、チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅という建築界に大きな影響を与えた18〜19世紀のインドを象徴する建物が良質な状態で残されている点です。
18〜19世紀頃のインドはイギリスの植民地でした。
そのため、ゴシックを始めとするヨーロッパの建築様式とインド伝統の建築様式が融合した建物が数多く建てられていきました。
そのヨーロッパ風の建物を代表する建造物の一つが、イギリス人建築家のフレデリック・ウィリアム・スティーヴンスによって設計されたチャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅なのです。
なお、チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅以外にも、ムンバイには数多くの「ヨーロッパ×インド」建築様式が融合した建造物が点在しています。
【ヨーロッパの建築様式が混在した主な建物】
- ラジャパイ時計台(ムンバイ大学キャンパス内)
- チャトラパティ・シヴァージー・マハラジ・ヴァストゥ・サングラハラヤ(博物館)
- 西部鉄道本社
- リーガル・シネマ
- ムンバイ高等裁判所
理由2:複数の建築様式が採用された貴重な歴史的建造物
チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅は「インド建築 × イギリス建築」の代表的な建物
世界遺産登録理由の2つ目は、チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅が複数の建築様式が採用された貴重な歴史的建造物である点です。
前述で何回も触れてきましたが、チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅は
「インドの伝統的な建築様式 × イギリスのゴシック・リバイバル様式」
このようにヨーロッパの建築様式が融合した建造物です。
用語メモ
ゴシック・リバイバルとは、18世紀末〜19世紀におこった、12世紀ごろに誕生したゴシック建築を改めて採用して建造物を建てていく動き。この動きによって建造された建物の建築様式が「ゴシック・リバイバル様式」と呼ばれるようになる。なお、別名は「ネオ・ゴシック建築」と呼ばれる。そもそも、ベースとなるゴシック様式はフランスで誕生しました。
その後、イギリスが改めてゴシック様式を採用した建物の建造を積極的に開始し、この影響が当時イギリスの植民地だったインドにも及んだのです。
なお、駅の正面門には、イギリスを象徴する「ライオン」とインドを象徴する「トラ」の像が置かれており、インドとイギリスの伝統が融合した傑作であることが表現されています。
なぜ現役の駅が世界遺産になれる?
たとえ現役で利用されている建物であっても、以下の3つの条件に当てはまっていれば世界遺産登録されることがあります。
- 登録基準のいずれかを満たしている(登録基準の詳細はこちらの記事で解説)。
- 不動産である(人の手によって簡単に移動させられないもの)。
- 保存状態が良い&計画的な保護・保全活動が行われている。
特に、現役で利用されている建物で最も重要なポイントが保護保全計画です。
現役で利用されている建物で最も懸念される点は、過度な改装・改築やメンテナンス不足などによる価値の低下です。
機能性や利便性を意識するあまり、建てられた当時の歴史的価値が失われたり、利用者の手によって損傷等が起こってしまう可能性があります。
以上のことを踏まえて、チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅は計画的な保護保全の取り組みが行われている点、現役の駅であるにもかかわらず歴史的価値が失われていない点が高く評価されて世界遺産登録が認められました。
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
2級レベル
『チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅』の設計を担当した人物名として正しいものはどれか。
- フレデリック・ウィリアム・スティーヴンス
- ピエール・ポール・リケ
- フランク・ロイド・ライト
- ヴィクトル・オルタ
①
答え(タップ)>>1級レベル
『チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅』に採用されている建築様式の名称として正しいものどれか。
- ハーフティンバー
- チュリゲラ
- ゴシック・リバイバル
- アール・ヌーヴォ
③
答え(タップ)>>※「3,4級」レベルのトレーニングテストは対象外になります。
まとめ
- チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅とはインドのムンバイにある歴史ある巨大な駅で、旧名は「ヴィクトリア・ターミナス」。
- ムンバイの人口増加&鉄道利用客の増加を受けて駅を建造。
- インドの伝統的な宮殿建築とヨーロッパのゴシック・リバイバル様式を採用。
- イギリスの植民地時代だった18〜19世紀にイギリス人建築家フレデリック・ウィリアム・スティーヴンスが設計を担当。
- 保存状態が良く計画的な保護・保全活動が行われていれば現役の建物であっても世界遺産登録される。
おまけ:「チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅」のプチ観光情報
急速な発展を遂げているムンバイの中心部
拠点となる都市 | ムンバイ |
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最寄り空港 | チャトラパティ・シヴァージー国際空港 |
公用語 | ヒンディー語 |
通貨 | インドルピー |
入館料(併設の博物館) | Rs200(約350円) |
休業日 | 土日 |
観光のベストシーズン | 10〜4月 |
時差 | 3時間30分 ※日本が3時間30分進んでます。 |
治安 | 普通(スリなどの軽犯罪には要注意) |
物価 | 安い(日本の1/4ほど) |
ビザ | 必要(アライバルビザ、e-visaあり) |
チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅のあるムンバイは、インド最大の人口を抱える大都市です。
そのため、インド国内中はもちろん、世界各国から多くの観光客が訪れます。
一方で、観光客を狙ったスリなどの軽犯罪が発生する可能性が高いため、手荷物管理には十分に気をつけましょう。
アクセス
ムンバイの空の玄関「チャトラパティ・シヴァージー国際空港」
成田からチャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅のあるムンバイへの直行便は就航しています。
成田以外の空港を利用する場合は、インドの首都デリーを経由してアクセスする方法と、東南アジア各都市を経由してアクセスする方法に分かれます。
航空会社:全日空(ANA) NH829
フライト時間:9時間40分
乗車時間:1時間
なお、ムンバイ・チャトラパティ・シヴァージー国際空港は国際線と国内線でターミナルが離れているため、国内線乗り継ぎなどを行う際は時間に余裕を持っておきましょう。
ムンバイのホテル情報
ムンバイで最も有名で格式のある「ホテル・タージマハル」
- ホテル密集エリアは「コラバ地区」と「フォート地区」
- 高級ホテル密集エリアは無くムンバイ市内に点在
- 3〜4つ星ホテルの相場は「5,000〜10,000円/1泊」
ホテルが多く点在する地区は、ムンバイ南部の「コラバ地区」と「フォート地区」です。
この2つの地区は観光名所も多いため、観光客が拠点にする地区になります。
一方で、有名な外資系ホテルや高級ホテルは、必ずしもコラバ地区やフォート地区にあるとは限りません。
例えば、インターコンチネンタルホテルは「マリンドライブ」という観光エリアに位置してますが、フォーシーズンズホテルは観光エリアから少し離れたエリアに位置しています。
このようにホテル重視で選ぶと、観光エリアから少し離れる可能性があるので、事前にホテルの立地は確認しておきましょう。
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。