こんな方にオススメの内容!
- なぜ「カルパティア山脈とヨーロッパ各地のブナ林」が世界遺産に登録されたのか理由が気になる!
- ヨーロッパの自然環境の特徴について知りたい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- ヨーロッパへの旅行を考えている!
遺産ポイント
- ヨーロッパブナを中心に10種類の多様なブナが生育している!
- 絶滅危惧種の「キンメフクロウ」など貴重な動物の生息地にもなっている!
「カルパティア山脈とヨーロッパ各地のブナ林」のプロフィール
登録名称 | カルパティア山脈とヨーロッパ各地の古代及び原生ブナ林 |
---|---|
登録年 | 2007年(登録範囲拡大:2011年、2017年、2021年) |
所在国 | スロバキア、ウクライナ、ドイツ、アルバニア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、イタリア、ルーマニア、スロベニア、スペイン、北マケドニア、スイス、チェコ、フランス、ポーランド、ボスニア・ヘルツェゴビナ(計18カ国) |
登録ジャンル | 自然遺産 |
登録基準 | (ix) |
備考 | トランスバウンダリー・サイト (世界で最も多くの国にまたがる世界遺産) シリアル・ノミネーション・サイト |
そもそもブナ林とは
ブナとは、雨の多い地域や霧が発生しやすい地域を好んで生育する、世界各地で見られる「落葉樹」の一種です。
ヨーロッパは雨が多い地域や、湿った空気が流れる地域が比較的多いことから、ヨーロッパ各地でブナ林を見ることができます。
また、世界各国で見られるブナには生育条件や材質などの面で少し違いがありますが、ヨーロッパで見られるブナの中心は「ヨーロッパブナ」になります。
ちなみに日本だと、秋田県と青森県にまたがる「白神山地」がブナ林として有名です。
白神山地も世界遺産に登録されており、下記の記事で詳しく解説もしているので、よければカルパティア山脈と比較するようなイメージで見てみてください。
合わせて読みたい!【白神山地 | ブナ原生林】世界遺産登録理由&生息する動植物&見どころをわかりやすく解説!しかし、残念ながらブナが豊富に生い茂っていた数百年前と比べると、ブナ林の面積は減ってきています。
原因としては、家屋などの木材に大量のブナが使われてしまったことなどが挙げられます。
だからこそ、現在も生育しているブナの地域は非常に貴重なのです。
世界遺産登録名称をわかりやすく解説
世界遺産登録名称の理解をすることで、どのような過程で、どんな地域に世界遺産が広がっているのかを知ることができます。
『カルパティア山脈』
この山脈は、2007年に一番最初に世界遺産登録された際の世界遺産登録範囲です。
つまり、カルパティア山脈にあるブナ林が世界遺産登録されたのをきっかけに、現在の18カ国まで拡大登録されていることになります。
2007年の登録後は、数年置きにブナ林の登録範囲が拡大していきました。
範囲拡大に伴い所在する国の数も増え、2021年には合計18カ国にまたがる世界最多の保有国を有するトランスバウンダリー・サイト(国境をまたぐ世界遺産)の世界遺産となったのです!
(トランスバウンダリー・サイトに関してはこちらの記事で詳しく解説してます)
さらに、登録範囲が拡大するとともに、世界遺産登録名称も度々変更されてきました。
登録年 | 登録名称 | 登録追加国 |
---|---|---|
2007年 | カルパティア山脈のブナ原生林 | スロバキア、ウクライナ |
2011年 | カルパティア山脈のブナ原生林とドイツの古代ブナ林 | ドイツ |
2019年 | カルパティア山脈と他のヨーロッパ地域のブナ原生林 | アルバニア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、イタリア、ルーマニア、スロベニア、スペイン(9カ国) |
2021年 | カルパティア山脈とヨーロッパ各地の古代及び原生ブナ林 | 北マケドニア、スイス、チェコ、フランス、ポーランド、ボスニア・ヘルツェゴビナ(6カ国) |
後述の「豊富なブナの種類と分化の過程が見れる貴重さ」で詳しく解説しますが、このようにヨーロッパのほぼ全域にブナ林が広がっている点が特徴です。
世界遺産に登録された理由
世界遺産に登録された理由は、大きく分けて下記の2点になります。
- ブナの種類の豊富さ&生育範囲の広さ。
- 動植物の進化の過程が見れる。
ヨーロッパを含め、ブナ林はかつて世界の広範囲に存在していました。
しかし気候変動や人の手による伐採などによって、ブナ林の面積は年々減少傾向にあります。
ヨーロッパでも、かつてはヨーロッパ全面積の約40%をブナ林が占めていましたが、現在は全盛期と比べるとはるかにその面積を減らしています。
とはいえ、ヨーロッパには現在でも広範囲においてブナが生育しています。
ここまでブナの生育範囲が広いのは世界的に見て非常に珍しいのです!
豊富なブナの種類と分化の過程が見れる貴重さ
カルパティア山脈を中心に、ヨーロッパ各地には多様なブナが生育しています。
その数はなんと10種類!
ここまで多くの種類のブナが生育している地域は、日本の白神山地を含めて世界でもほとんど見られません。
さらにヨーロッパのブナは種類が多いだけでなく、様々な環境に広範囲において生育している点も特徴です。
つまり、一つの決まった環境だけではなく、各環境に適した形で生育している姿を見ることができるのです!
様々な地域にそれぞれの種類のブナが生育していることで、下記のようなブナの生育過程を見ることができます。
一つの地域に一種のブナが生育 ⇨ ヨーロッパ各地にブナが生育 ⇨ 各地域の環境に適したブナが生育 ⇨ 繁殖を広げる
このような過程は氷河期を過ぎた頃から始まったとされています。
ちなみに、世界には人の手で植えられたブナ林もあります。
しかし今回の世界遺産登録範囲内にあるブナ林は、全て”原生ブナ”と呼ばれ、自然に生育しているブナだけを指しています
その他にも、ヨーロッパ各地に生育するブナの特徴には下記などがあります。
- 高さが世界最大のブナが生育している。
- あらゆる樹齢&発達段階におけるブナが存在する。
- 標高に応じて生育するブナの種類が変わる(ヨーロッパブナ、ヨーロッパナラ、フユナラ、他)
動物の豊富さと植物の進化の過程を見れる貴重さ
絶滅危惧種に指定されている「キンメフクロウ」
カルパティア山脈を中心としたヨーロッパ各地のブナ林には、ブナだけでなくその他の植物や動物も豊富に存在します。
生息・生育する動植物の規模や種類は以下の通りです。
- 100種以上の鳥類
- 70種以上の哺乳類
- 絶滅危惧種(レッドリストに記載)のキンメフクロウ
- 絶滅の危機に瀕した80種を含む1,000種以上の植物
特に古代から生育するドイツの古代ブナ林は、氷河期以降の動物の進化や生態系の形成の過程を現在でも見ることができる貴重な地域です。
このようにひとくくりに「ヨーロッパのブナ林」と言っても、地域によって生育するブナの種類や進化過程、生息する動植物に違いが起きているのです。
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
2級レベル
ヨーロッパ地域に生育する原生ブナの種類の数として正しいものはどれか。
- 10種類
- 15種類
- 25種類
- 40種類
①
答え(タップ)>>1級レベル
ヨーロッパ地域のブナ林に生息する動物の名称として正しいものはどれか。
- ルリカケス
- クマゲラ
- ハクトウワシ
- キンメフクロウ
④
答え(タップ)>>※「3,4級」レベルのトレーニングテストは対象外になります。
まとめ
- ヨーロッパブナを中心に10種類のブナが生育している!
- 全ての世界遺産の中で最も多くの国にまたがっているトランスバウンダリー・サイトの世界遺産!
- 気候変動や人の手による伐採などによって、ブナ林の面積は年々減少傾向にある!
- ヨーロッパのブナ林は広範囲に広がり、各地域の環境に合わせて進化や分化をしている!
- 絶滅危惧種の「キンメフクロウ」を始め、多種多様な生物が生息している!
おまけ:「ハイニヒ国立公園(ブナ林の主要地域)」のプチ観光情報
ヨーロッパのブナ林は広範囲に存在しますが、今回は特に人気で比較的アクセスしやすい「ハイニヒ国立公園(ドイツ)」を紹介します。
紹介地域 | ハイニヒ国立公園 |
---|---|
最寄りの都市 | アイゼナハ |
最寄の空港 | フランクフルト国際空港 |
観光のベストシーズン | 4〜11月(新緑〜紅葉シーズン) |
治安(アイゼナハ) | 良好 |
物価 | 日本とほぼ同じ |
時差 | 8時間(東京 – フランクフルト間) ※日本の方が8時間進んでます。 |
「ハイニヒ国立公園」は、ブナが生育する地域の中でも、特に広範囲に広がり樹木の背が高いことで有名です。
またハイニヒ国立公園を訪れるメリットとしては、下記などが挙げられます。
- ドイツにあるブナ林の中で最も多くのブナが生育している様子が見れる。
- 遊歩道が整備されていて散策しやすい。
- ブナ林を一望できる展望台がある。
- 同じく世界遺産の「ヴァルトブルク城」や有名音楽家の「バッハの家」など他の観光地にも立ち寄れる。
「ハイニヒ国立公園(ブナ林の主要地域)」までのアクセス
ハイニヒ国立公園の観光拠点となる街「アイゼナハ」
ハイニヒ国立公園の最寄り都市であるアイゼナハには空港がありません。
そのためまずは、アイゼナハの最寄り空港である「フランクフルト国際空港」を目指すことになります。
なお、日本からフランクフルトまでの直行便は就航しています。
【直行便】
- 羽田・成田・関空・中部(名古屋) ⇨ フランクフルト国際空港(フライト時間:約12時間)
【経由便】
- 日本の各空港 ⇨ ヨーロッパ各都市(パリ、ウィーン、他) ⇨ フランクフルト国際空港(フライト時間:約13時間半〜15時間)
- 価格重視の場合は中東各都市経由がおすすめ(ヨーロッパ経由より数万円ほど安くなる)
空港からアイゼナハへ向かう際は、まずフランクフルトのメイン駅であるフランクフルト中央駅を目指すことになります。
アイゼナハ到着後は、バスにて「ハイニヒ国立公園」を目指します。
- フランクフルト国際空港 ⇨ フランクフルト中央駅(電車で約20分) ⇨ アイゼナハ(ヨーロッパ高速鉄道ICEで約2時間) ⇨ ハイニヒ国立公園(バスで約1時間)
旅行慣れしてない方であれば、アイゼナハにてハイニヒ国立公園の現地ツアーに参加するのがおすすめです。
もちろんバスやタクシーでのアクセスも可能なため、旅慣れている方や自由行動を重視する方は公共交通機関を利用しましょう!
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。