こんな方にオススメの内容!
- イエローストーンという名前の由来を知りたい!
- イエローストーン国立公園が世界遺産登録された理由が気になる!
- イエローストーンの自然現象や生息する動植物について理解したい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- アメリカへの旅行を考えている!
遺産ポイント
- 世界初の世界遺産&世界初の国立公園
- 「オールド・フェイスフル間欠泉」「グランド・プリズマティック・スプリング」など多くの自然現象が見られる
- 人の手を一切加えない「ウィルダネス」という自然保護方法を採用
「イエローストーン国立公園」のプロフィール
登録名称 | イエローストーン国立公園 |
---|---|
登録年 | 1978年 |
所在国 | アメリカ |
登録ジャンル | 自然遺産 |
登録基準 | (vii)(viii)(ix)(x) |
備考 | 世界初の国立公園、世界初の世界遺産の一つ、自然遺産の4つの登録条件全てを満たしている |
そもそも「イエローストーン国立公園」とは?
公園名の由来になっている黄色い岩肌を持つ大渓谷
『イエローストーン国立公園』とは、滝、渓谷、大草原といった自然景観から、間欠泉、温泉といった自然現象まで見ることができるアメリカの国立公園です。
アメリカのワイオミング州、モンタナ州、アイダホ州の3つの州にまたがる、約8,900km²の広大な面積を持っています。
この広さは、日本の四国の全面積の半分に相当するのです。
園内を流れるイエローストーン川の浸食によってつくられた、黄色い岩肌を持つ大渓谷が公園名の由来です。
イエローストーン国立公園の地下には巨大なマグマがあるため、地上には硫黄の影響を受けた岩が多く見られます。
この硫黄の作用によって、地上の岩が黄色く変色して見えるのです!
また、自然景観や自然現象だけでなく、園内に生息する野生動物の豊富さもイエローストーンの魅力の一つです。
(生息する具体的な動物は、後述の「理由3:豊富な動植物が見られる」で詳しく解説します)
イエローストーン国立公園の歴史
イエローストーンは世界初の国立公園&世界初の世界遺産として登録された
実はイエローストーン国立公園の歴史は、アメリカの重要な歴史の一つと言っても過言ではありません。
重要な歴史と言える理由は、下記の2つの出来事に深く関わっているためです。
- 国立公園誕生のきっかけになった
- 自然保護に対する意識が芽生えた
1807年 | アメリカ人が初めてイエローストーン国立公園に足を踏み入れる。 |
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1869〜1872年 | 4回にわたりイエローストーン国立公園の調査が行われる。 ⇨自国の自然環境の豊かさに驚かされる。 |
1872年 | イエローストーン国立公園の調査を踏まえて、アメリカ議会で国立公園についての法律が制定される。 ⇨当時のアメリカ大統領ユリシス・グラントが「イエローストーン公園法」に署名する。 |
1872年 | イエローストーン国立公園が世界初の国立公園に指定される。 |
1972年 | 世界遺産条約が採択される(世界遺産条約に関しては、こちらの記事で解説) |
1978年 | イエローストーン国立公園が世界遺産登録される。 ⇨世界初の世界遺産の一つ。 |
1988年 | 6月に園内で大規模な山火事が発生。10月に自然鎮火する。 |
1995年 | 危機遺産リストへ掲載される(危機遺産リストに掲載された理由は後述しています)。 |
2003年 | 危機遺産リストから脱する。 |
イエローストーンの存在が分かったのは、今から約200年前のことです。
イエローストーンの発見によって、アメリカに手つかずの貴重な自然が数多く存在することに気付かされたのです。
その後、何回か自然の調査が行われた結果、”国立公園”という形で自然を厳重に保護する方針が定まりました。
つまり、イエローストーンの貴重な自然の発見が、その後世界中に国立公園を誕生させたと言っても過言ではないのです!
その後、世界遺産条約が採択され、イエローストーン国立公園は世界初の世界遺産の一つとして登録されました。
環境保護の取り組み「ウィルダネス」の誕生
たとえ山火事が発生しても人の手は加えずに自然鎮火に任せる
イエローストーンは、世界初の国立公園に指定されただけでなく、独特な自然保護が行われているとして世界中から注目を集めています。
その独特な自然保護とは、「ウィルダネス」です!
ウィルダネスとは、”手つかずの自然”という意味です。
自然に発生したことは人の手を一切加えずに、自然のなすがままに任せる、いわば自然の回復機能に委ねる対応を取ることを指します。
1988年に発生した山火事では、人間による消化活動は一切行われなかった。山火事発生後、数ヶ月で自然鎮火し、園内にしげる木の広範囲が焼け落ちた。しかしその後、焼けた枯れ木に虫が住み着き、鳥が集まり、新たな自然循環が生まれ、新しい木の芽も生えた。
イエローストーンのウィルダネスの取り組みは、世界各地で行われている自然保護において模範になっています。
世界遺産登録理由
通称「サファイアプール」と呼ばれる美しい温泉湖
イエローストーン国立公園が世界遺産登録された理由は、大きく下記の3点に分けられます。
- 地球を代表する美しい自然が見られる
- ”生きている地球”を実感できる様々な自然現象が見られる
- 豊富な動植物が見られる
なお、イエローストーン国立公園は自然遺産の4つの登録条件全てを満たしています!
理由1:地球を代表する美しい自然が見られる
3,000〜4,000m級の山々がそびえる壮大な景観
世界初の世界遺産&世界初の国立公園に指定されていることからもわかる通り、イエローストーン国立公園は地球を代表する貴重な自然環境が残されている点を高く評価されました。
イエローストーンの自然環境を構成しているポイントは、主に下記の2つです。
- 巨大な火山
- イエローストーン川
まず、巨大な火山の存在によって、園内で見られる間欠泉や温泉などの自然現象が起きています。
園内の火山は、200万年前、120万年前、60万年前と過去に3度巨大な噴火を起こしました。
そして、この3度の噴火により、園内に巨大なカルデラが形成されました。
この巨大なカルデラが、イエローストーンの地形の基盤となっています。
用語メモ
カルデラとは、火山噴火によって地中のマグマが空洞化し、時間が経ち陥落してできた巨大な窪地。日本では熊本県の阿蘇カルデラが有名。一方で、イエローストーンという名前の由来にもなった黄色い大渓谷は、長年のイエローストーン川による浸食によって誕生しました。
そんなイエローストーン川は、大渓谷に到達するまでに、下記のような経路をたどっています。
ワイオミング山地 ⇨ イエローストーン湖 ⇨ ロワー滝(落差94m) ⇨ 大渓谷へ
また、イエローストーン川は園内に生息する動植物の重要な水資源にもなっています。
理由2:”生きている地球”を実感できる様々な自然現象が見られる
通称「エメラルド湖」と呼ばれる温泉湖「グランド・プリズマティック・スプリング」
「生きている地球を実感できる」
この言葉こそ、イエローストーン国立公園の魅力を伝える最も適した表現です。
前述の「理由1:地球を代表する美しい自然が見られる」でも解説したように、イエローストーン国立公園の自然環境は巨大な火山によって形成されています。
この巨大な火山の存在が、イエローストーン名物とも言える、間欠泉、温泉、噴気孔といった熱水現象を発生させているのです。
熱水現象は園内約1万ヶ所で発生しており、この数はなんと世界のおよそ半数に当たります!
オールド・フェイスフル間欠泉
数十分に1度熱湯を噴出させる現象で有名
- 世界最大級の間欠泉
- 園内の地下でマグマ活動が盛んに行われている証拠
- 最高で約30mまで熱水が噴き上げる
イエローストーン国立公園で最も有名な熱水現象といえば、オールド・フェイスフル間欠泉の熱水噴出です!
園内の地下のマグマ活動が盛んに行われている証拠でもあり、園内各地で熱水噴出の瞬間を見ることができます。
オールド・フェイスフル間欠泉は、平均70分間隔で熱水を噴出し、最高で約30mもの高さまで噴き上がります。
噴気孔は少し窪んだ地形をしているため、雨水が溜まりやすいです。
その雨水がマグマのある地下に流れ込むことによって、雨水が急激に熱せられ、地上へ逆噴出するのです。
なお、国内で噴出現象が見られる場所は、北海道の羅臼、長野県の諏訪湖、温泉県として有名な大分県の別府などが挙げられます。
グランド・プリズマティック・スプリング
湖内に生息するバクテリアや藻類によって様々な色を見せる
- 通称「エメラルド湖」と呼ばれる色鮮やかな温泉湖
- 温泉湖(熱水泉)としては世界で3番目の大きさ
イエローストーンの先住民スー族が
「霊気に満ちた場所」
このように恐れた理由でもある自然現象が、エメラルド色に輝くグランド・プリズマティック・スプリングです。
湖がエメラルド色に輝いている理由は、湖に生息するバクテリアや多数の微生物、藻類(そうるい)の働きなどにより、湖の成分が異なるためです。
さらに、湖の水温によって生息できるバクテリアが異なるため、湖ごとに見せる色が異なります。
マンモス・ホット・スプリングス
テラス(石灰棚)は自然が生み出した芸術作品と言うにふさわしい
- 何段にも及ぶテラス(石灰棚)が見られる
- 地上で見られるテラスとしては世界最大規模
園内に噴出している熱水には、石灰と言われる、地上に出ると冷え固まる白い成分が含まれています。
その後、噴出した熱水に含まれる石灰は、ゆっくり時間をかけて「テラス(石灰棚)」と呼ばれる棚田のような形を生み出します。
そしてイエローストーンで最も有名なテラスが、マンモス・ホット・スプリングスと呼ばれているものです。
なお、世界で最も有名なテラス(石灰棚)の景観として、よくトルコの世界遺産「パムッカレ」が挙げられます。
イエローストーンのマンモス・ホット・スプリングスは、パムッカレに次ぐ世界最大規模のテラスと言われています。
理由3:豊富な動植物が見られる
一時期は絶滅の恐れがあった「アメリカバイソン」
イエローストーン国立公園は、地球を代表する貴重な自然環境であるがゆえに、希少動物を含む多くの動植物の生息地にもなっています。
約60種の哺乳類 | アメリカバイソン、バッファロー、オオカミ、グリズリー、ヘラジカ、他 |
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約200種の鳥類 | ナキハクチョウ、フタオビチドリ、ハゴロモガラス、他 |
約1,200種の植物 | ロッジポールマツ(針葉樹林)、アメリカオキナグサ、モンキーフラワー、他 |
中でも、アメリカバイソンは一時期は絶滅しかけました。
その後、イエローストーン国立公園の保護活動が功を奏して、今なお生息する貴重な動物です。
またイエローストーン国立公園は、野生動物に遭遇する確率が非常に高いことでも知られています。
一時期は危機遺産に登録!?
過去には園内の過度な観光開発や鉱物採掘が問題になっていた
実は、イエローストーン国立公園は1995〜2003年の9年間危機遺産リストに掲載されていました。
(危機遺産に関しては、こちらの記事で詳しく解説してます)
危機遺産リストに掲載されてしまった原因は、主に下記が挙げられます。
- 河川上流での鉱物資源調査による環境悪化
- 過度な観光開発による自然破壊
- 希少動物(アメリカバイソン)の個体数減少
危機遺産リスト掲載後、環境回復に努めた点や開発計画の見直しが図られたことで、9年後に無事危機遺産リストから脱することができました。
しかし今回のイエローストーン国立公園のように、世界遺産登録によって注目が集まり、資源採掘や観光客呼び込みによる過度な開発が行われてしまうケースは少なくありません。
特に自然遺産は、少しの環境の変化が自然破壊や動植物の生息に大きな悪影響を及ぼしてしまうため、世界遺産登録時には保護・保全に関する具体的な対策の提示が求められています。
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3,4級レベル
熱湯が噴出する際に出る水分に含まれる石灰分によってつくられる石灰棚の名称として正しいものはどれか。
- ハンモック
- グレーシャー
- ガイザー
- テラス
④
答え(タップ)>>2級レベル
「ウィルダネス」に関する説明として正しいものはどれか。
- 自然に起きた現象は人間の手によって操作をせずにその後も自然の成り行きに任せる。
- 年間を通して水温が一定な湖には特定の排卵期が存在しないため年中卵や稚魚が見られる。
- 同じ領域であっても標高差によって生育する植物が大きく異なる。
- 先住民族が暮らす地域での保護活動には先住民族からの許可が必ず必要になる。
①
答え(タップ)>>1級レベル
「イエローストーン国立公園」に関する説明として誤っているものはどれか。
- イエローストーンが国立公園に指定された100年後に世界遺産条約が採択された。
- 先住民族のスー族からは「霊気に満ちた場所」として恐れられていた。
- 園内にはメガネグマやヤマバクなどの貴重な動物が生息する。
- イエローストーン川の源流はワイオミング山地でその後イエローストーン湖に流れ込む。
③
答え(タップ)>>まとめ
- イエローストーン川の浸食によってつくられた黄色い岩肌の大渓谷が公園名の由来。
- 世界初の国立公園&世界初の世界遺産の一つ。
- 「ウィルダネス」と呼ばれる自然保護政策をいち早く取り入れた。
- 「オールド・フェイスフル間欠泉」「グランド・プリズマティック・スプリング」「マンモス・ホット・スプリングス」などの自然現象が見られる。
- イエローストーンは先住民スー族に”霊気に満ちた場所”として恐れられていた。
- 一時期絶滅の危機にあった「アメリカバイソン」など野生動物が多く生息する。
- 鉱物採掘などによる環境悪化のため一時期危機遺産リストに記載されていた。
おまけ:「イエローストーン国立公園」のプチ観光情報
最寄り都市 | ボーズマン(モンタナ州) ジャクソン(ワイオミング州) |
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最寄り空港 | ボーズマン・イエローストーン国際空港 ジャクソン・ホール空港 |
公用語 | 英語 |
通貨 | USドル |
観光のベストシーズン | 4〜8月 |
時差 | 16時間(サマータイム時は15時間) ※日本の方が16時間進んでます。 |
治安 | 良い |
物価 | 少し高い(日本の1.3倍ほど) |
入園料 | $20〜 ※乗り入れするもの(バイク、車など)や有効期間によって異なる |
イエローストーン国立公園周辺には、大小複数の空港が存在します。
- ボーズマン・イエローストーン国際空港:最も便数が多く、比較的航空券が安い
- ジャクソン・ホール空港:空港から国立公園へのアクセスが良い
また、イエローストーン国立公園は、6〜8月のシーズン期間に限りツアーバスが運行しています。
ツアーバスを利用すれば車が無くても園内を訪れることができるため、国際免許を持っていない方は、ぜひシーズンのツアーバスを利用しましょう。
アクセス
日本からだとシアトル経由でのアクセスが最短移動距離となる
残念ながら、日本からイエローストーン国立公園周辺の都市への直行便は就航していません。
一般的には、アメリカ国内の都市を経由してアクセスすることになります。
- 日本各空港 [フライト時間:9〜11時間] ⇨ アメリカ各都市(ロサンゼルス、シアトル、デンバー、他)[フライト時間:2〜3時間] ⇨ ボーズマン・イエローストーン国際空港
- ボーズマン・イエローストーン国際空港 [車:約1時間40分]⇨ イエローストーン国立公園
「空港 – 国立公園」間は基本的にレンタカーやツアーバスでのアクセスになるので、事前にレンタカーやツアーの申し込みを済ませておきましょう。
イエローストーン観光の注意点
冬季(11〜3月)は園内の多くが立ち入り禁止となる
- 冬季(11〜3月)は閉鎖されているため観光できない(一部のみ開園している場合もある)
- 園内に大型宿泊施設は無い
- 環境保護の観点から遊歩道から逸れて歩くことは禁止
- 野生動物から23m以内に近づいてはいけない
- 園内の動物にエサを与えることは禁止
- 山火事などによる園内への立ち入り禁止・通行制限あり
- 熱湯による火傷に要注意
前述の「環境保護の取り組み「ウィルダネス」の誕生」で解説したように、イエローストーンの保護保全は、自然のなすがままに任せています。
そのため、自然環境の変化によって、立ち入りできるエリアが限られたり変更されたりすることが起きます。
訪れる前に、国立公園のホームページを確認して園内状況を把握しておきましょう。
(国立公園ホームページはこちら)
また、園内には8ヶ所ビレッジがあり、宿泊できるロッジが点在しています。
しかし、シーズンの夏季を中心に非常に人気が高いため、なるべく早めの予約を心がけましょう。
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。