こんな方にオススメの内容!
- 「世界遺産基金」という難しそうな専門用語をわかりやすく知りたい!
- 世界遺産基金が誕生した背景を知りたい!
- 世界遺産検定対策として専門用語を押さえておきたい!
世界遺産基金のポイント!
- 世界遺産や世界遺産候補になっている文化財や自然を全人類で守っていくルール!
- 世界遺産条約締約国は2年に1度拠出金を支払い協力する必要がある!
- 世界遺産基金の運用基準は「緊急援助」「準備援助」「保全・管理援助」に分けられる!
世界遺産基金が設立された目的
世界遺産基金が設立された目的は、「地球上に存在する文化財や自然の保護・保全を強化するため」です!
この世界遺産基金が設立されたのは1976年のことで、ユネスコの財政ルールに基づいて設立された信託基金です。
これまでは自国の文化財や自然の保護をする際、または世界遺産登録を目指す際にかかる費用は自分たちの国のお金でカバーすることが基本的な考えでした。
しかしこの考えだと、先進国のような比較的お金に余裕がある国でしか保護・保全活動が難しい状況になってしまいます。
なぜなら保護・保全には莫大なお金がかかるからです。
つまりお金に余裕がない途上国や保護の技術・知識があまりない国は、世界遺産登録による保護・保全活動ができなくなる恐れがあるわけです!
また例え先進国であったとしても、大きな自然災害などに巻き込まれてしまったら自分たちの国のお金だけで復興させることは難しいですよね。
こういった困難な状況を打開すべく世界遺産条約を締約している国同士でお金を出し合い、地球上に存在する文化財・自然を保護する体制を強化しようという結論にいたったわけです!
そもそも世界遺産という概念ができた背景は
「地球上に存在する自然・文化財は特定の国だけでなく世界全人類の財産である」
この考えがもとになっています。
(世界遺産の概念などに関してはこちらの記事をご覧ください)
つまり世界遺産は世界のみんなで守っていかなければならないわけです!
このように考えると、国同士で協力し合って文化財や自然を保護・保全することは当然の考えですよね。
世界遺産基金の主なルール
世界遺産基金の運用ルールは大きく分けて2つあります。
- 世界遺産委員会が決定する目的のみに使用できる
- 世界遺産条約締約国は2年に1度拠出金を支払わなければならない
世界遺産基金の使用目的は世界遺産委員会が決めています。
(「世界遺産委員会」についてはこちらの記事で解説しています)
そのため一つの国や政府機関が勝手に
「○○に使います!」
と独断で決めることはできません!
またもし支払いが滞納したり払わなかったりすると下記のようなペナルティが課されることがあります。
- 世界遺産委員会の委員国に選ばれない
- 緊急援助以外の国際的援助を受けることができない
世界遺産基金の運用基準
世界遺産基金の運用基準は3つに分けられます。
①緊急援助 | 大規模な災害や事故、紛争などで被害を受けた遺産の復興費用 |
---|---|
②準備援助 | 事前調査への準備援助 |
③保全・管理援助 | ・専門家や技術者の派遣や機材の購入費用 ・遺産の保護・保全に従事する管理者や専門家の育成費用 ・遺産の価値や理念の教育・広報費用、国際協力促進費用 |
①は主に既に世界遺産に登録されている文化財や自然、または世界遺産登録を目指している文化財や自然の保護・保全活動に使われるイメージです。
②の場合は、これから世界遺産登録を目指す文化財や自然に対して「将来への投資」という意味合いで使われます。
③は既存の世界遺産もこれから世界遺産を目指すものにも該当し「経費」という意味合いで使われるケースを指します。
主な使用例
ここでいくつか世界遺産基金の使用例を挙げてみます。
- 途上国の登録推薦書・保護管理計画書の作成
- 専門家の調査
- 自然災害や紛争からの復興
なお、世界遺産委員会や世界遺産条約締約国は世界遺産基金の拠出に対して政治的な条件をつけることはできません!
世界遺産基金の課題点
しかしながら世界遺産基金には課題点も見られます。
- 資金が大きく不足している
- 「緊急援助」よりも「準備援助」に優先的に予算が振り分けられている
資金不足に関しては、アメリカのユネスコ脱退が大きく影響しています。
2018年にアメリカがユネスコを脱退するまでは、アメリカが世界遺産基金に最も大きく貢献していた国だったのです。
しかし2011年にアメリカの同盟国であるイスラエルと緊張関係にあるパレスチナがユネスコに加盟したことで、アメリカはユネスコから脱退することを宣言しました。
(アメリカがユネスコを脱退するきっかけとなった「ヘブロン:アル・ハリル旧市街」の世界遺産登録に関してはこちらの記事で詳しく解説しています)
つまり最も多くのお金を投資してくれていたアメリカからの資金が一切入らなくなったのです!
また前述の「世界遺産基金の運用基準」でも触れた「緊急援助」と「準備援助」ですが、現状「準備援助」に対して資金が使われることが多く既存の世界遺産や危機的状況にある文化財・自然の保護・保全活動が不十分になっている点も大きな問題です。
新規の世界遺産登録を目指すあまり、目の前(既存)の世界遺産に対する保護・保全の力の注ぎ具合が弱くなっている証拠です。
このようにいくつか課題点はあるものの、地球上にある文化財や自然を守っていく上で世界中の人々で協力し合うことは必ず必要なのです!
世界遺産:トレーニングテスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3,4級レベル
2018年にユネスコを脱退するまで世界遺産基金に最も貢献していた国として正しいものを選びなさい。
- イギリス
- 中国
- アメリカ
- ロシア
③
答え(タップ)>>2級レベル
世界遺産基金の運用基準として誤っているものを選びなさい。
- 修復援助
- 保全・管理援助
- 緊急援助
- 準備援助
①
答え(タップ)>>1級レベル
世界遺産基金の説明として正しいものを選びなさい。
- 課題点として「緊急援助」に一切予算が振り分けられていないことが挙げられる。
- 運用基準の「準備援助」とは主に専門家や技術者の派遣や機材の購入費用などを支援するものである。
- 途上国の登録推薦書・保護管理計画書の作成や自然災害や紛争からの復興などに使われる。
- 世界遺産条約締約国は毎年拠出金を支払わなければならない。
③
答え(タップ)>>「世界遺産基金」のまとめ
- 世界遺産基金は地球上に存在する文化財や自然の保護・保全を強化するために設立された!
- 世界遺産条約締約国は2年に1度拠出金を支払わなければならない!
- 世界遺産基金の運用基準は「緊急援助」「準備援助」「保全・管理援助」の3つに分けられる!
- アメリカのユネスコ脱退により資金不足に陥っている!