こんな方にオススメの内容!
- 「世界遺産委員会」の概要や審議内容を知りたい!
- 新しい世界遺産が誕生する過程について理解したい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
当記事のポイント
- 世界遺産委員会の大きな役割は世界遺産登録にふさわしいかどうかの審議をすること!
- 世界遺産登録の審議の結論は4つに大きく分けられる!
- 世界遺産検定の受験を考えている場合は、「期日」や「参加国数」などの世界遺産委員会に関係する数字は必ず押さえておくこと!
世界遺産委員会の大まかな概要
世界遺産委員会の役割(4段階の審議結果)
世界遺産委員会の役割はズバリ、新規登録を目指す自然・文化財が世界遺産としての価値を持つかどうかの審議をすることです!
(細かく分けると世界遺産登録の審議以外にもありますので詳しくは後述の「具体的な審議内容」で触れていきます)
世界遺産登録の審議では大きく分けて4段階の結論に分けられます。
登録
2019年の第43回世界遺産委員会で新規登録されたドイツの「アウクスブルクの水管理システム」
文字通り、世界遺産リストへの登録の決定です。
ちなみに毎年開催される世界遺産委員会で審議される遺産のおおよそ半数は、この”登録”という勧告を受けています。
情報照会
かつて自然遺産として登録を目指していた日本の世界遺産「富士山」
世界遺産委員会が追加情報を求める結論です。
つまり情報が不足しているため、もう少し世界遺産に登録される価値がある証明になる情報が欲しいということです。
この結論になった場合は、その年の世界遺産委員会で登録されることはなく
次回以降の世界遺産委員会にて、改めて推薦書を提出して審査を受けることができます。
登録延期
一時は”登録延期”勧告を受けたものの見事世界遺産登録されたインドの「ラージャスターン州のジャイプル市街」
その名の通り、その年の世界遺産委員会では登録にならず、翌々年以降の世界遺産委員会で再度登録の審議を受けることになる結論です。
前述の情報照会と似ていますが、大きな違いとしては下記になります。
- 推薦書の内容を大きく改定する必要がある。
- そもそも調査の段階からやり直す必要がある。
- 改定した推薦書を提出しても次の世界遺産委員会での審議対象にならない(最低でも提出してから1年半の審議期間を要するため)
不登録
かつて世界遺産登録を目指して”不登録”勧告を受けてしまった「武家の古都・鎌倉」
ストレートに言うと、「世界遺産にふさわしくない」という結論です。
不登録になった場合は基本的にはもう同じ遺産を推薦することはできません!
ただし、下記の2点に該当する場合は例外で再推薦が可能な場合もあります。
- 新たに科学的情報が得られた場合
- 1度目の審議とは別の登録基準で推薦書を作成した場合
具体例を挙げると
「1度目の推薦書には記載されていなかった希少価値のある動植物がその後見つかった」
このような場合などですね。
また自然遺産登録を目指していたが、文化遺産登録に変更して再度推薦するようなケースも該当します。
日本の遺産だと「富士山」が該当しますね。
もともとは自然遺産登録を目指して推薦していた富士山ですが
「希少価値という点が弱い」
「ゴミなどの環境問題」
上記が原因で、自然遺産としての登録は実現しませんでした。
しかしその後、伝統的文化の誕生や多くの文化人・芸術家に影響を与えた点が評価されて2013年に文化遺産として登録されました。
詳しくは下記の記事で富士山について書いているので、よければ併せてご覧ください。
合わせて読みたい!【富士山 | なぜ自然遺産ではなく文化遺産?】世界遺産の評価ポイントを小学生でもわかるように解説!具体的な審議内容
世界遺産登録の審議を含め、具体的な審議内容は大きく分けて下記の7つになります。
- 世界遺産リストへの登録推薦書が提出された遺産の審議
- 危機遺産リストへの遺産登録や解除の決定
- 世界遺産リスト登録遺産の保全状況のモニタリング及び報告書を通した調査
- 世界遺産基金の使途の決定
- 作業方針の改訂及び採択
- 2年ごとの世界遺産条約締約国会議とユネスコ総会への活動報告書提出
- 国際的援助の要請の審査
委員国の構成とルール
世界遺産委員会自体は、1976年の世界遺産条約締約国会議において設立されました。
この設立当初の世界遺産委員会の国数は、世界遺産条約を締約している国の中から「15カ国」で構成されていました。
しかし世界遺産条約の締約国が40カ国を超えたため、1977年の第1回世界遺産委員会からは「21カ国」に変更されました。
(「世界遺産条約」の概要についてはこちらの記事を参考にしてください)
世界遺産委員会の構成は下記の通りです。
役割 | 国数 |
---|---|
議長国(世界遺産委員会の開催国) | 1カ国 |
副議長国 | 5カ国 |
書記国 | 1カ国 |
この7カ国で構成された準備会議を「ビューロー会議」と言います。
ビューロー会議の主な役割は「世界遺産委員会の進行」「作業日程の決定」などです。
そして世界遺産委員会の最終日に、次の世界遺産委員会のビューロー会議に参加する国が決まります。
また21カ国で構成される世界遺産委員会の委員国は、任期6年と長めです。
しかし公平を維持するために、自発的に4年で任期を終えることが理想的とされているのです!
さらに地域における公平を維持するために、下記のようなグループ分けと各グループ毎の最小の委員国数が決まっています。
地域 | 国数 |
---|---|
西欧&北米 | 2カ国 |
東欧 | 2カ国 |
中南米&カリブ海 | 2カ国 |
アジア&太平洋(オセアニア) | 3カ国 |
アフリカ | 4カ国 |
中東 | 2カ国 |
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3級レベル
世界遺産委員会の審議段階として誤っているものを選びなさい。
- 登録
- 情報照会
- 保留
- 不登録
③
答え(タップ)>>2級レベル
世界遺産委員会が推奨している委員国の任期として正しいものを選びなさい。
- 8年
- 6年
- 4年
- 2年
③
答え(タップ)>>1級レベル
世界遺産委員会の審議内容として誤っているものを選びなさい。
- 世界遺産基金の使途の決定。
- 世界遺産リスト登録遺産の保全状況のモニタリング及び報告書を通した調査。
- 危機遺産リストへの遺産登録や解除の決定。
- 世界遺産条約の締約の承認及び解除。
④
答え(タップ)>>まとめ
- 世界遺産委員会で出される結論は「登録」「情報照会」「登録延期」「不登録」の4段階に分けられる!
- 世界遺産委員会での審議内容は「新たな世界遺産登録」「世界遺産基金の使途の決定」「保全状況のモニタリング」である!
- 世界遺産委員会は21カ国で構成されるが、公平を維持するために4年で任期を終えることを推奨している!
- 「議長国:1カ国」「副議長国:5カ国」「書記国:1カ国」の7カ国で構成される準備会議をビューロー会議という!
おまけ:新たに世界遺産に登録される件数の上限が年々厳しくなっている!?
過去に”情報照会”と”登録延期”勧告を受けて2016年に晴れて世界遺産登録された「ル・コルビュジエの建築作品(国立西洋美術館)」
まずは下記の表をご覧ください。
ルール | 期間 |
---|---|
具体的な上限無し。 | 世界遺産委員会設立〜2003年 |
1回の世界遺産委員会での登録上限は「45件」まで。各国の推薦上限は1件で自然遺産が含まれる場合は2件まで | 2004〜2006年 |
各国の推薦上限は「文化遺産:2件」まで(自然遺産の具体的な上限は無し) | 2007〜2013年 |
各国の推薦上限は「文化遺産:1件」「自然遺産:1件」まで。 | 2014〜2019年 |
1回の世界遺産委員会での登録上限は「35件」まで。各国の推薦上限は1件まで。 | 2020年〜 |
このように、登録できる世界遺産の件数は年々少なくなってきています。
少なくなっている最大の原因が、ユネスコの財政難や人手不足により遺産の保護に尽力を注げなくなる懸念があるためです!
こうして現在は「量より質」といったように、一つひとつの世界遺産登録に対してこれまで以上により慎重に審議されるようになりました。
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。