こんな方にオススメの内容!
- サンティアゴ・デ・コンポステーラが世界遺産登録された理由が気になる!
- サンティアゴ・デ・コンポステーラがキリスト教の聖地と言われる理由を知りたい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- スペインへの旅行を考えている!
遺産ポイント
- 大聖堂の起源はアストゥリアス王国時代の小さな聖堂
- キリスト教三大聖地の一つとして大きく繁栄
- ロマネスク様式やチュリゲラ様式など様々な建築様式が混在
「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」のプロフィール
登録名称 | サンティアゴ・デ・コンポステーラ(旧市街) |
---|---|
登録年 | 1985年 |
所在国 | スペイン |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (i)(ii)(vi) |
そもそも「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」とは?
『サンティアゴ・デ・コンポステーラ』とは、キリスト教の聖地として1,000年以上前から栄えたスペイン北西部の都市です。
- サンティアゴ:聖ヤコブ
- デ:の
- コンポステーラ:星降る野原(ふさわしい場所、良い場所)
上記のように「サンティアゴ」とは、キリスト教に登場する人物の中でも特にキーパーソンとなる聖ヤコブを指します。
(聖ヤコブについては、後述の「聖ヤコブが眠るキリスト教の重要な聖地の一つ」で詳しく解説します)
そんな聖ヤコブと大きく関係している都市のため、”ふさわしい場所”という意味の「コンポステーラ」という表記が使われているのです。
聖ヤコブが眠るキリスト教の重要な聖地の一つ
聖ヤコブが眠っているとされる場所に建てられた大聖堂(カテドラル)
世界には、”キリスト教三大巡礼地”と言われる場所があります。
- エルサレム(イスラエル)
- ローマ(イタリア) ※バチカンと表記されることもある。
- サンティアゴ・デ・コンポステーラ(スペイン)
サンティアゴ・デ・コンポステーラは、エルサレムやローマと並ぶ、キリスト教史上、非常に重要な都市の位置付けにされているのです。
このようにキリスト教の聖地と言われる最大の理由は、サンティアゴ・デ・コンポステーラ旧市街に建つ大聖堂(カテドラル)に聖ヤコブが埋葬されているためです!
用語メモ
聖ヤコブとは、キリスト教の大切な教えが書かれている新約聖書に登場するキリスト教徒にとって非常に重要な人物。キリスト教の神様イエスの十二人の弟子(使徒)のうちの一人。聖ヤコブは、同じくキリスト教の聖地であるエルサレムにて、十二人もいる弟子の中で一番最初にとあることを実施しました。
エルサレムの教会で自分の命をキリストに捧げた(殉教)
聖ヤコブの死後、聖ヤコブの遺骨は他の弟子たちによってエルサレムからサンティアゴ・デ・コンポステーラに運ばれました。
そして、聖ヤコブの遺骨は現在の大聖堂がある場所に埋葬されたのです。
ちなみに、本当に聖ヤコブの骨がサンティアゴ・デ・コンポステーラに埋葬されているかどうかについては、羊飼いがたまたま首の無い遺骨を発見したことによって証明されています。
スペイン国王やローマ教皇もこの首の無い遺骨を聖ヤコブと認めており、この発見をきっかけに大聖堂の建設がスタートしました。
スペインからフランスまで延びる巡礼路
巡礼路の途中に置かれている案内板
サンティアゴ・デ・コンポステーラはキリスト教の聖地であるため、常に多くの巡礼者が訪れる都市です。
サンティアゴ・デ・コンポステーラのあるスペインや隣国のフランスだけでなく、次第にイタリア、イギリス、北欧など遠方からも多く巡礼者が集まるようになってきました。
このように、多くの巡礼者が訪れることを受け、11世紀に入るとスペインとフランスに巡礼のための道が整備されるようになりました。
さらに、巡礼路沿いや巡礼拠点となる街には、宿泊施設や商業施設が次々と建てられていったのです。
世界遺産登録理由
サンティアゴ・デ・コンポステーラが世界遺産登録された理由は、下記の3つに大きく分けられます。
- 歴史ある美しい大聖堂が見られる
- ヨーロッパ各地の伝統的な建築様式が集まっている
- キリスト教の聖地として繁栄した歴史を刻む
理由1:歴史ある美しい大聖堂が見られる
チュリゲラ(バロック)様式の大聖堂としては世界最大級
サンティアゴ・デ・コンポステーラの旧市街に建つ壮大で美しい大聖堂(カテドラル)の存在は、世界遺産登録に大きく貢献しています。
- 栄光の門(ファサード):彫刻家マテオが20年の歳月をかけて1188年に完成させた、200体以上の彫像が飾られている大聖堂の正面口。ロマネスク様式とゴシック様式からなり、建築様式の移り変わりの歴史を見ることができる。
- 中央祭壇:聖ヤコブの像が置かれている。
- 地下礼拝堂:聖ヤコブの棺(ひつぎ)が置かれている。
- (併設された)美術館:世界を代表する画家ゴヤやルーベンスのタペストリー(室内装飾として飾られる織物)が飾られている。中央柱の上部には聖ヤコブの像がまつられている。
大聖堂のはじまりは、9世紀にアストゥリアス王国のアルフォンソ2世によって建てられた小さな聖堂でした。
用語メモ
アストゥリアス王国とは、718〜910年にイベリア半島北西部(サンティアゴ・デ・コンポステーラがある地域)を支配したキリスト教の国。首都がレオンに移ってからはレオン王国と呼ばれるようになった。しかし、10世紀に当時スペインを支配していたイスラム勢力によって大聖堂は破壊されてしまったのです。
その後、隣国のフランスから伝わってきたロマネスク様式で再建されました。
見どころの多い大聖堂の構造の中でも、”黄金に輝く傑作”とも呼ばれるチュリゲラ様式のファサード(建物正面から見た外観)は、サンティアゴ・デ・コンポステーラの大聖堂の名を世界に知らしめた最大の特徴と言えます。
(チュリゲラ様式に関しては、後述の「理由2:ヨーロッパ各地の伝統的な建築様式が集まっている」で解説)
理由2:ヨーロッパ各地の伝統的な建築様式が集まっている
大聖堂だけでなく歴史的建造物が数多く残されている
サンティアゴ・デ・コンポステーラの旧市街では、ヨーロッパを代表する下記の建築様式の建物を見ることができます。
- ロマネスク様式
- ルネサンス様式
- ゴシック様式
- チュリゲラ様式(スペイン独自のバロック様式)
用語メモ
スペイン独自のバロック様式とは、壮大で豪華な装飾が特徴の「バロック様式」のスペインアレンジ版。スペイン出身の建築家や彫刻家によってより豪華で見応えのある様式が誕生した。前述の「理由1:歴史ある美しい大聖堂が見られる」でも解説した大聖堂はもちろんのこと、ルネサンス、バロックなど複数の建築様式が見られる「サン・マルティン・ピナリオ教会」など、多様な建築様式の建造物が見られる点は、サンティアゴ・デ・コンポステーラの大きな特徴の一つです。
このように、様々な建築様式の建物が混在する街並みが広がっていることから、サンティアゴ・デ・コンポステーラは他に類を見ない世界有数の美しい街と言われるようになっていきました。
理由3:キリスト教の聖地として繁栄した歴史を刻む
サンティアゴ・デ・コンポステーラに向けて巡礼路を歩く巡礼者たち
サンティアゴ・デ・コンポステーラの旧市街が世界遺産登録された最大の要因は、以下の通りです。
キリスト教の最重要人物の一人「聖ヤコブ」が眠るキリスト教の聖地の一つ
長い巡礼路を通り、世界各国からサンティアゴ・デ・コンポステーラへ大勢の人が集まる理由は、聖ヤコブが眠る地への参拝が目的のためです!
(聖ヤコブについては前述の「聖ヤコブが眠るキリスト教の重要な聖地の一つ」で詳しく解説してます)
”聖ヤコブの墓に参拝すればすべての罪が許されて天国に行ける”
このようなキリスト教の教えが世界各地に広がった影響で、サンティアゴ・デ・コンポステーラを訪れる人が急増したのです。
さらに、キリスト教の聖地の一つとなったサンティアゴ・デ・コンポステーラは、次第にヨーロッパ各国へ以下のような大きな影響を与えていきました。
- ヨーロッパへの建築と芸術の発展に大きな影響を与えた
- 西ヨーロッパ諸国のレコンキスタへの熱を上げた
⇨いち早くイスラム教国から自分たちの土地を奪い返さなければならないという想いが再熱
なお、スペインがイスラム教国から領土を奪い返す出来事「レコンキスタ」について詳しく知りたい方は、レコンキスタに大きく関係している下記の世界遺産の記事も併せて読んで理解を深めてみてください。
合わせて読みたい!【なぜアルハンブラ宮殿は世界遺産?アルバイシンとは?】登録理由&歴史をわかりやすく解説!巡礼路は別に世界遺産登録
巡礼路は綺麗に整備されている
キリスト教の聖地「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」の旧市街だけでなく、サンティアゴ・デ・コンポステーラに向かうまでの巡礼路も世界遺産に登録されています。
ただし、『サンティアゴ・デ・コンポステーラ(旧市街)』という世界遺産登録名称からもわかる通り、巡礼路は別の世界遺産として扱われているのです!
【サンティアゴ・デ・コンポステーラに関わる世界遺産】
- サンティアゴ・デ・コンポステーラ(旧市街)
- サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路 : カミーノ・フランセスとスペイン北部の巡礼路群 ※スペイン側
- フランスのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路 ※フランス側
もちろん、サンティアゴ・デ・コンポステーラの旧市街と巡礼路には大きな関係性があります。
しかし一方で、世界遺産登録される際の旧市街と巡礼路の評価ポイント(登録基準)には少し違いがあります。
旧市街 | 大聖堂などの建築面での評価を受けているため、登録基準(i)が認められている。 |
---|---|
巡礼路 | 巡礼路の整備技術や巡礼路周辺の景観などが評価され、登録基準(iv)が認められている。 |
なお、サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路に興味のある方は、今回の記事内容の参考にもしている下記の書籍を一読することをオススメします。
- 商品名:聖地サンティアゴ巡礼 増補改訂版
発売日:2013年1月 - Amazonから購入
- 楽天から購入
- Yahooショッピングから購入
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3,4級レベル
キリスト教の三大聖地として誤っているものはどれか。
- ローマ
- サンティアゴ・デ・コンポステーラ
- エディンバラ
- エルサレム
③
答え(タップ)>>2級レベル
聖ヤコブを埋葬するための小さな聖堂を建設した時代に存在した国の名称として正しいものはどれか。
- アストゥリアス
- カスティーリャ
- 西ゴート
- サヴォイア
①
答え(タップ)>>1級レベル
サンティアゴ・デ・コンポステーラの旧市街で見られる建築様式として誤っているものはどれか。
- ゴシック
- チュリゲラ
- ロマネスク
- マヌエル
④
答え(タップ)>>まとめ
- サンティアゴ・デ・コンポステーラは聖ヤコブが眠るキリスト教の重要な聖地。
- 大聖堂の起源はアストゥリアス王国時に建設された小さな聖堂。
- 「栄光の門」など大聖堂の随所にチュリゲラ様式が見られる。
- 旧市街とは別に巡礼路も世界遺産登録されている。
おまけ:「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」のプチ観光情報
最寄り空港 | サンティアゴ・デ・コンポステーラ空港 |
---|---|
公用語 | スペイン語 |
通貨 | ユーロ |
観光のベストシーズン | 4〜10月 ※巡礼路を歩く時のシーズンを基準 |
時差 | 7時間(サマータイム時は8時間) ※日本の方が7時間進んでます。 |
治安 | 比較的良い |
物価 | 普通(日本とほぼ同じ) |
入場料 | 大聖堂:無料 美術館&栄光の門:12ユーロ |
アクセス
スペインの首都マドリードからバスや鉄道でサンティアゴ・デ・コンポステーラへアクセスすることができる
残念ながら、日本からサンティアゴ・デ・コンポステーラへの直行便は就航していません。
そのため、ヨーロッパ諸国や中東諸国、及びスペイン国内を経由してアクセスすることになります。
- 日本各空港 [フライト時間:15〜18時間] ⇨ ヨーロッパ各都市(パリ、フランクフルト、他)or 中東各都市(ドバイ、ドーハ、他) [フライト時間:15〜18時間] ⇨ マドリード or バルセロナ [フライト時間:1時間30分〜2時間] ⇨ サンティアゴ・デ・コンポステーラ空港
- 5〜7時間でチャマルティン駅(マドリード)からのアクセスも可能。
- 時期や曜日によって「成田-マドリード」間の直行便が就航。
なお「空港-市内」間は、空港から1時間に2〜3本出てるバスを利用すれば、30分ほどで着くことができます。
サンティアゴ・デ・コンポステーラおすすめ滞在日数は「1泊2日」
サンティアゴ・デ・コンポステーラは貝殻マークがシンボル
サンティアゴ・デ・コンポステーラのおすすめ滞在日数は「1泊2日」です。
意外な日数かもしれませんが、主要な見どころは旧市街に集まっているため1日あれば十分に見て周れます。
【主な見どころ】
- 大聖堂(カテドラル)
- キンターナ広場
- サン・マルティン・ピナリオ教会
また、サンティアゴ・デ・コンポステーラはスペインを代表する観光地であるため、宿泊施設や飲食店は揃っています。
加えて、巡礼路や巡礼地を巡る現地発ツアーも多く催行しているので、サンティアゴ・デ・コンポステーラの旧市街以外の観光も楽しみたい方はぜひ参加してみてください。
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。