こんな方にオススメの内容!
- なぜケベックが世界遺産に登録されたのか理由が気になる!
- ケベックがフランス語圏である理由を知りたい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- カナダへの旅行を考えている!
遺産ポイント
- 「ヌーヴェル・フランス(新しいフランス)」と呼ばれる北米唯一の城塞都市。
- イギリスによるケベック法制定によりフランスの面影を残す形になった。
- フランスの古城を模して建てられた「シャトー・フロント・ナック」が特に有名。
「ケベック」のプロフィール
登録名称 | ケベック旧市街の歴史地区 |
---|---|
登録年 | 1985年 |
所在国 | カナダ |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (iv)(vi) |
そもそもケベックとは?なぜケベックはフランス語圏?
写真中央付近が「アッパー・タウン」と呼ばれる城壁の上の市街地
ケベックとは、カナダ東部にあるケベック州の州都(県庁所在地のようなもの)です。
そして、ケベックの旧市街全体が世界遺産に登録されています。
カナダで話されている言語の大半が英語ですが、ここケベック州はフランス語が話されています。
なんとカナダは、1つの国の中で話されている言語が複数に分かれている珍しい国なのです!
カナダという国が誕生する以前の現在のカナダの土地は、主にイギリスとフランスが領土を主張していました。
中でもケベックは、フランスによる統治がいち早く行われた地域の一つです。
一方でケベック以外の地域は、現在のアメリカも含みイギリスが統治する形になりました。
このように、カナダを統治した国が2つに分かれた結果、フランスに統治されていたケベックはフランス語圏になったのです。
”イギリス VS フランス”
この2カ国による領土争いが、現在のカナダで複数言語が話されている要因なのです。
(領土争いの歴史に関しては、後述の「北米唯一の城塞都市」で詳しく解説します)
世界遺産登録理由
綺麗に整備された美しい街並み
ケベック旧市街が世界遺産登録された理由は、下記の2つのワードがポイントになってきます。
- 城塞都市
- フランスの植民地
『ケベック旧市街の歴史地区』
上記の世界遺産登録名称を見てわかる通り、ケベックの街全体の中でも旧市街エリアのみが世界遺産の登録範囲です。
この登録範囲に、「城塞都市」「フランスの植民地時代の面影」を見ることができます。
北米唯一の城塞都市
城壁を境目に「アッパー・タウン」と「ロウワー・タウン」に分かれている
ケベックは、”北米唯一の城塞都市”という点が評価されて世界遺産登録されました。
用語メモ
城塞都市とは、敵の攻撃から街を守るために分厚い石の壁で街の周囲を覆った都市。頻繁に争いが発生する地域で誕生しやすい。ここでケベックの街の歴史を簡単に見てみましょう。
17世紀初頭 | フランス人探検家「シャンプラン」がケベックを発見し、ケベックを統治する計画が建てられる。丸太を使って砦を築き始める。 |
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18世紀 | フランスに続きイギリスがカナダに上陸し、ケベックを巡って争いが発生(フレンチ・インディアン戦争)。争いが激しくなるとともに、砦が徐々に大きくなっていく。 |
18世紀中頃 | フランスに勝ったイギリスがカナダ全土をイギリスの領土とする。 |
18世紀末 | アメリカ独立戦争の影響を受けてさらに街に城塞が築かれるようになる。 |
19世紀中頃 | カナダ連邦として独立を果たす。 |
17〜18世紀にかけてケベックは常に何かしらの争いの舞台になっていたため、城壁が壊されることなく、反対にどんどん城壁が築かれていったのです。
カナダが独立して以降は、城塞が争いで使われることはなくなりました。
しかし、その城塞をうまく利用してケベックの街づくりが進められていったのです。
カナダを含む北米には、ここまで保存状態の良い大きな城壁が残されている地域はありません。
貴重な街づくりの発展の歴史を今でも見ることができる点は、世界遺産登録に大きな影響を与えています。
フランス植民地時代の雰囲気を残している
ケベック旧市街の美しい街並み
前述の「北米唯一の城塞都市」で解説したように、ケベックは17〜18世紀にかけてフランスの植民地でした。
そのためケベックの街並みはフランスの雰囲気を色濃く残しているのです。
【アッパー・タウン(上の街)】
- 行政・宗教の中心(城壁で囲まれている)
- 主な施設:要塞(ラ・シタデル)、ドーフィヌの小砦、修道院、教会堂、シャトー・フロントナック(ホテル)
【ロウワー・タウン(下の街)】
- 商業・住居
- 主な施設:海軍施設、ケベックで最も古い地区
フランスが統治していた当時のケベックは、「ヌーヴェル・フランス(新しいフランス)」と呼ばれていました。
これはフランスが北米の活動拠点をケベックに置いていたことの象徴です。
18世紀中頃にフランスはイギリスに領土を奪われましたが、その後イギリスは「ケベック法」を制定しました。
この法案によって主に下記が認められることになったのです。
- フランスの基本的な法律の適用(民法)
- 宗教の自由(信仰の自由)
- フランス語の使用
つまり法案制定により、ケベックにいたフランス人系の人々の生活が保たれたのです!
さらに20世紀に入ると、カナダ政府によってケベックの街並みが整備されました。
こうしてフランス統治自体の街並みや文化が保たれたまま、現在に至ることになります。
一方で、フランス系カナダ人からは、カナダからの独立を求める声も上がっています。
その独立を進めるために「ケベック党」という政党もできているほどです。
今はまだケベックはカナダの一部ですが、将来的にケベックが国として成立する可能性も十分にあるのです。
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3・4級レベル
16世紀頃からケベックを統治していた国の名前として正しいものどれか。
- オランダ
- フランス
- イギリス
- スペイン
②
答え(タップ)>>2級レベル
ヨーロッパの古城を模して建てられ現在はホテルとして使用されている建物の名称として正しいものはどれか。
- サン・ガティアン
- シャトー・フロント・ナック
- グラン・パレ
- リンクシュトラーセ
②
答え(タップ)>>1級レベル
『ケベック旧市街の歴史地区』に関する説明として誤っているものはどれか。
- アッパー・タウンには要塞、修道院、教会堂などが建てられている。
- 道路は長さが均一に保たれた格子状に張り巡らされている。
- ケベック法の制定によりフランス語の使用が認められた。
- 20世紀にカナダ政府によって街並みが整備された。
②
答え(タップ)>>まとめ
- かつてケベックはフランスの植民地だった。
- ”北米唯一の城塞都市”という点が高く評価された。
- フランスの古城を模して建てられた「シャトー・フロント・ナック」が街のシンボル。
- フランスはケベックを「ヌーヴェル・フランス(新しいフランス)」と呼んでいた。
- ケベック法の制定によりフランス人系の人々の生活が保たれるようになった。
- 現在でもカナダからのケベック独立の声が上がっている。
おまけ:「ケベック」のプチ観光情報
雪化粧をしたケベック旧市街
最寄の空港 | ケベック・ジャン・ルサージ国際空港 |
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公用語 | フランス語 |
通貨 | カナダ・ドル |
観光のベストシーズン | 4〜10月 |
時差 | 14時間(東京 – ケベック間) ※日本の方が14時間進んでます。 |
治安 | 非常に良い |
物価 | 少し高い(日本の約1.3倍) |
ケベックには地下鉄は無いものの、ケベック観光のメインとなる旧市街は徒歩で周れるほどのコンパクトサイズです。
ですので、ケベック観光は1日あれば十分に満喫することができます。
公用語はフランス語になりますが、メニューや看板にはほぼ間違いなく英語表記もあるため、フランス語が話せなくても観光には困らないでしょう。
何より治安が非常に良いので、ケベックを含むカナダ旅行は海外旅行初心者にも非常におすすめできます。
アクセス
ケベックへはカナダ最大の都市「トロント」を経由してアクセスするのが一般的
残念ながら、日本からケベックへの直行便は就航していません。
一般的には、直行便が就航している「バンクーバー」「トロント」を経由して、国内線利用でアクセスすることになります。
- 日本各都市 [フライト時間:10〜12時間]⇨ カナダ国内各都市(トロント、バンクーバーなど) [フライト時間:2〜5時間] ⇨ ケベック・ジャン・ルサージ国際空港
おすすめホテル:フェアモント・ル・シャトー・フロント・ナック(Fairmont Le Château Frontenac)
ケベックのシンボル「シャトー・フロント・ナック」
- ケベックで最も有名な古城風の高級ホテル。
- フランスの城を模して建てられた。
- 内装もフランス統治自体の面影を感じることができる。
- 人気ホテルのため早めの予約必須。
1892年にフランスの城を模して建設されたホテルが「シャトー・フロント・ナック」です。
世界遺産に登録されている旧市街のアッパータウン(城壁の上)に位置し、フランス時代の雰囲気を最も感じられる建物と言っても過言ではありません。
ケベックのシンボル的な建物であるため、季節問わず早めに予約をしないと宿泊が困難な大人気ホテルです。
日本の旅行会社のツアーでは、シャトー・フロント・ナックに宿泊するプランもよく見られるので、旅行会社を通した予約が確実ですね。
- フェアモント・ル・シャトー・フロント・ナック
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。