こんな方にオススメの内容!
- なぜピサのドゥオモ広場が世界遺産に登録されたのか理由が気になる!
- ピサの斜塔が傾いている理由を知りたい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- イタリアへの旅行を考えている!
遺産ポイント
- ピサはパレルモ沖海戦に勝利したことで地中海貿易の拠点として大きく繁栄。
- ロマネスク様式、ビザンツ様式など様々な建築様式の建造物が見られる。
- ピサの斜塔ではガリレオ・ガリレイの物理実験が行われた。
「ピサのドゥオモ広場」のプロフィール
登録名称 | ピサのドゥオモ広場 |
---|---|
登録年 | 1987年 |
所在国 | イタリア |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (i)(ii)(iv)(vi) |
ピサの斜塔はなぜ傾いている?
地盤の弱さが原因で傾いた鐘楼(ピサの斜塔)
ピサの斜塔が傾いている原因は、斜塔が建設された地盤が弱かったためです!
つまり、建設計画を立てている時点で、しっかり地盤の強度を確認しなかったことが仇となったのです。
- 1173年に建設工事が開始される。
- 3層(3階)まで完成したタイミングで傾き始めた。
- 建築家たちは傾くたびに水平に保たれるよう調整する。
⇨調整しても何度も傾く。 - 1372年に約200年かけて8層で完成。
⇨当初の計画(約100m)より高さを低くして完成させた(実際は約55m) - 1956年には傾きが8度を超える(建物が立っていられるかどうかのギリギリライン)
- 様々な試行をした結果、現在の傾きは3.99度で落ち着いている。
【具体的な傾き改善対策】
- 傾いている反対側に重心を移しながら建設。
- 最上層の鐘のうち片側の鐘の重量を増やす。
- 塔の片側に800tの鉛を重しとして置く。
- ワイヤーを使って傾いている反対側から引っ張る(最終手段)
試行錯誤の結果、今後300年間は塔の倒壊の心配はないとされています。
しかし念の為、現在でも毎日傾斜の測定が行われています。
なお、斜塔が傾いている件に関しては、世界遺産登録には関係ありません。
一方で、”倒れそうで倒れない絶妙な傾き”を見せる姿が、結果的に世界での知名度が上がった要因になったため、観光面での効果は抜群でしたね。
世界遺産登録理由
『ピサのドゥオモ広場』が世界遺産に登録された理由は、下記の3つに大きく分けられます。
- 美しい建築物群が見られる
- 様々な建築様式が見られる
- ピサ繁栄の歴史が見られる
ちなみに「ピサ」とは、斜塔のことを指しているのではなく、街の名前を表しています。
また、登録名称に入っている「ドゥオモ広場」とは、有名な斜塔や大聖堂などが建てられている広場全体のことを指します。
(「ドゥオモ」は、イタリア語で”教会堂”という意味)
理由1:美しい広場と建造物
白亜の大理石をふんだんに用いた美しい「ドゥオモ広場」
ドゥオモ広場は、当時地中海の貿易拠点などで多くの富を得ていたピサに建設された、贅を尽くした美しい広場です。
そんな美しい広場に、世界各国の建築様式を採用した大聖堂や斜塔などが建造されました。
(採用された具体的な建築様式に関しては、後述の「理由2:様々な建築様式が見られる」で詳しく解説します)
このように、当時の繁栄を物語る美しい広場が現在でも見られる点が世界遺産登録において高い評価を得たのです!
なお、ドゥオモ広場に建てられた代表的な建物は、以下の通りです。
- 大聖堂
- 鐘楼(ピサの斜塔)
- 洗礼堂
- 墓所(カンポサント)
用語メモ
洗礼堂とは、キリスト教へ入るための儀式(洗礼)が行われる建物。円形や正多角形をしているのが建築ポイント。理由2:様々な建築様式が見られる
新約聖書の一場面のレリーフがある洗礼堂(手間の円形の建物)
ピサのドゥオモ広場に建つ建造物には、様々な建築様式が採用されています。
このように、当時流行っていた建築様式や世界各国の代表的な建築様式が見られる点は、建築面における世界遺産登録の大きなポイントになっているのです。
【大聖堂】
- 概要:地中海での戦いの勝利を記念して建造(1118年着工、1380年完成)
- 建築様式:ロマネスク様式、イスラム様式のアーチ、ビザンツ様式のモザイク
【鐘楼】
- 概要:”ピサの斜塔”として有名
- 建築様式:ロマネスク様式
【洗礼堂】
- 概要:内部にある「説教壇(せっきょうだん)」の側面に「新約聖書」の一場面を表現したレリーフがある
- 建築様式:下層はロマネスク様式、上層はゴシック様式、内部の一部にはビザンツ様式
用語メモ
新約聖書とは、キリスト教のルールが示された書物。なお、新約聖書よりも前に出された書物を一般的に「旧約聖書」と言われる。大聖堂で採用されている建築様式・建築技術は、その後、ピサの街があるトスカーナ地方における聖堂建築のモデルとなるほど影響力を持ちました。
また、洗礼堂にある説教壇は、イタリア人彫刻家「ニコラ・ピサーノ」の作品です。
彼はイタリアを中心に数多くの有名な建物の彫刻を手がけ、「ピサ派」という自分の名前が入った考えまでも作るほどでした。
理由3:繁栄した当時の時代を感じられる
ピサの建造物は地中海貿易の拠点として得た富によって建てられた
前述の「理由1:美しい広場と建造物」の冒頭でも触れたように、ピサの街は地中海貿易の拠点となったことで大きく繁栄しました。
大きな繁栄の証として、ドゥオモ広場のような美しい建造物が多く建てられるようになりました。
このように、建造物から当時のピサの繁栄の歴史を見ることができる点も、世界遺産登録に大きな影響をもたらしているのです!
しかしピサの街が栄える以前は、ローマなどの大きな国によって支配をされる苦い経験をしてきました。
そんな中ピサは、地中海に面した立地をうまく活かして、各国との貿易を行うための地中海沿岸ルートを作ったのです。
途中、「パレルモ沖海戦」という戦いをすることになりましたが、見事に戦いに勝利したため、ピサの支配領域はどんどん拡大していくことになります。
最終的には11世紀に独立することに成功し、大聖堂や鐘楼(ピサの斜塔)など、壮大で美しい建造物が次々と建てられていくことになったのです。
ピサの斜塔はガリレオの物理実験の舞台に
学者「ガリレオ・ガリレイ」は斜塔の頂上から物理実験を行った
ドゥオモ広場にあるピサの斜塔は、傾いていることだけでなく、学者ガリレオ・ガリレイによる物理実験の場としても有名になっています。
用語メモ
ガリレオの物理実験とは、重さの異なる2つの物を建物の上から落とし、地面に着くまでの物の落下変化を研究する実験。ガリレオは16世紀末に、ピサの斜塔を使って物も落とす実験を行ったとされています。
しかし実際のところ、ガリレオが出した数々の本にはピサの斜塔での物理実験に関する内容が書かれていないのです。
このように実験を行った証拠が無いことから、実際は別の場所で行ったのではないかと言われています。
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3・4級レベル
ピサのドゥオモ広場に実在する建造物の名称として正しいものどれか。
- 市庁舎
- 狩猟小屋
- 斜塔
- 証券取引所
③
答え(タップ)>>2級レベル
ピサにある鐘楼で物理実験を行ったとされる人物名として正しいものはどれか。
- マリー・キュリー
- トマス・テルフォード
- アイザック・ニュートン
- ガリレオ・ガリレイ
④
答え(タップ)>>1級レベル
『ピサのドゥオモ広場』に関する説明として誤っているものはどれか。
- 洗礼堂の内部にはニコラ・ピサーノ作の説教壇がある。
- 中世の商業都市として発展した特徴が見られる。
- 大聖堂はロマネスク様式で建てられた。
- 地中海貿易の拠点として得た富によって街が大きく繁栄した。
②
答え(タップ)>>まとめ
- ピサの斜塔の傾きは建設場所の地盤の弱さが原因。
- ピサの街は地中海貿易の拠点として得た富によって大きく繁栄。
- ロマネスク様式やビザンツ様式など様々な建築様式が見られる。
- 洗礼堂にはイタリア人彫刻家「ニコラ・ピサーノ」作の説教壇がある。
- パレルモ沖海戦に勝利したことでピサの地中海ルートの範囲が拡大していく。
- 鐘楼(斜塔)では学者ガリレオ・ガリレイによる物理実験が行われた。
おまけ:「ピサ」のプチ観光情報
観光拠点の街 | ピサ or フィレンツェ |
---|---|
最寄り空港 | ガリレオ・ガリレイ国際空港(ピサ空港) |
通貨 | ユーロ |
観光のベストシーズン | 4〜10月 |
入場料(修道院) | ドゥオモ広場は無料 (ピサの斜塔に登る場合は18ユーロ) |
営業時間 | 4〜8月 09:00〜22:00 9月 09:00〜20:00 3月&10月 09:00〜19:00 11〜2月 09:00〜18:00 |
時差 | 7時間(東京 – ピサ間) ※日本の方が7時間進んでます。 ※サマータイム時は8時間 |
治安 | 比較的良い |
物価 | 普通(日本と同じぐらい) |
大聖堂などがあるピサのドゥオモ広場への入場は無料です。
一方で、人気の斜塔見学には、時間指定のチケットを購入する必要があります。
特に4〜8月は大変混雑するため、あらかじめオンライン予約をしておくことをオススメします。
(オンライン予約サイトはこちら)
また、洗礼堂など一部施設は別途料金がかかりますが、事前予約が必要なほど混雑はしません。
アクセス
ピサ日帰り観光の拠点となる街「フィレンツェ」の美しい街並み
残念ながら、ピサへの直行便は就航していません。
一般的にはイタリアの首都「ローマ」から鉄道利用でアクセス、または他のヨーロッパの主要都市の空港を経由してアクセスすることになります。
【鉄道利用の場合】
- 成田・羽田・関西など [フライト時間:12〜13時間] ⇨ ローマ or ミラノ [鉄道乗車時間:約1〜2時間] ⇨ フィレンツェ・サンタ・マリア・ノヴェッラ駅 [鉄道乗車時間:約1〜2時間] ⇨ ピサ中央駅
【国際線乗り継ぎの場合】
- 成田・羽田・関西など [フライト時間:12〜13時間] ⇨ ヨーロッパ各都市(パリ、フランクフルトなど) [フライト時間:約1〜2時間] ⇨ ピサ空港
ちなみに、ピサ観光の拠点となるフィレンツェも、世界遺産に登録されています。
フィレンツェについては下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ合わせて読んでみてください。
合わせて読みたい!【なぜフィレンツェは世界遺産?ルネサンスとは?】登録理由&歴史をわかりやすく解説!周辺ホテル事情
ホテルや商業施設が軒を連ねるアルノ川沿いの景色
- 主に2〜3つ星ホテルが多い。
- 大都市と比べると高級ホテルや大型ホテルは少なめ。
- ホテルは「駅-ドゥオモ広場」の道沿いとアルノ川沿いに密集している。
ピサはローマやミラノなどの大都市と比べると、高級ホテルや設備が充実したホテルは少ない傾向にあります。
とはいえ、「ピサの斜塔」に代表されるように、世界的な観光地ではあるためホテルの数は十分にあります。
一般的にはピサから鉄道で1時間のところにある「フィレンツェ」にホテルを取り、日帰りでピサ観光をする観光客が多いです。
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。