こんな方にオススメの内容!
- なぜモン・サン・ミシェルが世界遺産に登録されたのか理由が気になる!
- モン・サン・ミシェルが海の上に建つ理由を知りたい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- フランスへの旅行を考えている!
遺産ポイント
- モン・サン・ミシェルの起源は大天使ミカエルの伝説。
- 10世紀のリシャール1世による修道院建造以降に次々と増改築が行われた。
- 「ノルマンディー・ロマネスク」「ゴシック」など様々な様式が混在しているのが特徴。
「モン・サン・ミシェル」のプロフィール
登録名称 | モン・サン・ミシェルとその湾 |
---|---|
登録年 | 1979年 |
所在国 | フランス |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (i)(iii)(vi) |
モン・サン・ミシェルとは?海の上に築かれた理由とは?
海の上に浮かぶように見える姿が名物
モン・サン・ミシェルを一言で表すと下記になります。
天使が宿った山
- モン:山
- サン・ミシェル:聖ミカエル(伝説の”大天使”)
このように、”ミカエルという大天使のいる山”という意味になることがわかります。
もともとは、海にポツッとそびえる何もない岩山でした。
その岩山をベースに、修道院や商業施設などが次々と建てられていった結果、現在見られるような壮大な建物になったのです。
つまりモン・サン・ミシェルは、”様々な建物の集合体”という表現ができます。
(具体的な建物名やその役割については、後述の「様々な建築様式が混在するヨーロッパを代表する建築物」で詳しく解説します)
そんな何もない岩山に現在のような姿のモン・サン・ミシェルが建てられた理由は、伝説の「ミカエル」が大きく関係しています。
”大天使ミカエル”から岩山に聖堂を築くように言われたため
モン・サン・ミシェルの対岸の街「アブランシュ」で暮らすオペールという人物が見た夢に、この大天使ミカエルが登場します。
そして夢の中で岩山に聖堂を築くよう何度も言われたのです。
この伝説がモン・サン・ミシェル建造の始まりとされています。
世界遺産登録理由
かつて修道士たちが共に食事を取っていた広大な食堂
モン・サン・ミシェルが世界遺産登録された理由は、大きく下記の3つに分けられます。
- 美しい姿
- 様々な建築様式が混在
- 伝説と激動の歴史を伝える
一方で、その美しいたたずまいとは反対に、激動の歴史を刻んでいる点も世界遺産登録に大きな影響を与えています。
モン・サン・ミシェルに関わる歴史だけでも、なんと約1,300年もの長さがあるのです!
(モン・サン・ミシェルの歴史に関しては、後述の「数世紀に及ぶ激動の歴史を今に伝える」で詳しく触れます)
海の上に建つ美しい修道院の姿
海の上に突如として姿を現す幻想的な姿
モン・サン・ミシェルが見せる壮大で美しい姿は、間違いなく世界遺産登録における評価ポイントになっています。
ただし実際は、”建物が美しい”という理由だけで世界遺産登録されることは難しいのです。
それでもモン・サン・ミシェルが世界遺産登録された要因には、モン・サン・ミシェルを囲う”干潟”が大きなポイントです!
世界遺産登録名称に「モン・サン・ミシェルと”その湾”」と入っているように、湾にある干潟で発生する潮の満ち引きこそ、モン・サン・ミシェルをより美しい姿にしています。
- 潮の満潮時には海に浮かんでいるような幻想的な姿を見せる
- 干潮時にしか姿を表さない神秘的な道
つまり、モン・サン・ミシェルは自然の神秘と人類の傑作が融合して生み出された姿なのです!
このように人類の傑作とも言える建造物には、世界遺産登録基準の(i)が適用されます。
(世界遺産登録基準の詳細は、こちらの記事をご覧ください)
しかし、もし潮の満ち引きによる現象が全くなければ、この登録基準を満たさなかった可能性が十分にあるのです。
ちなみに後に修道院も建てられますが、あまりにも潮の満ち引きが激しいため、ここの修道院を訪れようとした巡礼者が度々命を落とした話も残されています。
人間は自然の力には逆らえませんね。
様々な建築様式が混在するヨーロッパを代表する建築物
「ラ・メルヴェイユ」の上層階にある美しい回廊は目玉スポットの一つ
モン・サン・ミシェルを見ればヨーロッパを代表的する様々な建築様式を見ることができる
このように言っても過言ではありません。
【モン・サン・ミシェルで見られる代表的な建築様式】
- ノルマンディー・ロマネスク建築:フランス・ノルマンディー地方で誕生した様式。分厚い石の壁など重厚なイメージの「ロマネスク様式」に加え、彫刻や装飾をたくさん施している点が特徴。
- ゴシック様式:フランスの首都パリを中心に発展。建築技術が進んだことで可能になった”軽やかで明るい”印象が特徴。ステンドグラスを兼ねそろえた窓を多用するなど、”神々しいイメージ”を与える。
上記のように様々な建築様式が混在した結果、現在見られるような美しい姿が生まれました。
8世紀 | モン・サン・ミシェル最初の聖堂が建造される。 |
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10世紀 | ノルマンディー地方を支配していたリシャール1世がベネディクト会修道院を建造。 既に建てられていた聖堂を、後に「ノートル・ダム・スー・テール聖堂」と呼ばれることになる、丸天井を持つ地下礼拝堂に建て替えられた。 |
12世紀 | 修道院に付け加えるようにして、新たな聖堂が建造される。ヨーロッパ中から巡礼者が集まり賑わいを見せるようになる。 |
13世紀 | 広々とした食堂や巡礼者のための宿泊施設として使われるようになる、「ラ・メルヴェイユ(驚異の建築)」という、当時流行していたゴシック様式を採用した建物が完成。 修道士の瞑想の場として使われた最上階の回廊は約220本の円柱や繊細な彫刻が見られる美しいゴシック建築として有名。 聖堂内部には、フランスで流行していたノルマンディー・ロマネスク建築も使われるようになる。 |
用語メモ
ベネディクト会とは、キリスト教最大のグループである「カトリック」の中で最も古いルールを作った集まり。11世紀に最も大きな力を持った。なお、モン・サン・ミシェルの歴史や建築構造などの詳細については、下記の書籍内でイラスト付きでわかりやすく解説されてます。
気になる方は、ぜひ一度手に取って読んでみてください。
- 商品名:歴史がわかる世界遺産イラスト大図鑑
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数世紀に及ぶ伝説と激動の歴史を今に伝える
要塞として使われていた時代の建物の様子も見ることができる
現在は世界中の人々を魅了する美しい修道院としての姿を見せていますが、歴史上常に修道院として使われてきたわけではありません。
前述の「モン・サン・ミシェルとは?海の上に築かれた理由とは?」で解説したように、大天使による指示で建造したというロマンチックな一面もあります。
一方で、「戦いに備えた要塞」「牢獄」といったネガティブな一面も持ち合わせているのです。
14世紀 | 百年戦争中(フランスVSイギリス)は敵国からの攻撃に対抗するために修道院を閉鎖し、城壁や塔が築かれる。 |
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16世紀 | 宗教戦争(既存の宗教と新しい宗教の対立)では戦場となる。 |
16世紀以降 | 巡礼者のために多くの店や宿泊施設が建てられていった(しかし修道院は徐々に衰退していく) |
18世紀 | フランス革命時(国を新しくする取り組み)には修道院が囚人の監獄として使われるようになる。 |
19世紀 | 修道院のてっぺんに大天使ミカエルの像が付けられる。 |
20世紀 | 数百年ぶりに再び修道院として使われるようになる(多くの修道士が戻ってくる) |
モン・サン・ミシェルが修道院としてのイメージが強い背景には、現在は修道院として使われていることが挙げられます。
しかし、約200年前までは監獄として使われていたり、もっと前には戦争のための拠点として使われていました。
実際に現在でも、監獄となっていた部屋や戦いの証とも言える要塞を見ることができます。
このように様々な歴史の証拠が建物に残されている点が、フランスやヨーロッパの歴史を知る上で大変貴重であると評価されました。
問題点・改善点
2014年に完成した島へと繋がる長い橋
つい数年前まで、モン・サン・ミシェルは非常に大きな問題を抱えていました。
海に浮かぶ幻想的な姿が見られなくなっている
これはモン・サン・ミシェルの魅力を落としかねない問題です。
前述の「海の上に建つ美しい修道院の姿」の文末で少し触れたように、島にある修道院を訪れるためには、潮の満ち引きが激しい干潟を自力で渡らなければなりませんでした。
そこで、命を失う心配無く島へ渡れるようにするため、19世紀末に長い道路(防波堤)が建設されたのです。
しかし一方で、道路の建設により潮の流れが大きく変わり、島周辺に砂や泥がたまり海底上昇に繋がってしまったのです。
海に浮かぶ幻想的な姿こそモン・サン・ミシェル最大の魅力であったため、この姿が見られなくなってしまったことは、世界遺産としての価値が損なわれてしまう懸念があります。
そこでかつての姿を取り戻すべく、21世紀に入ってから国家事業&EUの協力を得て潮の流れを妨げない橋の建設がスタートしたのです!
これでひと段落と思いきや、次は観光面で問題が発生します。
道路から橋に変わったことで、気軽に島へ渡ることができなくなってしまったのです。
以前に比べ気軽に島へ行けなくなってしまった結果、橋建設以前に比べて観光客が減少してしまったのです。
島や島周辺は観光資源によって潤っていました。
そんな貴重な収入源が減ってしまったことで、周辺住民から反感を買うようになってしまったのです。
世界遺産登録されている以上、景観や環境に配慮した取り組みは必要です。
一方で、住民や観光客にとって不便な環境になってしまうことを考慮した取り組みが必要なのも事実です。
モン・サン・ミシェルは世界遺産に重複登録されている!?
モン・サン・ミシェルと同様に重複登録されている世界遺産「アミアンの大聖堂」
モン・サン・ミシェルは1979年に世界遺産登録されていますが、実は1998年に2度目の世界遺産登録を経験しているのです!
1998年に登録された際の世界遺産登録名称は、『フランスのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路』です。
そして、モン・サン・ミシェルはこの世界遺産の”構成資産”として登録されました。
つまり、巡礼路と深い関わりのある建造物として評価されたのです。
ただしもちろん、モン・サン・ミシェルのように単独の世界遺産登録としての価値を十分に持っていない場合は、単独登録ではなく構成資産としての登録にとどまることはあります。
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3・4級レベル
『モン・サン・ミシェル』内に実在する建物の名称として正しいものどれか。
- ギルド・ハウス
- サンタ・マリア・イン・コスメディン教会
- グラン・トリアノン
- ノートル・ダム・スー・テール聖堂
④
答え(タップ)>>2級レベル
『モン・サン・ミシェル』に使われている建築様式の名称として正しいものはどれか。
- ゴシック・リバイバル様式
- フランボワイヤン様式
- シチリア・バロック様式
- ノルマンディー・ロマネスク様式
④
答え(タップ)>>1級レベル
「ラ・メルヴェイユ」と呼ばれる建物の回廊の用途として正しいものはどれか。
- 修道士の瞑想の場
- 囚人の監獄
- 彫刻や貴金属の展示場
- 諸外国の貴賓専用の通路
①
答え(タップ)>>まとめ
- モン・サン・ミシェルの起源は”大天使ミカエル”の伝説。
- 自然の影響を受けてみせる美しい姿が世界遺産登録の評価ポイントの一つ。
- 「ノルマンディー・ロマネスク」「ゴシック」などヨーロッパの様々な建築様式が混在している点が特徴。
- リシャール1世の指示のもと最初の修道院が建造される。
- 丸い天井を持つ「ノートル・ダム・スー・テール聖堂」と呼ばれる地下礼拝堂が有名。
- 「ラ・メルヴェイユ」には修道士の瞑想の場として使われた回廊が美しい姿で残されている。
- 修道院、要塞、監獄など歴史上様々な使われ方をされていた。
- 美しい姿を取り戻すために潮の流れを妨げない橋の建設が行われた。
- 1979年と1998年の2回世界遺産に登録されている。
おまけ:「モン・サン・ミシェル」のプチ観光情報
深い霧に覆われた幻想的な姿
観光拠点の街 | レンヌ |
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最寄の空港 | レンヌ・サンジャック空港 |
通貨 | ユーロ |
観光のベストシーズン | 3〜10月 |
入場料(修道院) | 11ユーロ(日本円で約1,600円) 18歳以下:無料 ※2022年時点。 ※島への入島は無料。 |
営業時間 | 5〜8月 09:00〜19:00 9〜4月 09:30〜18:00 |
時差 | 7時間(東京 – パリ間) ※日本の方が7時間進んでます。 ※サマータイム時は8時間 |
治安 | 非常に良い |
物価 | 少し高い(日本の約1.3倍) |
比較的治安が安定しているフランスですが、ほぼ島と言えるモン・サン・ミシェルの治安はさらに良好です。
治安が良い最大の要因は、島には「修道士」「住民」「観光客」が大半を占めているためです。
また、モン・サン・ミシェルは日本人観光客が非常に多いため、日本語表記の看板も多くあり、スタッフによっては日本語対応してくれるケースもあります。
決してアクセスが良いとは言えませんが、治安面や日本人観光客が多い点を踏まえると、海外旅行初心者向けの観光スポットと言えますね。
アクセス
モン・サン・ミシェルの観光拠点となる「レンヌ」の街並み
残念ながら、モン・サン・ミシェル最寄り空港である「レンヌ」への直行便は就航していません。
一般的には、フランスの首都「パリ」へ向かい、パリから電車やバスを乗り継いで向かうことになります。
【パリから向かう場合】
- 成田・羽田・関西など[フライト時間:約12時間] ⇨ パリ・シャルル・ド・ゴール空港 ⇨ パリ市内へ
- パリ (高速鉄道TGV[所要時間:約1時間30分])⇨ レンヌ(バス[所要時間:1時間]) ⇨ 島の対岸着 (無料シャトルバス[所要時間:数分]) ⇨ モン・サン・ミシェル着
【レンヌ空港を利用する場合】
- 成田・羽田・関西など[フライト時間:約12時間] ⇨ アムステルダム・スキポール空港[フライト時間:約2時間] ⇨ レンヌ・サンジャック空港
- レンヌ(バス[所要時間:1時間]) ⇨ 島の対岸着 (無料シャトルバス[所要時間:数分]) ⇨ モン・サン・ミシェル着
- アムステルダム乗り換えが最もスムーズ
見どころ
干潟の上を歩くツアーが人気
【グランド・リュ(参道)】
- 島の入り口から修道院まで続くメインストリート。
- ホテル、レストラン、お土産店などが軒を連ねる。
【干潟】
- 夏限定でガイド付きの干潟散策ツアーが行われている。
- 普段見られない島の後ろ姿は干潟からしか見られない。
【オムレツ】
- 19世紀に巡礼者が気軽に食べられるようにと開発された食べ物でモン・サン・ミシェルの名物料理。
- 「ラ・メール・プラール」のふわふわオムレツが特に有名。
モン・サン・ミシェルは修道院だけでなく、ホテルやレストランなども兼ね揃えた、言わば「小さな街」です。
そのため、修道院以外にも魅力的な観光スポットが多いのが特徴です。
日本の世界遺産「厳島神社」とは姉妹世界遺産?
モン・サン・ミシェルと厳島神社は姉妹世界遺産
実は、フランスの世界遺産「モン・サン・ミシェル」と日本の世界遺産「厳島神社(宮島)」は、姉妹世界遺産なのです!
この2つの世界遺産が姉妹である主な理由は、以下の通りです。
- 海に浮かぶ世界遺産といった似た特徴を持つ。
- 1,000年以上の歴史を持つ宗教関連の建物。
- 2カ国を代表する象徴的な建造物。
日本とフランスの国交が始まってから150年が経った2008年に、観光に関するキャンペーンが打ち出されました。
そのキャンペーンの一つであるポスター作成の中に、モン・サン・ミシェルと厳島神社の2つが描かれていたのです!
当時、日本政府観光局がフランスに紹介したい観光地として厳島神社を選んだことが大きく関係しています。
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。