こんな方にオススメの内容!
- ジェロニモス修道院とベレンの塔が何かを知りたい!
- ジェロニモス修道院とベレンの塔が世界遺産登録された理由が気になる!
- 大航海時代について理解したい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- ポルトガルへの旅行を考えている!


遺産ポイント
- 世界遺産登録対象は「ジェロニモス修道院」「ベレンの塔」の2つ
- 大航海時代のポルトガルの繁栄を象徴する歴史的建造物
- ポルトガル独自の建築様式「マヌエル様式」が最大の特徴
「ジェロニモス修道院とベレンの塔」のプロフィール
登録名称 | リスボンのジェロニモス修道院とベレンの塔 |
---|---|
登録年 | 1983年(2008年:範囲変更) |
所在国 | ポルトガル |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (iii)(vi) |
そもそも「ジェロニモス修道院」「ベレンの塔」とは?

テージョ川沿いに建つ記念碑兼監視塔の役割を持つ「ベレンの塔」
まずは、少し長めの世界遺産登録名称を詳しく見ていきましょう。
- リスボン:世界遺産登録された歴史的建造物のある都市の名前(現在のポルトガルの首都)
- ジェロニモス修道院:世界遺産登録の対象となった建物の一つ
- ベレンの塔:世界遺産登録の対象となった建物の一つ
つまり、ポルトガルの首都リスボンに建てられた修道院と塔の2つが世界遺産登録されているのです。

ジェロニモス修道院

「ジェロニモス修道院」の内部の回廊はポルトガルの建築様式「マヌエル様式」で建てられている
- 大航海時代のポルトガルの繁栄を象徴する豪華な建物
- ”記念碑”や”心のよりどころ”など建築目的はさまざま
- ポルトガル独自の芸術様式「マヌエル様式」が採用されている(マヌエル様式の詳細については後述してます)
用語メモ
大航海時代とは、ポルトガルを先頭に、ヨーロッパから見た”未開の地”に向けて多くの船乗りが海に乗り出し始めた時期を指す。主な目的は、各地で生産されている資源・食料の調達、ヨーロッパで消費するための食物の生産に必要な土地の確保など。大航海時代に大きく繁栄したポルトガルを象徴する建物が、「ジェロニモス修道院」です。
16世紀初頭に、マヌエル1世によって建設が開始されたジェロニモス修道院ですが、すべての工事が完了するまでには、なんと約300年もの年月がかかっています。
ここまで建設に年月がかかった理由は、あまりにも壮大で豪華な設計がなされたためです!

- ヤシの木をイメージして建てられた。
- 南側の門にはマヌエル様式最高傑作ともうたわれる彫刻や装飾が施されている。
- 入り口の上部には修道院の名前の由来になっている「聖ヒエロニムス(ポルトガル語でジェロニモス)」の生涯が描かれている。
- ポルトガルを代表する著名な人物たちの棺(ひつぎ)が置かれている。
大航海時代の象徴的な建物であるジェロニモス修道院は、海との繋がりを連想させるために”ヤシの木”をイメージして設計されています。
また、外観には大航海時代の象徴的な人物であるエンリケ航海王子や聖人を表現した彫刻を見ることができます。
建物内部には、修道院建築の特徴の一つである広大な回廊も設けられています。

加えて、修道院には「聖母マリア教会」が併設されています。
この教会には、「ヴァスコ・ダ・ガマ」や「ルイス・デ・カモンイス(ポルトガルの詩人)」などポルトガルを代表する人物の棺(ひつぎ)が置かれています。
なお、ヴァスコ・ダ・ガマもまた、エンリケ航海王子と同じく大航海時代を象徴する人物の一人です。

ジェロニモス修道院が建築された目的は、主に下記が挙げられます。
- エンリケ航海王子の偉業をたたえるため
- ヴァスコ・ダ・ガマの功績をたたえるため
- マヌエル1世をはじめとする歴代ポルトガル国王のお墓
- 危険な航海に乗り出す船乗りたちの心のよりどころ
なお、今回のジェロニモス修道院の建築詳細や大航海時代の歴史については、下記の書籍を参考にして書いています。
より詳しく知りたい方は、ぜひ一度手に取って読んでみてください。

- 商品名:謎多き建造物と隠された真実 世界遺産ミステリー
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ベレンの塔

海からやってくる船に対する監視塔(要塞)の役割も持つため川沿いに建てられている
- 正式名称は「サン・ヴィセンテの塔」
- インド航路の発見を記念して建てられた監視塔
- 「マヌエル様式 × ムデハル様式」が採用されている(マヌエル様式の詳細については後述してます)
用語メモ
ムデハル様式とは、イスラム教とキリスト教それぞれの建築様式が融合して誕生したスペインやポルトガルで見られる建築様式。ベレンの塔は、ポルトガルからインドへ行く海の道(航路)の開拓を記念して建てられた、他に類を見ない独特な建物です。
独特な建物と言われる理由は
マヌエル様式(ポルトガル独自の建築様式) × ムデハル様式(他の国ではなかなか見られない建築様式)
このように珍しい建築様式が融合した姿を見ることができるためです!

また、リスボン市街と海をつなぐテージョ川沿いに建てられていることからもわかる通り、敵国からの侵入を防ぐための監視塔としての役割も持っています。
実際に、現在でも塔には砲台が残されています。

「マヌエル様式」とは?

至るところに繊細な彫刻が施されている点がマヌエル様式最大の特徴(ジェロニモス修道院の内部)
マヌエル様式とは、ポルトガルが大航海時代に突入した当時の王様マヌエル1世の名前から取って付けられた、ポルトガル独自の建築様式です。
- 海をモチーフにしたデザイン・装飾
- 外観から内装に至るまで非常に繊細な設計
- ポルトガル王国繁栄の象徴的様式
マヌエル様式は、ポルトガルから多くの船乗りが海に出た大航海時代から流行り始めた建築・芸術様式です。
そのため、船、ロープ、サンゴ、海藻など、海に関するデザイン・装飾をよく見ることができます。

また、”ポルトガルが世界の海の覇権国”であることを表現するために多くの建物で採用されたとも言われています。
世界遺産登録理由

水面に映る姿が美しい「ベレンの塔」
ジェロニモス修道院とベレンの塔が世界遺産登録された理由は、下記の2点に大きく分けられます。
- ポルトガルの発展を象徴する建物が残されている
- 大航海時代のポルトガルの歴史を感じれる
また、今回の世界遺産登録のキーワードは「マヌエル様式」と「大航海時代」です。
理由1:ポルトガルの発展を象徴する建物が残されている

大航海時代の象徴的な建物である「ジェロニモス修道院」の内部
世界遺産登録の対象となっている「ジェロニモス修道院」と「ベレンの塔」は、ポルトガル発展の象徴とも言える建物です。
ポルトガル発展の象徴と言える理由は、ポルトガルが大きく繁栄するきっかけとなった大航海時代に建てられた記念碑だからです!
(大航海時代に関しては、後述の「理由2:大航海時代のポルトガルの歴史を感じとれる」で詳しく解説します)

ポルトガルの船乗りたちは、リスボンの港から次々と大海原へと出港しました。
そして、東南アジア、インド、アフリカなどから貴重な資源・食料を大量に持ち帰ってきたのです。
このような海を介した貿易によって莫大な富を手にしたポルトガルは、ヨーロッパ商業の中心国へと上りつめました。

大航海時代を経て、ポルトガルが海の道を切り開き、世界を代表する大国になった証拠が残されている点が、世界遺産として大きな価値を高めているのです。
理由2:大航海時代のポルトガルの歴史を感じれる

「発見のモニュメント」もまた大航海時代を象徴する建造物の一つ(世界遺産ではない)
世界遺産登録されている「ジェロニモス修道院」と「ベレンの塔」は、ポルトガルが大航海時代に大きな発展をとげた歴史を刻んでいる建物といっても過言ではありません。

1200年代 | ポルトガルのレコンキスタ(イスラム教国からポルトガルを奪還した出来事)が完了。 |
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1400年代 | エンリケ航海王子が天文台や航海士養成学校を設立。 ⇨ポルトガルからの船乗りの航海に向けて準備を進める。 |
1488年 | バルトロメウ・ディアスがアフリカ最南端「希望峰(きぼうほう)」にたどり着く。 |
1498年 | ヴァスコ・ダ・ガマが希望峰を経由してインドに到達。 |
1502年 | ジェロニモス修道院の建築がスタート。 |
1515年 | ベレンの塔の建築がスタート。 |
1520年 | ベレンの塔が完成。 |
1551年 | ジェロニモス修道院の主要部分が完成。 |
1800年代 | ジェロニモス修道院全体が完成。 |
このようにジェロニモス修道院とベレンの塔は、大航海時代真っ只中に建造された、大航海時代を象徴する建物なのです。

ポルトガルは隣国のスペインよりも早くレコンキスタを完了させたため、新たな交易ルートの開拓に費やすための時間が十分にありました。
そこで新たなルートとして目をつけたのが、まだ他のヨーロッパの国々が足を踏み入れていなかった、アフリカ南部を経由したアジア新ルートです!



ポルトガルが開拓した希望峰からアジアへアクセスするルート(イメージ)
大航海時代の地中海は、当時大きな力を持っていた「オスマン帝国」という国が支配している状況でした。
用語メモ
オスマン帝国とは、15〜17世紀に地中海沿岸を支配していたイスラム教の大国。ヨーロッパにも支配領域を拡大していたため、ヨーロッパの国々から恐れられていた。そのため、地中海を経由したアジアへのアクセスにはリスクが伴っていたのです。
特に当時のポルトガルは、アジアで香辛料や宝石を入手することで莫大な富を生み出そうと考えていたため、横取りするような国とは関わらないルートを開拓する必要がありました。

最終的には、下記の人物によってポルトガルは海上の交易ルートを確保することに成功しました。
- エンリケ航海王子:開拓の準備&開拓ルートの選定をした人物(自分自身は航海していない)
- バルトロメウ・ディアス:希望峰を発見し、アフリカ南部からアジアに行けることを報告した人物。
- ヴァスコ・ダ・ガマ:人類史上初めて地中海以外のルートでアジアに到達した人物(到達地点はインドのカリカット)
もし仮にポルトガルが大航海をしていなかったら、ジェロニモス修道院やベレンの塔といって大航海時代の記念碑は建てられていなかったことでしょう。
本日の確認テスト



(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
2級レベル
ジェロニモス修道院やベレンの塔に採用されている建築様式の名称として正しいものはどれか。
- チュリゲラ様式
- マヌエル様式
- ルネサンス様式
- ロマネスク様式
②
答え(タップ)>>1級レベル
「リスボンのジェロニモス修道院とベレンの塔」に関する説明として正しいものはどれか。
- ベレンの塔はポルトガル最古の灯台として使用されていた歴史を持つ。
- 修道院には海をモチーフにした繊細な装飾が施されている。
- ベレンの塔が建つテージョ川周辺にはかつてユダヤ人街が広がっていた。
- 修道院にはブルータイルが美しいモスクが併設されている。
②
答え(タップ)>>※「3,4級」レベルのトレーニングテストは対象外になります。
まとめ

- 世界遺産登録されているのは「ジェロニモス修道院」と「ベレンの塔」の2つ。
- 大航海時代のポルトガルの繁栄を象徴する建造物。
- ポルトガル独自の建築・芸術様式「マヌエル様式」が随所で見られる。
- 修道院入り口には修道院の名前の由来になっている「聖ヒエロニムス」の生涯が描かれている。
- 監視塔の役割を持つベレンの塔の正式名称は「サン・ヴィセンテの塔」。
- エンリケ航海王子とヴァスコ・ダ・ガマによって希望峰経由のアジア新ルートが開拓された。
おまけ:「ジェロニモス修道院とベレンの塔」のプチ観光情報

丘に沿って美しい街並みが広がるリスボン
最寄り都市 | リスボン |
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最寄り空港 | ウンベルト・デルガード空港(ポルテラ空港) |
公用語 | ポルトガル語 |
通貨 | ユーロ |
観光のベストシーズン | 4〜10月 |
時差 | 7時間(サマータイム時は8時間) ※日本の方が7時間進んでます。 |
治安 | 非常に良い |
物価 | 普通(日本とほぼ同じ) |
入場料 | ジェロニモス修道院:10ユーロ ベレンの塔:6ユーロ |
ジェロニモス修道院とベレンの塔があるポルトガルの首都リスボンは、ヨーロッパ屈指の治安の良さを誇る安全な都市です。
街並みが美しく、観光スポットも多いため、ヨーロッパ初旅行の方におすすめできる都市の一つとして挙げられます。

アクセス

リスボン市内を走るトラムはリスボン名物になっている
残念ながら、日本からリスボンへの直行便は就航していません。
そのため、他のヨーロッパの国や中東などを1度経由してアクセスすることになります。
- 日本各空港 [フライト時間:10〜13時間] ⇨ ヨーロッパ各都市(パリ、フランクフルト、他) or 中東各都市(ドバイ、ドーハ、他)[フライト時間:3〜8時間] ⇨ ウンベルト・デルガード空港(リスボン)
- ジェロニモス修道院やベレンの塔はリスボン市内から鉄道利用で約40分ほど。
「ジェロニモス修道院 – ベレンの塔」間は徒歩約15分の距離にあるため、2つ同時に観光することができます。
ただし、ベレンの塔は波が高い場合は塔まで渡ることができないため、天候が落ち着いている日を狙って訪れましょう。
リスボンおすすめ滞在日数は「3泊4日」

リスボンから日帰りで行けるユーラシア大陸最西端「ロカ岬」
- リスボンの旧市街散策は1日あれば十分に周れる
- ジェロニモス修道院とベレンの塔観光に1日余裕を持つ
- リスボン郊外にも魅力的なスポットがたくさん
リスボン(とその周辺)観光におすすめの滞在日数は「3泊4日」です!
リスボンの主要スポットだけを訪れるのであれば2日で十分ですが、他にもリスボン周辺には魅力的なスポットがたくさんあります。
観光スポット名 | アクセス所用時間 | 特徴 |
---|---|---|
シントラ | 片道約1時間 | カラフルな宮殿が見られる撮影スポットとして人気 |
マフラ国立宮殿 | 片道約2時間 | ポルトガル最大級の宮殿 |
ロカ岬 | 片道約2時間 | ユーラシア大陸最西端の岬 |

リスボン市内発のオプショナルツアーなども数多く催行されているため、自身で調べてお気に入りのスポットを周遊してみてください。
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。