こんな方にオススメの内容!
- ロワール渓谷とはなにかを知りたい!
- ロワール渓谷が世界遺産登録された理由が気になる!
- ロワール渓谷の歴史について知りたい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- フランスへの旅行を考えている!
遺産ポイント
- ロワール発展のきっかけとなった建物はマルムティエ修道院
- 国王シャルル7世のロワール移住を機に城の建設ラッシュ開始
- シャンボール城のみ単独で世界遺産登録の経歴あり
「ロワール渓谷」のプロフィール
登録名称 | シュリー・シュル・ロワールからシャロンヌまでのロワール渓谷 |
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登録年 | 2000年登録(2017年:範囲変更) |
所在国 | フランス |
登録ジャンル | 文化遺産(文化的景観) |
登録基準 | (i)(ii)(iv) |
備考 | 構成資産の一つ「シャンボール城」は1981年に単独で世界遺産登録 |
そもそも「ロワール渓谷」とは?
川のほとりに建つ美しい「アゼ・ル・リドー城」
ロワール渓谷とは、フランスの首都パリの南西約110kmに位置するロワール川流域です。
流域には、1000年以上も前から築かれ始めた様々な城や庭園が点在しています。
- シュリー・シュル・ロワールからシャロンヌまで:「シュリー・シュル・ロワール」という都市から「シャロンヌ」という都市までに点在する城や庭園が世界遺産の対象
- ロワール渓谷:全長約1,000kmに及ぶロワール川流域(世界遺産登録範囲は約200kmの流域)
なんと歴代の城の数は130以上にも及び、現在のロワール渓谷でも非常に多くの城や庭園を見ることができます。
またロワール渓谷には、シノン、オルレアン、トゥールといった歴史ある街が点在し、広大なブドウ畑も広がっているため、現在はフランスを代表する一大観光エリアになっています。
ロワールに多くの城が築かれた理由
ロワールに多くの城が築かれた理由は、大きく下記の3つに分けられます。
- ローマ帝国時代(約1700年前)にロワールで盛んに行われたキリスト教の布教
- 貴族の間で競うように行われた城の建築ラッシュ
- 貴族の「都会⇨自然」への住居の移動
上記3つに着目しながら、ロワールの歴史をたどってみましょう。
372年 | キリスト教最高の役職に就くマルティヌスという人物によってトゥールの街にマルティヌス修道院が建てられる。 |
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10世紀 | 地方に暮らす貴族たちがロワールの土地を開拓し、多くの城を建て始める。 |
15世紀初頭 | 城が豪華な宮殿へと改築される。 |
1427年 | 国王の城が大都市からロワールへと移ったことで、その後の歴代の国王はロワールに城を建てる文化が根付く。 |
16世紀 | 都会を離れて優雅な暮らしを望む貴族たちが、大小様々な城を建て続ける。 |
ロワールに多くの城が築かれるきっかけとなった出来事は、ロワール地方にキリスト教が伝わってきたことです。
マルティヌス修道院を皮切りに、ロワール地方の街に多くの教会や城が築かれていとなったきました。
その後、ロワールなどの地方に暮らす貴族たちは、自分たちの城の美しさを競うようにして、次々と豪華な城や宮殿を築いていったのです。
ロワールに多くの城や宮殿が築かれた15世紀ごろ、ヨーロッパでは「ルネサンス」と呼ばれる美しさへの追求が素晴らしいと評価される時代に入ってました。
すると、ルネサンス時代を過ごした貴族たちは、自分たちの住まいをこぞって豪華な城や宮殿へと改築していったのです。
さらに、15世紀初頭のフランス国王シャルル7世が、ロワールのシノン城に住まいを移したことをきっかけに、その後の歴代の国王もロワールに自分たちの城を築く文化が定着していきました。
用語メモ
シャルル7世とは、15世紀に存在したヴァロワ朝という国の第5代国王。イギリスとの戦い(百年戦争)の際にはジャンヌダルクに救われオルレアンを奪還し、フランス北東部の街ランスで国王になる儀式(戴冠式)を行なった。ルネサンスの時代を経て16世紀になると、自然に満ちた優雅な暮らしを求めた多くの貴族たちがロワールに城を築いていきました。
このように、ロワールは約1700年前から多くの歴史的な出来事を経て、徐々に多くの城が築かれていったのです。
世界遺産登録理由
ロワール渓谷が世界遺産登録された理由は、大きく下記の3点に分けられます。
- 雄大で美しい城がいくつも見られる
- 文化の交流や様々な出来事の舞台になった歴史を持つ
- 周囲の自然に調和した景観が残されている(文化的景観)
理由1:雄大で美しい城がいくつも見られる
城内で家具や芸術コレクションが見られる「シュヴェルニー城」
世界遺産登録理由の1つ目は、ロワール渓谷に雄大で美しい城がいくつも見られることです。
前述の「そもそも「ロワール渓谷」とは?」で解説したように、全長約1,000kmのロワール渓谷には、130以上もの城や庭園が点在しています。
世界の他の地域を見ても、1つの地域にここまで多くの城が点在している例は無く、まさにロワールを象徴する景観です。
また、城の数だけでなく、城そのものの美しさや建築技術の高さも大きく評価されています。
ちなみに、ロワール渓谷に点在する城の多くがルネサンスという建築様式が採用されています。
このルネサンスが採用された歴史も世界遺産登録に大きく関わってくるのです(理由は後述してます)。
理由2:文化の交流や様々な出来事の舞台になった歴史を持つ
世界遺産登録理由の2つ目は、ロワール渓谷が文化の交流や様々な出来事の舞台になった歴史を持つことです。
【文化交流の一例】
- イタリアで誕生したルネサンス文化がロワールにも取り入れられた
- フランス人作家バルザックの作品『谷間の百合』などの舞台となった
- イギリスの画家ターナーによってロワール渓谷の美しい景観が描かれた
【歴史舞台の一例】
- 百年戦争などヨーロッパ史を揺るがす戦いの舞台
- 知識や美を求めるルネサンス時代の繁栄の象徴的な地域
- 宗教の考えにとらわれない人間らしい世界(近世啓蒙主義時代)へと移った舞台の一つ
かつて多くの戦いの舞台にもなったロワール渓谷は、城だけではなく多くの要塞も築かれました。
しかし、戦いが終わってからは、要塞を改築して貴族が暮らす優雅な城へと改築されていったのです。
このように、多くの城が築かれた理由にはヨーロッパの重要な歴史が絡んでおり、城の建築後には文化や芸術に大きな影響を与えていったのです。
理由3:周囲の自然に調和した景観が残されている(文化的景観が認められた理由)
世界遺産登録理由の3つ目は、ロワール渓谷の周囲の自然に調和した景観が高く評価されたためです。
「ロワール = フランスの庭」
このように称されるほど、ロワールは自然の景色が美しいことで知られています。
そんな美しい自然環境に、美しく優雅な城が点在しているという、自然と文化が融合した景観は多くの人々を魅了してきました。
このように、自然景観をうまく活用した土地開発や人間の力によって自然をより美しく見せる景観づくりは、文化的景観という表現で高く評価されます。
(文化的景観の詳細は、こちらの記事で解説してます)
構成資産(主な城)
世界遺産『シュリー・シュル・ロワールからシャロンヌまでのロワール渓谷』は、21の城や庭園で構成されています。
【ロワール渓谷にある主な城】 | |
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シャンボール城(詳細) | ロワール渓谷最大規模の城 |
シュノンソー城(詳細) | 川に架かるように建てられたデザインが特徴的 |
アンボワーズ城(詳細) | 様々な建築・造園様式が混在 |
ユッセ城(詳細) | 多くの著名人が関わって建築 |
シノン城 | ジャンヌ・ダルクも利用した名城 |
ヴィランドリー城 | 広大な美しい庭園が魅力 |
アゼ・ル・リドー城 | 水面に映る逆さ城が美しい |
シュリー・シュル・ロワール城 | 要塞の面影を残すお堀が特徴的 |
ブロワ城 | 城内から望むロワール渓谷のパノラマを楽しめる |
アンジェ城 | かつて多くのローマ人が住み着いた要塞を改築 |
シュヴェルニー城 | 貴重な芸術コレクションが見られる左右対称の城 |
ショーモン城 | 約1,000年の歴史を誇るロワール地方初期の古城 |
ソミュール城 | 小高い丘に建つ正四角形のフォルムが美しい城 |
ランジェ城 | 当時をイメージした家具が置かれた部屋が点在 |
クロ・リュセ城 | レオナルド・ダ・ヴィンチをテーマにしたイベントを多く開催 |
世界遺産登録されている主な城の位置
シャンボール城
フランス・ルネサンス様式の最高傑作「シャンボール城」
- 数あるロワールの城の中で最大規模の大きさ
- フランス版ルネサンス様式の最高傑作
- 1981年には一足早く単独で世界遺産登録
シャンボール城は、かつてのフランス国王フランソワ1世によって建てられたロワール渓谷を代表する巨大な城です。
用語メモ
フランソワ1世とは、約500年前(ヴァロワ朝時代)にフランスの王だった、芸術に強い興味関心を持っていた人物。フランスを芸術大国にしようと各国から様々な芸術家をフランスに連れて、多くの建築物や芸術作品を残させた。シャンボール城は、フランスが芸術大国へと上り詰める際にフランス・ルネサンス様式で建てられた城です。
ロワールにある他の城とは違い、一足早く1981年に単独で世界遺産登録されました。
その後、2000年にロワールの他の城も世界遺産登録されたことから、シャンボール城は吸収されるような形で『シュリー・シュル・ロワールからシャロンヌまでのロワール渓谷』の構成資産の1つになりました。
シュノンソー城
川にかかるアーチが美しい「シュノンソー城」
- 財務長官の邸宅として建造
- シェール川にかけられた5連続のアーチが特徴的
- 女性たちの愛憎劇の舞台
シュノンソー城は、ロワール地方を流れるシェール川にかけられるように設計された美しい城です。
その城のたたずまいが”水辺で羽を休める白鳥”にたとえられるように、美を追求して建てられました。
もともとは現在よりも質素な造りでしたが、歴代の王妃たちによって美しい姿へと改築されていきました。
また、歴代の城の居住者が女性だったこともあり、数多くの女性たちによる愛と憎しみのドラマが誕生しました。
城内部はギャラリーとして公開され、華やかな舞踏会が開催されることもありました。
アンボワーズ城
複数の建築様式が見られる「アンボワーズ城」
- 歴代のフランス国王が過ごした城
- 丘の上に築かれていた砦を城へと改築
- 複数の建築様式が見られるのが特徴
アンボワーズ城は、フランスを芸術大国へと押し上げたフランソワ1世を含む、歴代のフランス国王が過ごした名城です。
もともと砦が築かれていた建物を改築して城が建てられたため、ロワール川を見渡す高台というロケーションにあります。
歴史上、何度も改築が行われた結果、ゴシック、フランボワイヤン、ルネサンスなど様々な建築様式が混在している点が特徴です。
用語メモ
フランボワイヤンとは、ゴシック様式が多く採用された時代の後期に流行した建築様式。語源が「炎のような」という意味があるように、まるで炎が燃え盛っているように見えるデザインが特徴的。庭園はフランスで初めてイタリア風のレイアウトが採用されており、この庭園スタイルはフランス式庭園の始まりとされています。
ユッセ城
ディズニー映画『眠れる森の美女』の城のモデルにされた「ユッセ城」
- ディズニー映画『眠れる森の美女』のモデルとなった城
- 各国の有名建築家など多くの人物が関わった
- 城の起源は木造の要塞
ユッセ城は、約1,000年前に建造された木造の要塞を起源とする、ロワール渓谷にある数ある城の中でも特に古い歴史を持つ城です。
15世紀頃から、廃墟となっていた木造要塞を城に改築する動きが起こり、その後約200年にわたって増改築が繰り返されました。
【ユッセ城の特徴】
- 複数の白い壁と青い屋根の塔を持つ
- 庭園はヴェルサイユ宮殿の庭園を手がけたル・ノートルの設計
- レオナルド・ダ・ヴィンチによって手掛けられた2重らせん階段がシンボル
ちなみに、ユッセ城はディズニー映画『眠れる森の美女』に出てくる城のモデルにされました。
さらに、眠れる森の美女を書いたフランスの詩人シャルルペローは、ユッセ城の中で作品を書いたのです。
世界遺産登録範囲変更の理由
1981年に他の城よりもいち早く世界遺産登録された「シャンボール城」
世界遺産『シュリー・シュル・ロワールからシャロンヌまでのロワール渓谷』は、これまでに2度の世界遺産登録範囲の変更が行われています。
2000年 | 『シュリー・シュル・ロワールからシャロンヌまでのロワール渓谷』の世界遺産登録と同時に、1981年に単独で世界遺産登録されていた『シャンボール城』がロワール渓谷の構成資産の城の一つとして取り込まれた。 |
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2017年 | 数カ所の城の登録範囲が広くなった。 |
2000年の1度目の変更は、厳密には範囲の変更というよりも、『シャンボール城』と『シュリー・シュル・ロワールからシャロンヌまでのロワール渓谷』という2つの世界遺産が吸収合併した形になります。
続く2017年は、シュノンソー城などいくつかの城の登録範囲が不明確だったものを明確にしました。
範囲を明確にした結果、東京ディズニーランド約14個分の広さが加わり、全体で約86,000ha(東京23区より一回り大きい広さ)の広さに定められました。
このように、文化財の追加登録や保護範囲の直しが図られることで、世界遺産登録後に範囲が調整し直されるケースはよくあります。
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3,4級レベル
1981年に単独で世界遺産登録された城の名称として正しいものはどれか。
- シャンボール城
- シュヴェルニー城
- アンボワーズ城
- シュノンソー城
①
答え(タップ)>>2級レベル
15世紀に自分が暮らす宮殿を都市からロワールのシノン城に移した人物名として正しいものはどれか。
- フランソワ1世
- ルイ14世
- シャルル7世
- アンリ1世
③
答え(タップ)>>1級レベル
世界遺産『ロワール渓谷』に関する説明として正しいものはどれか。
- ロワール発展のきっかけとなった出来事は、4世紀にトゥールの街に「マルティヌス修道院」の建造。
- アンボワーズ城の起源は木造の要塞。
- ロワール川の水質汚染の問題が深刻化したため一時危機遺産リストへの登録が提案された。
- ロワール渓谷に点在する城の多くがイタリアから伝わってきたロマネスク建築様式が採用されている。
①
答え(タップ)>>まとめ
- ロワール地方発展のきっかけとなった建物は、トゥールにあるマルティヌス修道院。
- フランス国王シャルル7世がロワールのシノン城に住まいを移すと、他の国王もロワールに城を築く文化が定着。
- ロワール地方に点在する城の多くがルネサンス様式の建築を採用。
- ロワール地方は百年戦争、近世啓蒙主義時代へと移り変わる象徴的な場所。
- 美しい自然と文化が融合した姿は文化的景観として高く評価されている。
- 世界遺産『ロワール渓谷』の構成資産は21の城。
- シャンボール城は1981年に単独で世界遺産登録の経験がある。
おまけ:「ロワール渓谷」のプチ観光情報
拠点となる都市 | トゥール、オルレアン |
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最寄り空港 | パリ・シャルル・ド・ゴール国際空港 |
公用語 | フランス語 |
通貨 | ユーロ(1EUR = 約155円) |
観光のベストシーズン | 5〜9月 |
時差 | 8時間(サマータイム時は7時間) ※日本が8時間進んでます。 |
治安 | 良い |
物価 | 少し高い(日本の約1.3倍) |
ツアー相場 | 20,000〜50,000円(ツアー詳細はこちらから) |
入場料(シャンボール城) | 16EUR(約2,500円) |
営業時間(シャンボール城) | 09:00〜17:00 |
休業日 | 年末年始 |
ビザ | 不要 |
観光拠点となる街の一つトゥールにも空港はありますが、就航本数が少なく利用しずづらいため、パリからバスや鉄道を利用して訪れる行程が一般的です。
また、軽犯罪よく起こる首都のパリに比べて、郊外に位置するトゥールやオルレアンは昼夜問わず治安が安定しているため安心して滞在できます。
アクセス
日本からパリへの直行便は就航しています。
パリ到着後、ロワール観光の拠点となる街トゥール、またはオルレアンへは鉄道やバスを利用してアクセスすることができます。
航空会社:日本航空(JAL) JL45
フライト時間:14時間30分
乗車時間:1時間13分
乗車時間:42分
乗車時間:35分
徒歩時間:約5分
ちなみに、シャンボール城はロワール観光の拠点となるトゥール、オルレアンの2つの街の中間に位置するため、シャンボール城を訪れれば他の城観光もスムーズにできます。
ホテル情報
- 観光拠点となるトゥール、オルレアンに多くのホテルが点在
- 城によっては近くにホテルが完備されている
- 1〜2箇所の城観光であればパリからの日帰り観光も可能
1つでも多くの城を観光したい場合は、ロワール観光の拠点となるトゥール、またはオルレアンのホテルに宿泊するのがおすすめです。
2都市とも比較的街の規模が大きいため、安宿から高級ホテルまで幅広く揃っています。
反対に、あまり時間が無く1〜2つ城観光ができれば十分という方は、パリからの日帰り観光も可能です。
パリのホテルで連泊しつつ、1日だけロワールに出かけるプランを検討してみてください。
また、せっかくなら世界遺産の城の近くで宿泊する体験をしてみるのもおすすめです。
シャンボール城やアンボワーズ城の近くには中世の雰囲気ただよう素敵なホテルがあるため、もしお金にも時間にも余裕のある方は、一生の思い出になる城近くの滞在を楽しんでみてください。
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- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。