こんな方にオススメの内容!
- なぜ白川郷・五箇山の合掌造り集落が世界遺産に登録されたのか理由が気になる!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- 日本の伝統的家屋の建築様式に興味関心がある!
- 次の旅行先の候補地を探している!


遺産ポイント
- 世界遺産に登録されているのは「萩町」「相倉」「菅沼」の3つの集落!
- 「大家族制度」「結」など当時の住民同士の共同生活を伝える集落の伝統と文化!
- 「ウスバリ」「平入り・妻入り」など合掌造り独特の建築様式が魅力!
- ドイツ人建築家のブルーノ・タウトが合掌造りの集落を絶賛!
「白川郷・五箇山の合掌造り集落」のプロフィール
登録名称 | 白川郷・五箇山の合掌造り集落 |
---|---|
登録年 | 1995年 |
所在国 | 日本(岐阜県 / 富山県) |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (iv)(v) |
「伝統・産業」視点から見る集落の繁栄



”修行の場”としての集落の始まり

白川郷と五箇山の近くには、「白山」という神聖な山があります。
白山は古くから神様が宿る霊峰とされていたため、白山へお祈りをするために多くの人が白川郷・五箇山付近を訪れてました。
次第に訪問者が増え、「修験道(しゅげんどう)」という山にこもって修行をする文化が育まれていったのです。


ちなみに現在見られる集落は、12〜17世紀に建てられたものと考えられています。
13世紀にはこの地に「浄土真宗」が広まり始め、布教のために道場などの施設も建てられ始めました。

「結」などの独自の社会制度の誕生

山々に囲まれていわゆる”陸の孤島”と化していた白川郷・五箇山では、近隣の街との協力ができない分、住民同士で協力し合う文化が強く根付いていきました。
この協力し合う文化の具体例として、「結」という独自の社会制度がありました。


現代で言うところの「会社」のような組織ではなく、生活の維持のために住民同士が力を合わせて働く私的な組織です。
このように他の街からは閉ざされた環境だからこそ、住民たちの強い絆が生まれたのです。
ちなみに白川郷の集落と五箇山の集落は、距離的には決して近くなかったものの、3つの集落に沿って流れる「庄川」によって結ばれていたため、1つの文化を形成していたと言われています。
「大家族制度」による産業の繁栄

急勾配な場所が多く平坦な敷地が少ないのが集落の特徴
前述の「「結」などの独自の社会制度の誕生」と関連してきますが、白川郷・五箇山では少数で生活するよりも、住民同士協力しあって暮らしていくことが望ましいとされていました。
そのため現代の「1家族1家屋」とは違い、「1家屋に10〜30人」が集団で暮らす「大家族制度」が採用されていたのです!
この大家族制度にするメリットは以下の通りです。
- 移動しなくても家屋内で多くの労働力が手に入る!
- 産業面において一度に多くの生産をすることができる!
- 雨風や雪などによる自然環境のトラブルが起きてもすぐに助け合える!

また当時の白川郷や五箇山で生産されていた主な産業は以下の通りです。
- 養蚕(ようさん)
- 和紙
- 塩硝(えんしょう)
そしてこれらの産業をしやすいように家屋の作りにも工夫を凝らしていました。


農村地帯の産業というと、真っ先に「稲作」が思いつきますよね。
しかし白川郷や五箇山の土地は、田畑を作るのに適した平坦な土地の確保が十分にできなかったのです。
そのため広い平坦な土地を使用する必要がなく、家屋でも十分に仕事ができるような産業を選択したのです。



「建築」の視点から見る集落の特徴



似ているようで異なる3つの集落の特徴

白川郷の集落を一望できる「天守閣展望台」からの眺め
白川郷・五箇山にある世界遺産に登録された集落は3つに分けられます。
それぞれの集落は共通点を持ちつつも異なる点もあるので、その詳細を見ていきましょう!
萩町(おぎまち)集落
- 59楝の合掌造りが世界遺産に登録(3つの集落の中で最多)
- 「平入り」の入り口
- 屋根に煙抜きがない
- 土間部に床が張られている
相倉(あいのくら)集落
- 20楝の合掌造りが世界遺産に登録
- 3つの集落の中で最も北に位置する
- 平地が少ないため石垣によって敷地を平にしている
- 屋根に煙抜きがある
菅沼(すがぬま)集落
- 9楝の合掌造りが世界遺産に登録
- 富山県と岐阜県の県境に位置する
- 「妻入り」の入り口
- 屋根に煙抜きがある
「平入り」と「妻入り」の違いのイメージ図は下記の通りです。

参考文献:https://bunka.nii.ac.jp/suisensyo/shirakawago/MAINTEXT/outline-fig1-j.html
また煙抜きの設計がされていなければ煙が屋内に充満してしまいますが、一方で煙が部材を腐りにくくさせるメリットもあります。
自然環境に適した家屋の工夫

白川郷と五箇山地域は日本有数の豪雪地帯として知られています。
また年間の雨量も比較的多く、白川郷の荻町にいたっては時折強い風が吹くこともあり、自然環境に左右されやすい地域です。


集落の屋根の角度は「45〜60度」とかなり急勾配に造られています。
そのため積雪対策はもちろん、雨が降っても水はけが良く環境に適した造りとなっているのです!

「ウスバリ」という独特の建築様式

「小屋組」+「軸組」、さらに間に「ウスバリ」を使って境界線をつくることにより
急勾配な屋根であっても十分に支えられて、雪が降り積もっても重みに耐えられる設計になっているのです。
また小屋組部分は養蚕の生産でも用いられていて、上部を「ソラアマ」下部を「アマ」と言います。

産業の生産性を上げるための床の工夫

白川郷・五箇山にある家屋の床の面積は、一般的な家屋と比べて広く取られています。
その理由は大きく分けて下記の2点です。
- 集落の名産の一つである塩硝の生産では床の下の穴に雑草と蚕糞と土を混ぜて数年間保管しなければならないため十分な広さが必要になる!
- 「大家族制度」が取られているため居住スペースという意味でも10〜30人が居座れる広さが必要だった!

「ブルーノ・タウト」も驚く唯一無二な景観

ライトアップされた雪化粧の白川郷
ドイツ人建築家である「ブルーノ・タウト」は、日本の伝統的な建築に心を寄せられて数多くの日本の建築に関する書籍を出してました。
そして彼が日本に滞在していた「1933〜36年」の間に、この合掌造りの集落にも訪れていました。
そして彼が合掌造りの集落の風景を見て残した言葉が下記になります。
これらの家屋は、その構造が合理的であり、論理的であるという点においては、日本全国でまったく独特の存在である。

要するに、彼は日本全国でいろんな日本伝統の建築を見てきたが、この合掌造りだけは日本のどこにも同じようなものが存在しない独特な景色であると評価したのです!
彼のこの感動した言葉をきっかけに、合掌造りの集落はまたたくまに世界に伝えられていきました。

本日の確認テスト



(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3, 4級レベル
「1933〜36年」の間日本に滞在し、日本の建築に関する著書を出したヨーロッパの建築家として正しいものを選びなさい。
- ブルーノ・タウト
- ポール・ブリュナ
- ヤン・レツル
- ル・コルビュジエ
①
答え(タップ)>>2級レベル
雪による屋根の重みにも柔軟に対応する仕組みにする際に用いられる叉首台の名称として正しいものを選びなさい。
- ソラアマ
- エンタシス
- ウスバリ
- ピロティ
③
答え(タップ)>>1級レベル
萩町(白川郷)の家屋の造りの特徴として誤っているものを選びなさい。
- 屋根に煙抜きがない。
- 土間部に床が張られている。
- 「妻入り」の入り口に設計されている。
- 59楝の合掌造りが世界遺産に登録されている。
③
答え(タップ)>>「白川郷・五箇山の合掌造り集落」のまとめ

- 「荻町(白川郷)」「相倉(五箇山)」「菅沼(五箇山)」の3つの集落が世界遺産に登録されている!
- 孤立した環境がゆえに「大家族制度」や「結」などの住民同士が支え合う文化が育まれていった!
- 稲作がしづらい土地のため代わりに養蚕・和紙・塩硝などが主要産業になった!
- 「ウスバリ」という設計を加えることで雪や雨にも耐えられる家屋を実現させている!
- 白川郷・五箇山の集落の風景を見たドイツ人建築家の「ブルーノ・タウト」は伝統的な建築様式を絶賛した!
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。