こんな方にオススメの内容!
- エローラ石窟寺院とはなにかを知りたい!
- エローラ石窟寺院が世界遺産登録された理由が気になる!
- どのようにして石窟寺院が誕生したのか歴史ついて詳しく知りたい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- インドへの旅行を考えている!
遺産ポイント
- エローラには大小34の洞窟型寺院が点在
- 仏教、ヒンドゥー教、ジャイナ教の3宗教が共存した証拠
- 「カイラーサナータ寺院」はエローラ最大規模の石窟寺院
「エローラ石窟寺院」のプロフィール
登録名称 | エローラ石窟寺院群 |
---|---|
登録年 | 1983年 |
所在国 | インド |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (i)(iii)(vi) |
そもそも「エローラ石窟寺院」とは?
『エローラ石窟寺院群』とは、インド西部のデカン高原に位置する、岩を彫って形作られた”石窟寺院(せっくつじいん)”と呼ばれるお寺です。
石窟寺院は南北約2kmに及んで築かれており、数百年にも及ぶ寺院造営によって現在は34もの石窟寺院を見ることができます。
そして、エローラ石窟寺院最大の特徴が、下記の3つの宗教の聖地として築かれた点です。
- 仏教
- ヒンドゥー教
- ジャイナ教
3つの宗教が造営した石窟寺院が共存
一般的には、一つの国・地域に対して1つの宗教に関する施設が残されることが多いです。
一方で、エローラ石窟寺院は世界的にも珍しく、異なる3つの宗教のお寺が同一地域に混在して残されているのです。
このように、異なる宗教のお寺が壊されることなく残っていることから、エローラ地域では宗教間での争いは無く、異なる宗教であっても平和に共存していたと推測されています。
仏教の石窟寺院
- 南側の1〜12窟が仏教寺院
- 3〜8世紀頃に造営され、石窟寺院としては初期のもの
- 奥行きがある寺院が多く非常に広い内部空間が特徴的
仏教の石窟寺院はエローラで最初に築かれた最も歴史の長い寺院です。
最初期のもので、なんと1800年も前までさかのぼります。
他のヒンドゥー教やジャイナ教の寺院と比べると簡素なつくりではあるものの、奥行きがあり、内部空間が非常に広い点が特徴です。
その内部空間には、仏塔を安置して礼拝する「チャイティヤ窟」や、仏倚座像(ぶついざぞう)と呼ばれる台座に座った像がおさめられた巨大な仏龕(ぶつがん)があります。
用語メモ
仏龕(ぶつがん)とは、仏像や仏教の教えがまとめられた書物をおさめるために作られた小さな部屋・空間。その他の内部空間は、食料などの貯蔵庫や人々が暮らすためのアパートのような役割を持っていると考えられています。
ヒンドゥー教の石窟寺院
ヒンドゥー教最大規模の石窟寺院「カイラーサナータ寺院」
- 13〜29窟のヒンドゥー教寺院
- 7〜9世紀頃に造営
- 3つの宗教の中で最多の石窟寺院を持つ
ヒンドゥー教の石窟寺院は、他の2つの宗教の石窟寺院と比べて規模と数が最大です。
エローラにある石窟寺院のおよそ半数はヒンドゥー教のものになります。
このように、エローラで多くのヒンドゥー教寺院が見られることからもわかるように、古代から現代にかけてインドではヒンドゥー教が最も大きく繁栄した宗教と言えるのです。
数あるヒンドゥー教の石窟寺院の中でも、特に規模の大きいものとして有名なのが「カイラーサナータ寺院」です。
【カイラーサナータ寺院の特徴】
- 岩山全体を彫り進めて造営されたエローラ最大の石窟寺院(幅:46m、奥行き:80m、高さ34m)
- ヒンドゥー教の神様シヴァに捧げるためにつくられた
- 完成までに約100年を費やす
- 屋根や柱には古代インドの歴史的書物(マハーバーラタ、ラーマーヤナ)の世界が描かれている
カイラーサナータ寺院が造営された当時のインドの平均寿命は30歳前後と考えられているため、カイラーサナータ寺院造営は数世代にも及ぶ大規模プロジェクトだったのです。
当時は鑿(のみ)や槌(つち)といった簡易的な彫刻技術しかなかったにもかかわらず、ここまで大規模な彫刻作品を完成させたことから、当時のヒンドゥー教の技術水準は非常に高かったと考えられています。
なお、カイラーサナータ寺院の謎や歴史についてもっと深く知りたい方は下記の書籍で解説されているので、ぜひ一度読んでみてください。
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ジャイナ教の石窟寺院
- 30〜34窟のジャイナ教寺院
- 9〜10世紀頃に造営
- 完成度の高い天井画や繊細な彫刻が特徴
エローラで最後に造営されたと考えられているのが、ジャイナ教の石窟寺院です。
合計35寺院と、数としては他の2つの宗教の寺院には及ばないものの、完成度の高い天井画や繊細な彫刻など、石窟寺院の美しさとしては他の2つの宗教に全く劣りません。
ジャイナ教を信仰する当時の人々の多くが商業を営んでいました。
そのため、資金面に余裕があり、他の宗教よりもより美しい石窟寺院の造営を行うことが可能だったのです。
今でも良質な状態で石窟寺院が見られる理由
数百年前に造営された石窟寺院が現在でも良質な状態で見られる要因として、主に下記の2点が考えられています。
- 異なる宗教間での争いが起こらなかったため寺院が破壊されることもなかった。
- 長年、石窟寺院近くに人々が住みついていたため寺院が忘れ去られることなく定期的な補修が施された。
一般的な歴史的建造物の場合、宗教間の対立や建造後の管理不足によってどんどん廃れていってしまう傾向があります。
一方で、エローラの石窟寺院は異なる宗教が平和に共存していた点や、定期的に人々による手入れが施されていたことが考えられているため、造営当時に近い姿をとどめることができたのです。
世界遺産登録理由
『エローラ石窟寺院群』が世界遺産登録された理由は、大きく下記の3点に分けられます。
- 良質な状態で多くの石窟寺院が残されている
- 古代インドの社会・生活を示した貴重な遺構
- 3つの宗教が共存した証拠を残す
理由1:良質な状態で多くの石窟寺院が残されている
世界遺産登録理由の1つ目は、保存状態の良い石窟寺院が数多く残されていることです。
前述の「そもそも「エローラ石窟寺院」とは?」でも触れたように、エローラの石窟寺院は最も古いもので約1800年前にさかのぼります。
ここまで古い建造物が、彫刻の細部にいたるまで良質の良い状態で残されていることは極めて珍しいです。
理由2:古代インドの社会・生活を示した貴重な遺構
世界遺産登録理由の2つ目は、古代インドの社会・生活を示す遺構が残されていることです。
各宗教の石窟寺院は、それぞれ下記のような建造目的があったとされています。
- 仏教寺院:エローラ地域で生活するための住居や貯蔵庫。神様へお祈りを捧げるための空間確保。
- ヒンドゥー教寺院:シヴァ神へ捧げるための巨大な彫刻作品の制作。
- ジャイナ教寺院:神様へお祈りを捧げるための空間確保。自分たちの技術力の高さの証明。
このようにエローラ石窟寺院は、当時の各宗教の社会や生活を想像することができる貴重な資料となっているのです。
理由3:3つの宗教が共存した証拠を残す
世界遺産登録理由の3つ目は、異なる3つの宗教がうまく共存した証拠となる貴重な寺院であるためです。
一般的に、異なる宗教が同じ地域を生活拠点にしようとした場合、自分たちの宗教とは関係のない建物は取り壊す、または改修する傾向があります。
しかしエローラの石窟寺院は、3つの宗教が入り混じっているにもかかわらず、各宗教の寺院が壊されることなく良い状態で残されているのです。
このように複数の宗教建造物が混在していることから、下記の2点がわかってきています。
- 古代インドの社会は寛容的で多文化共生の考えがあった。
- 現在のインドの大半がヒンドゥー教であるが、古代では宗教の信者があまり偏っていなかった。
つまり、エローラ石窟寺院を見ることで古代インドの宗教観を知ることができるのです。
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3,4級レベル
エローラに石窟寺院を造営した宗教として誤っているものはどれか。
- イスラム教
- ジャイナ教
- 仏教
- ヒンドゥー教
①
答え(タップ)>>2級レベル
完成までに約100年を費やしたエローラ最大の石窟寺院の名称として正しいものはどれか。
- ブラーフマー寺院
- カイラーサナータ寺院
- グリシュネーシュワル寺院
- カンヘーリー寺院
②
答え(タップ)>>1級レベル
『エローラ石窟寺院群』の説明として誤っているものはどれか。
- 内部空間の広い寺院には仏倚座像がおさめられた巨大な仏龕がある。
- 10世紀以降に描かれたと考えられる女性の壁画が多く見つかっている。
- 南北約2kmに34もの石窟寺院が造営されている。
- 古代インドの歴史的書物「マハーバーラタ」や「ラーマーヤナ」の世界が描かれているものもある。
②
答え(タップ)>>まとめ
- 『エローラ石窟寺院群』とは、仏教、ヒンドゥー教、ジャイナ教の3つの宗教の聖地とされる、岩を彫って築かれた寺の総称。
- 仏教の石窟寺院はエローラで最初に築かれた最も歴史の長い寺院で、仏倚座像がおさめられた巨大な仏龕がある。
- ヒンドゥー教の石窟寺院は他の2つの宗教寺院と比べて規模と数が最大。
- 「カイラーサナータ寺院」は数あるエローラ石窟寺院の中で最大規模。
- ジャイナ教の石窟寺院は最も新しく造営され、天井画や繊細な彫刻が施されている点が特徴。
- 異なる宗教間での争いが無く、エローラ周辺に人が定住していたため良い状態で石窟寺院が残された。
- 評価ポイントの1つ目は、保存状態の良い石窟寺院が数多く残されている点。
- 評価ポイントの2つ目は、古代インドの社会・生活を示す貴重な遺構が残されている点。
- 評価ポイントの3つ目は、エローラの石窟寺院が異なる3つの宗教がうまく共存した証拠となる点。
おまけ:「エローラ」のプチ観光情報
エローラ観光の拠点「アウランガーバード」にあるタージマハルに似た観光名所
拠点となる都市 | アウランガーバード |
---|---|
最寄り空港 | アウランガーバード空港 |
公用語 | ヒンディー語 |
通貨 | インドルピー |
観光のベストシーズン | 10〜4月 |
時差 | 3時間30分 ※日本が3時間30分進んでます。 |
治安 | 普通(スリなどの軽犯罪には要注意) |
物価 | 安い(日本の1/4ほど) |
ビザ | 必要(アライバルビザ、e-visaあり) |
エローラ石窟寺院観光の拠点となるアウランガーバードは、ニューデリーやムンバイなどの主要観光都市と比べると観光客は少なめです。
そのため、観光地価格設定があまり行われておらず、安価でインド観光を楽しむことができるのが魅力です。
一方で、アウランガーバードはインド有数の大都市であり、決して治安が良いとは言えないため、夜間の一人歩きや手荷物管理には十分気をつけましょう。
アクセス
残念ながら、日本からエローラの観光拠点となるアウランガーバードへの直行便は就航していません。
一般的には、ニューデリー or ムンバイを経由してアクセスすることになります。
航空会社:全日空(ANA) NH829
フライト時間:9時間40分
航空会社:エア・インディア AI499
フライト時間:1時間5分
乗車時間:1時間10分
移動時間:5分
アウランガーバード発のエローラ行きバスは1時間に1〜2本出ているため、比較的アクセスが容易です。
なお、エローラのチケット売り場は、エローラ最大の石窟寺院として知られる「第16窟カイラーサナータ寺院」の近くにあります。
なお、エローラへのアクセス詳細については、実体験をもとに下記の記事で解説してます。
合わせて読みたい!【アジャンター&エローラ石窟寺院のアクセス | おすすめオプショナルツアー紹介あり】訪問経験者がわかりやすく解説!アウランガーバードのホテル情報
- ホテル集中エリアは「アウランガーバード駅周辺」と「バススタンド周辺」
- 市内中心部は2〜3つ星の安価な宿泊施設が中心
- 市内中心部から少し離れると4〜5つ星ホテルが点在
エローラ方面のバスが出ている市内中心部のバススタンド周辺には、比較的安価な宿泊施設が点在しています。
もしエローラ観光の利便性を重視し、少しでも宿代を浮かせたい場合は、バススタンド周辺の宿泊がおすすめです。
一方で、サービスの充実度などホテルにこだわりを持ちたい場合は、市内中心部から少し離れた4〜5つ星ホテルを狙いましょう。
2名1室あたり1泊1万円前後で宿泊できるため、日本ではなかなか体験できない贅沢な時間を過ごすことができます。
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。