こんな方にオススメの内容!
- なぜ「平等院」と「宇治上神社」が世界遺産に登録されたのか理由が気になる!
- 「平等院」と「宇治上神社」の建造理由を知りたい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- 京都への旅行を考えている!
遺産ポイント
- 平等院の建造目的は”極楽浄土”を表現するため。
- 宇治上神社は日本最古の神社建築として知られている。
- 「鳳凰堂」など国宝が数多く点在している。
「平等院」と「宇治上神社」のプロフィール
文化財名 | 平等院(びょうどういん) | 宇治上神社(うじがみじんじゃ) |
---|---|---|
登録名称 | 『古都京都の文化財』の構成資産の一つ | |
登録年 | 1994年 | |
建造年 (推定) | 1052年 | 1060年 |
建造人物 | 藤原頼通(ふじわらのよりみち) | 不明 |
所在地 | 京都府宇治市 | |
登録ジャンル | 文化遺産 | |
登録基準 | (ii)(iv) |
平等院とは?
国宝「鳳凰堂」を背後から見た姿
一言で表現すると下記になります。
極楽浄土の世界を表現した唯一無二の寺院
「極楽浄土」とは、死後の清らかな世界を指します。
つまり、自分が亡くなった後に訪れる天国のような世界です。
平等院はこの極楽浄土の世界を表現するために建造されたです!
仏教の考えの一つに「末法思想(まっぽうしそう)」という教えがあります。
【末法思想とは?】
- 仏教の正しい教えは次第に衰えて、やがて滅びてしまう。
- お釈迦様の教えも死後2000年で正しく行われなくなってしまう。
- そろそろ末法(終わり)が訪れるに違いない。
- せめて死後は極楽に行きたい。
- 極楽に対する憧れを持つ人々が増える。
なお、仏教をつくったお釈迦様の死後2000年というのは、ちょうど平等院が建てられた1052年にあたります。
ちなみに平等院が建てられる以前は、平等院を建てた藤原頼通(ふじわらのよりみち)の父の藤原道長(ふじわらのみちなが)の別荘がありました。
この別荘を頼通が寺院へと改築して、平等院が建てられたのです。
宇治上神社とは?
宇治上神社の入り口に建つ鳥居
一言で表現すると下記になります。
謎に満ちた平等院の守護神社
- 謎:建てられた年代・人物・目的が明確にわかっていない
- 守護神社:平等院を守るために建てられた(かも)
まず宇治上神社が建てられた目的は、向かいに建つ平等院を守るためとされています。
このような推測が立てられた理由としては、「鎮守神(ちんじゅがみ)」と呼ばれる神様をまつっているからです。
また宇治上神社が建てられた年は、使用されている木材の古さから推測したところ、平等院が建てられた後の1060年(平安時代)とされています。
建てられた年から判断しても、平等院と深く関係していることがわかります。
平等院が世界遺産登録された理由
鳳凰堂内部へは翼廊(よくろう)から入ることができる(※入場制限あり)
平等院が世界遺産に登録された理由は、大きく分けて下記の2点です。
- 特徴的な寺院建築・造園
- 貴重な作品が数多く残る
前述の「平等院とは?」で何度も出てきたように、”浄土”というワードこそ、平等院が世界遺産登録される大きな要因になったことは間違いありません。
さらに、浄土に関わる建物・作品などが世界的に見ても貴重で、厳重に保存を行い後世に語り継がれるべきものである点も、世界遺産登録の大きな要因になってきます。
”極楽浄土”を表現した寺院の建築、庭園の造園方法
松の木越しに見える鳳凰堂は平等院のシンボル
平等院は死後の世界”極楽浄土”を表現した寺院として初めて建てられました。
従来までの寺院建築とは大きく異なり、その後の寺院建築に大きな影響を与えた点は、紛れもなく世界遺産登録の理由に該当します。
極楽浄土の世界の表現に大きく関わってくるものが、下記の2つです。
- 鳳凰堂:極楽浄土の世界の宮殿をイメージして建てられた
- 浄土式庭園:「阿弥陀如来」がいる建物(鳳凰堂)を配置している
極楽浄土を表現する上で欠かせない存在が、浄土の世界の仏様「阿弥陀如来(あみだにょらい)」です!
この阿弥陀如来の像が置かれている建物を「阿弥陀堂」といい、平等院で阿弥陀堂にあたる建物が「鳳凰堂」です。
阿弥陀堂 = 鳳凰堂
そして、阿弥陀如来の像のある鳳凰堂が建てられている庭園が浄土式庭園と呼ばれます。
鳳凰堂(ほうおうどう)
正面から見ると池に反射する鳳凰堂の全体像が見れる
- 建物自体が国宝
- 平安時代に建てられてから一度も消失していない
- 鳥(鳳凰)が翼を広げた姿に見えることが名前の由来
- 屋根の両端に鳳凰の像がそえられている
前述の「”極楽浄土”を表現した寺院の建築、庭園の造園方法」で解説した通り、浄土の世界を表現する上で欠かせない建物が鳳凰堂です。
鳳凰堂は主に下記の3つから構成されています。
- 建物中央に位置する「中堂(ちゅうどう)」
- 左右の翼部分にあたる「翼廊(よくろう)」
- しっぽの部分にあたる「尾廊(びろう)」
この3つから構成される形が、寺院建築で他に類を見ない独創的な形状であると評価されているのです!
さらに鳳凰堂の中堂には、現存する唯一の仏像である「阿弥陀如来坐像」が置かれています。
この阿弥陀如来坐像の存在が、鳳凰堂の価値をより高めているのです。
そして鳳凰堂の最も驚くべき特徴は、平安時代に建てられてから一度も再建されていないことです!
つまり、1000年以上前に建てられた姿を今も見ることができるのです!
なお、鳳凰堂は庭園の西側に建てられています。
西側に建てられた理由は、浄土の世界では西に阿弥陀如来が創り上げた極楽浄土が広がっていると信じられているためです。
浄土式庭園
阿字池越しに見る鳳凰堂
- 庭園全体で浄土を表現している
- 西に「鳳凰堂」東に「阿字池(あじいけ)」を配置
- 周辺の自然を庭園の一部として取り入れている(借景)
前述の「”極楽浄土”を表現した寺院の建築、庭園の造園方法」で解説した通り、浄土式庭園最大の特徴は阿弥陀如来のいる寺院が配置されている点です。
さらに、平等院周辺の自然を庭園の景観の一部として取り入れている「借景(しゃっけい)」も特徴的です。
平安時代・浄土教の傑作が多く集まる
平等院鳳凰堂の名前の由来にもなっている「鳳凰の像」
平等院は、平安時代・浄土の美術の傑作を多く見ることができる点でも評価されています!
【主な傑作】
- 壁扉画(へきひが):鳳凰堂内部の扉に描かれた絵
- 鳳凰の像:鳳凰堂の屋根の両端に建つ
- 雲中供養菩薩像(うんちゅうくようぼさつぞう)の彫刻:鳳凰堂内部の壁に点在する浄土を表現した彫刻
平等院に点在する作品の多くが国宝に指定されています。
国宝の多い点も、世界遺産としての価値をより高めているのです。
なお作品の多くは、平等院内の凰翔館(ほうしょうかん)という施設で展示されています。
作品を間近で見たい場合は、ぜひ凰翔館にも足を運んでみてください!
宇治上神社が世界遺産登録された理由
国宝に指定されている宇治上神社の「本殿」
宇治上神社が世界遺産登録された大きな要因は下記です。
日本最古の神社建築が見られる
【神社建築の特徴】
- 屋根に妻(つま)を持つ
- 壁が土以外で作られている
- 瓦(かわら)を使用していない
- 装飾が派手すぎない
- 床が高い
現在、日本にある神社でよく見られる建築方法の元祖が宇治上神社であるとされています。
つまり、宇治上神社は全国の神社建築に大きな影響を与えたのです!
神様が宿る本殿や、人々が参拝する拝殿はともに国宝にも指定されており、宇治上神社に現存する建物が歴史的に見ても、建築面で見てもいかに貴重であるかがわかります。
また宇治上神社の境内には、「宇治七名水」の一つ「桐原水(きりはらみず)」という湧水が現存します。
神社の背後にそびえる大吉山から流れ出る水が水源となっており、桐原水は7つの湧水で唯一今でも見られる湧水です。
「宇治七名水」の一つ「桐原水(きりはらみず)」が沸いている姿を見ることができる
以上のことから宇治上神社は、建てられた当時の姿を現代でもよく見ることができる、唯一無二の神社であると言えます。
ちなみに宇治上神社は、下記の3名をまつっている神社です。
- 菟道稚郎子(うじのわきいらつこ)
- 応神天皇(おうじんてんのう)
- 仁徳天皇(にんとくてんのう)
中でも菟道稚郎子は、現在の「宇治(うじ)」という表記になる前の「菟道(うじ)」に由来する人物として有名です。
さらに「菟道」という漢字には「兎(ウサギ)」が入っていることから、宇治上神社はウサギと関係している神社として注目を浴びています。
平等院と宇治上神社だけでは世界遺産登録されなかった!?
本殿よりも遅れて鎌倉時代に建てられた「拝殿」も国宝に指定されている
平等院と宇治上神社は、単独で世界遺産に登録されているわけではありません。
あくまでも、『古都京都の文化財』の構成資産の一部として世界遺産登録されています。
前述したように、もちろん平等院と宇治上神社自体にも歴史的、建築的に価値があります。
ただし、この価値が他の京都の文化財を含めた上で、総合的に見て価値のあるものと判断されていた場合は、単独での世界遺産登録は難しかったかもしれません。
反対に、下記に該当すれば単独で世界遺産登録されていた可能性があります。
- 他の文化財とは大きく異なる歴史的な価値がある。
- 他の文化財とは一線を画すような特徴がある(世界最古、世界最大など)
- 京都に平等院と宇治上神社以外に現存する文化財が無い。
なお、今回の平等院と宇治上神社のように、他の文化財と合わせて世界遺産登録されるケースを「シリアル・ノミネーション・サイト」と言います。
シリアル・ノミネーション・サイトに関しては下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ併せて読んでみてください。
合わせて読みたい!【シリアルノミネーションサイトとトランスバウンダリーサイトの違いとは?】世界遺産の登録範囲のポイントをわかりやすく解説!本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3,4級レベル
浄土の世界の宮殿をイメージして建てられた建造物の名称として正しいものはどれか。
- 三宝院
- 鳳凰堂
- 夢殿
- 金色堂
②
答え(タップ)>>2級レベル
宇治上神社の特徴として正しいものはどれか。
- 拝殿を持たない
- 日本最古の神社建築
- シカを守護神としている
- 末法思想の影響を強く受けている
②
答え(タップ)>>1級レベル
平等院の庭園に用いられている特徴として正しいものはどれか。
- 借景
- 枯山水
- 回遊式庭園
- 神仙思想
①
答え(タップ)>>まとめ
- 平等院は極楽浄土の世界を表現した唯一無二の寺院。
- 平等院建造のきっかけには仏教の考えである「末法思想」が大きく関わっている。
- 宇治上神社は「建造目的」「建築者」「建築年」が明確にわかっていない。
- 平等院の守護神社の役割として宇治上神社が建造されたと考えられている。
- 「鳳凰堂」は極楽浄土の世界の宮殿をイメージして建てられた。
- 「阿弥陀如来」は浄土の世界の仏様。
- 平等院は一度も再建されていない。
- 宇治上神社は日本最古の神社建築として知られている。
なお、今回解説した平等院と宇治上神社を含む『古都京都の文化財』の詳細に関しては、下記の記事で解説しています。
ぜひ併せて読んでみてください!
合わせて読みたい!【古都京都の文化財】世界遺産登録理由&構成資産の社寺全てをわかりやすく解説!参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。