こんな方にオススメの内容!
- ダマスカスが世界遺産登録された理由が気になる!
- 中東の歴史に興味がある!
- 危機遺産リストに記載されてしまった原因を知りたい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
遺産ポイント
- イスラム世界初の国「ウマイヤ朝」の首都として繁栄
- 「ウマイヤ・モスク」など多くの歴史的建造物が残る
- シリア内戦の影響で危機遺産リストに記載
「ダマスカス」のプロフィール
登録名称 | 古都ダマスカス |
---|---|
登録年 | 1979年 |
所在国 | シリア |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (i)(ii)(iii)(iv)(vi) |
備考 | 危機遺産に登録されている(詳細は後述で) |
そもそも「ダマスカス」ってどんな街?
ダマスカス市街の夜景
「ダマスカス」とは、約1400年前に誕生した世界初のイスラム教の国の首都として繁栄した、世界最古の都市の一つです。
ダマスカスの特徴としてよく使われるワードが、下記の2つです。
- 世界初のイスラム教の国の首都
- 世界最古の都市
ダマスカスの歴史
ダマスカスは、”世界最古の都市の一つ”に挙げられるように、非常に歴史の長い都市として知られています。
紀元前10世紀(約2900年前) | 後にダマスカスとなる都市の誕生。 |
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紀元前4〜1世紀(約2300年前) | 古代ギリシャとローマによって度々支配され、徐々にキリスト教の都市としての機能が備わっていく。 |
7世紀半ば | イスラム教の国ウマイヤ朝の誕生&ダマスカスが首都となる(ウマイヤ朝については後述してます) |
8世紀 | ギリシャやローマに支配されていた期間に建てられた建物がイスラム風の建物に改築され始める。 |
9〜12世紀 | イフシード朝、ファーティマ朝、セルジューク朝など様々なイスラムの国に支配され続ける。 |
16〜20世紀初頭 | イスラム最強の国であるオスマン帝国に支配される。宮殿や公共施設が建てられるなど、ダマスカスの市街地がどんどん整備されていく。 |
20世紀初頭 | フランスの統治下に置かれる。 |
20世紀半ば | シリアが独立し、ダマスカスがシリアの首都になる。 |
特に、ダマスカスが都市として大きな繁栄を遂げた時代が、イスラム教初の国家として誕生したウマイヤ朝の首都となった7世紀ごろです。
現在ダマスカスで見られるいくつかの歴史的建造物は、ウマイヤ朝の首都として機能していた時代に建てられたものです。
ウマイヤ朝とは?
ウマイヤ朝時代に建てられた「ウマイヤ・モスク」
ウマイヤ朝とは、国王ムアーウィヤによって661年に誕生したイスラム世界初の国です。
つまり、ウマイヤ朝は世界で一番最初にイスラム教を信仰した国なのです!
そして、ウマイヤ朝の首都として選ばれたのがダマスカスです。
ウマイヤ朝の支配領域は、ワリード1世が国王だった時代に最大でスペインなどがあるイベリア半島からイランまで広がりました。
さらに、学校やモスクなどの施設が多く整備されました。
世界遺産登録理由
ダマスカスのシンボル的存在の「ウマイヤ・モスク」
ダマスカスが世界遺産登録された理由は、大きく下記の3点に分けられます。
- イスラム最初期の街並みを残す
- 世界の主要都市の一つとして繁栄した歴史を刻む
- 貴重な歴史的建造物が多く残る
理由1:イスラム最初期の街並みを残す
数ある世界の都市の中でも特に古い街並みを残すダマスカス
前述の「ウマイヤ朝とは?」でも触れたように、ダマスカスはイスラム世界初の国であるウマイヤ朝の首都として機能しました。
つまり、ダマスカスはイスラム最初期の街並みが残されているのです。
もともとダマスカスはキリスト教の聖地としてつくられた街であるため、今なおキリスト教関連の施設が残されています。
その後、イスラム教の国が支配してからイスラム教関連の施設が数多く建てられたことにより、キリストとイスラムの文化が混在する独特な街並みが形成されました。
このような、他の都市ではなかなか見られない宗教が混在した街並みも大きな評価を受けています。
理由2:世界の主要都市の一つとして繁栄した歴史を刻む
ダマスカスには「バザール」と呼ばれる商業施設がいくつもある
ダマスカスは、サウジアラビアにあるメッカやメディナに次ぐ、イスラム教の重要な巡礼地として発展した歴史を持ちます。
さらに、メソポタミア(現在のイラク周辺)、アラビア半島、地中海といった、世界でも最重要と言える地域を結ぶ交通の中心地としても大きく繁栄しました。
このように、ダマスカスは世界の主要都市の一つとして繁栄してきた歴史を持つのです。
なお、ダマスカスは歴史上、様々な国に支配され続けましたが、どの国の支配下にあっても商業の街として繁栄を続けてきました。
実際に、ダマスカスの人口は年々増えていき、常に活気のある都市として世界に君臨し続けました。
理由3:貴重な歴史的建造物が多く残る
現在のダマスカスには、なんと125もの歴史的建造物が残されています。
中には、イスラム教のモスクの原型となったウマイヤ・モスクなど、世界を代表する貴重な建造物を見ることができます。
なお、ダマスカスを代表する歴史的建造物の多くは、ダマスカス市街を大きく取り囲む城壁内に点在しています。
そんな歴史的建造物の宝庫であるダマスカスの建造物から、特に重要で有名なものをピックアップして紹介します。
ウマイヤ・モスク
世界最古のモスクとして知られるウマイヤ・モスクの中庭
- イスラム最古の現存モスク
- キリスト教関連の建物からイスラム建築に改築された
- 随所でビザンツ文化(キリスト教の建築様式)が残されている
ダマスカスを象徴する建造物と言っても過言ではないのが、ウマイヤ・モスクです。
ウマイヤ・モスクは715年に完成し、現在でも見られるイスラムのモスクとしては世界最古と考えられています。
完成当時はキリスト教の教会として使われていましたが、ダマスカスを支配する国が
キリスト教の国 ⇨ イスラムの国
このように変わったことで、ウマイヤ・モスクもイスラム関連施設に改築されたのです。
3本のミナレット(塔)や八角系のドームを持つ点は、まさしくイスラム建築です。
一方で建物の装飾には、金箔やガラスのモザイク画など、所々でビザンツ建築(キリスト教の建築様式)の特徴も見られます。
ダマスカス城壁
- もともとはキリスト教の国ローマが築いた城壁
- 13世紀に建て直しが行われる
- 城壁内に旧市街が広がる
世界遺産「古都ダマスカス」の登録範囲は、主にダマスカスの城壁内を指します。
一番最初の城壁は、ローマがダマスカスを支配していた時代(紀元前1世紀ごろ)に建造されました。
一方で、現在見られる城壁は、13世紀ごろにキリスト教の国のチーム(十字軍)がイスラム教の国が支配していたダマスカスを攻撃してくることを見越して、イスラム教の国が建て直したものです。
現在も城壁内には、前述のウマイヤ・モスクなど、歴史的建造物が多く残されています。
サラディン廟
- イスラム王朝の王様サラディンが眠るお墓
- サラディンはイスラム世界で”英雄”と呼ばれた重要人物
サラディン廟とは、12〜13世紀にかけて繁栄したイスラムの国アイユーブ朝を建国した王様サラディンが眠るお墓です。
サラディンは、イスラムの土地を奪いに攻めて来たキリスト教のチーム(十字軍)を破り、国土を守ったとしてイスラム世界の英雄と呼ばれている重要人物です。
そんなイスラムの英雄が眠る非常に重要なお墓が、ダマスカスの旧市街に今なおあるのです。
なぜダマスカスは危機遺産?
残念ながらダマスカスは、2013年に危機遺産リストに記載されてしまいました。
(危機遺産については、こちらの記事で詳しく解説してます)
危機遺産リストに記載されてしまった理由は、シリア内戦により多くの建物が被害にあってしまったためです。
このように国内の治安が悪化したり、周辺国の紛争に巻き込まれてしまうと、遺産を保護する目的も含めて危機遺産登録される傾向があります。
ちなみに、シリア内戦によってダマスカスだけでなく、他のシリアの世界遺産も全て2013年に同時に危機遺産リストに記載されてしまいました。
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
2級レベル
イスラム世界初の国として誕生し首都をダマスカスに置いた国の名称として正しいものはどれか。
- サファヴィー朝
- ウマイヤ朝
- マムルーク朝
- アイユーブ朝
②
答え(タップ)>>1級レベル
「古都ダマスカス」が危機遺産登録された理由として正しいものはどれか。
- 内戦により建物が大きな被害を受けた。
- 旧市街周辺で地下鉄の建設計画が上がった。
- 排気ガス等の汚染により環境や景観が損なわれた。
- 地盤沈下により建物の倒壊の懸念がある。
①
答え(タップ)>>※「3,4級」レベルのトレーニングテストは対象外になります。
まとめ
- ダマスカスは世界最古の都市の一つとして挙げられる。
- イスラム世界初の国「ウマイヤ朝」の首都として大きく繁栄。
- 歴史的な背景からキリスト教とイスラム教の文化が混在する。
- 「ウマイヤ・モスク」「サラディン廟」など多くの歴史的建造物が残る。
- シリア内戦の影響で危機遺産リストに記載されてしまった。
おまけ:「ダマスカス」のプチ観光情報
最寄り空港 | ダマスカス国際空港 |
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公用語 | アラビア語 |
通貨 | シリア・ポンド |
観光のベストシーズン | 10〜4月 |
時差 | 7時間(サマータイム時は6時間) ※日本の方が7時間進んでます。 |
治安 | – 内戦中 – |
物価 | 不明(内戦中のため) |
ビザ | 必要 |
残念ながら、現在は内戦中のためダマスカスへの渡航は難しいです。
とはいえ、数ある中東の都市の中でもダマスカスは特に見どころが多いため、1日でも早く渡航できる日が来るよう願いましょう。
アクセス
残念ながら、日本からダマスカスへの直行便は就航してません。
一般的には、他の中東各都市を経由してアクセスすることになります。
- 日本各空港 [フライト時間:約11時間] ⇨ 中東各都市(ドバイ、ドーハ、イスタンブール他) [フライト時間:約5時間] ⇨ ダマスカス空港
- 現在はシリア国内で内戦が起きているため就航スケジュールに変動あり。
なお、空港からダマスカス中心部へは車で約30分ほどで着きます。
治安は大丈夫?ダマスカス観光の注意点
現在シリアは内戦中のため、残念ながら一般の観光客の渡航はできません。
現地の日本大使館などの従業員も含め、シリア国外に出るよう退避勧告が出ているほどです。
(外務省の「海外安全ホームページ」上でシリアの情勢等を確認することができます)
加えて、シリアと国境を接する国(トルコ、レバノン、ヨルダンなど)でも、渡航に関する危険情報が出ているため、シリア近隣の国に渡航する際も十分に気をつけましょう。
ちなみに、2010年ごろまでは一般の観光客も渡航できるほど治安は安定していました。
このような観光旅行ができる日が1日でも早く来ることを願うばかりですね。
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。