こんな方にオススメの内容!
- なぜ「バチカン市国」が国全体として世界遺産に登録されたのか理由が気になる!
- サン・ピエトロ大聖堂の魅力や建造の歴史を知りたい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- バチカン(イタリア)への旅行を考えている!
遺産ポイント
- バチカン市国は国全体が世界遺産に登録されているカトリック教会の聖地。
- サン・ピエトロ大聖堂の建造に大きく貢献した人物は「ブラマンテ」と「ミケランジェロ」。
- ベルニーニにより大聖堂の装飾や広場がつくられた。
「バチカン市国」のプロフィール
登録名称 | バチカン市国 |
---|---|
登録年 | 1984年 |
所在国 | バチカン(イタリアの国土の中) |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (i)(ii)(iv)(vi) |
備考 | 国全体が世界遺産に登録されている唯一の遺産 |
バチカン市国の世界遺産登録の特徴
バチカン市国の世界遺産登録の特徴は、大きく分けて下記の2点になります。
- 全世界遺産の中で唯一”国全体が世界遺産”に登録されている
- 別の世界遺産の中にある世界遺産(重複世界遺産)
バチカン市国は、国の総面積が「0.44㎢」と世界最小の国です。
さらに人口は約800人と、こちらも世界最少の人口です。
つまり、面積や人口という数値で見ると国の規模が非常に小さいため、世界遺産登録範囲が国全体をカバーすることになったのです!
さらに驚くべきことに、なんと世界遺産「バチカン市国」は他の世界遺産の中にあるのです!
他の世界遺産とは「ローマ歴史地区」です。
(正式名称は、「ローマ歴史地区、教皇領とサン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂」)
バチカン市国は世界遺産「ローマ歴史地区」の中に位置する
バチカン市国は、イタリアの首都ローマの市内中心部に位置しています。
そして、旧市街を中心としたローマは街全体が世界遺産に登録されています。
そう、この世界遺産に登録されている範囲内に、バチカン市国は位置しているのです!
ローマとバチカンの世界遺産登録理由は、簡単に言うと下記のような違いがあります。
- ローマ:ローマ市内に点在する貴重な文化財に価値がある。
- バチカン:”キリスト教の聖地”として重要な役割がある。
なお、バチカン市国が世界遺産に登録された理由は、後述の「世界遺産に登録された理由」で詳しく触れていますので、ぜひ最後まで読み進めてみてください。
世界遺産に登録された理由
ローマの中心を流れる「テヴェレ川」から臨むバチカンの夕景
バチカン市国が国全体で世界遺産に登録された理由は、大きく分けて下記の3点になります。
- 世界を代表する建造物の数々
- カトリック教会(キリスト教)の聖地として発展
- 様々な美術・建築技術が施された傑作
世界遺産登録理由の詳細は、バチカン市国の歴史をたどることでわかってきます。
1世紀中頃(約2000年前) | イエス・キリスト(キリスト教をつくった人物)の最初の弟子「ペテロ」が死去&バチカンの丘にお墓が作られる。 |
---|---|
4世紀初頭(約1700年前) | コンスタンティヌス1世がペテロのお墓があった場所に寺院の建造を命令。 |
5世紀頃(約1600年前) | 現在の大聖堂のある場所に初めて寺院が建てられる ⇨カトリック教会(キリスト教)の重要な場所となる。 |
19世紀中頃(約150年前) | 国としてイタリアが誕生(現在のバチカンはこのイタリアの中にある)。 |
1929年 | ローマ・カトリック教会の代表とイタリアが話し合い「バチカン市国」が誕生。 |
歴史を見てわかることは、”バチカン市国はカトリック教会(キリスト教)にとって大変重要な場所”ということです。
つまり、バチカン市国とキリスト教カトリックは切っても切り離せない関係なのです!
一言にキリスト教と言っても、下記のように複数のチームが存在します。
- カトリック教会
- プロテスタント教会
- 正教会
そして上記のチームの1つ「カトリック教会」の聖地がバチカン市国ということになります。
互いのチームは決して仲が良いとはいえませんが
「まぁ、俺たちはキリスト教という部分では同じだよね!」
みたいな関係性ではあります。
世界最大規模の大聖堂を持つ唯一無二な建築物群
バチカン市国内には、カトリック教徒にとって重要で壮大な建造物がいくつかあります。
- サン・ピエトロ大聖堂
- サン・ピエトロ広場
- バチカン宮殿
これらの建造物の規模や美しさが、世界遺産登録の理由になっていることは言うまでもありません!
特にサン・ピエトロ大聖堂は、バチカン市国建国に大きく関わる重要な建造物です!
前述の「世界遺産に登録された理由」の歴史で出てきた
”ペトロのお墓があった場所に寺院を建造”
この寺院こそ、サン・ピエトロ大聖堂の起源です!
ミケランジェロの作品「ピエタ像」
キリスト教をつくったイエスとの関わりが非常に強いペテロのお墓が、このサン・ピエトロ大聖堂と同じ場所に位置しています。
つまりサン・ピエトロ大聖堂は、ペテロというキリスト教徒にとって重要な人物の亡き骸が収められているとても神聖な建物なのです!
大聖堂以外にも、世界最大規模の広さを持つ「サン・ピエトロ広場」や、キリスト教徒にとって重要な絵画や銅像が収められている巨大な宮殿「バチカン宮殿」など、他の都市ではなかなか見ることのできない壮大な建造物がいくつも建っています。
世界中のカトリック教徒が集まる聖地としての重要さ
ローマの市街地からバチカン市国を臨む
バチカン市国は、カトリック教徒にとって極めて神聖で重要な場所です。
重要な場所である理由は、主に下記の2点が挙げられます。
- イエス・キリストに関わる宗教関連の建物が残る。
- カトリック教会のトップが国を管理している。
イエス・キリストに関わる宗教関連の建物の例としては、前述の「世界最大規模の大聖堂を持つ唯一無二な建築物群」でも名前が挙がった「サン・ピエトロ大聖堂」などがあります。
大聖堂内でお祈りを捧げるために、世界中にいるカトリック教徒の人々が、わざわざバチカンまで足を運ぶほど神聖な建物です。
ローマ教皇
また、バチカン市国をおさめている人物は、大統領でも総理大臣でもありません。
教皇です!
「教皇」はカトリック教会の専門用語で、トップの位置に立つ人物に与えられる呼び名です。
この教皇の位置に一番最初に立った人物が「ペテロ」です。
そして2013年からは、「フランシスコ」という人物が立っています。
このように、カトリック教会のトップが国をおさめているからこそ、バチカン市国はキリスト教徒、及びカトリック教徒にとって聖地となっているのです。
数多くの建築家・芸術家によってつくられた国
バチカン市国は、”国自体が大きな博物館”と言っても過言ではありません。
それほど、芸術的に優れた国づくりがなされているのです。
特にバチカンの国づくりに大きく貢献したのが、下記の3名です。
- ブラマンテ
- ミケランジェロ
- ベルニーニ
「ブラマンテ」と「ミケランジェロ」は、前述でも度々登場したサン・ピエトロ大聖堂の建造に大きく貢献した人物です。
つまり、カトリック教徒にとって重要且つ神聖な建物は、2人の功績無しには建造されなかったのです。
一方で「ベルニーニ」は、サン・ピエトロ大聖堂の装飾や、大聖堂前の広場などを手掛けました。
つまり、ベルニーニはバチカンの国づくりの総仕上げを行なった人物と言っても過言ではありません。
このようにバチカン市国は、多くの建築家・芸術家によってつくりあげられた”世界最大級の作品”という表現をすることができるのです!
世界遺産に登録されている主な名所
バチカン美術館内にあるシンボルの螺旋階段
前述の「バチカン市国の世界遺産登録の特徴」などで何度も触れているように、バチカン市国は国全体が世界遺産に登録されています。
つまり、バチカンにある建造物全てが世界遺産の登録対象になっているのです!
そしてバチカンにある建造物の多くは、世界中どこを見ても存在しないような唯一無二の建物ばかりです。
スケールの大きさはもちろんのこと、建物の細部まで施された装飾や彫刻は、訪れる人々を常に魅了し続けています。
サン・ピエトロ大聖堂
世界最大規模の大聖堂「サン・ピエトロ大聖堂」
- 何度も増改築が行われてきた世界最大級の大聖堂
- 世界中のカトリック教徒がお祈りを捧げる神聖な聖堂
- 建造されてから約1600年の歴史を持つ
- 「ブラマンテ」「ミケランジェロ」など有名建築家・芸術家によって築かれた
前述の「世界最大規模の大聖堂を持つ唯一無二な建築物群」でも解説した通り、サン・ピエトロ大聖堂はイエス・キリストの一番最初の弟子「ペテロ」が眠るお墓のあった場所に建造された大規模な聖堂です。
そんな聖堂の建造に大きく貢献した人物が、下記の2名です。
- ブラマンテ
- ミケランジェロ
もともとサン・ピエトロ大聖堂は、今ほど大規模ではない寺院から建造が始まっています。
その寺院の老朽化に伴う改築のために呼び出された人物がブラマンテです。
こうして改築工事は、ブラマンテ主導のもと行われました。
「サン・ピエトロ大聖堂」の内部の様子
しかし、改築工事にはなんと約120年もの時間がかかってしまったのです!
- あまりにも大規模、且つ繊細な工事だったため技術力を持つ人員が少なかった。
- 改築に必要な資金が不足し始めた。
- 教皇の考えが定期的に変わり、その度に改築工事に変更が求められた。
当初の予定よりあまりにも長期化してしまったため、改築工事の期間中にブラマンテは亡くなってしまいました。
そして、ブラマンテの跡を継いで改築工事を主導した人物が「ミケランジェロ」なのです!
またミケランジェロ以外にも、下記のような人物達が改築工事、及び装飾に大きく関わりました。
- ラファエロ
- ジュリアーノ
- バルダッサーレ
- カルロ
ちなみに大聖堂の改築工事の際、下記のように主導していた人物によって度々建築様式が変わっていきました。
人物 | 様式 | 特徴 |
---|---|---|
ブラマンテ | 集中式プラン | 上から見ると円形、四角形、五角形などの形をしている |
ミケランジェロ | ||
ラファエロ | ラテン十字型プラン | その名の通り上から見るとキリストの十字の形をしている |
なお、ミケランジェロが亡くなってからも何度も増改築工事が行われ、その度に下記のような流れでプランも変更されています。
- ブラマンテ:集中式プラン
- ↓
- ラファエロ:ラテン十字型プラン
- ↓
- ミケランジェロ:集中式プラン
- ↓
- ミケランジェロ死後:ラテン十字型プラン
なお、サン・ピエトロ大聖堂の建築構造やよくある疑問については、下記の書籍内でイラスト付きでわかりやすく解説されてます。
気になる方は、ぜひ一度手に取って読んでみてください。
- 商品名:歴史がわかる世界遺産イラスト大図鑑
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サン・ピエトロ広場
サン・ピエトロ大聖堂の天井「クーポラ」から見た「サン・ピエトロ広場」
- サン・ピエトロ大聖堂の前に広がる世界最大規模の広場
- 設計担当者は「ベルニーニ」
- 広場を囲うようにして約370本もの石の柱が立ち並ぶ
サン・ピエトロ広場は、その名の通りサン・ピエトロ大聖堂の目の前に広がる広大なスペースです。
この広場を設計した人物は「ベルニーニ」です。
彼がこの広場を設計する上で強く意識したことは下記になります。
はるばる遠くからやってきたカトリック教徒の人々を、教会の母が包み込んで受け入れるような空間を演出したい
上記のような想いがあったため、広場は教会の母が手を広げるイメージで、円形状に広いスペースを設けているのです。
なお、サン・ピエトロ広場全体を一望できるスポットとして有名なのが、サン・ピエトロ大聖堂のクーポラ(半球状の天井)です!
大聖堂内部から階段を登って訪れることができるので、ぜひ一度クーポラからの絶景を眺めてみてください。
バチカン宮殿(バチカン美術館)
バチカン宮殿内にあるラファエロの名画「アテナイの学堂」
- ローマ教皇の住居
- サン・ピエトロ大聖堂と並ぶバチカンのシンボル
- 度重なる増改築によって「シルティーナ礼拝堂」なども建造された
サン・ピエトロ大聖堂に隣接するように建てられているのが、バチカン宮殿です。
現在の宮殿は、主にローマ教皇の住居として使われています。
しかし、歴史上度重なる増改築が行われていたため、下記のような施設も兼ね揃えている巨大建造物となっています。
- バチカン美術館
- システィーナ礼拝堂
- 図書館
中でも「システィーナ礼拝堂」は、バチカンを語る上で欠かせません。
- ミケランジェロ作「最後の審判」が描かれている。
- 主に「旧約聖書」や「新約聖書」に記されている物語が題材となっている。
- 現在はローマ教皇を選ぶ会議の会場として使われている。
システィーナ礼拝堂に描かれている壁画「最後の審判」
「ミケランジェロ」「ボッティチェリ」など、時代を代表するような芸術家たちによって描かれた作品が見れる礼拝堂です。
また、宮殿に隣接するように、広大な庭園も併せ持っています。
なんとこの庭園は、バチカン市国の総面積の約半分も占めているのです!
ちなみに現在の庭園の見学は自由にできず、庭園見学のツアーに参加することが必要になります。
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3・4級レベル
現在はローマ教皇を選ぶ会議の会場として使われている礼拝堂の名称として正しいものはどれか。
- パルテノン
- システィーナ
- アルハンブラ
- ブランカッチ
②
答え(タップ)>>2級レベル
「サン・ピエトロ大聖堂」の建造に関わった人物として誤っているものはどれか。
- ミケランジェロ
- ノートル
- ラファエロ
- ブラマンテ
②
答え(タップ)>>1級レベル
バチカン宮殿内の礼拝堂に描かれている作品の名称として正しいものはどれか。
- 最後の審判
- カナの婚礼
- ヴィーナスの誕生
- 最後の晩餐
①
答え(タップ)>>まとめ
- バチカン市国は国全体が世界遺産に登録されている唯一の遺産。
- イエス・キリストの最初の弟子「ペテロ」が眠る墓の場所に「サン・ピエトロ大聖堂」が建造された。
- 大聖堂の建造に大きく貢献した人物は「ブラマンテ」と「ミケランジェロ」。
- 大聖堂の装飾や広場の建造には「ベルニーニ」が大きく貢献した。
- バチカン宮殿内には「最後の晩餐」が描かれた「システィーナ礼拝堂」がある。
おまけ:「バチカン市国」のプチ観光情報
人口 | 約800人 |
---|---|
最寄の空港 | フィウミチーノ空港(ローマ) |
通貨 | ユーロ |
観光のベストシーズン | 通年 |
時差 | 7時間(東京 – ローマ間) ※日本の方が7時間進んでます。 |
治安 | 非常に良い |
物価 | 日本とほぼ同じ |
世界最小の国バチカン市国には、当然のことながら空港はありません。
バチカンの最寄り空港は、ローマにある「フィウミチーノ空港」になります。
日本からローマへの直行便は、主に東京から就航しています。
【直行便利用の場合】
- 羽田・成田 ⇨ フィウミチーノ空港(フライト時間:約12時間)
【経由便利用の場合】
- 日本の各空港 ⇨ ヨーロッパ各都市(フランクフルト、パリ、他) or 中東各都市(ドバイ、ドーハ、他) ⇨ フィウミチーノ空港(フライト時間:約14〜18時間)
バチカンはイタリアではなく別の国にはなるものの、パスポートの提示など出入国のやりとりは一切ありません。
バチカンが位置するローマは、スリを中心とした軽犯罪が多いため、決して治安が良いとは言えません。
しかし一方でバチカンは、国の至る所で厳重な警備が行われているため、ローマと比べて非常に治安が良いです!
治安が良く、入国が簡単にできることから、バチカンは海外旅行初心者にもオススメできる国と言えますね。
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。