こんな方にオススメの内容!
- なぜ「ティカル遺跡」が世界遺産に登録されたのか理由が気になる!
- 文化遺産ではなく複合遺産として登録された理由を理解したい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- 中米への旅行を考えている!
- 古代遺跡に興味がある!
遺産ポイント
- ティカルはマヤ文明最大規模の都市!
- ティカルの始まりと終わりは石碑に刻まれている!
- 遺跡と自然(生態系)の保護のために国立公園&世界遺産に指定されている!
「ティカル遺跡」のプロフィール
登録名称 | ティカル国立公園 |
---|---|
登録年 | 1979年 |
所在国 | グアテマラ |
登録ジャンル | 複合遺産 |
登録基準 | (i)(iii)(iv)(ix)(x) |
ティカル遺跡とは
熱帯雨林の中に埋もれた遺跡群
ティカル遺跡を一言で説明すると、『ジャングルの中に築かれた紀元前から存在する都市の遺跡』です!
ティカルは数千年前に現在のグアテマラに存在した都市の名前で、そのかつて存在した都市の建造物が数多く残っているため「都市遺跡」と呼ばれています。
遺跡の保存状態が良い影響もあり、これまで下記のモデルにもされてきました。
- スターウォーズ第一作のヤヴィン第4衛星のロケ地
- 神殿の一部が、東京ディズニーシーにある人気アトラクション「インディ・ジョーンズ・アドベンチャー・クリスタルスカルの魔宮」のピラミッドのモデル
ティカルを語る上で重要なワードが「マヤ文明」です!
マヤ文明は、現在の中米(メキシコなど)を中心に栄えました。
マヤ文明の最大の特徴は、現代にも負けないほどの高度な技術や学問を持っていた点です!
そしてこの文明で誕生した都市の一つがティカルというわけです。
ティカルはマヤ文明に数ある都市の中でも、特に都市の規模が大きいところがポイントです!
ちなみに、「ティカル」はユカテカ語で「水たまりにて」を意味し、17世紀に観光客達が遺跡にあった溜池(ためいけ)を見て名付けたことが由来とされています(諸説あり)。
ティカル誕生と都市形成の歴史
上空から見るとティカルの都市が広大な熱帯雨林の中にあることがわかる
ティカルに人が住み始めたのは、今から約3000年前とされています。
人がティカルに定住してから徐々に街の設備が整えられ、新しい技術もどんどん誕生していきました。
紀元前約11世紀 (約3100年前) | ティカルに人が住むようになる。 |
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紀元前約30年 (約2050年前) | ティカルの都市にマヤ文明の特徴が出てくるようになる。 |
3世紀 (約1800年前) | メキシコ中央高原で栄えた「テオティワカン文明」の影響を受け始める。 |
4世紀 (約1700年前) | ティカルがテオティワカンに征服される&ティカルにテオティワカンに従う王朝が誕生。 |
7世紀 (約1400年前) | 宗教や科学など、独自の文化を根付かせ始める&他のマヤ文明の都市との交流が活発になる。 |
7世紀にマヤ文明同士の都市間での交流が栄えてきたことによって、ティカルに様々な建造物が建てられていきました。
現在見られる都市遺跡の多くが、この時代に建てられたものだとされています!
生活する上で必要な設備が次々と造られ、その影響もあり人口は約6万人にも膨れ上がり、当時のマヤの都市としては最大規模の都市へと発展していったのです!
数ある設備の中でも特に求められたのが、水を供給する灌漑施設(かんがいしせつ)でした。
ティカル周辺には水を確保できるような大きな川が無く、雨水を利用して生活水にする必要があったためです。
ティカル周辺で取れる石は、水が流れ落ちやすい石灰岩質のものばかりだったのです!
そこでティカルの人々は頭を使って、石同士を漆喰で塗り固めることで、水が流れ落ちないようにしました。
現在見られるピラミッドや石畳のほとんどが、この漆喰を塗られた状態にあります。
都市として機能し始めたティカルですが、しかし9世紀頃(約1200年前)に衰退を迎えることになるのです!
謎に包まれているティカルの衰退&遺跡の調査開始
実は、ティカルが衰退した原因はいまだにわかっていないのです!
自然災害、飢餓、都市間での戦争や紛争など、様々な推測がされていますが、現代の研究技術を持っても解明できていないことから、いかにティカルが謎に満ちた都市であることがわかります。
ティカルの都市遺跡からは、数多くの石碑(石に文章が刻まれたもの)が見つかっています。
その見つかっている石碑の中で、「石碑11」という石碑にマヤ暦の日付に相当する「869年」という文字が刻まれていたのです!
この石碑よりも新しい日付が刻まれている石碑が見つかっていないことから、9世紀に衰退したのではないかと推測されています。
なお、ティカルの都市遺跡が発見されたは17世紀のことで、それ以降様々な調査や研究が行われてきました。
17世紀 (約400年前) | スペイン人によって発見される(当時、スペインが中南米の植民地化を進めていたため) ⇨しかし当時の技術ではマヤの文字を解読することができず、なかなか調査が進まなかった。 |
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1839〜1840年 | アメリカの外交官「ジョン・ロイド・ステファンズ」が調査。調査記録をイラストとして残している。 |
1950年 | マヤ文字の解明が大きく進む。 |
1951年 | 屋根全体にマヤ文字が刻まれている「石碑の神殿」が発見された。 |
1955年 | 遺跡の保護と熱帯雨林に生息する動植物の保護を強化するために、グアテマラ政府がティカルを国立公園に指定する。 |
1956年 | ティカル調査のプロジェクトが開始される。 ⇨ティカルが周辺の都市よりも強大な力を持っていたことが判明(少なくとも39人の王様がいた) |
このように20世紀に入ってからは、徐々にティカルの謎が解明され始めていきました。
しかし、現在も発掘調査や文字の解明が進められているものの、まだティカル全体のごく一部とされており、全体像が明らかになるまでにはまだまだかかりそうです。
主な建造物の特徴
ティカルの中心的な建物は下記の2つです。
- ピラミッド型の5つの神殿。
- 南北中央の3箇所に分けられている。
- 度重なる増改築が行われた。
- 中央アクロポリスからは「ア・カカウ王」の墓や埋葬品が発見された。
- 儀式が行われる四角形の空間に2対のピラミッドを1組として形成したもの。
- 囲むようにして数多くの石碑などが配置されている(マヤ文明を知る上で重要な遺跡)。
これらの建物は、「グラン・プラザ」と呼ばれる中央広場を囲むようにして配置されています。
そしてさらに建造物を細かく分けると5つの神殿群に分けることができます!
1号神殿 | 頂上の神殿入り口のジャガーの彫刻がある(ジャガー神殿と呼ばれる)ティカル遺跡で最も有名で人気。 |
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2号神殿 | 屋根飾りのレリーフがあるため「仮面の神殿」と呼ばれている。 |
3号神殿 | 31代の王様が建てたティカル最後の神殿とされる(しかし諸説あり、最後に建設されたのは4号神殿とも言われている)。 多くが土と樹木に覆われているためはっきりとした姿はわからない。 |
4号神殿 | 5つの神殿の中で最も高い72m。 眺望を楽しめる(地上では見ることのできない複数の神殿を見れる)。 3号神殿ほどではないが土と樹木に覆われている。 |
5号神殿 | 4号神殿の次に高い57m。 天井が分厚く5mあるとされる。 |
世界遺産に登録された理由
世界遺産登録名称にもあるように、正式には「ティカル国立公園」として登録されています。
国立公園というワードが入っている理由は、”遺跡”と”自然”の保護を強化するために、グアテマラ政府がティカル一帯を国立公園に指定したためです。
イメージとしては
遺跡(文化遺産要素) × 生態系(自然遺産要素)
このような掛け合わせの世界遺産登録になります。
文化遺産としての価値
ティカル遺跡が文化遺産としての価値を高めている要因は、主に下記の3つが挙げられます。
- 数あるマヤ文明の都市の中でも、特に巨大で良質な状態の都市遺跡が見られる!
- マヤ文明最大規模の都市「ティカル」がかつて存在した証拠を残している!
- マヤ文明の都市の建造を代表するような歴史的な建築物が数多く残っている!
まず、5つの神殿をはじめ、かつて存在したティカルの都市の繁栄を今も目に見える形で残っている点は非常に貴重です。
ここまで良質な状態でマヤ文明の繁栄を見ることができる都市遺跡は、間違いなく世界遺産に登録して保護していかなければなりませんね!
ちなみに、ここまで良質な状態で遺跡が残っている点に関しては、熱帯雨林の中に埋もれていた影響で他の民族に見つかりづらかったことも大きいと考えられています。
さらに、ティカルは他のマヤ文明の都市にも、”都市づくり”という観点で大きな影響を与えたことが考えられています。
このように、単純に歴史的な価値がある建物が多いだけでなく、過去の繁栄や影響力を持っていた時代背景が建物から見てわかる点が大きく評価されたのです!
自然遺産としての価値
ティカル国立公園内に生息している「ホエザル」
ティカルが複合遺産に登録されている点からもわかるように、何も遺跡だけに価値があるわけではありません。
遺跡が存在する熱帯雨林一帯にも自然遺産としての価値があることが認められています。
特に、熱帯雨林に生息する動植物の豊富さが大きく評価を受けています!
- 様々な生物が生息している多様さ(生物多様性)
- 絶滅危惧種に指定されている貴重な生物の生息地
- 「ホエザル」「クモザル」「ナマケモノ」など100種以上の哺乳類
- ジャガーやピューマなどのネコ科動物
- 絶滅危惧種の「メキシコカワガメ」
- 爬虫類や鳥類も豊富
ティカル遺跡のある一帯は、中央アメリカ最大規模の熱帯雨林です。
そのため数多くの動植物が生息し、中央アメリカの自然地帯の中でも特に重要なエリアとなっています。
そんな貴重な自然が残るエリアですが、20世紀に入ると人間が近くに住み着くようになり、森林伐採などの自然破壊が徐々に進みはじめました。
そこで、貴重な一帯を保護するためにも、国立公園の指定や世界自然遺産への登録を目指しはじめたのです!
ティカル遺跡の保護に日本が協力している!?
実は、ティカルにあるとある施設の建設において、日本は約5億5000万円の支援金を送っています。
その施設とは「ティカル国立公園文化遺産保存研究センター」です!
こちらの施設が建設された最大の目的は、ティカル遺跡の保存・研究活動を行うことでした。
ティカル一帯を国立公園に指定したり、世界遺産登録をすることによって保護を強化することには成功しました。
しかし、肝心の研究などを進める施設があまりなかった点に着目した日本側は、グアテマラに無償で支援金を協力することを提案したのです。
この活動により、これまで以上にティカル遺跡の研究が進み、多くの謎に包まれたマヤ遺跡の解明へのきっかけに繋がっています。
また、現在はグアテマラ国民や観光客向けに、ティカル遺跡に関する教育や広報活動も行われています。
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3・4級レベル
神殿などの複合体が南北中央の3つに分かれている建造物の総称として正しいものはどれか。
- カリアティード
- コンプレックス
- アゴラ
- アクロポリス
④
答え(タップ)>>2級レベル
ティカルの最後の日付が記されている石碑として正しいものはどれか。
- 石碑7
- 石碑11
- 石碑18
- 石碑29
②
答え(タップ)>>1級レベル
『ティカル国立公園』の説明として正しいものはどれか。
- 遺跡にも数多くの黒曜石が使われており、遺跡近くでは黒曜石を加工する工場も見つかっている。
- 一帯はホエザルやクモザルなど稀少な動物が数多く生息する中央アメリカ最大規模の熱帯雨林である。
- 1号神殿には屋根飾りのレリーフがあるため「仮面の神殿」とも呼ばれている。
- ニンスティンツと呼ばれる村の跡や貝塚などが数多く発見されている。
②
答え(タップ)>>まとめ
- ティカルはマヤ文明最大規模の都市!
- 「石碑29」はティカルの始まりを、「石碑11」はティカルの衰退を記している!
- 都市遺跡は大きく分けて「アクロポリス」と「コンプレックス」の2つで構成されている!
- 中央アクロポリスからは「ア・カカウ王」の墓や埋葬品が発見されている!
- 「ホエザル」などの哺乳類から絶滅危惧種の動物など生態系に富んでいる!
- 日本の支援金によって「ティカル国立公園文化遺産保存研究センター」が建てられティカルの研究や教育が進んでいる!
おまけ:「ティカル遺跡」のプチ観光情報
ティカル遺跡はグアテマラを代表する世界的観光地です!
世界中から観光客が訪れる場所ということもあり、他の中米の世界遺産と比較すると、割とアクセスは良い方です。
ティカル遺跡までは主に下記の方法でアクセスが可能です。
- グアテマラシティ(首都) [飛行機]⇨ フローレス(ティカル遺跡観光の拠点) [バス]⇨ ティカル遺跡
- グアテマラシティ(首都) [バス]⇨ フローレス(ティカル遺跡観光の拠点) [バス]⇨ ティカル遺跡
「ティカル遺跡」までのアクセス
ティカル遺跡観光の玄関口となる「フローレス」の街並み
下記が日本からティカル遺跡の玄関都市となる「フローレス」までのフライトになります。
- 日本(羽田・成田・関空) ⇨ アメリカ各都市 ⇨ グアテマラシティ ⇨ フローレス[ムンド・マヤ国際空港] (フライト時間:約16時間)
基本的には、上記のルートでのアクセスのみと考えてOKです。
その他の国の都市を経由すると、乗り継ぎ時間が悪くなったり、経由地が1つ増えたりすることがあります。
『グアテマラシティ ⇨ フローレス』間のフライトは比較的多くあるので、国内線の利用に関して困ることはほとんどないでしょう!
もし飛行機ではなく陸路でフローレスへ向かう場合は、グアテマラシティのバスターミナルから、長距離バスを利用してアクセスすることになります。
バスだとフローレスまで「片道10時間」とかなりの大移動になりますが、バスは比較的清潔で座席幅は十分あるので、節約旅行を考えている方にはオススメできます!
ちなみにバスで移動する場合、グアテマラシティよりも隣国のベリーズからの方が、約5時間と半分の時間でアクセスが可能です!(国境を越える国際バス)
フローレスからティカル遺跡までは、基本的には現地のツアーに参加 or シャトルバスを利用してアクセスする形になります。
ツアーやバスの申し込みは、街の各所にあるツアー会社のオフィス、または宿泊施設のデスクなどで申し込みが可能です!
ティカル遺跡周辺のホテル情報
ティカル遺跡観光をする際の宿泊エリアとしては、主に下記の2つに分けられます。
1. ティカル遺跡入り口付近
- 遺跡へ徒歩でアクセスできるため、日の出日の入りなど、状況に応じた遺跡観光を楽しむことができる。
- ただし、ホテルの数はあまり多くなく、設備が充実しているホテルが少ないため、ホテル滞在の満足度は保証できない。
2. フローレス市内
- 遺跡へのアクセスにはツアー参加 or シャトルバス利用をする必要がある(片道約2時間)
- ティカル遺跡周辺と比べるとホテル(2〜4つ星グレード)や飲食店が充実している。
世界的にも人気の観光地ということもあり、比較的宿泊施設は充実しています。
さらにフローレス市内であれば、飲食店やお土産屋なども各所にあります。
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。