こんな方にオススメの内容!
- なぜラパヌイ国立公園(イースター島)が世界遺産に登録されたのか理由が気になる!
- 「なぜモアイが作られたのか」「どのように運ばれたのか」を知りたい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- イースター島(南米)への旅行を考えている!
遺産ポイント
- 「パスクア島」「イースター島」「ラパ・ヌイ島」など様々な呼び方がある。
- モアイ像の石はラノ・ララク火山周辺で採れる柔らかい石が使われている。
- 民族同士の争い「フリ・モアイ」によって多くのモアイ像が倒壊した。
「ラパ・ヌイ国立公園」のプロフィール
登録名称 | ラパ・ヌイ国立公園 |
---|---|
登録年 | 1995年 |
所在国 | チリ |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (i)(iii)(v) |
「ラパ・ヌイ国立公園」とは?
「アフ」と呼ばれる石段の上に立ち並ぶモアイ像
「ラパ・ヌイ国立公園」とは、太平洋に浮かぶ「ラパ・ヌイ」と呼ばれる島にある国立公園を指します。
とはいえ、ラパ・ヌイ島は島全体が国立公園に指定されているため、島そのものを指していると言っても過言ではありません。
- ラパ・ヌイ島:現地の言葉での呼び方
- イースター島:英語名
- パスクア島:スペイン語(ラパ・ヌイ国立公園を持つチリはスペイン語圏)
先住民族を除き、一番最初に島を発見した人物がスペイン人でした。
そして、島を発見した日がちょうど復活祭の日だったのです。
そこでスペイン人はスペイン語で、「パスクア = 復活祭」という意味の島の名前を付けました。
その後世界中で島の存在が知られると、英語名の「イースター島」で認知されるようになり、日本でも「イースター島」が一般的な呼び名になったのです。
モアイ像が作られた目的は?どのように運んだ?
残念ながら、現在でもモアイ像が作られた目的は明確にわかっていません。
ただし、下記の目的で作られた説が最も有力になっています。
部族のリーダーや先祖の霊をあがめるために制作された
上記のような目的であると考えられている証拠に、”モアイ”という名前にもヒントが隠されています。
- モ:未来
- アイ:生きる
つまりモアイ像には、”未来に向けて生きる”という意味が込められていると考えられるのです。
さらに、もう一つモアイ像に関する大きな謎があります。
1体の重さが平均で10〜20tもあるモアイ像をどのようにして運んだのかがわかっていません。
モアイ像に使われている石は、島の東にそびえる「ラノ・ララク火山」周辺で採れる石を使って制作されたと考えられています。
しかし、モアイ像は石切場から数キロも離れた海岸沿いにも立っています。
こんな遠くまで巨大なモアイ像を運ぶことは非常に困難です。
一方で、専門家、研究者、地元民からは、下記のような方法で運ばれたのではないかと声が上がっています。
- いくつもの丸太をモアイの下に敷いて運んだ。
⇨島には丸太運搬に適した木は生えていない。運搬した時の傷が一切残っていない。 - 島に宿る謎の力で運ばれた。
⇨島の伝承の一つ。 - 交互に体を動かして自分で進んだ。
⇨島の伝承の一つ。 - 島にある丈夫な草で縄を作り、モアイに巻いて後ろで支えつつ、左右に揺さぶりながら運んだ。
⇨イースター島の研究者「マジェール」の見解。
様々な説が挙げられる中、最も有力なのが研究者「マジェール」の説でした。
マジェール監修のもと、実際に縄を使ってモアイ像を運ぶ実験を行いました。
すると、縄を使えば機械が無くても少人数での運搬が可能であることがわかったのです!
現在でもモアイの研究は進められていますが、徐々にモアイの謎が明らかになってきています。
なお下記の書籍では、今回解説したモアイの様々な謎をよりわかりやすく簡潔に解説してます。
気になる方は、ぜひ一度手に取って読んでみてください。
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世界遺産登録理由
朝日を浴びるモアイ像たち
ラパ・ヌイ国立公園が世界遺産登録には、下記の2つのキーワードが大きく関わっています。
- モアイ像
- 先住民の文明
なお、島全体が国立公園に指定されていることからもわかる通り、島全体が世界遺産に登録されています。
島全体が世界遺産に登録されるケースは非常に珍しく、いかに島が神聖な場所であるかがわかりますね。
なお世界遺産登録名称に「国立公園」と入っていますが、必ずしも自然遺産だけに適用される名前ではありません。
自然の中に残る貴重な文化財を保護するために、一帯を国立公園に指定して厳重に保護する取り組みも行われているのです。
理由1:先住民が築いた文明の発展の過程が見られる
日没時にみれる幻想的なモアイ像の姿
「モアイ像」に代表される大きな石造を制作していた点からもわかるように、当時島には高度な文明が築かれていました。
このように、高度な文明が存在した証拠が残っていることが、世界遺産登録の大きな評価ポイントになったことは言うまでもありません。
(登録基準に関しては、こちらの記事で詳しく解説してます)
島の文明の始まりは、ポリネシアに起源を持つ長耳族がカヌーに乗ってパスクア島に移住してきたことがきっかけとされています。
用語メモ
ポリネシアとは、現在の太平洋に浮かぶ「ハワイ」「イースター島(パスクア島)」「ニュージーランド」の3つの島を三角形に結んだ地域を指す。そして当時の島の首長である「ホッマッア」のもと、島に集落の形成&モアイ像の制作が開始されたのです。
こうしてその後島の文明は数百年にもわたり発展していきます。
島は最も近い大陸である南米大陸から約3,700kmも離れています。
この途方もない距離に島が位置することから、パスクア島(イースター島)が”絶海の孤島”と言われるゆえんなのです。
ここまで大陸から離れていると、外敵から攻撃される心配がほとんどないため、比較的長く文明を築き続けられたと考えられています。
文明が衰退してしまったとある問題とは、”食糧難”です。
【食糧難が発生した経緯】
- 島はかつて豊富な熱帯雨林に覆われていた。食料にも困らなかった。
- ↓
- 「モアイ像の制作」「集落の形成」「農地の開拓」などのための森林伐採が進む。
- ↓
- 環境破壊によって栄養豊富な土壌が衰え始める。
- ↓
- 作物が育たなくなり食糧難に陥る。
16世紀頃に島の人口は最大になりましたが、食糧を求めて頻繁に争いが勃発するようになっていきました。
さらに当時島には、「長耳族」と「短耳族」という2つの先住民が暮らしていました。
しかし、食糧難をきっかけに2つの民族はぶつかり合うことになったのです。
次第に争いはエスカレートしていき、互いが制作したモアイを倒しあう「フリ・モアイ」が発生しました。
結果的に島の人口は最小で100人ほどになってしまい、文明はほどなく終焉を迎えることになったのです。
理由2:石造の傑作「モアイ」が数多く残っている
帽子を被っているように見える特徴的なモアイ像もある
島の文明の最大の証拠とも言えるのが、やはりモアイ像の存在です。
当時まだ科学的な技術も無い中、ここまで立派な石造が残されている”作品としての美しさ”は、世界遺産登録における大きな評価ポイントになっています。
【モアイ像の特徴】
- 現在島には900体のモアイ像がある。
- 長耳族の「5〜7mのモアイ像」と短耳族の「10mを超える巨大なモアイ像」の2つに分けられる。
- 帽子を被ったような髪型をしているため男性をイメージしたモアイ像が多く制作されたと考えられている。。
- もともとはほとんどのモアイに目が描かれていた(現在は2体のみ)
しかし、18世紀ごろからモアイ像は制作されなくなります。
前述の「先住民が築いた文明の発展の過程が見られる」でも解説した食糧難の影響もありますが、モアイを信仰する文化が無くなった影響も大きいのです。
”モアイを信仰する貴族階級” ⇨ ”島の最高神である「マケマケ神」の化身とされる鳥人「カルト」を信仰する戦士階級”へ
モアイ像の修復に関わった日本のクレーン会社
現在でも転倒しているモアイ像が多く見られる
現在でも立派なモアイ像を見ることができるのは、実は日本の修復支援が大きく関係しているのです!
以前は下記のような原因が重なり、何体ものモアイ像が倒れた状態で放置されてました。
- 部族間の争い(フリ・モアイ)
- チリの大地震
そんな中、ある日イースター島の知事が日本のテレビ番組に出演した際に、下記のような発言を残します。
「クレーンさえあれば倒れたモアイ像を立ち上がらせることができるのに。。。」
この発言を聞いた日本のクレーン会社「タダノ」は修復支援に手を挙げ、実際にイースター島にクレーンを持っていき、15体のモアイ像を立ち上げたのです。
さらに、渡航や支援の費用は全額会社が負担をし、支援の際に使ったクレーンはそのまま島へ寄付されました。
そして寄付されたクレーンは、現在では島の小学校の建設などに使用されているそうです。
そして、イースター島を領土とするチリは日本へのお礼として、日本の宮崎県にモアイ像を復刻しました。
ちなみに、日本の支援によって立てられたモアイは、あの有名な海岸沿いの石の祭壇に並べられているモアイ達です!
この石の祭壇は「アフ」と呼ばれ、島最大の祭壇の名前は「アフ・トンギリキ」と言います。
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3・4級レベル
島の呼び名として誤っているものどれか。
- ラロトンガ島
- パスクア島
- イースター島
- ラパ・ヌイ島
①
答え(タップ)>>2級レベル
モアイ像の制作に使われたとされる石が採れる山の名称として正しいものはどれか。
- ポトシ
- ラノ・ララク
- ヴェスヴィオ
- ナウルホエ
②
答え(タップ)>>1級レベル
『ラパ・ヌイ国立公園』に関する説明として正しいものはどれか。
- ポルトガル人の上陸によってモアイ像の存在が世界に知られた。
- 2つの民族間で「フリ・モアイ」と呼ばれるモアイ像の倒し合いが繰り広げられた。
- 島と島周辺の海を含めて南米初の自然保護区に指定された。
- 像の制作に必要な石が不足したため次第にモアイ像は作られなくなった。
②
答え(タップ)>>まとめ
- 島には「パスクア島」「イースター島」「ラパ・ヌイ島」という3つの呼び方がある。
- 今でもモアイ像の制作目的・運搬方法は分かっていない。
- モアイ像制作の素材はラノ・ララク火山周辺で採れる石が使われている。
- モアイ像は長耳族・短耳族の2つの先住民によって作られた。
- 食糧難が発生した結果、部族間で「フリ・モアイ」が発生し次々に像が倒された。
- 倒されたモアイ像の修復には日本の支援が大きく貢献している。
おまけ:「ラパ・ヌイ国立公園(イースター島)」のプチ観光情報
のどかな景色が広がるイースター島は治安が非常に良い
最寄の空港 | マタベリ国際空港 |
---|---|
通貨 | チリ・ペソ |
観光のベストシーズン | 11〜4月(時折にわか雨あり) |
時差 | 14時間(東京 – イースター島間) ※日本の方が14時間進んでます。 |
治安 | 非常に良い |
物価 | 普通(日本とほぼ同じ、物によっては少し高い) ※チリ本土と比べて物価が少し高いので要注意 |
南米諸国の中では比較的治安の良いチリですが、本土から離れたイースター島になるとさらに治安は良好になります。
距離は遠いものの、南米旅行初心者にはチリは非常にお勧めの国です!
一方で、他の南米諸国と比べると物価は少し上がってしまいます。
特にイースター島は観光地化されている影響で、モノの値段が観光客プライスになってしまっている点が数少ないマイナス面ですね。
とはいえ治安が良く、見どころもたくさんある国は貴重ですので、人生で一度はイースター島を訪れることをおすすめします。
アクセス
イースター島観光の拠点となるチリの首都「サンティアゴ」の街並み
残念ながら、イースター島への直行便は就航していません。
一般的には、アメリカ or カナダ各都市&チリの首都「サンティアゴ」での合計2回の乗り継ぎが必要になります。
- 日本の各空港 ⇨ アメリカ・カナダ各都市 ⇨ サンティアゴ(チリの首都) ⇨ イースター島の空港
モアイ像自体は島の至るところに点在しているため、「ここじゃないと見られない」ということはありません。
しかし、海岸沿いに立つモアイ像など一部の像に関しては、車などで移動が必要になってきます。
また、そもそもイースター島にはタクシーを含め公共交通機関がほぼありません。
そのため基本的には個人旅行ではなく、ツアーに参加してイースター島を訪れることになります。
ホテル事情
- 島唯一の村「ハンガロア村」にホテルが集中している。
- 3〜4つ星ホテルが大半を占めている(5つ星ホテルは少ない)
- ビーチに面したリゾートホテルは無い。
- 本土に比べるとホテル代は少し高め。
ホテルや飲食店などは、島唯一の村である「ハンガロア村」に集中しています。
日本と比べると比較的物価の安いイメージのある南米ですが、イースター島になると話は別です。
ただし、手の届かないような高級ホテルはほとんどなく、相場は10,000〜50,000円/泊(2名1室)になるので、ハワイやモルディブなどのリゾートアイランドと比べると安く感じるでしょう。
また、前述の「アクセス」でも少し触れたように、島には公共交通機関がほぼありません。
ですので事前にホテルの予約を行い、「空港-ホテル」間の送迎は必ず付けましょう。
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。