こんな方にオススメの内容!
- なぜ国立西洋美術館が世界遺産登録されたのか理由が知りたい!
- なぜ複数の国に属する世界遺産が誕生したのか理由が気になる!
- 世界の建築技術に興味関心がある!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
遺産ポイント
- 国立西洋美術館は世界各国に点在する作品(トランスバウンダリー・サイト)の構成資産の一つ
- 設計者ル・コルビュジエは近代建築の5原則を定義し世界に大きな影響を与えた
- 最終的には3人の日本人建築家によって完成
- 建築コンセプトは「無限成長美術館」
「ル・コルビュジエの建築作品(国立西洋美術館)」のプロフィール
登録名称 | ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献- |
---|---|
登録年 | 2016年 |
所在国 | 日本(東京都)、フランス、ドイツ、スイス、ベルギー、インド、アルゼンチン(計7カ国、17の構成資産) |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (i)(ii)(vi) |
備考 | シリアル・ノミネーション・サイト 日本初の「トランスバウンダリー・サイト」遺産 世界初の「トランス・コンチネンタル・サイト」遺産 |
世界遺産登録名称をわかりやすく解説
まずは下記のように世界遺産登録名称を3つに分解してみましょう。
- ル・コルビュジエの建築作品
- 近代建築運動
- 顕著な貢献
まず「ル・コルビュジエ」とは、今回の世界遺産の主役です!
フランス人建築家である彼が、19世紀後半から20世紀にかけて設計を手がけた建築物が世界遺産に登録されています。
つまり大前提として、コルビュジエ設計の建築物であることが世界遺産登録の最大の条件となるわけです。
次に「近代建築運動」とは、19世紀以前まで主流だった建築様式を根本から変え、新しい建築の時代を切り開いた行動のことを指します。
具体的な変更は下記になります。
伝統的な様式を継承した設計 ⇨ 従来の考えにとらわれない近代的な建築
そしてコルビュジエは、時代の変化を象徴する設計を考案し、それを具体的に建物として表現した形になります。
この”具体的に建物として表現した”行動こそ、”顕著な貢献”へと繋がってくるのです。
なおこの近代建築運動の詳細ついては、後述の「近代建築を世界へ広めた功績(近代建築運動)」でも解説します。
以上を踏まえて、世界遺産登録名称をわかりやすく表現すると、下記のような表現になります。
建築界に大きな変化をもたらしたル・コルビュジエ設計の近代的な建築物群
世界遺産登録理由
前庭にあるロダンの作品「考える人」
『ル・コルビュジエの建築作品』が世界遺産に登録された理由は、大きく分けて下記の3点になります。
- 美しい建築作品
- 近代建築への貢献度
- 世界への影響力
ちなみに歴史的建造物ではなく、近代建築物が世界遺産に登録される場合は世界遺産登録基準の(iv)が認められやすいです。
(登録基準に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています)
なぜなら、近代建築物は歴史的価値の評価ではなく、建築技術が評価対象になっている可能性が非常に高いからです!
また、『ル・コルビュジエの建築作品』は日本の国立西洋美術館だけではなく、世界7カ国に存在する建築作品も世界遺産に登録されています。
- フランス
- スイス
- ベルギー
- ドイツ
- アルゼンチン
- インド
- 日本
このように複数の作品が点在して登録されているため、世界遺産登録名称には建築作品の固有名詞が入っていないのです。
建物自体の美しさや素晴らしい設計
コルビュジエの設計によって建てられた建造物は、機能面でも見た目でも革新的でした。
コルビュジエが活躍する19世紀以前であれば、伝統的な建築様式を重視するあまり、似たような見た目の建造物や機能性があまり優れていない建造物が多く建てられていました。
一方でコルビュジエは伝統を考慮せず、時代の変化とともに建築様式や技術も積極的に変えていくことを重視しました。
その結果、従来では見られないガラス張りの建物が建てられたり、1Fに広い空間が生まれた開放的な建物が誕生したりしたのです!
(なお具体的な建築名称などは、後述の「建築界に大きな影響を与えた「近代建築の五原則」」で解説します)
ちなみにル・コルビュジエの建築作品同様に、近代建築での美しさが評価対象になった別の世界遺産としては、オーストラリアの『シドニー・オペラハウス』などが挙げられます。
ただし、国立西洋美術館の最終的な設計では、実はコルビュジエではなく、3人の日本人が担当していたのです!
コルビュジエが担当した範囲は下記の2点です。
- 現地(東京・上野)の視察をして建設場所を決める。
- 故郷のパリに戻って簡単な設計書を作成する。
しかし、コルビュジエによって書かれた設計書には建築に必要な具体的な数値が書かれていなかったのです!
そのため、コルビュジエとともに美術館の建築に関わっていた、下記の3人の日本人によって、具体的な設計書が作成されました。
- 前川國男(まえかわくにお)
- 坂倉準三(さかくらじゅんぞう)
- 吉阪隆正(よしざかたかまさ)
近代建築を世界へ広めた功績(近代建築運動)
本館1Fに広がる開放的な空間は誰でも無料で出入りすることができる
前述の「世界遺産登録名称をわかりやすく解説」でも触れたように、コルビュジエを象徴するワードは「近代建築運動」です!
文字通り、近代建築を推し進める行動です。
その「近代」とは、主に20世紀に誕生した建築方法を指します。
20世紀以前の世界では、「ゴシック」「バロック」「ロマネスク」など、過去の様式を継承した建築が主流でした。
そのため機能面でもデザイン面でも幅が広がることがなく
「こんな形の建物を建てられたらなぁ」
「こんな機能を備えた建物があったらなぁ」
このような近代社会の要望に応えることが非常に難しかったのです。
この事態に疑問を持ったコルビュジエは、当時(20世紀)の建築における需要に応えるようにして、数々の建物の設計を手がけていったのです!
現代で例えるなら下記のようなイメージですね。
1分でも早く移動したい ⇨ リニア新幹線の開発
非現実世界をよりリアルに体験したい ⇨ VR・ARの誕生
いつでも気軽に名店の味を楽しみたい ⇨ UberEatsの誕生
本館の展示室は円を描くように設計されている
要するに、従来の概念を覆した建築を推し進めたのがコルビュジエなのです!
このコルビュジエの活躍以降は、様々な建築家が各々の独自の発想で建物を設計・建造するようになり、多種多様な建築物が次々と誕生していきました。
以上のような背景から、コルビュジエの建築作品は全世界の建築様式・技術を一新させた証明になっていると言っても過言ではないのです!
なお、パリにあるコルビュジエのアトリエ(作業場)には、世界中の建築家が訪れてきてました。
もちろん前述の「建物自体の美しさや素晴らしい設計」で登場した3人の日本人建築家も、アトリエを訪問済みです。
建築界に大きな影響を与えた「近代建築の五原則」
本館の1Fには「近代建築の五原則」の一つ「ピロティ」が取り入れられている
コルビュジエが設計した建造物の象徴と言ってもいいワードが、「近代建築の五原則」です。
世界遺産に登録されている建造物はいずれも、この五原則のいずれか、または全てが適用されています。
- ピロティ
⇨ 建物を壁ではなく柱で支えて1Fに空間を作る。 - 水平連続窓
⇨ 壁の所々に窓を設けるのではなく、一直線上に連続して窓を設けて、屋内へ取り込む光の量を多くする。 - 屋上庭園
⇨ 屋根にするのではなく屋上も庭園としてうまくスペースを活用する。 - 自由な平面
⇨ 壁で囲まれていた部屋を柱などに変えて空間を広くする。 - 自由なファサード(立体)
⇨ 建物正面を壁ではなくガラスなど違う素材を使って建てる。
上記の5つの設計方法は、現在では当たり前になっています。
しかし、もしコルビュジエが五原則を適用させた建物を実際に世界各国に建てていなければ、今でも壁一面の建物が主流になっていたかもしれません。
また5つの設計方法は、それぞれが独立しているのではなく、関係性を持った設計でもあります。
例えば「ピロティ」によって地上(1F)をより開放的にすることで、人が歩くことができる敷地を広げることにつながります。
さらに地上につくっていた庭園を「屋上」に移動させることで、よりピロティの良さが際立つことになります。
なお、国立西洋美術館には「①ピロティ」「③屋上庭園」「④自由な平面」「⑤自由なファサード」の4つが使われています。
国立西洋美術館が建てられた理由
国立西洋美術館の正面口
国立西洋美術館が建造された最大の理由は下記です。
松方幸次郎が購入した西洋美術品を展示するため
- 松方幸次郎:国立西洋美術館が建造された要因をつくった人物
- ル・コルビュジエ:国立西洋美術館を設計した人物
つまり、松方幸次郎が西洋美術品を購入していなければ、国立西洋美術館は建造されなかったかもしれないのです!
ちなみに、松方が持つ西洋美術品は通称「松方コレクション」と呼ばれています。
また、松方が持っていた西洋美術品は、最大で約3,000点にも上ります。
松方が西洋美術品をたくさん購入した理由は、日本に西洋美術の素晴らしさを伝えるためです!
彼はロンドンやパリなどで活動拠点にしていた時代があり、その時に見た西洋美術に惹かれて、この素晴らしい作品をもっといろんな日本人に見てもらいたいと考えました。
(なお、ロンドン滞在の約10年間で3,000点の美術品を購入したとされています)
モネの「睡蓮」は国立西洋美術館の目玉展示品の一つ
ただここで1つ、とある疑問点が浮かび上がってきませんでしょうか?
3,000点も美術品を購入するお金は一体どこから出てきたの?
松方がいくつもの西洋美術品を購入できるほど金銭的に余裕があった最大の理由は、彼が社長を務めていた神戸にある「川﨑造船所」が多大な利益を生み出していたからです!
社長就任期間は、まさに世界中で船の需要が非常に高かった時代です。
なぜなら、20世紀初頭には第一次世界大戦が勃発しており、いくつもの船を必要としてる国がたくさんあったからです!
そして松方コレクションを展示するスペースとして、美術館の建造を考えたのです。
松方コレクションの展示が不可能に!?
西洋美術品を展示予定だった松方でしたが、下記の2点の問題が発生し展示施設の建造には至りませんでした。
- 世界的な経済危機によって松方が社長を務める造船所も経営危機に陥ってしまった。
⇨ 会社を存続させるために西洋美術品を売ることに。 - ロンドンの倉庫に保管していた美術品が火災によって消失してしまった。
約3,000点あった西洋美術品は、火災などによって375点まで減ってしまいました。
さらに、第二次世界大戦ではフランスは日本の敵国であったため、松方が持つ残りの西洋美術品も一度没収されてしまったのです。
しかしその後、日本とフランスは平和条約を結び、日本とフランスの友好の証として、再び松方の手元に西洋美術品が戻ってきました。
ここまでの松方コレクションの流れをまとめると下記になります。
- 松方が社長を務める造船会社が大きな利益を得る。
↓ - 会社で得た利益でロンドン滞在中に約3,000点の西洋美術品を購入する。
↓ - 経営危機&火災によって持っている西洋美術品の多くを失う。
↓ - 一時フランスに残りの美術品も没収されるが、後に返品してもらう。
そして残った375点を展示するために、国立西洋美術館を建造することになったのです!
「無限成長美術館」をコンセプトにした設計
館内の柱と柱の間隔は緻密な調整がされている
コルビュジエは国立西洋美術館を設計する上で、「無限成長美術館」を意識しました。
簡単に言うと、展示品が増えても展示スペースを確保できる設計にすることを表しています。
具体的には、美術館の中心から渦巻き状に展示スペースを外側へ増設して広げるという考えです。
「無限成長美術館」のイメージ
また無限成長の設計にすることで、来客もぐるりと周りながら展示品をスムーズに閲覧することができます。
このように、無限成長美術館の設計は展示面でも観覧面でもメリットがあるのです!
国立西洋美術館の建造が決まった当初は、19世紀以降の近代フランスの美術品である松方コレクションの375点の展示を想定してました。
しかしその後美術館の館長が変わるなどを経て、展示品のジャンルや展示する人物が徐々に増えていったのです!
現在も美術品が追加展示されていっている
19世紀以降の近代フランスの美術品 ⇨ 西洋全体の美術品
松方コレクション ⇨ 誰でもコレクション
しかし、美術館が建造できる敷地には限界があります。
つまり、結局は無限に増築して展示品を増やすことは不可能なので、「無限ではないが増築ができる造り」と言う表現が正しいかもしれませんね(笑)
なお、無限成長美術館という設計で建てられた美術館は、国立西洋美術館と、インドにある2つの美術館のみです。
ちなみに国立西洋美術館は、地震大国の日本にあることも考慮し耐震強度を増す設計にも工夫があります。
本来なら耐震強度を増す装置は建物本体に付けますが、文化的価値の高さを残すため(人の目に触れないようにする)建物本体には触れずに、来客の目に触れない地下の基礎部分に免震装置(揺れを軽減させる装置)を取り付ける対応をしたのです。
免震装置は館内の地下1Fで見ることができる
「モデュロール」の採用
天井の高さは成人男性の身長を元に設計されている
「モデュロール」とは簡単に言うと、来客がよりスムーズに美術品を観覧できるようにするための設計方法の一つです。
ルコルビュジエ考案の、建物の設計の際の黄金比を取り入れたもので、成人男性の身長と、その男性が手を挙げた際の全長などから算出し、設計しています。
例えば人間の身長などで算出した結果を使うと、美術館の下記の箇所の設計を進めることが可能になります。
- 必要な天井の高さ。
- 美術館を支える柱と柱の間隔。
実際に国立西洋美術館を訪れると、一際天井の高さや柱の配置に目が行くと思います。
日本初&世界初の世界遺産
前述の「世界遺産に登録された理由」でも触れたように『ル・コルビュジエの建築作品』は合計7カ国に広がる世界遺産です。
複数国にまたがって登録された世界遺産であるため、”日本初”と”世界初”が誕生したのです!
- 日本初:トランスバウンダリー・サイトが認められた世界遺産
- 世界初:トランス・コンチネンタル・サイトが認められた世界遺産
国立西洋美術館が世界遺産に登録される前までは、国内の世界遺産は純粋に日本国内だけに存在する文化財や自然だけが対象でした。
しかし、国立西洋美術館は他の国の文化財とともに世界遺産登録されたため、日本初の国境越え世界遺産(トランスバウンダリー・サイト)となったのです。
また世界全体の世界遺産で考えると、トランスバウンダリー・サイトが認められた世界遺産自体はすでに複数ありましたが、”大陸(コンチネンタル)を超えた”形での世界遺産登録は、『ル・コルビュジエの建築作品』が初めてです!
大陸をまたいで登録されていることからもわかるように、ル・コルビュジエは一定の地域だけではなく、世界中を舞台に建築家として活躍していたことの証明にもなります。
なお、トランスバウンダリー・サイトとトランス・コンチネンタル・サイトについては、下記の記事で詳しく解説してますので、よければ併せて読んでみてください。
合わせて読みたい!【”シリアルノミネーションサイト”と”トランスバウンダリーサイト”の違いとは?】世界遺産の登録範囲のポイントをわかりやすく解説!国立西洋美術館リニューアルの歴史と目的
国立西洋美術館の新館は本館よりも明るめの雰囲気
1959年の開館以降、国立西洋美術館は度々リニューアル工事を繰り返してきました。
具体的なリニューアル工事としては、下記などが挙げられます。
- 建物に使用する素材の変更(燃えやすい木造の壁の取り壊しなど)
- ピロティの用途の変更(屋外にも展示されていた作品をほぼ全て屋内に移動させた)
- 開館当時の前庭の復元(顕著な普遍的価値を取り戻すため)
特に2022年にリニューアルが完了した前庭の復元工事では、世界遺産の重要ワードである「顕著な普遍的価値」が大きく関わっています!
(「顕著な普遍的価値」に関しては、こちらの記事で詳しく解説してます)
リニューアル工事が行われる前の2020年時点では、開館当時の姿とは異なる前庭でした。
当然、開館当時の前庭の姿から変わってしまっている点をユネスコから指摘を受けていたのです。
(国立西洋美術館が世界遺産登録された2016年付近での視察の際の言及)
そのため、2020〜2022年にかけて美術館開館時代の前庭の姿に復元させる工事を進めたのです。
この復元工事によって、国立西洋美術館はより世界遺産として相応しい姿になったのです。
なお前庭の復元工事では、具体的下記の部分に手が加えられました。
- 美術館の外部からでも美術館を臨むことができるように取り囲む柵を「閉鎖的 ⇨ 開放的(隙間から美術館が見える)」にした。
- 人の動きを彫刻や美術館に誘導するためのT字の線の復元をした。
- ロダンの彫刻作品などの配置を開館当初の位置に戻した。
- 植木を無くして人が歩けるスペースを広げた。
国立西洋美術館以外の世界遺産登録された建築作品
フランス・リヨン近郊にある「ラ・トゥーレット修道院」
日本では国立西洋美術館のみの登録ですが、世界中では他にも16の建築物が登録されています。
建物名称 | 設計決定年 | 所在国 |
---|---|---|
ラ・ロッシュ・ジャンヌレ邸 | 1923年 | フランス |
レマン湖畔の小さな家 | 1923年 | スイス |
ペサックの集合住宅 | 1924年 | フランス |
ギエット邸 | 1926年 | ベルギー |
ヴァイセンホフ・ジードルングの住宅 | 1927年 | ドイツ |
サヴォワ邸と庭師小屋 | 1928年 | フランス |
イムーブル・クラルテ | 1930年 | スイス |
ポルト・モリトーの集合住宅 | 1931年 | フランス |
マルセイユのユニテ・ダビタシオン | 1945年 | フランス |
サン・ディエの工場 | 1946年 | フランス |
クルチェット邸 | 1949年 | アルゼンチン |
ロンシャンの礼拝堂 | 1950年 | フランス |
カップ・マルタンの休憩小屋 | 1951年 | フランス |
チャンディガールのキャピトル・コンプレックス | 1952年 | インド |
ラ・トゥーレットの修道院 | 1953年 | フランス |
フィルミニの文化の家 | 1953〜1965年 | フランス |
国立西洋美術館 | 1955年 | 日本 |
全て詳細に紹介すると膨大な量になってしまうので、ル・コルビュジエの代表的な建築物を少しだけ簡単に紹介します。
サヴォワ邸と庭師小屋(フランス)
ル・コルビュジエが提唱した「近代建築の五原則」全てを満たす代表作です。
ピロティを用いて壁の面積を減らすことで、デザインの自由度が高まり、水平連続窓や自由な平面などの取り入れが可能になりました。
マルセイユのユニテ・ダビタシオン(フランス)
ル・コルビュジエの都市理念である「輝く都市」を具現化させた集合住宅です。
第二次世界大戦後に悪化したヨーロッパの住宅事情に対応して開発され、多くの人が暮らせるよう住居ユニットをブロックのように組み合わせる設計をしました。
ロンシャンの礼拝堂(フランス)
ル・コルビュジエの他の作品とは異なる、デザインと空間の自由を追求した作品です。
そのため近代建築の五原則からは離れた設計になっています。
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3, 4級レベル
世界遺産の構成資産としてル・コルビュジエの建築作品が存在しない国を選びなさい。
- スウェーデン
- フランス
- スイス
- インド
①
答え(タップ)>>2級レベル
国立西洋美術館に取り入れられている概念として正しいものを選びなさい。
- 終始反転美術館
- 自然調和美術館
- 人造強調美術館
- 無限成長美術館
④
答え(タップ)>>1級レベル
ル・コルビュジエが提言した「近代建築の五原則」の説明として誤っているものを選びなさい。
- 近代建築の五原則の概念を全て取り入れている建築物がフランスにある「ロンシャンの礼拝堂」である。
- 国立西洋美術館には「ピロティ」や「屋上庭園」などが取り入れられている。
- 「水平連続窓」とは壁の代わりに連続して窓を設置して屋内に取り込む日光の量を増やす設計。
- 国立西洋美術館には近代建築の五原則の「水平連続窓」だけが取り入れられていない。
①
答え(タップ)>>「ル・コルビュジエの建築作品(国立西洋美術館)」のまとめ
- 国立西洋美術館は「トランスバウンダリー・サイト」登録として世界中に点在する構成資産の一つ!
- ル・コルビュジエは「近代建築の五原則」という概念を定義して建築界に革命を起こした!
- 最終的に国立西洋美術館を建築したのは「前川國男」「坂倉準三」「吉阪隆正」の日本人建築家の3人!
- 国立西洋美術館は「無限成長美術館」という考えのもと展示品を置けるスペースを拡大できる設計になっている!
- 他にも「サヴォワ邸と庭師小屋」「ロンシャンの礼拝堂」などフランスを中心に数多くの作品を残した!
おまけ:「ル・コルビュジエの建築作品」のプチ観光情報
国立西洋美術館の中庭
今回は国立西洋美術館と、比較的アクセスしやすい、ル・コルビュジエの代表作の一つ「サヴォア邸」の観光情報についてお伝えします。
最寄の都市 | パリ(正確にはポワシーという小さな街) |
---|---|
最寄の空港 | パリ・シャルル・ド・ゴール国際空港 |
時差 | 7時間(東京 – パリ間) ※日本の方が7時間進んでます。 |
通貨 | ユーロ |
観光のベストシーズン | 通年 |
治安 | 良好(パリ中心部より治安が良い) |
物価 | 少し高い(日本の1.3倍ほど) |
基本的に休館日は月曜日です。
また営業時間は、夏季(5〜8月)が「10:00〜18:00」、冬季が「10:00〜17:00」になります。
ただし、休館日や営業時間は日によって変わることがあるため、訪問する前にホームページで営業情報を確認しておくことをオススメします。
サヴォア邸までのアクセス
サヴォワ邸のあるポワシーへはパリからアクセスできる
サヴォア邸(ポワシー)最寄りの国際空港はパリになります。
パリへは日本の各都市から直行便が就航しているため、比較的アクセスの良い世界遺産と言えます。
【直行便】
- 羽田・成田・関空 ⇨ パリ・シャルル・ド・ゴール国際空港(フライト時間:約12時間半)
【経由便】
- その他の空港 ⇨ ヨーロッパ各都市(フランクフルト、ウィーン、他) ⇨ パリ・シャルル・ド・ゴール国際空港(フライト時間:約15時間〜17時間)
- その他の空港 ⇨ 中東各都市(ドバイ、ドーハ、他) ⇨ パリ・シャルル・ド・ゴール国際空港(フライト時間:約18時間〜20時間)
パリ市内からサヴォア邸のあるポワシーまでは、パリ市内を走る「RER(地下鉄)」のB線を利用してアクセス可能です。
- パリ市内RERのB線の各駅 ⇨ ポワシー駅 ※終点(所要時間:約30分) ⇨ 徒歩でサヴォア邸へ(所要時間:約20分)
上記のような行程で、サヴォア邸へは個人でも十分に訪れることができます。
ただもちろん旅行会社によってはサヴォア邸を訪れるオプショナルツアーもあるので、海外旅行初心者の方はオプショナルツアー利用で安心安全に訪れてみてください。
国立西洋美術館を楽しむ4つのポイント
絵画や彫刻だけではなく版画の展示室も設けられている
- 美術館本館だけではなく入り口や前庭から堪能する
- 美術品だけではなく美術館内部のつくりを観察する
- スマホでQRコードを読み込み解説を入手
- ル・コルビュジエの作品も堪能できる!?
本文で何度も解説しましたが、国立西洋美術館の魅力は「美術館の造り×展示美術品」です!
つまり、芸術視点でも建築視点でも楽しむことこそ、国立西洋美術館の醍醐味になります。
言い方を変えると、仮に美術品に興味が無くても、建物内や前庭を散策するだけでも魅力を感じることができるのです!
さらに、館内に展示されている美術品の中には、コルビュジエ本人が描いた作品も展示されているのです!
建築家としてのイメージが強いコルビュジエですが、実は画家でもあるのです。
ル・コルビュジエの作品を見ることができる点も国立西洋美術館の魅力の一つ
ルコルビュジエが活躍した時代は、世界大戦や冷戦という冷たい時代が続いていました。
そんな時代を考え、人の感情に寄り添うような作品を描くよう意識するようになったことが、作品を多く描くきっかけになったのです。
また、国立西洋美術館の建設にも、”暗い時代から新しい時代へ”と進むための新しい思想を表現しようとした建設でもありました。
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。