こんな方にオススメの内容!
- なぜ「キンデルダイクの風車群」が世界遺産に登録されたのか理由が気になる!
- オランダで風車がたくさん建てられた理由や歴史を知りたい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- オランダへの旅行を考えている!
遺産ポイント
- オランダに風車がたくさん建てられた理由はオランダの国土問題を解決するため!
- 近代技術の誕生により風車の数は激減(キンデルダイクでは19基のみ残っている)!
- オランダに風車が伝わったのは十字軍によるもの!
「キンデルダイク」のプロフィール
登録名称 | キンデルダイク-エルスハウトの風車群 |
---|---|
登録年 | 1997年 |
所在国 | オランダ |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (i)(ii)(iv) |
「キンデルダイク-エルスハウトの風車群」の登録名称の由来とは
夕暮れ時の幻想的な風車群
「キンデルダイク-エルスハウトの風車群」とは、昔ながらのオランダの風車群を見ることができるエリアです。
- キンデルダイク:オランダの自治体内の地区の名前
- エルスハウト:キンデルダイクのフルネームのようなもの
- 風車群:主に排水用に建てられた装置
「キンデルダイク-エルスハウト」とは「アントニ-ガウディ」のようにヨーロッパの人名を姓名で表現したようなイメージです。
一般的にこの風車群は「キンデルダイク」と呼ばれているので、世界遺産の風車群のことを伝える際は「エルスハウト」まで言う必要がないです。
ちなみに、この「-」は「ダブルコーテーション」として下記のように書くこともあります。
「キンデルダイク=エルスハウト」
または
「キンデルダイク・エルスハウト」
これでもほとんど同じ意味です。
なお、エルスハウトはオランダの別の都市の名前で実在するので、現地オランダ人によっては風車とは全く関係ない都市を連想するかもしれません。
当記事では今後、「キンデルダイク」という名前で解説していきます。
オランダに風車が多く建てられた理由
霧に包まれた幻想的な風車群
今ではオランダの名物となっている風車ですが、もちろん観光用にたくさん建てられたわけではありません。
主に下記のような目的で風車は建てられました。
- 国土を水害から守るため
- 国土を広げるため
- 農業ができる土地を確保するため
オランダ語の国名である「ネーデルラント」は「低地」という意味を持ちます。
それは、オランダの国土の大半が低地であることを指しているのです!
驚くことに、オランダの全国土の約27%が海抜0m以下で、山岳地帯という場所は存在しません。
そしてこの海抜0m以下の土地は、風車ができる前までは海の中でした。
つまり、風車によって新たな土地が誕生したのです!
風車とオランダの人々の生活の歴史
オランダは常に水害と戦ってきた(イメージ)
オランダは昔から多くの水害に悩まされてきました。
水害がよく発生する原因は、オランダ国土の標高が非常に低く、湿地帯が非常に多いことが関係してます。
さらに標高が低いだけではなく、ワッデン海という潮の満ち引きが激しい海に面していたことも原因です。
当初は潮の満ち引きの原理を利用して、水位の差で水を引き抜き、堤防や水路をつくることによって国土を水害から守っていました。
しかし、堤防や水路だけでは耐えられなくなり、次第にオランダの土地は地盤沈下が進み、さらに水害に見舞われることになるのです。
「このままではオランダ全土が水没してしまう」
このように考え、新たな水害対策を練る提案が出されました。
その新たな提案こそ、「風車の建造」だったのです!
従来は単純に水の侵入を防いでいただけでしたが、風車を使うことによって侵入してきた水を随時排出する技術が生まれたのです!
現在見られる風車群は18世紀頃に建造されたものです。
そして風車という装置自体は、12世紀頃に十字軍によってオランダに伝えられてきたとされています。
当初の風車は排水用ではなく製粉用(風車の回る力を使って穀物をひいて粉状にする)に使われていました。
その製粉用の風車を排水用に改良した形になります。
さらに、排水によって広がった土地を有効活用して農地にしていきました。
風車の数が激減した理由
実際に旅行などでオランダを訪れたら、下記のように感じるかもしれません。
「あれ、風車を全然見かけないぞ!」
それもそのはず、風車が多く建てられた最盛期と比べて、現在残っている風車の数は非常に少なくなっているのです!
現在のオランダの排水システムを担っているのが、主に下記になります。
- 蒸気式水揚げポンプ
- 石油や電気を利用した排水設備
上記の装置であれば、風車よりもより早く、そして多くの排水を可能にすることができます。
つまり、時代の流れによって利用する力や燃料が変わり、風車の需要が徐々になくなっていったわけです。
現在オランダ国内で見られる風車の数は非常に少なく、キンデルダイクでは19基が残っている状態です。
キンデルダイクの風車群が世界遺産に登録された理由
春には菜の花越しの風車を見ることができる
キンデルダイクにある風車群が世界遺産に登録された理由は、大きく下記の3つに分けられます。
- 風車群がもたらす美しい景観
- オランダが誇る風車の文化・伝統
- オランダの技術力
最もわかりやすい価値で言うなら、風車を見ることでオランダの人々の技術力の高さを理解できる点ですね。
世界遺産ジャンルで言うと「産業遺産」に該当します。
風車群が織りなす美しい景観
人気のレンタサイクルでの風車観光
「オランダ = 風車」
おそらく多くの方が上記のようなイメージを持つのではないでしょうか?
このように、オランダらしい風車の美しい景観を見ることができる点も、世界遺産登録に大きく影響しています。
前述の「風車の数が激減した理由」で触れたように、現在オランダ国内に存在する風車は非常に少ないです。
だからこそ、キンデルダイクのように風車群が見られる景観は非常に貴重なのです!
また、風車そのものの美しい形やデザインも評価されています。
現在メインで使われている近代的な設備と比べると、オランダの湿地帯の自然景観に溶け込んだ姿は、間違いなく多くの観光客を魅力しています。
オランダの人々が築いた文化・伝統が見れる
大量生産が可能なトマト栽培はオランダを農業大国に押し上げた作物の一つ
前述の「風車とオランダの人々の生活の歴史」で散々解説してきましたが、オランダの人々は風車とともに歴史を歩んできました。
つまり言い方を変えると、風車の歴史を理解すれば、オランダ自体の歴史を理解することにも繋がるのです!
「土地を水害から守る = 風車の建造」
上記はもちろんのこと
「農地を作って国を豊かにする = 風車の建造」
このように表現することもできます。
現在、オランダは農業大国と言われています。
農業大国と言われるようになったきっかけを作った出来事は、間違いなく風車の誕生です!
風車の誕生によって効率良く排水に成功し、新たに誕生した土地を農地として開拓して作物を育てる文化が育まれていきました。
つまり、現在の農業大国オランダの土台を築いたのは風車ということです。
ちなみに現在のオランダ農業は、「スマート農業」と呼ばれています。
これは狭い国土であっても、ITやロボットを活用することで生産性を最大化させて農業を発展させていることが背景にあります。
近代のオランダの農業は「機械化・自動化」がテーマであると言えます。
なお、オランダの農業は収益を最大限上げるために、大量生産が可能な作物(トマト、パプリカなど)に集中して栽培している点も特徴的です!
このように風車を通して、オランダの人々の創意工夫が見られる点に価値があるとして世界遺産に登録されたのです!
風車の技術力の高さ
前述の「風車とオランダの人々の生活の歴史」でも解説しましたが、現在キンデルダイクで見られる風車は、排水用のために建造されました。
風車の風力を使って排水するという技術は、オランダが誇る技術を象徴するものでした。
キンデルダイクにある風車は、1枚約14mの羽が十字形につけられています。
この羽が風を受けて回転することによって、風車内部の装置が稼働し、水を低地から高地へ引き上げる仕組みが生まれます。
自然の力を味方につけて、長年国土を守り続けた昔のオランダの人々の技術力の高さが、世界遺産登録の評価対象の一つになってます!
現在はこの風車の原理を利用して、世界各国で巨大な羽をつけた設備が回転し発電する”風力発電”へと展開されています。
つまり、風車は現代の技術の原型となる役割も果たしているのです。
このように、オランダの風車群は、風力を活用した排水や発電の代表的な段階を示していることから、世界遺産登録基準の(iv)が認められています。
(なお、世界遺産の登録基準に関しては「こちらの記事」で詳しく解説してます)
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3・4級レベル
現在キンデルダイクに残っている風車の数として正しいものはどれか。
- 19基
- 25基
- 32基
- 43基
①
答え(タップ)>>2級レベル
オランダに風車を伝えたグループの名称として正しいものはどれか。
- ゲルマン民族
- テーベ軍団
- イェニチェリ
- 十字軍
④
答え(タップ)>>1級レベル
『キンデルダイク-エルスハウトの風車群』に関する説明として誤っているものはどれか。
- オランダの風車の技術は18世紀からイギリスで起きた産業革命に多大な影響を与えた。
- 12世紀頃にオランダに伝わった頃の風車は当初は製粉用に使われていた。
- 風車の役割は水害から国土を守るだけでなく、湿地を農地に変えることにも用いられた。
- 最盛期にはオランダ全土で約1万基が稼働していたが、石油や電気を用いた排水設備が登場したため激減した。
①
答え(タップ)>>まとめ
- オランダに数多くの風車が建てられた最大の理由は、排水ポンプの役割を持たせて水没の危機に直面する国土を守るため!
- オランダの国名はオランダ語で「ネーデルラント(低地)」を意味する!
- 12世紀頃に十字軍によってオランダに風車が伝わってきた!
- 現在のキンデルダイクで見られる風車の数は19基のみ!
- 現在のオランダを農業大国に押し上げた要因には風車の稼働が大きく関わっている!
- 石油や電気を利用した排水設備の誕生により風車の数が激減していった!
おまけ:「キンデルダイク」のプチ観光情報
その他の風車とは違った形状をしている風車
キンデルダイクは、オランダの昔ながらの風車がもたらす景観を楽しめる数少ない場所です。
「オランダらしい景色を見たい!」
このように考えている方は、ぜひキンデルダイクまで足を運んでみてください!
人口(ロッテルダム) | 約60万人 |
---|---|
最寄の空港 | ロッテルダム空港 |
通貨 | ユーロ |
観光のベストシーズン | 4〜10月(この時期はキンデルダイク行きの鉄道・バスが頻繁に出ている) |
治安 | 良好 |
物価 | 日本とほぼ同じ |
キンデルダイクまでのアクセス
キンデルダイク観光の拠点となるオランダ第二の都市「ロッテルダム」
キンデルダイクの観光拠点となる都市は、オランダ第二の都市「ロッテルダム」です。
しかし、日本からはロッテルダムへの直行便が就航していないため、まずはオランダ入国の玄関都市となる首都「アムステルダム」に向かうことになります!
- 成田・関空 ⇨ アムステルダム(フライト時間:約12時間)
- 他の空港 ⇨ 中東各都市(ドバイ、ドーハなど) ⇨ アムステルダム(フライト時間:約20時間)
- ヨーロッパ各都市乗り換えで直接空路でロッテルダムにアクセスも可能だが、空路での乗り継ぎがさらに1〜2回増えるため、アムステルダムにアクセスするのが無難。
アムステルダムからキンデルダイクへのアクセス方法は、大きく分けて下記の2パターンあります。
- アムステルダム中央駅 ⇨ ロッテルダム中央駅(所要時間:約1時間) ⇨ バス or 水上バスにてキンデルダイクへ(所要時間:約40分)
- アムステルダム中央駅 ⇨ ユトレヒト駅(所要時間:約30分) ⇨ バスにてキンデルダイクへ(所要時間:約1時間半)
- 11〜3月の冬季はバスや水上バスの運行本数が非常に少なくなるので、事前にスケジュールを確認しておくことを強く勧めます。
キンデルダイクの最寄り都市はロッテルダムになり、南東約10km先に位置します(東京の渋谷からお台場ぐらいの距離感)。
また、キンデルダイクの北部に位置する「ユトレヒト」という都市からもアクセスが可能です!
日本で例えると、東京から鉄道で日光まで行って、バスで華厳の滝に行くようなイメージですね。
施設情報
- 入場料:9EURO(日本円換算で約1,200円)
- 遊覧船:6EURO(日本円換算で約800円)
- 為替レートは「2022年2月」時点。
- 入場料には博物館の入館料も含まれています。
- 事前にオンラインで予約すると少し割引が適用されます(2022年2月時点)。
風車群の観光は主に「徒歩」「遊覧船」の2パターンに分かれますが、それぞれの観光方法には下記のような特徴があります。
【徒歩の場合】
- 風車に最も近づける。
- 自分のペースで観光を楽しめる。
- レンタサイクルで観光も可能(要追加料金)。
- 体力に自信のない方にはあまりオススメできない。
【遊覧船の場合】
- 陸地よりも運河からの方が風車群の全景を良く眺めることができる。
- 体力に自信のない方でも観光を楽しめる。
- 運航時間が決まっているため時間に融通が効かない。
風車によっては内部を見ることもできます。
また内部には、風車とともに生活を送っていた当時の人々の私生活状況が展示されています。
キンデルダイクまで行く余裕のない方におすすめの風車観光スポット:ザーンセスカンス
ザーンセスカンスの風車はカラフル
「オランダはアムステルダムのみの滞在。。。」
「そもそもオランダに滞在する日数が少ない。。。」
キンデルダイクに行く余裕がない方におすすめの風車観光スポットとして、「ザーンセスカンス」があります!
キンデルダイクだとアムステルダムから日帰りで訪れるのは難しいですが、ザーンセスカンスなら日帰り観光も十分可能です。
ザーンセスカンスへのアクセス方法は、主に下記の2パターンに分けられます。
【鉄道利用の場合】
- アムステルダム中央駅 ⇨ ザーンダイク・ザーンセ・スカンス駅(所要時間:約20分) ⇨ 風車群エリアまで徒歩約15分
【バス利用の場合】
- アムステルダム中央駅北口にあるバスターミナル ⇨ ザーンセスカンス最寄りバス停(所要時間:約50分) ⇨ 風車群エリアまで徒歩数分
可愛らしい家屋が立ち並ぶザーンセスカンス村の街並み
なお、風車が点在しているエリアへの入場は無料です!
(風車内部や博物館に入る際は、別途料金がかかります)
キンデルダイクとは違い世界遺産には登録されていないものの、風車のみならずカラフルな家屋が立ち並ぶ街並みを楽しむことができます。
風車の数が激減した現在のオランダで、ここまで多くの風車を見ることができるのは「キンデルダイク」と「ザーンセスカンス」ぐらいです。
ですので、時間に限りがある方は「ザーンセスカンス」を、時間に余裕がある方は「キンデルダイク」の風車群をぜひ訪れてみてください!
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。