こんな方にオススメの内容!
- 宗廟(チョンミョ)が世界遺産&無形文化遺産に登録された理由が気になる!
- 朝鮮王朝や宗廟大祭について詳しく知りたい!
- 韓国の歴史に興味がある!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
遺産ポイント
- 宗廟には朝鮮王朝の歴代国王・王妃の位牌(いはい)がまつられている
- 建造は朝鮮王朝の建国者である李成桂(イソンゲ)
- 宗廟大祭(チョンミョデジェ)は無形文化遺産に登録
「宗廟」のプロフィール
そもそも「宗廟(チョンミョ)」とは?
『宗廟(チョンミョ)』とは、韓国の首都ソウルの中心部にある、朝鮮王朝の歴代国王をまつるお墓です。
ただし、お墓と言っても遺体が納められているわけではなく、位牌(いはい)が納められている施設です。
用語メモ
位牌(いはい)とは、亡くなった人の名前や亡くなった日時などが記された木の札。遺体が納められる墓とは別の施設として設置される。宗廟が建造された理由を理解するためには、朝鮮王朝の歴史や、その王朝の主要人物を知ることがポイントになります。
宗廟と朝鮮王朝の歴史
宗廟の歴史は、朝鮮王朝の歴史と言っても過言ではありません。
1392年 | 李成桂(イソンゲ)によって朝鮮王朝が建国される。 |
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1394年 | 李成桂が朝鮮王朝の首都を漢陽(ハニャン)に移す。 ⇨漢陽とは現在のソウル。 |
1395年 | 朝鮮王朝の歴代王の位牌を置くために宗廟が建造される。 |
1592年 | 「文禄の役」の際に、日本の豊臣秀吉が派遣した軍によって宗廟が破壊される。 |
1608年 | 宗廟が再建される。 |
1910年 | 韓国が日本に併合されたことで朝鮮王朝が無くなる。 |
用語メモ
文禄の役とは、日本で天下統一を果たした豊臣秀吉が、国外にも目を付けアジアに軍を派遣した出来事。最初のターゲットとなった国が朝鮮。つまり、朝鮮王朝が存在したからこそ宗廟が建造されることになったのです。
また、朝鮮王朝は直近の500年以上存在し続けた国であるため、韓国の歴史を語る上では欠かせない国なのです。
朝鮮王朝を語る上で欠かせない李成桂(イソンゲ)
李成桂(イソンゲ)は、朝鮮王朝を建国した人物で、朝鮮王朝の初代国王として活躍しました。
さらに、李成桂は宗廟を建造した国王としても知られています。
ちなみに、現在の韓国や北朝鮮のある地域が”朝鮮”と呼ばれるようになったのも、李成桂が朝鮮王朝を建国したこの時代からです。
また、初代国王の李成桂から名を取って、朝鮮王朝は別名「李氏王朝(りしちょうせん)」とも呼ばれています。
それほど李成桂は韓国の歴史上、最重要人物と言っても過言ではないのです。
世界遺産登録理由
宗廟が世界遺産登録された理由は、大きく下記の2点に分けられます。
- 朝鮮王朝の歴史を刻んでいる
- 世界を代表する木造建築物が残されている
理由1:朝鮮王朝の歴史を刻んでいる
前述の「宗廟と朝鮮王朝の歴史」でも解説したように、宗廟は朝鮮王朝の歴史を深く刻んでる歴史的な建築物です。
宗廟が朝鮮王朝と歴史的な繋がりがあると言える最大の理由が、宗廟にある建築物内に朝鮮王朝の歴代国王の位牌が納められているからです!
なお、宗廟に納められているのは位牌のみで、国王の遺体はソウル近郊に点在している朝鮮王陵に納められています。
ちなみに、朝鮮王陵は別の世界遺産として登録されています。
ただし、朝鮮王朝の歴史を刻んでいる点に関しては、宗廟が世界遺産登録された最大の要因ではありません。
宗廟が世界遺産登録された決め手は、後述の「理由2:世界を代表する木造建築物が残されている」になります。
理由2:世界を代表する木造建築物が残されている
宗廟が世界遺産登録された最大の要因は、宗廟の敷地内に点在する木造建築物が高く評価されたためです!
宗廟には、大きく分けて下記の2つの木造建築物があります。
正殿 | ・左右幅が約150mもある横に長い木造建築物。 ・建物内は19の部屋に分かれており、各部屋に位牌が納められている。 ・廊下には”エンタシス”と呼ばれる中央部分にふくらみを持つ柱が立ち並ぶ。 |
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永寧殿 (ヨンニョンジョン) | ・正殿同様に横に長い木造建築物。 ・朝鮮王朝2代目の国王である定宗(チョンジョン)をまつっている。 ・正殿同様に複数の位牌が納められているが、主に正殿に納めきれない位牌が永寧殿に納められている。 |
その他の建築物 | 典祀庁(チョンサチョン)、楽工庁(アッコンチョン)、功臣堂(コンシンダン) |
正殿と永寧殿どちらにも共通している点が、横に長い木造建築物内に複数の位牌が納められていることです。
建造された当初の宗廟は、現在見られるような横に長い建物ではありませんでした。
しかし、国王が亡くなる度に位牌がつくられていったため、位牌を全て納められるように建物を改築し、広いスペースをつくる必要が出てきたのです。
次々と歴代国王の位牌を納めていった結果、現在見られるような横長の建築物へと姿を変えていきました。
また、宗廟は韓国の主要な宗教として知られる儒教(じゅきょう)の考えに基づいて設計・建築されています。
宗廟に多くの位牌が納められている理由は、祖先崇拝を非常に重視していた儒教の考えが繁栄されている影響もあるのです。
宗廟大祭(チョンミョデジェ)とは?無形文化遺産とは?
宗廟では、毎年5月に「宗廟大祭(チョンミョデジェ)」という韓国伝統のお祭りが行われています。
宗廟大祭が始まったのは、今から500〜600年前(15世紀頃)のことで、朝鮮王朝の歴代国王の功績をたたえる目的で行われています。
普段は位牌が納められている各部屋の扉は閉じられていますが、宗廟大祭の時に限り扉が開かれる点が最大の特徴です。
ちなみに、宗廟大祭は2001年にユネスコの「人類の口承及び無形遺産の傑作」という無形の遺産に対する大きな評価を受け、2009年には「無形文化遺産」に登録されています。
(ユネスコについてはこちらの記事で詳しく解説してます)
用語メモ
無形文化遺産とは、建築物や遺跡のような物理的に存在する遺産とは違い、モノ自体は存在しないが世界に大きな影響を与える価値のある出来事などに認められるもの。主に、祭り、儀式、食、芸術などで認められる。宗廟は世界遺産と無形文化遺産の両方が認められている非常に珍しい遺産なのです。
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
2級レベル
朝鮮王朝を建国し宗廟の建造に大きく関わった人物名として正しいものはどれか。
- 安思根
- 尹奉吉
- 張保皐
- 李成桂
④
答え(タップ)>>1級レベル
「宗廟」に関する説明として正しいものはどれか。
- 16世紀に織田信長率いる日本軍によって破壊された遺構が現在も残されている。
- 正殿は仏教の思想に基づいて造られた。
- 朝鮮王朝初の王宮である景福宮の離宮として建造された。
- 朝鮮王朝の歴代国王の功績をたたえる祭礼が無形文化遺産に登録されている。
④
答え(タップ)>>※「3,4級」レベルのトレーニングテストは対象外になります。
まとめ
- 宗廟には朝鮮王朝の歴代国王の位牌が納められている。
- 建造は朝鮮王朝の建国もした李成桂。
- 宗廟には位牌のみ納められており、遺体は点在する朝鮮王陵に納められている。
- 横に長い建物構造は儒教の考えに基づいて設計・建築されている。
- 朝鮮王朝の歴代国王の功績をたたえる祭礼「宗廟大祭(チョンミョデジェ)」は無形文化遺産に登録されている。
おまけ:「宗廟」のプチ観光情報
最寄り都市 | ソウル |
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最寄り空港 | 仁川国際空港 or 金浦国際空港 |
公用語 | 韓国語 |
通貨 | 大韓民国ウォン |
観光のベストシーズン | 4〜10月 |
時差 | なし |
治安 | 良い |
物価 | 普通(日本より少し安い) |
ビザ | 不要 |
拝観料 | 1,000ウォン(約100円) |
営業時間 | 2〜5月、9〜10月:09:00〜18:00 6〜8月:09:00〜18:30 11〜1月:09:00〜17:30 |
休館日 | 火曜日 |
宗廟がある都市は韓国の首都ソウルであるため、日本からアクセスの良い海外の世界遺産の一つとして知られています。
さらに、治安が比較的よく、市内中心部に位置するアクセスの良さも魅力であるため、初めての海外の世界遺産訪問として非常にオススメです。
アクセス
日本各都市からソウルへの直行便は就航してます。
- 日本各空港 [フライト時間:1時間30分〜2時間30分] ⇨ 仁川国際空港 or 金浦国際空港 [鉄道乗車時間:30分〜1時間] ⇨ ソウル中心部 [地下鉄乗車時間:数十分] ⇨ 地下鉄1、3、5号線「鍾路3街駅」 [徒歩:約5分] ⇨ 宗廟
宗廟観光の注意点
宗廟を観光する上で、注意しなければならない点が大きく分けて2つあります。
- 自由に観覧ができるのは土曜日のみ
- 歩いてはいけない場所がある
宗廟を訪れた際は、基本的にガイド同行のツアーで周ることになります。
唯一、土曜日のみ自由に観覧ができるので、時間を気にせず自由に観光したい方は土曜日に訪れましょう!
また、宗廟は非常に神聖な空間です。
そのため、神様が通る道と言われている正殿中央の道など、敷地内の一部分は歩くことが禁止されているので、事前に情報を集めておきましょう。
(宗廟の公式ホームページはこちら)
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。