こんな方にオススメの内容!
- 人類進化の歴史についてわかりやすく学びたい!
- 人類進化の歴史に関係する世界遺産を知りたい!
- 国や文明の誕生経緯について理解したい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
遺産ポイント
- 現人類の起源となる動物はアフリカのチャドで誕生
- ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの生き残りが現人類の原型
- 脳の発達に伴い農耕生活や定住生活がスタート
人類進化の歴史の流れ(年表)
解説する人類進化の歴史の期間は、以下の通りです。
人類の起源となる動物の誕生 〜 国・文明の誕生
700万年前 | サヘラン・トロプス ⇨アフリカのチャドで発見された最古の人類と考えられる動物。二足で歩くことはできるが、生活の半分は木の上で過ごしていた猿に非常に近い動物。 |
---|---|
570〜530万年前 | アルディピテクス・カダバ(アルディピテクス属) ⇨アフリカのエチオピアで発見された動物。長らく最古の人類とされていたアウストラロピテクスより古い人類であるという大きな発見になった。 |
440万年前 | アルディピテクス・ラミダス |
420万年前 | アウストラロピテクス ⇨人類の祖先としてよく挙げられる代表的な動物。アフリカの各地で化石が発見されている。 |
240〜180万年前 | ホモ・ハピリス ⇨脳が大きく発達した動物の代表例。 |
150〜50万年前 | ホモ・エレクトゥス |
130万年前 | ジャワ原人 ⇨インドネシアのジャワ島で発見。 |
50〜30万年前 | 北京原人 ⇨北京市郊外の森林で発見。 |
50〜20万年前 | ホモ・ハイデルベルゲンシス ⇨ネアンデルタールとホモ・サピエンスの祖先。 |
40万年前 | ネアンデルタール人 ⇨アフリカ以外で発見された最初の人類(とされている)。後に発見される「ホモ・サピエンス」と比較して”旧人”に分類される。 |
20万年前 | ホモ・サピエンス ⇨アフリカにいた人類の集団から誕生した人類。先に発見されたネアンデルタール人と比較して”新人”に分類される。 |
4万年前 | ネアンデルタール人が姿を消す |
4〜1万年前 | クロマニョン人 ⇨住居などとして使われていた洞窟に壁画を残す。 |
紀元前10000〜3000年 | 農耕生活スタート&定住化が始まる(農業革命) |
紀元前3000年 | シュメール(イラク付近)やエジプトといった国の誕生。 |
現在わかっている情報によると、最古の人類として挙げられるのが、アフリカのチャドで発見された化石「サヘラン・トロプス」です!
ただし、近年は新しい発見が次々と出てきているため、今後最古の人類として挙げられる名称が変わってくることが予想されます。
「ホモ・サピエンス」とは?
前述の年表で度々出てきた「ホモ・サピエンス」や「ホモ〜」ですが、人類進化で特に重要な存在と考えられているのです。
- ホモ:人
- サピエンス:賢い
ホモ・サピエンスとは、ラテン語で”賢い人”という意味になります。
このことからも、ホモ・サピエンスは現人類のような脳が大きく発達した人類であることがわかります。
また、その他の「ホモ〜」は従来の猿に近いヒトではなく、ヒトに近い動物といったニュアンスを持ちます。
ホモ・サピエンス、これまでどの生物もなし得なかった脳の大きな進化を遂げ、大きな繁栄をほしいままに手にしたのです!
地球の歴史から見ると人類の歴史は非常に短い
前述の年表は約700万年前から始まっていますが、さらにスケールを大きくしてみると、地球自体の誕生は約46億年前とされています。
46億年前 | 地球の誕生 |
---|---|
38億年前 | 生命の誕生 |
1億6000万年前 | 恐竜の時代 |
700〜600万円前 | サルとヒトが分かれて最初の人類の誕生 |
20万年前 | 現在のヒトに近いホモ・サピエンスの誕生 |
このように、地球全体の歴史から見ると人類の歴史はほんの一部にしか過ぎないのです!
一方で、これまでゆっくり進化をしてきた地球上の生物が、ここ20万年の間で急速な進化を遂げてきたという考え方をすることもできます。
なお、ホモ・サピエンス以降、生物が急速に進化を遂げた理由に関しては、後述の「人類進化の大きな分岐点となる「ネアンデルタール人VSホモ・サピエンス」」で詳しく解説します。
人類進化の歴史から学ぶ世界遺産
世界遺産には、人類の誕生や進化に関わるものも数多く存在します。
- 人類の祖先と考えられている生物の化石
- 古代人が築いた集落跡・建造物
- 古代人が残した芸術
また、人類の誕生や進化に関わる世界遺産には、登録基準(iii)(vi)が認められることが多いのが特徴です。
(登録基準の詳細はこちらの記事で解説してます)
アウストラロピテクスから始まる人類の歴史
前述の「人類進化の歴史の流れ(年表)」で少し触れたように、現在わかっている最古の人類は、アフリカのチャドで見つかったサヘラン・トロプスです。
一方で、現在の人類のように、地上でモノを使って生活するようになったとされる最古の人類は、420万年前に存在したアウストラロピテクスとされています。
つまり、現人類に近い形で生息していた生物の始まりはアウストラロピテクスと考えることができるのです。
(ちなみにアウストラロピテクスとは、「南のサル」という意味)
当時、アウストラロピテクスが地上の生活で使用していたとされる石器なども見つかっています。
そして、アウストラロピテクスの時代はなんと200万年以上も続いたのです!
該当世界遺産1:アワッシュ川下流域(エチオピア)
- アウストラロピテクスをはじめとする人類の化石が大量に発掘された
- アフリカを南北に貫く巨大な谷「大地溝帯(だいちこうたい)」に化石が集中している
- アワッシュ川中流域ではさらに古い化石も見つかっている
アウストラロピテクスの化石発掘現場として最も有名と言っても過言ではないエリアが、エチオピアを流れるアワッシュ川近辺です。
エチオピアには「大地溝帯(だいちこうたい)」と呼ばれる巨大な谷と多くの火山が存在します。
火山噴火によって発生した火山灰が化石のある谷に積もり、結果として動物などの化石の保存の役割を担ったのです。
さらに、アワッシュ川の中流域では、アウストラロピテクスよりも古い「アルディピテクス」の化石も見つかっています。
該当世界遺産2:ンゴロンゴロ保全地域(タンザニア)
「ンゴロンゴロ保全地域」は人類の化石だけでなく豊かな動植物を見られる点も高く評価されている
- オルドゥヴァイ渓谷でアウストラロピテクスなどの化石が多数発掘された
- 周辺は豊な自然が広がり、多種多様な動物が生息しているため複合遺産として登録されている
- 石器などの道具も見つかっている
ンゴロンゴロ保全地域は、火山活動によって誕生した巨大なクレーター(くぼみ)が最大の特徴の、タンザニアを代表する保護区です。
そんな保護区内のオルドゥヴァイ渓谷では、アウストラロピテクスをはじめとする多数の人類の化石が見つかっています。
かつての人々は、渓谷の起伏などを利用した生活拠点をつくっていたと考えられています。
なお、周辺は豊な自然や数多くの動物の生息地ともなっているため、文化(人類の化石)と自然両方の価値が認められ複合遺産として登録されています。
該当世界遺産3:南アフリカの人類化石遺跡群(南アフリカ)
- アウストラロピテクス・アフリカヌスと呼ばれる南アフリカにいた人類の化石が発掘された
- 居住の跡や火を使った跡も見つかっている
- 絶滅した動物の化石も発掘されている
アウストラロピテクス・アフリカヌスと呼ばれる、南アフリカで最初に発見された貴重な人類の化石が発掘されています。
他にも、ホモ・ハビリスやホモ・エレクトゥスなど、人類の進化のターニングポイントとなる化石も見つかっています。
また、人類の化石だけでなく、巧みな生活を送っていたと考えられる遺跡なども多く見つかっている点が特徴です。
なお、世界遺産登録された1999年当時の登録名称は『スタルクフォンテイン、スワルトクランス、クロムドライおよび周辺地域の人類化石遺跡群』という非常に長い名前でした。
しかしその後、南アフリカの至る所で化石が見つかったため、現在の登録名称のように「南アフリカ」という国名を用いた登録名称に変えられたのです。
”現在のヒト”に近づく「ホモ・ハピリス」「ホモ・エレクトゥス」の誕生
前述の「ホモ・サピエンス」とは?」でも解説したように、「ホモ〜」という名前がついたものは、頭の機能が発達してきた人類の証拠になります。
そんな「ホモ〜」の最初期として挙げられる種類が、「ホモ・ハピリス」と「ホモ・エレクトゥス」です!
ホモ・ハピリスは、かつてのアウストラロピテクスなどよりも大きな脳を持ち、見た目がより人間らしくなった点が特徴です。
さらにホモ・エレクトゥスになると、石で道具を作り、その道具を使って集団で狩を始めるなど、より高度な生活を送っていたと考えられています。
また、アフリカ大陸のみに暮らしていた古来の人類が、アフリカ大陸以外に進出した、言わば「出アフリカ」最初の種類としてホモ・エレクトゥスが挙げられます。
該当世界遺産1:オモ川下流域(エチオピア)
- 数種類のアウストラロピテクスの化石発掘がきっかけ
- ホモ・ハビリスとホモ・エレクトスの化石が見つかった貴重な地域
- 石器なども見つかっている
最初の発掘は、ホモ・ハビリスやホモ・エレクトスよりも古いとされるアウストラロピテクス属の数種類の化石です。
オモ川下流域で発掘されたアウストラロピテクス属の化石は、現在世界で見つかっている種類の大部分を占めています。
さらにその後、アウストラロピテクスの次の世代にあたるホモ・ハビリスとホモ・エレクトスの化石も見つかりました。
他にも、石で作られた道具なども見つかり、オモ川下流域は貴重な人類化石発掘エリアと言えます。
アフリカ以外で大きく進化したヒトの代表例「ジャワ原人」「北京原人」
ジャワ原人と北京原人は、アフリカ以外で発掘された人類化石の最初期に当たるものです。
つまり、アフリカから別の大陸へ人類が渡った証拠となる化石なのです!
従来までいたアウストラロピテクス属は、アフリカにいることが前提で付けられていた名前です。
しかし、ジャワ原人のようにインドネシアのジャワ島で発掘された化石以降は、発掘された土地の名前がそのまま名称になることが増えてきます。
ジャワ原人 | 130万年前 | インドネシアのジャワ島で発見 |
---|---|---|
北京原人 | 50〜30万年前 | 北京市郊外の森林で発見 |
なお、ジャワ原人と北京原人は、アフリカ北部やユーラシア大陸の北部に渡ったとされるホモ・エレクトゥスが、温暖なアジアを目指してたどり着いた人類だと考えられています。
該当世界遺産1:サンギラン初期人類遺跡(インドネシア)
- ジャワ原人の化石が発掘された
- 現在までに発掘されている初期人類の化石の半数が見つかった地域
- 見つかった化石は現人類の祖先とは異なると考えられている
サンギランは、インドネシアのジャワ島にある、ジャワ原人の化石が多く見つかった地域です。
アフリカからユーラシア大陸に渡り、その後温暖なアジアを目指したとされる人類の一種で、この時期に人類が世界各地に広がった大きな証拠と考えられています。
ただし、ジャワ原人は現在の人類の祖先とはあまり深い関係がない種類と考えられています。
該当世界遺産2:周口店の北京原人遺跡(中国)
- 北京原人の化石が発掘された
- 直立歩行&火を使う巧みな人類だった
- さらに現代人に近い「山頂洞人(さんちょうどうじん)」の遺跡も見つかっている
日本から最も近い人類化石発掘現場として有名なのが、中国の北京市郊外にある周口店遺跡です。
アフリカ大陸から離れユーラシア大陸へと渡り、東アジアへとたどり着いた代表的な古代人で、頭蓋骨の発見によってさらに多くの化石が眠っていることがわかりました。
北京で発見されたため、北京原人と呼ばれています。
(世界共通の名称(学名)としては「シナントロプス・ペキネンシス」と呼ばれている)
特に、自ら火を起こして生活していた跡が残されている点が最大の特徴です。
さらに、直立歩行をしていたことが考えられているため、現人類に近い高度な生活を送っていたとされています。
ホモ・エレクトゥスの進化形「ホモ・ハイデルベルゲンシス」の誕生
前述の「”現在のヒト”に近づく「ホモ・ハピリス」「ホモ・エレクトゥス」の誕生」で登場した、現人類に近づくホモ・エレクトゥスの進化系がホモ・ハイデルベルゲンシス(ハイデルベルク原人)です。
ホモ・エレクトゥスよりさらに脳が大きくなっているため、より現人類に近い人間らしい行動を取ることが可能になりました。
また、ホモ・ハイデルベルゲンシス後に登場するネアンデルタール人とホモ・サピエンスの祖先とも考えられています。
特にホモ・サピエンスは、現人類に最も近い古代人と考えられているため、その祖先であるホモ・ハイデルベルゲンシスの誕生は人類進化の大きなターニングポイントとも言えるのです。
該当世界遺産1:アタプエルカの考古遺跡(スペイン)
- ホモ・ハイデルベルゲンシスと考えられる化石が発見された
- ヨーロッパ最古の人類ホモ・アンテセッサーも見つかっている
スペインのアタプエルカはヨーロッパ最大の人類化石発掘現場と言っても過言ではありません。
約80万年前にいたと考えられている、ヨーロッパ最古の人類ホモ・アンテセッサーの発見で一躍有名になりました。
さらにその後、現人類の進化に大きく関わっているホモ・ハイデルベルゲンシスの化石も見つかっており、ヨーロッパ地域における人類進化の研究に欠かすことのできない重要なエリアとなっています。
人類進化の大きな分岐点となる「ネアンデルタール人VSホモ・サピエンス」
ネアンデルタール人とホモ・サピエンスは、人類進化の過程史上、特に重要な種であると考えられています。
なぜなら、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの生存争いの結果によっては、現人類の体のつくりや脳の仕組みが大きく変わっていた可能性があるからです!
名称 | 生存時代 | 分類 | 生活域 |
---|---|---|---|
ネアンデルタール人 | 40万年前 | 旧人 | ヨーロッパ、中央アジア、中東 |
ホモ・サピエンス | 20万年前 | 新人 | アフリカ、ユーラシア大陸全域 |
先に誕生したのはネアンデルタール人です。
ネアンデルタール人は、アフリカ大陸を出てユーラシア大陸の北部を生活拠点の中心にしていました。
その後、しばらくアフリカにとどまっていたと考えられるホモ・サピエンスも、ユーラシア大陸へと進出してきました。
そして、ついに両者は遭遇することになるのです!
北部から南部に移動したネアンデルタール人は、もともと南部を生活域にしていたホモ・サピエンスに出会いました。
ここで、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの生存競争が開始されます。
結論から言うと、生き残ったのはホモ・サピエンスでした。
- 狩猟採集が得意だったため戦い能力に優れていた
⇨弓矢や投げ槍など武器の製造にもたけていた - 犬を飼い慣らせるほどの育成能力を持っていた
⇨犬を使った狩もしていた - 肉だけでなく、魚や植物なども食料として確保していた
一方で、ネアンデルタール人は肉を主食とし(多少魚も食べていた)、ヤリや斧を使った原始的な食料確保をしていたことから、脳の発達が遅かったと考えられています。
体格に大きな違いはなかったものの、脳の発達具合の差が勝敗に大きく影響していたのです。
ちなみに両者の脳のつくりは、ネアンデルタール人が”単機能コンピュータ型”、ホモ・サピエンスが”ネットワーク型”と言われています。
人種名称 | 脳の機能 | 特徴 |
---|---|---|
ネアンデルタール人 | 単機能コンピュータ型 | 得意分野の機能に特化。一方で、それぞれの機能の連携ができないため柔軟な判断をすることが苦手。 |
ホモ・サピエンス | ネットワーク型 | それぞれの機能の連携が得意で柔軟な判断ができる。ネットワーク型の脳のつくりが誕生したことを”認知革命”と呼んでいる。 |
ネットワーク型の脳の場合、場所や形などの単純な情報だけでなく、他のものと比較して類似点や差異を含めて、よりイメージしやすいように伝える能力を備えています。
加えて、時系列(ストーリー性を持った解釈)の記憶にも優れているため、物事を関連づけて論理的に処理する能力もありました。
なお、ユーラシア大陸で活動範囲を広げていったホモ・サピエンスは、下記のように次々と新しい大陸・島にも進出していきました。
4万年前 | 日本にホモ・サピエンスがやってくる。 |
---|---|
2万7000年前 | シベリアからアラスカにたどり着く。 |
1万2000年前 | アメリカ大陸にたどり着く。 |
1万年前 | 南米大陸にたどり着く。 |
該当世界遺産1:ゴーハムの洞窟群(イギリス)
- イギリス領ジブラルタルの海岸沿いにある洞窟群
- 洞窟内でネアンデルタール人が生活していた跡が見つかっている
- ちょっとした芸術作品も見られる
女性の頭蓋骨の発見をきっかけに、ジブラルタルで約10万年以上にわたるネアンデルタール人の生活が送られてきたことがわかっています。
ジブラルタルの海岸沿いは水や潮風によって岩が浸食されやすいため、人が入れる大きさの洞窟が誕生しやすい環境でした。
そして、この洞窟を利用して生活していたのがネアンデルタール人です。
また洞窟内からは、ネアンデルタール人が岩に刻んだとされる抽象的な模様を見ることができます。
つまり、ネアンデルタール人は芸術に関して強い関心を持っていたと考えられるのです!
該当世界遺産2:ウィランドラ湖群地域(オーストラリア)
- ホモ・サピエンスの骨が発見された
- 約2万6,000年前とされる火葬された女性の骨も見つかっている
- 地球の歴史を感じられる地域でもあるため複合遺産として登録された
ホモ・サピエンスの化石発掘現場の重要拠点とも言えるのが、オーストラリアのウィランドラ湖周辺です。
特に驚くべき発見として挙げられるのが、数万年前の火葬された女性と考えられている骨が見つかった点です!
つまり、この時代から人を火葬して埋葬する文化が根付いていたと考えることができるのです。
ちなみに、湖周辺は国立公園として管理されており、レッド・カンガルーやウエスタン・グレー・カンガルーなど、貴重な動物の生息地としても知られています。
加えて、氷河期でも凍らなかった湖が存在するなど、人類だけでなく地球の歴史を見ることができる点も評価されているため、複合遺産として登録されています。
現人類の自給自足生活の源が生まれた「クロマニョン人」
現人類のような高度な生活に大きく近づくことになる分岐点となった古代人が、クロマニョン人です。
具体的な高度な生活とは、狩猟採集を中心とした生活です!
【クロマニョン人の狩猟採集生活の特徴】
- 食料が取れる時期の把握
- 動物の習性の学習や食べれる植物の判断に長けている
- 貝や木の実など新たな食物の確保
つまり、自然環境を把握して、自然を最大限に活かした生活を行っていたのです。
さらに、「アミニズム」と呼ばれる文化の誕生や、洞窟に壁画を残すなどの芸術活動が本格化したのもクロマニョン人の誕生からです。
用語メモ
アミニズムとは、自然界のありとあらゆるものに精霊が宿っていると考えお祈りする文化。人類で初めて誕生したお祈り文化と考えられている。該当世界遺産1:ヴェゼール渓谷の装飾洞窟と先史遺跡(フランス)
ラスコーの壁画は世界最古のものと考えられている
- クロマニョン人が使用したとされる道具が発見された
- 動物が描かれた「ラスコーの壁画」が有名
- 色鮮やかに描かれている点が大きな特徴
クロマニョン人が芸術センスのある人類である代表的な例が、ヴェゼール渓谷のラスコーに描かれている壁画です。
人類最初の芸術とされるラスコーの壁画は1万5000年前に描かれたもので、動物が色鮮やかに描かれています。
この描かれた動物たちは、狩が成功することを祈って描かれたのではないかと考えられているのです。
また、クロマニョン人が生活に使用していた道具や、動物と見られる化石も多く見つかっています。
該当世界遺産2:アルタミラ洞窟とスペイン北部の旧石器洞窟美術(スペイン)
色彩豊かに描かれているアルタミラの動物壁画
- 洞窟の奥深くに描かれた壁画が特徴的
- 当時の西ヨーロッパに誕生した「マグダレニアン美術」の代表例
- 「ラス・マデダス洞窟」の壁画が最後に描かれたものとされている
スペインのアルタミラ洞窟の壁画は、前述の「ヴェゼール渓谷のラスコー壁画」とほぼ同時期に描かれた壁画とされています。
アルタミラ洞窟の壁画の特徴として挙げられるのが、主に下記の2点です。
- 気候の影響を受けにくい洞窟の奥に描かれているため保存状態が良好
- 岩肌の凹凸(おうとつ)を利用して立体感を出している
世界中に点在する壁画の中でも特に保存状態が良いため、当時の生活や芸術活動を理解する上での貴重な資料と言われています。
また、岩肌の凹凸(おうとつ)を利用した立体的な壁画という点が、他の壁画とは大きく異なる点です。
なお、地球の温度が上昇し、人々の生活スタイルが変化されていった影響もあり、徐々に壁画は描かれなくなっていきました。
そのため、ラス・マデダス洞窟に描かれている壁画が、この地域最後の芸術作品と考えられています。
現人類の生活の基盤!農耕生活のスタート
人類の体の形や脳の仕組みの進化が一定に達したのが、前述のクロマニョン人時代の人類です。
そして、今から約1万2,000年前から、ついに農耕生活(農業)がスタートします。
この時代から、現人類の農業文化の源が生まれました。
氷河期が終わったことで、地球各地に新たな植物が生育し始めました。
すると、食料になりうる植物も誕生し、人々の食生活に植物が入ってくるようになったのです。
また、命懸けで狩猟するだけでなく、安定した食料供給をするために、自分たちで食料を育てるという意識も芽生えたのです。
【主な農作物と生産地域】
- メソポタミア(現在の中東付近):小麦や大麦の栽培が盛んに行われた
- 中国:米やアワ
- 北米:とうもろこし
- 南米:じゃがいも
肉だけでなく植物も食生活に入ったことで、ここから世界の人口が爆発的に増えていきます。
このように、人類の食料生産方法に農業が入り、生活スタイルが大きく変化したことを「農業革命」と言います。
なお、農業は天候に大きく左右されます。
そのため、点に祈りを捧げる儀式なども世界各地で誕生しました。
自然を神様として拝む文化も誕生し、後の宗教誕生に大きな影響を与えているのです。
該当世界遺産1:ギョベクリ・テペ(トルコ)
人類が農耕生活をスタートさせた証と考えられているトルコの遺跡「ギョベクリ・テペ」
- 農耕が発達する直前に築かれたとされる巨石が残る
- 世界最初期の農業地帯メソポタミアを象徴する遺跡
- 農耕よりも先に宗教が発達した証拠ともなりうる
トルコにあるギョベクリ・テペは、人類が狩猟から農耕へと移るその直前に築かれたとされる遺跡です。
農耕へ移る直前の遺跡と言われる理由は、まだ農耕が始まっていない約1万2000年以上前に築かれた神殿が見つかっているためです。
つまり、農耕よりも先に宗教が誕生したとされる貴重な資料となっているのです!
ギョベクリ・テペには、植物の栽培とされる跡は残されておらず、反対に巨石などの宗教に関わりそうな施設跡が数多く見つかっています。
驚くべきことに、世界的に有名なエジプトのピラミッドよりも古い時代の宗教施設と特定されているのです!
石柱には様々な動物が描かれており、宗教と動物が深く結びついている証明にもなっています。
また宗教の発展によって、人々が集まる機会が多くなることが考えられます。
このように、人の密集地域が増えたことが、大量生産が可能な農耕へ歩み始めるきっかけになったとも考えられているのです。
なお、農耕をスタートさせるためには様々な植物の研究や品種改良が必要だったため、決して農作物を簡単に手に入れることはできないことを示している遺跡でもあります。
該当世界遺産2:チャタルヒュユクの新石器時代の遺跡(トルコ)
現在も発掘作業が進められているトルコの「チャタルヒュユク遺跡」
- 人類の定住での農耕開始を示す遺跡
- 天井画や彫刻など芸術作品が残されている
- 住居が非常に密集している集落を形成していた
トルコのチャタルヒュユクに残されている遺跡からは、下記のような人類の生活変化を見ることができます。
- 集住生活から定住生活へ
- 狩猟生活から農耕生活へ
チャタルヒュユクに街が築かれる以前の人類は、狩猟を中心とした食生活を送り、人々が集まって生活を送っていました。
一方でチャタルヒュユクの街では、自分たちで食物をつくる農耕を始め、農地を管理するために各々が住む場所を固定して生活するスタイルに変化していったのです。
さらに住居と見られる遺跡からは、天井画や彫刻といった芸術作品も次々と発見されました。
このように定住生活が始まり、芸術活動が盛んに行われていたことから、チャタルヒュユクには大きな集落が形成されていたと推測されています。
実際に、チャタルヒュユクは住居と住居の間に道が無いほど、密集するように住居が構えられていたと考えられているのです。
該当世界遺産3:北海道・北東北の縄文遺跡群(日本)
- 日本の縄文時代の暮らしの変化「定住〜儀式の誕生」を見ることができる
- 貝塚やストーンサークルなどの独特な遺跡・遺構も発掘されている
- 「三内丸山遺跡」は日本最大規模の縄文集落
世界だけでなく、日本各地でも原始的な生活の様子を見ることができる遺跡があります。
特に「北海道〜北東北」エリアにかけては、時代ごとに生活スタイルが変化していった様子を見ることができる貴重な地域です。
特に最も有名な集落が、青森県に位置する三内丸山遺跡です。
縄文集落の規模としては日本最大級で、「大型掘立柱建物」「竪穴住居」「土器・土偶」など、縄文時代を代表する建造物、道具、装飾品が発掘されています。
他の集落跡からは、「(儀式のための)ストーンサークル」や「貝塚」が見つかっており、定住だけではなく宗教に関わる行事が行われていたことも示しています。
国や文明の誕生
狩猟採集生活、農耕生活を経て、ついに誕生したのが国や文明です!
中でも世界最古級の国として挙げられるのが、シュメール都市国家やエジプト王国です。
人口が増えたことで、世界各地に大きな街がつくられていきました。
すると、多くの人々の生活を管理するシステムが必要となってきます。
そこで次第に、文字、法律、聖書、身分制度、貨幣などが街単位で整備されていったのです。
そう、この整備こそ国の誕生に繋がっていきます。
こうして誕生した国や文明が、現在の国の基礎となる部分を作り上げたと考えられています。
該当世界遺産1:アッシュル(カラット・シェルカット) イラク
- イラクに誕生した世界最初期の都市国家
- 世界最古の文明と言われるメソポタミア文明の都市の一つ
- 文字が書かれたものも発掘されている
世界最古の都市として挙げられるのが、イラクに位置するアッシュルです。
世界最古の文明と言われているメソポタミア文明の都市の一つで、文明誕生に関する代表的な遺跡として注目を浴びています。
また、文字が書かれたものや宮殿跡と見られる遺跡も発掘されており、国や都市の成り立ちを知る上で非常に貴重な遺跡です。
ちなみに「カラット・シェルカット」とは、現在存在する都市名で、アッシュルから変更されました。
該当世界遺産2:メンフィスとその墓地遺跡 – ギザからダハシュールまでのピラミッド地帯(エジプト)
数千年前に建造された巨大建築物「ギザの三大ピラミッド」
- 古代エジプト文明の象徴となるエリア
- 歴代エジプト王に関する巨大なピラミッドを含む多くの建造物が点在
- いまだに解明されていない謎が多い
世界の文明の象徴的存在とも言えるのが、エジプトのギザからダハシュールにかけて残されているピラミッド群です。
現在も残されているピラミッドの高さは100mを超え、そんな巨大なピラミッドが何kmにも渡って点在しています。
それぞれのピラミッドは、クフ王、カフラー王、メンカウラー王など、国を支えた歴代の王の墓として建造されました。
技術や研究が進んだ現在においても、どのようにしてピラミッドがつくられたのかはわかっていません。
一つの石の重さは2.5トンもあるため、人間の手で運ぶことは非常に困難です。
加えて、100mを超える高さまで巨大な石を積み上げる高度な技術があったことも考えにくいです。
まとめ
- 最古の人類として考えられているのがチャドで見つかった「サヘラン・トロプス」
- 現人類に近い形で生息していた生物の始まりは「アウストラロピテクス」
- アウストラロピテクス時代に該当する世界遺産は「アワッシュ川下流域」「ンゴロンゴロ保全地域」「南アフリカの人類化石遺跡群」
- 脳が大きく発展した「ホモ・ハピリス」と「ホモ・エレクトゥス」はアフリカ以外の大陸にも進出した最初の種
- ホモ・ハピリスやホモ・エレクトゥスの時代に該当する世界遺産は「オモ川下流域」
- ジャワ原人と北京原人は、アフリカ以外で発掘された人類化石の最初期
- ジャワ原人は「サンギラン初期人類遺跡」北京原人は「周口店の北京原人遺跡」が世界遺産登録
- 「ホモ・ハイデルベルゲンシス」の誕生により現人類のような人間らしい姿により近づいた
- ホモ・ハイデルベルゲンシス時代に該当する世界遺産は「アタプエルカの考古遺跡」
- ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの生存競争の勝者が現人類の脳や体のつくりの起源となっている
- 世界遺産「ゴーハムの洞窟群」はネアンデルタール人の住居
- 世界遺産「ウィランドラ湖群地域」で多くのホモ・サピエンスの化石が見つかった
- クロマニョン人時代から狩猟採集生活がスタートする
- 世界遺産「ラスコー」と「アルタミラ」にはクロマニョン人が描いた壁画が残されている
- 農耕生活がスタートしたことで世界の人口が爆発的に増えた
- シュメール都市国家やエジプト王国が人類最初期の国・文明と考えられている
なお今回の内容は、『図解でわかる ホモ・サピエンスの秘密』という書籍を参考に書いています。
図解や絵を交えて、時系列でわかりやすくまとめられているので、人類の進化をより詳しく学びたい方はぜひ手に取って読んでみてください。
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参考文献・注意事項
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。