こんな方にオススメの内容!
- そもそもフランク・ロイド・ライトという人物の正体を知りたい!
- ライトの建築作品が世界遺産登録された理由が気になる!
- ライト建築の代表作品について知りたい!
- 教養として世界遺産に関する知識を身につけたい!
- 世界遺産検定の受験を考えている!
- アメリカへの旅行を考えている!
遺産ポイント
- 世界遺産登録されている建築作品は8つ
- フランク・ロイド・ライト建築最大の特徴は「有機的建築」
- 各建築作品では自然の造形や原理に基づいた設計が見られる
「フランク・ロイド・ライトの20世紀建築作品群」のプロフィール
登録名称 | フランク・ロイド・ライトの20世紀建築作品群 |
---|---|
登録年 | 2019年 |
所在国 | アメリカ |
登録ジャンル | 文化遺産 |
登録基準 | (ii) |
備考 | シリアル・ノミネーション・サイトに該当(シリアル・ノミネーション・サイトの詳細はこちらの記事で解説) |
そもそも「フランク・ロイド・ライト」とは?
『フランク・ロイド・ライト』とは、世界の建築界に大きな影響を与えた20世紀を代表するアメリカの近代建築家です。
世界には、下記のような”近代建築四大巨匠”と呼ばれる人物が存在し、そのうちの一人として知られています。
No | 人物名 | 代表作 | 世界遺産名称 |
---|---|---|---|
① | フランク・ロイド・ライト | グッゲンハイム美術館、落水荘、ロビー邸 | フランク・ロイド・ライトの20世紀建築作品群 |
② | ル・コルビュジエ | サヴォア邸、ロンシャンの礼拝堂、国立西洋美術館 | ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献- |
③ | ミース・ファン・デル・ローエ | トゥーゲントハット邸 | ブルノのトゥーゲントハット邸 |
④ | ヴァルター・グロピウス | バウハウス・デッサウ校、ファグス工場 | ヴァイマル、デッサウ及びベルナウのバウハウスとその関連遺産群、アルフェルトのファグス工場 |
上記のように、近代建築四大巨匠の作品はいずれも世界遺産登録されています。
なお、ライトの具体的な建築特徴については、後述の「理由1:20世紀の近代建築の発展に重要な役割を果たした」で詳しく解説します。
世界遺産登録理由
滝の上に住居が建てられている独特な設計で有名なライト建築作品の一つ「落水荘」
フランク・ロイド・ライトの建築作品が世界遺産登録された理由は、大きく下記の2点に分けられます。
- 20世紀の近代建築の発展に重要な役割を果たした
- 世界の建築に大きな影響を与えた
前述の「そもそも「フランク・ロイド・ライト」とは?」で解説したように、ライトは近代建築を語る上で欠かせない建築家です。
さらに、他の近代建築家と比べても、見た目のデザイン、設計、理念、影響力などは他に類を見ない、唯一無二の存在として挙げられてます。
”唯一無二”と言われる理由は、ライト建築最大の特徴とも言える「有機的建築」がポイントになってきます。
(有機的建築については、後述の「理由1:20世紀の近代建築の発展に重要な役割を果たした」で詳しく解説します)
理由1:20世紀の近代建築の発展に重要な役割を果たした
ライト建築は、20世紀以降の建築の発展に重要な役割を果たした点が大きく評価されて、世界遺産登録されました。
そんなライト建築で最大の特徴と言えるのが「有機的建築(ゆうきてきけんちく)」です!
【有機的建築の特徴】
- 型にはまらず状況に応じて設計がなされる「オープンプラン」
- 外の世界(自然環境)と建築の内側の世界にはっきりとした境界線を引かない
- 鉄とコンクリートなど複数の素材を組み合わせる
要するに、従来の建築の考えにとらわれず、自由な発想、斬新な設計が行われ、自然の造形や原理に基づいた(自然に溶け込むような)建築が行われたのです。
また、よくライトの有機的建築は、ル・コルビュジエらの”機能主義建築”と相反するものとして挙げられます。
用語メモ
機能主義建築とは、あらかじめ目的を定めて設計・建築を行う手法。ル・コルビュジエなどの建築物は、とある目的を達成するための設計であるのに対して、ライトの建築物は周辺環境に合わせた設計・建築が優先されていた。住居、宗教関連、教育、仕事、娯楽に関わる生活に欠かせない建物の多くが、利用するためだけではなく、その土地の環境に応じた設計が行われているのです。
理由2:世界の建築に大きな影響を与えた
前述の「理由1:20世紀の近代建築の発展に重要な役割を果たした」で解説したように、有機的建築など、ライトが設計した建築物は近代建築の発展に大きな貢献をしました。
そしてこのライト建築の影響は、アメリカ国内のみならず世界中に広がっていったのです。
特に、ヨーロッパにおける近代建築運動には大きな影響を及ぼし、バロックやゴシックといった中世ヨーロッパで発展した建築からの脱却にも繋がりました。
そもそも、ライト自身も世界各国の文化や伝統に多くの影響を受けてました。
そうした各国の影響を受けて、ライトは伝統様式を打ち破る建築にたどり着いたのです。
言い方を変えると、現在の生活にふさわしい建築スタイルを作り上げました。
中でも、ライト建築で特に有名な技法が、水平のラインを強調したプレーリー・スタイル(草原様式)というものです。
ちなみに、プレーリー・スタイルが最も表現されたライト建築作品は、「フレデリック・C・ロビー邸」です。
(ロビー邸の詳細は後述で解説します)
なお、実は日本国内にもライトの建築作品がいくつかあります。
日本にも作品がある理由は、日本を訪れた際にライト自身も日本建築の影響を大きく受けたためです。
実際に世界遺産登録された作品の中で、「落水荘/カウフマン邸」など日本の影響を受けた建築もあります。
(落水荘の詳細は後述で解説します)
世界遺産登録されている建築作品
形状が独特な「グッゲンハイム美術館」内部のらせん状通路
世界遺産登録されているフランク・ロイド・ライトの建築作品は、全部で8つです。
8つの作品は全てアメリカに点在し、6州にまたがるシリアル・ノミネーション・サイトとして登録されています。
(シリアル・ノミネーション・サイトに詳細はこちらの記事で解説してます)
建築作品名 | 所在地 | 特徴 |
---|---|---|
ソロモン・R・グッゲンハイム美術館 | ニューヨーク州ニューヨーク | ※後述で解説 |
落水荘/カウフマン邸 | ペンシルベニア州ミル・ラン | ※後述で解説 |
タリアセン・ウエスト | アリゾナ州スコッツデール | 自分の生徒とともに衣食住をともにしたライトの学校。ウィスコンシン州にも最初のタリアセンがある。 |
タリアセン | ウィスコンシン州スプリンググリーン | ライトが弟子と一緒に設計した工房。周辺の自然環境にうまく溶け込んでいる。 |
ユニティ・テンプル | イリノイ州オークパーク | ※後述で解説 |
フレデリック・C・ロビー邸 | イリノイ州シカゴ | ※後述で解説 |
ハーバート・キャサリン・ジェイコブス邸 | ウィスコンシン州マディソン | 「ユーソニアンハウス」というコストパフォーマンスに優れた魅力ある小住宅群の代表例。天井から床までを全てガラス窓にするなどの特徴が見られる。 |
バーンズドール邸 / ホリー・ホック邸 | カリフォルニア州ロサンゼルス | ロサンゼルスの街並みを一望できる高台に建つ邸宅。内部にあるステンドグラスが美しいと評判。 |
ちなみに、ライトが最終的に手がけた作品の総数は480点にも上ります。
なお、世界遺産登録されているライト建築作品以外についても知りたい方は、多くの作品を取り上げている下記の書籍が非常におすすめです。
今回の記事内容の参考にもしているので、ぜひ一度手にとって読んでみてください。
- 商品名:フランク・ロイド・ライトの仕事・傑作選 (ATMムック)
発売日:2022年2月 - Amazonから購入
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ソロモン・R・グッゲンハイム美術館(ニューヨーク州/ニューヨーク)
独特な外観と特徴的な鑑賞スタイルで有名な「グッゲンハイム美術館」
- ライト建築最大規模の作品
- カタツムリの殻のように見えるらせん状通路が特徴
- 建物中央に巨大な吹き抜けがある
ニューヨークのセントラルパーク横に建てられた、らせん状の外観が特徴的な美術館です。
グッゲンハイム美術館は、独特な鑑賞スタイルが有名です。
- 入り口に入るとすぐエレベーターを利用して最上階へ行く。
- ↓
- エレベーターから降りるとらせん状通路に差し掛かり、壁に展示されている作品を鑑賞する。
- ↓
- らせん状通路の傾斜を利用して作品を見ながら徐々に下っていく。
- ↓
- らせん状通路を下り終えると作品展示も終わる。
一方で、らせん状通路の傾斜がキツすぎるため、ゆっくりと作品鑑賞ができないというクレームも出てきています。
落水荘/カウフマン邸(ペンシルベニア州/ミル・ラン)
周囲の自然環境に溶け込むようにしてたたずむ「落水荘」
- デパート王「エドガー・カウフマン」の邸宅
- 滝の上に住居が構えられている独特な設計
- 日本建築の影響を強く受けている
数あるライト建築の中でも、特に独特な設計が行われているとして有名なのが、日本建築の影響を受けた落水荘です。
なんと人工の滝ではなく、ベアランという自然の川の途中にある天然の滝の上に住居が建てられているのです!
建築依頼者であるエドガー・カウフマンの要望に
「滝と共に暮らす」
このような要件があったため、滝を含む周囲の自然環境に溶け込むように設計されました。
なお、建物内部と外部の自然環境とのつり合い、人と自然が一体となった暮らしというイメージは、カウフマンが日本建築から影響を受けたものです。
フレデリック・C・ロビー邸(イリノイ州/シカゴ)
ライト建築の特徴「プレーリー・スタイル」が随所に見られる「ロビー邸」
- ライト建築の特徴「プレーリー・スタイル」が取り入れられている
- 外装はレンガ、内装は木材
- 内部の装飾は木材に溶け込むように設計
大都市シカゴの郊外のオークパークに築かれた、25もの住宅群の一つです。
外観はレンガ造りですが、内部には木材が使用されています。
さらに内部の装飾は、木材の色合いに合わせた設計が施されています。
そして最も大きな特徴と言えるのが、ライト建築の特徴とも言えるプレーリー・スタイル(草原様式)が見られる点です。
- 低い傾斜の屋根が水平に伸びる
- 横長の窓が並べられている
- 1本の線に見せるためにレンガの繋ぎ目がわからないようにしている
直線や水平線を用いることで、周囲の自然に溶け込んでいる印象を与えられるだけでなく、建物がどっしりと構えられているという安心感を与えることもできるのです。
ユニティ・テンプル(イリノイ州/オークパーク)
ギリシャ神殿を彷彿とさせる外観が特徴の「ユニティ・テンプル」
- 「ユニテリアン・ユニバーサリズム」という宗教の教会
- ライトが長年過ごした街にある
- 内部の家具や照明も設計している
ユニティ・テンプルは、まるでギリシャ神殿のような外観が特徴の宗教施設です。
建てられた当時(1908年完成)としては珍しく、鉄筋コンクリートを用いて建築されています。
また、自然の光を取り込んで美しく見えるステンドグラスが見られることで有名です。
さらに、ライトは建物の設計のみならず、内部の家具や照明も設計しています。
実は日本にもライト作品がある!?世界遺産候補「旧山邑(やまむら)家住宅(ヨドコウ迎賓館)」
実は、日本国内にも計4つのライト建築作品が存在します。
- 旧山邑(やまむら)家住宅/ヨドコウ迎賓館(兵庫県芦屋市)
- 帝国ホテル中央玄関/明治村(愛知県犬山市)
- 旧林愛作邸(東京都世田谷区)
- 自由学園明日館(東京都豊島区)
中でも、「旧山邑(やまむら)家住宅/ヨドコウ迎賓館」は日本にあるライト建築の傑作と言われており、なんとライト建築作品として世界遺産の追加登録も考えられているほどです!
ただし、具体的な登録時期については記載が無かったため、今後アメリカと日本の共同推薦の動きに注目が集まります。
本日の確認テスト
(「世界遺産検定」の概要についてはこちらの資料を参考にしてください)
3,4級レベル
フランク・ロイド・ライトの建築作品として世界遺産登録されている美術館の名称として正しいものはどれか。
- メトロポリタン美術館
- グッゲンハイム美術館
- プラド美術館
- オルセー美術館
②
答え(タップ)>>2級レベル
”水平ラインを強調する”というライト建築の特徴の一つとして挙げられる技法名として正しいものはどれか。
- カノプス
- ピロティ
- キヴァ
- プレーリー・スタイル
④
答え(タップ)>>1級レベル
「フランク・ロイド・ライトの20世紀建築作品群」に関する説明として誤っているものはどれか。
- ライト建築作品はアメリカ6州にまたがって登録されている。
- 世界遺産推薦書には日本にあるライト建築作品の追加登録検討が記載されている。
- ライト建築は自然の造形や原理に基づいた建築が行われている。
- 「落水荘」にはライト建築の特徴の一つであるプレーリー・スタイルが随所で見られる。
④
答え(タップ)>>まとめ
- ライトは”近代建築四大巨匠”の一人に数えられている。
- ライト建築最大の特徴は従来の建築概念にとらわれない有機的建築。
- 水平のラインを強調したプレーリー・スタイルはライトを象徴する建築技法。
- 世界遺産登録されている建築作品は8つ(グッゲンハイム美術館、落水荘、ロビー邸、他)。
- 日本にある「旧山邑家住宅」が世界遺産の追加登録候補になっている。
おまけ:「フランク・ロイド・ライトの20世紀建築作品群」のプチ観光情報
最寄り都市 | グッゲンハイム美術館:ニューヨーク ロビー邸:シカゴ |
---|---|
最寄り空港 | グッゲンハイム美術館:ジョン・F・ケネディ国際空港 or ニューアーク・リバティー国際空港 ロビー邸:シカゴ・オヘア国際空港 |
公用語 | 英語 |
通貨 | USドル |
観光のベストシーズン | 通年 |
時差 | グッゲンハイム美術館:14時間(サマータイム時は13時間) ※日本の方が14時間進んでます。 ロビー邸:15時間(サマータイム時は14時間) ※日本の方が15時間進んでます。 |
治安 | 比較的良い |
物価 | 少し高い(日本の1.5倍ほど) |
観覧料・ツアー料 | グッゲンハイム美術館:大人25ドル、学生18ドル ロビー邸:30ドル ※内部の見学をするにはツアー申し込みが必須 |
ライト建築作品の中でも特に人気の、「グッゲンハイム美術館」と「ロビー邸」は、日本から直行便が就航しているニューヨークとシカゴに位置するため、非常にアクセスが良いのが魅力です。
(アクセスの詳細は後述で解説します)
ただし、ロビー邸を見学する場合は必ずツアーに申し込む必要があるため、事前にツアー予約だけ済ませておきましょう。
アクセス
ライト建築作品が複数点在するシカゴの街並み
「グッゲンハイム美術館」と「ロビー邸」のあるニューヨーク&シカゴへは、日本から直行便が就航しています。
【グッゲンハイム美術館の場合】
- 日本各空港 [フライト時間:約13時間] ⇨ ジョン・F・ケネディ国際空港 [鉄道乗車時間:約10分] ⇨ ジャマイカ駅 [地下鉄乗車時間:約20分] ⇨ グランド・セントラル駅 [地下鉄乗車時間:約15分] ⇨ マディソン・アベニュー89st駅 [徒歩数分] ⇨ グッゲンハイム美術館
【ロビー邸の場合】
- 日本各空港 [フライト時間:約13時間] ⇨ シカゴ・オヘア国際空港 [鉄道乗車時間:約40分] ⇨ ジャクソン駅 [鉄鉄乗車時間:約25分] ⇨ Stony Island & 57th Street駅 [徒歩:約10分] ⇨ ロビー邸
「グッゲンハイム美術館」「ロビー邸」ともに公共交通機関でアクセスすることができるため、初めてのライト建築作品観光として非常におすすめです。
ホテル情報
「グッゲンハイム美術館」はニューヨークの中心部に位置するため周辺にはホテルが充実
- 「グッゲンハイム美術館」「ロビー邸」ともに市内中心部に近いためホテルは充実
- アメリカの大都市のホテル予算は最低でも1万円/泊で考えておく
- 外資系の高級ホテルからアパートメントタイプの宿などバリエーションが豊富
「グッゲンハイム美術館」と「ロビー邸」はニューヨークとシカゴという大都市に位置するため、ホテル探しに困ることはありません。
ただし、アメリカの大都市のホテル相場は非常に高いため、日本の1.5倍の宿泊料と考えておきましょう。
一方で、「ヒルトン」「インターコンチネンタル」「ハイアット」など世界的に有名なブランドホテルから、複数人で泊まれるアパートメントタイプの宿までバリエーションが豊富なため、予算や人数によって滞在スタイルをアレンジしやすいです。
参考文献・注意事項
- 当記事の内容は「世界遺産検定1級公式テキスト<上>」と「世界遺産検定1級公式テキスト<下>」を大いに参考にしています。
- 当記事は100%正しい内容を保証するものではありません。一部誤った記載が存在する可能性があることをあらかじめご了承ください。